配偶者に不貞行為があった場合に、不貞行為をした配偶者に対し離婚請求と慰謝料請求をする方法、そして、不貞行為の相手方に対しても同時に慰謝料請求をする方法
不貞行為は、一方配偶者とその相手方が男女関係を持つことにより、他方配偶者の円満な婚姻関係を侵害する共同不法行為であり,不貞行為をした一方配偶者とその相手方は他方配偶者に対し連帯して慰謝料債務を負担することになります。
第1 調停による方法
他方配偶者は,不貞行為をした一方配偶者を相手方として,家庭裁判所に離婚請求と慰謝料請求を一緒にして調停を申し立てることができます。
他方,不貞行為をした一方配偶者の相手方に対しては,通常通り,民事事件として簡易裁判所に慰謝料請求調停を申立できるほか,家事事件手続法244条の「人事に関する訴訟事件その他家庭に関する事件」に含まれると解されることから,家庭裁判所に対しても慰謝料請求の調停申立をすることができます。
この場合,不貞行為をした一方配偶者を相手方とする離婚請求及び慰謝料請求調停に,不貞行為をした相手方をも相手方として加えて1通の申立書で調停申立することは,各家庭裁判所の取り扱いで,受けつける場合と受けつけない場合があります。受けつけられない場合は,不貞行為をした一方配偶者に対する離婚等請求調停とは,別個に,家庭裁判所に不貞行為をした相手方を相手方として慰謝料請求調停を申し立てることになります。例外的に,一方配偶者及び不貞の相手方双方が不貞を認めているような場合には,不貞の相手方を参加人として離婚等請求調停に参加させることがあります。
また,同一の家庭裁判所に,夫婦間の離婚等請求調停と不貞行為の相手方を相手方とする慰謝料請求調停が係属した場合には,関連損害賠償請求(これには,不貞の相手方のように,人事訴訟の当事者以外の第三者を当事者とする事件も含まれます。)として,家庭裁判所の決定により一方の調停を片方の調停に併合することも出来ますし,家庭裁判所の判断で夫婦間の離婚等請求調停と不貞行為の相手方を相手方とする調停とを,事実上同じ期日にして同時並行処理することもあります。
第2 訴訟による方法
離婚等請求調停が不成立となった場合,他方配偶者は,不貞行為をした一方配偶者及び不貞行為の相手方を共同被告として,不貞行為をした一方配偶者に対する離婚請求と不貞行為をした一方配偶者及び不貞行為の相手方両名に対して連帯して慰謝料を支払えという訴訟を家庭裁判所に提起することが出来ます。
仮に,家庭裁判所に,不貞行為をした一方配偶者のみを被告として離婚等請求訴訟を提起した場合,不貞行為の相手方に対する慰謝料請求訴訟は,前述の通り関連損害賠償請求として家庭裁判所に訴訟提起することも出来ますし,請求額が140万円までは簡易裁判所に,請求額が140万円を超過する場合は地方裁判所に,離婚訴訟とは別個に訴訟を提起することもできます。