不正競争防止法

平成23(2011)年1月15日
平成24(2012)年10月25日改訂
平成26(2014)年1月4日改訂
平成27(2015)年1月2日改訂
平成27(2015)年10月26日改訂
令和元年(2019)年10月17日改訂

第一 憲法の原則

一 私的自由・権利の保持,生命・自由・幸福追求権の尊重

二 私有財産制 

三 憲法は自由な経済(営業)活動を保障している。

第二 民法の原則

一 私有財産制 所有権絶対(不可侵)の原則(民法206条)

二 私的自治の原則(契約自由の原則)

三 過失責任主義

1 債務不履行

民法に直接的な規定はないが,債務不履行責任(民法415条)が債務者の過失によることを前提としている。

2 不法行為

民法709条
「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は,これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」
民法722条が準用する民法417条(金銭賠償の原則)
「損害賠償は,別段の意思表示がないときは,金銭をもってその額を定める。」
例外 民法723条
「他人の名誉を棄損(きそん)した者に対しては,裁判所は,被害者の請求により,損害賠償に代えて,又は損害賠償とともに,名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる。」

ポイント
以上の民法の原則は,自由主義経済体制において競争による活発な経済活動を促進し,それによる国民の経済生活の健全な発展を意図している。

しかし,不正ないし違法な競争行為は,不法行為であり,それを防止する必要がある。
不正競争防止法は,独占禁止法,不当景品類及び不当表示防止法,並びに特許法,実用新案法,意匠法,商標法,著作権法等の知的財産に関する特別法とともに,不正な競争行為を列挙してそれを防止できるようにしている。

cf
民法(不法行為)には不正競争防止法3条,14条等にあるような以下の請求権等が規定されていない。

(1) 侵害行為の差止請求権

kakko cf 民法197条以下

(2) 侵害行為の予防請求

(3) 侵害行為組成物,侵害行為により生じた物,侵害行為に供した設備等の廃棄除却請求権

(4) 信用回復措置請求権 cf  民法723条

(5) 損害額立証の容易化に関する規定 cf 民訴法248条

(6) 相手方の行為の具体的態様の明示義務

(7) 秘密保持に関する規定

(注)

 特に侵害行為の差止請求権が重要である。
 侵害者が競業者でない場合,不正競争行為による被害が希薄であり,不正行為の成立の認定が難しい場合がある。
 しかし,不正競争防止法は,不正競争行為として,著名表示冒用行為,商品役務内容等誤認惹起行為,技術的制限手段無効化行為について,必ずしも競業者でなくても不正競争として規律している。


第三 不正競争防止法

   最終改正 平成30年(法33)

一 不正競争防止法は,経済法・競争法の体系に入る。

1 独占禁止法などとともに,経済活動における行動基準・ルールを規定している。

cf

3 独占禁止法の規制

4 不正競争防止法
 私法上の請求権として不正競争を規律して,競業者や一般消費者の利益を保護する法律である。

 

二 不正競争防止法は,知的財産法の体系にも入る。

2 不正競争防止法が機能する場面

 

三 不正競争防止法の規制

 

四 不正競争防止法の保護法益

事業者の営業上の利益(私益)と,公正な競争(秩序)の確保(公益)である。

 

五 主な不正競争の種類(2条)

1 周知表示(商品・営業表示)との混同惹起行為 (1号)

 

2 著名表示(商品・営業表示)冒用行為 (2号)

 

3 商品形態模倣行為(デッドコピー) (3号)
他人の商品(最初に販売された日から起算して3年を経過したものは除く)の形態を模倣した商品を譲渡し,貸し渡し,譲渡若しくは貸し渡しのために展示し,輸出し,輸入する行為は,不正競争となる。

4 営業秘密の不正取得・使用・開示行為 (4号~10号)

 

5 限定提供データの不正取得等(11号~16号)

 

6 技術的制限手段の無効化行為(17号・18号)

 

7 ドメイン名の不正取得・使用行為 (19号)

 

8 商品・役務内容等誤認惹起行為 (20号)

 

9 競争関係にある営業者に関する虚偽事実流布(るふ)による信用棄損(きそん)行為 (21号)

 

10 代理人等の商標冒用行為 (22号)

 

11 外国国旗・紋章等冒用(16条・17条)

 

六 不正競争の規制手段

但し,商品形態模倣行為の場合請求権者に限定がある。

 

七 損害賠償請求権(4条)

 

八 信用回復措置請求(14条)

不正競争により,営業上の信用を害された者は,損害賠償に代え,または損害賠償とともに,その営業上の信用回復に必要な措置を請求できる。

 

九 相手方の行為の具体的態様の明示義務(6条)

十 損害額立証のための文書提出命令(7条)

十一 損害額計算のための鑑定(8条)

十二 相当な損害額の裁判所による認定(9条)

十三 秘密保持命令(10条)

十四 当事者尋問等の公開停止(13条)

十五 信用回復の措置(14条)

十六 営業秘密に関する不正競争の消滅時効(15条)

 被侵害者が不正競争行為を知ったときから3年間,不正競争行為開始時から20年間(平成27年7月改正で除斥期間を延長した。)

十七 刑事罰(21条)


十八 適用除外等(19条)

以上


参考文献

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