訴訟上の和解について
2011(平成23)年6月18日
2020(令和2)年5月25日改訂
2020(令和2)年5月25日改訂
- 1 訴訟上の和解は,訴訟手続の進行中に裁判官が関与して当事者間で和解を締結させ,それにより係属中の訴訟手続を終了させる手続です。
裁判官からの和解勧試は,書証等の提出がなされた段階と,最終的に人証の取り調べが終わった段階でなされる場合が多いです。 - 2 訴訟上の和解のメリットは,
- (1)訴訟手続を早期に終了させることができます。
判決であれば,控訴や上告がなされれば判決が確定するまで結構時間がかかります。 - (2)一方当事者が,他方に対し,何らかの給付行為をする旨の給付条項が和解調書に記載された場合,相手方の任意の履行が期待できます。
万が一相手方が和解調書通り支払わない場合は,和解調書は判決と同じ効力がありますので,和解調書に基づき相手方の財産を差し押さえて満足を得ることが出来ます。 - なお,差押に関しては,
2004(平成16)年5月8日強制執行するには-不動産差押・債権差押・動産差押などをするために必要なもの(債務名義)
でご説明しています。 - 一方,和解が成立せず判決となった場合,判決に給付条項があっても相手方から任意に履行する場合はそれほどは多くないです。
判決による給付条項が出ても,もし,相手方が任意に支払わない場合は,相手方に対して強制執行により債権,動産ないし不動産等の財産の差押えをしなければなりませんが,その手続が煩雑で時間がかかると共に,相手方に財産がないと強制執行が空振りになってしまい,満足を得ることができなくなってしまいます。訴訟上の和解であれば,和解の給付条項について保証人を利害関係人として参加させることにより,もし相手方が支払わない場合でも,相手方だけでなく利害関係人として参加した保証人に対してもその給付を請求することができる点においてもメリットがあります。
- (3)訴訟費用について,それ以上の手続が訴訟手続で進まないので,無駄な出費を抑えることができます。
- (4)当事者間の関係を悪化させることを防ぐことができます。
- (5)判決によると,100%勝訴もしくは全く敗訴の100か0かの結論しか出てこない場合が殆どであるのに対し,訴訟上の和解によれば,紛争の実態に最も適切な方法での解決方法を選択することができます。
- 3 訴訟上の和解による短所(デメリット)は,
- (1)当事者の正当な権利主張が100%は実現出来ないことです。
- (2)訴訟上の和解については既判力が生じないというのが一般の法的理解であり,紛争が蒸し返されるおそれがあります。
以上がメリットです。
以上