オリジナルミュージカル「伴走」

監修/藤本義一 演出/広瀬正勝 脚本/山本佑子 
作曲/山下 透 照明/西 泰幸 美術/池田ともゆき 
衣装/那珂川美子 演出助手/小林律子
 
大阪の劇団「てん」が数回の小劇場公演を経て、
初めて新神戸オリエンタル劇場で公演をした。
演出は,劇団四季でオリヴァ・ツイストの主役オリヴァなどを演じ、
その後退団した広瀬正勝で、劇団「てん」を主宰。
作は劇団の山下佑子の初作品、監修は藤本義一。
ストーリーはサルトルとボーヴォワールが結ばれ、
この二人の究極の愛の中に、教え子の女性が翻弄されていく。
そこにシャネルとかピカソも絡まるという愛の物語。
残念ながら、男女の絡み合う愛の会話が
作者の体内で租借されないまま書かれているため、
立てる台詞、聞かせる台詞が乏しく、各々の心情が伝わらない。
発想は面白いので、もっと愛を強く全面に押し出して欲しい。
サルトルが生徒と愛を交わそうという場面も
もろにベッドでというのでなく、余韻の中で表現して欲しい。
そういうところの芝居づくりを大切にしてもらいたい。
芝居は台詞をいかに組み立てるかが大切だ。

元劇団四季の山口正義が狂言回し的な役を演じながら出演者をリード。
他の出演者は、これも広瀬が関係している大阪ミュージカルスクールの
ステージ21の卒業生達で、演技指導は山口正義が行っている。
何れもまだ素人集団に過ぎないが、こういう段階を経て新しい演技者が
生まれてくるもので、こうした活動は大切。
今回の作品は音楽劇とうたっているだけに、歌も歌えないといけない、
芝居もできないと、という難しい条件の中の配役。
広瀬の演出は、素人に近い出演者をとにかく芝居をさせるところまで
もっていくのも大変だったと思う。
衣装に統一性がなく、髪型も日本的でフランスを感じさせない。
装置も<やおや>を中途半端に使っており、工夫がいる。
こういう芝居は雰囲気が大事である。
観ていて面白かったのは、劇団四季が広瀬のDNAの中にあることだ。
出だしの墓場の感じや人物の配置がシンメトリー的であったり、
所々で初期の頃の四季の舞台雰囲気に似ていた。
出演者達の台詞ははっきりしているが、
感情のないまま、台詞を言うので精一杯というのは今後の課題、
芝居とは何かをもう一度考えるといい
照明と音響は再考を要す。
この劇団が今後どう育つか見守りたい。

    2001年6月10日 新神戸オリエンタル劇場 ちゅ-太
   
                  次へ
                 トップページへ戻る