商法上の会社整理手続の概略
「この会社整理の制度は、平成18年5月1日施行の新会社法によりなくなりました。従って、平成18年5月1日以降はこの制度は使えません。」
第1. 商法上の会社整理の説明- 1.企業が経済的に困難な状態に立ち至った場合の再建するための法的方策
- 1)会社更生法による手続
- 2)民事再生法による手続
- 3)商法による会社整理手続
- 4)破産法による強制和議手続
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2.商法上の会社整理手続
会社整理手続は、商法381条以下に定めるもので、会社を再建するための法的手続です。 - 1)その特徴は以下の通りです。、対象が株式会社に限定される。
- 2)原則として、取締役、監査役が権限を失わない。
- 3)租税公課債権は手続に拘束されない。
- 4)整理案の成立には全債権者の同意を要する。
但し、実務では総債権額の90パーセントを超える債権を有する債権者の同意があれば、一部の債権者の不同意があっても整理の遂行に支障がなければ、整理案について実行命令が発せられて整理手続が進行します。 - 5)裁判所の監督に服する。
- 6)条文数が少なく手続が比較的簡易で柔軟である。
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1.申立
商法上の会社整理手続開始決定申立をします。 -
2.保全処分
弁済禁止、処分禁止、借財禁止等の保全処分も同時に申し立て、原則として債務者審尋の上保全処分の決定がなされます。 -
3.検査命令
整理開始決定をなすべきか否かの判断に資するため通常開始決定前に発せられます。検査は検査役を選任して実施されます。 -
4.監督命令
監督員の本来の職務は、会社が裁判所の指定した行為を行うについて同意をすることであるが、整理開始前に監督命令が発せられた場合には、裁判所の要請により事実上、検査役としての調査と報告をすることがその職務の主たる内容となります。 -
5.会社整理開始決定
検査役の調査報告があり、更に必要があるときは、主たる債権者その他の関係人の意見を聞き、整理開始原因があると認められるときは、裁判所は整理開始決定をします。 -
6.整理処分
裁判所は整理開始決定と同時にまたは開始決定後に次の処分をします。
整理案の立案命令と実行命令 -
7.業務執行
会社整理が開始されても、取締役の業務執行、会社代表の権限は当然には制限されません。 -
8.整理債権
保全処分日以前の原因に基づいて発生した債権を原則として整理債権とします。 -
9.整理案の立案命令
通常は整理開始決定と同時に、3カ月ないし6カ月の期限を付して、整理案の立案命令がなされます。 - 10.整理案
債権者に対して公平平等に弁済するような弁済計画を作成して
債権者からの同意を得て成立します。 - 11.整理計画の実行命令
整理案が裁判所に提出され、そして整理案について債権者の同意が得られたときは、裁判所は実行命令を出します。
実行命令があったときは、原資を調達して整理計画に従い弁済をすることになります。 -
12.整理終結決定
整理が結了しまたは整理の必要がなくなったときは、整理終結決定がなされます。
第3. 商法上の会社整理手続が不成立になった破産手続に移行します。
整理手続が開始されたが、以下の場合には整理の見込がないとして、裁判所が職権で破産宣告をなし、整理手続が終結して破産手続が開始されます。
- 1.実行が可能であり、かつ債権者の同意が得られる見込みがある整理案が立案できないとき。
- 2.整理案ができたが、整理の遂行に必要な多数の債権者の同意が得られないとき。
- 3.整理案につき整理の遂行に必要な債権者の同意が得られたが、整理案に基づく弁済等が実行できないとき。
破産に移行した場合の破産手続による破産配当見込
第5.商法上の会社整理手続による配当見込
会社整理手続により行う予定の整理案の配当見込
第6.債権者の同意不同意の判断
第4の破産における配当見込み及び第5の会社整理手続による配当見込を比較し、また会社が継続することにより取引が継続できることのメリットを比較衡量するなどして、各債権者が同意、不同意の判断をすることになると思います。
以上
参考文献
「会社整理」 社団法人商事法務研究会 高木新二郎 著