遺産分割における特別受益及び寄与分について
特別受益に関して,婚姻期間が20年以上の夫婦間における居住用不動産の贈与等に関する優遇措置が2019年7月1日から施行されます。(持戻し免除の意思表示の推定)
2011(平成23)年5月2日
2019(平成31)年3月9日改訂
2019(令和元)年8月1日改訂
2019(平成31)年3月9日改訂
2019(令和元)年8月1日改訂
- 第1 遺産分割協議・遺産分割調停ないし遺産分割の審判において問題になるのは,
①ある財産が遺産であるかどうか
②特別受益(2019年7月1日施行の改正民法で一部改正があります。)
③寄与分
④相続財産の評価等です。
そして,①のある財産が遺産であるかどうか争いがある場合については,別項の「遺産分割においてある財産が遺産であるかどうか争いがある場合について」のタイトルのところを参照して下さい。 - 第2 ②特別受益について
改正前の民法903条は,共同相続人の中の1人または数人が被相続人から遺贈または婚姻,又は養子縁組のため,もしくは,生計の資本として生前贈与により特別の利益を受けている場合(特別受益),特別受益者について,その相続分の算定に際して特別受益額が斟酌されて相続分に充当され,または,特別受益額が相続分を超える場合は相続分を受けることができないと定めています。
なお,2019年7月1日施行の改正民法(第1044条3項)により,相続人に対する特別受益に該当する贈与については,相続開始前の10年間にしたものに限りその価額を遺留分算定基礎財産に算入することにしました。
特別受益であるか否かは,被相続人の生前の資産,収入,家庭状況に照らして総合的に決定されるべきであるとするのが判例の立場です。
持参金,支度金などは特別受益の対象になります。
結納金,挙式費用については見解が分かれています。
住宅取得費用などの贈与,営業資金の贈与などは特別受益と認められることになります。
そして,ある財産が特別受益の財産にあたるかどうかは,遺産分割調停ないし審判,遺留分減殺請求(2019年7月1日からは遺留分侵害額請求)に関する訴訟など,具体的な相続分または遺留分の確認を必要とする審判事件または訴訟事件における前提問題として審理対象となります。 - 第3 改正された民法第903条4項により,婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である相続人が,その一方に対しその居住に要する建物または敷地について,遺贈又は贈与をしたときは,当該被相続人はその遺贈又は贈与について民法903条1項の規定(特別受益の持戻し免除の規定)を適用しない旨の意思を表示したものと推定されることになりました。
この規定は2019年7月1日から施行されます。
この規定は,施行後に行われた贈与等について適用されます。
この規定により,居住用不動産の遺贈又は贈与を受けた配偶者は原則として遺産の先渡しを受けた者と取り扱う必要がなくなり,配偶者は,より多くの財産を取得することができるようになります。 - 第4 ③寄与分について
寄与分とは,共同相続人の中で,被相続人の財産の維持または増加につき特別の寄与をした者があるときは,その寄与に相当する額を加えた財産を取得させ,共同相続人間の実質的公平を図ろうとする制度です。
そして,寄与分について相続人間で話し合いがつかない場合は,共同相続人のうち寄与した者が他の共同相続人全員を相手方として遺産分割調停申立に併せて家庭裁判所に寄与分の確定調停の申立または寄与分の確定審判の申立をすることが必要になります。
もし調停において話がつかず調停が不成立の場合は,審判に自動的に移行して寄与分の確定がなされます。