相続における限定承認(限定相続)

2013(平成25)年4月2日

 

限定承認(限定相続)の説明

1 限定承認(限定相続)は,遺産の積極財産(資産)と消極財産(負債)の全てを相続するが,債務等の負債については,相続した積極財産(資産)の限度内でしか責任を負わない相続です。

 すなわち相続した資産を換金して負債を弁済するが,それで足りなくても,限定承認(限定相続)した相続人の自己財産で支払う責任を負わない相続です。

 ちなみに単純承認(単純相続)ですと,相続した資産では相続した負債の弁済に足りない場合,単純承認(単純相続)した相続人の自己財産で弁済する責任が生じます。

2 限定承認(限定相続)の方法

 限定承認(限定相続)は,自己のために相続が開始されたことを知った時から3か月以内に全相続人が一致して共同で家庭裁判所に,財産目録を調整して提出し,限定承認(限定相続)の申述をしなければなりません。

 但し,家庭裁判所に相続放棄の申述をした相続人ははじめから相続人ではなかったことになるので,その人は全相続人の中には入りません。

3 財産分離

 限定承認(限定相続)した者は,相続以前から保有していた自己の固有財産と同一の程度の注意義務により相続財産の管理をすることになります。

 そして,限定承認(限定相続)をする相続人が複数人である場合,家庭裁判所は,職権により相続人の中から相続財産の管理人を原則として1人選任することになります。

4 請求申出の催告と公告等

 限定承認(限定相続)をした相続人は,限定承認の申述の受理をされた日から5日以内に,すべての相続債権者及び受遺者に対し,限定承認(限定相続)をしたこと及び2か月以上の一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければなりません。

 相続財産管理人が選任された場合には,選任後10日以内に上記の公告及び催告をしなければなりません。

5 資産の換価方法

 原則的換価方法は競売です。

6 相続人の先買権

 限定承認(限定相続)の場合,相続財産である資産について競売という原則的換価方法に代えて,相続人に先買権を認め,相続人が特定の資産を指定して裁判所の選任した鑑定人の鑑定価格(時価鑑定)以上の金員を支払って特定の資産の所有権を取得することが出来ます。

7 生命保険金請求権

 生命保険金受取人として保険契約上特定して指定された相続人は,限定承認(限定相続)をしていても,自己の権利として生命保険金を受領でき,そして,その生命保険金をもって相続債務の弁済に供する責任はありません。

8 死亡退職金

 死亡退職金についても受取人が就業規則等で定められていれば,その就業規則等で定められた相続人は自己の権利として死亡退職金を受領でき,そして,その死亡退職金をもって相続債務の弁済に供する責任はありません。

9 限定承認(限定相続)における「みなし資産譲渡所得税」

 限定承認(限定相続)の場合,相続によって発生する通常の相続税の外に「みなし資産譲渡所得税」という譲渡所得課税が生ずるので実務上特に注意を要します。

 

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