会社を退職した後,従前勤務していた会社と同じ業務の新会社を設立する場合の注意点

2011(平成23)年10月17日

 第1に競業避止義務があるかを確認して下さい。

 国民は,憲法上職業選択の自由が保障されておりますので,その会社を退社して別の仕事につくことは原則として自由です。

 しかし,退職した会社の就業規則や就職してから退職するまでに作成した誓約書の中に合理的な時間的,地理的範囲内での競業禁止条項がある場合は,その条項に違反すると競業避止義務違反となる場合があります。

 ただし,あまりに広範囲に競業禁止が定められた就業規則や誓約書の競業禁止規定は,独占禁止法に違反するおそれがあり,憲法が保障する職業選択の自由を侵害するので公序良俗に反し無効と考えられます。その場合は,競業避止義務を負わないことになります。

 第2に従業員の問題です。

 新しい会社にもとの会社の従業員を採用する場合に注意しなければならないことがあります。

 もとの会社の同僚や後輩を引き抜いた場合に,引き抜きの態様が通常の勧誘行為を超えていて,もとの会社の利益を奪うため,又は,損害を与えるために行った場合は違法行為として損害賠償義務が発生します。

 そうでなくて,元の同僚や部下が自発的に新会社に移ってきた場合は違法行為とはならず損害賠償義務もありません。

 第3に営業秘密の問題があります。

 もとの会社の顧客名簿などの営業秘密を無断で使用した場合は,不正競争防止法や一般不法行為法による,差し止め請求や損害賠償請求を受けることになりますので御注意下さい。

以上


前のページへ戻る