間接強制
2020(令和2)年12月24日
- 第1 間接強制の定義等
- 1 「間接強制」は、債務者に対して、債務の履行を確保するために相当な一定額の金銭を債権者に支払うことを命じ、債務者に対して債務の履行を心理的に強制することで請求権の実現をはかる強制執行の方法です。
- 2 「間接強制」は、代替執行の方法によることができない不代替的作為請求権及び不作為請求権についてすることができます。(民事執行法(以下「法」といいます。)172条)
問題は、未成年子との面会交流に関してです。
最高裁決定平成25年3月28日は、一定の内容の記載がある債務名義であれば面会交流について間接強制ができると判断しました。 - 3 また、「間接強制」は、法173条により、物の引渡請求権、代替執行の方法によることができる代替的作為請求権及び不作為請求権についてもすることができます。
- 4 なお、履行を強制できない義務や債務者の意思のみによっては履行することができない義務については、間接強制はできないとされています。
- 第2 間接強制の手続
- 1 執行申立て
- ①強制金決定(間接強制決定)の申立てによります。
執行裁判所は、一般の執行要件及び間接強制の要件を審査して、決定をもって裁判します。
- ②間接強制金決定を発するには、予め債務者を審尋しなければなりません。(法172条3項)
- 2 間接強制金決定
- ①執行裁判所は、履行確保の為に相当と認める一定額の金銭(間接強制金)を債権者に支払うべき旨を命じます。(法172条1項、173条)
- ②間接強制金の定め方には、不履行の期間に応じ、または違反ごとに間接強制金の支払いを命じる定期金方式と、相当と認める一定期間内に履行しないときは直ちに間接強制金を支払うことを命じる一時払方式があります。
- 3 間接強制金の取立て
- ①債務者が間接強制の決定における履行命令に違反して、債務を履行しない場合には、債権者は間接強制金の取立てをすることができます。
- ②間接強制金決定は、間接強制金支払の債務名義となります。(法172条5項、22条3号)
- ③債権者は、間接強制金決定の正本に補充執行文付与(法27条1項)を受けて(債権者の証明すべき事実が到来したことを証する文書を提出できないときは、執行文付与の訴え(法33条1項)を経て)、間接強制金取立ての強制執行ができます。
- 第3 間接強制金の帰属と損害賠償との関係
- 1 債務者が支払った間接強制金は債権者に帰属し、債務不履行により債権者に生じた損害の賠償に充てられます。
- 2 間接強制金の支払額が損害額を超える場合であっても、超過額を債権者が債務者に返還する必要はありません。
- 3 間接強制金の支払額が損害額よりも少ない場合には、不足分についてのみ債権者は債務者に対し損害賠償を請求することができます。(法172条4項)
- 第4 関連説明
- 1 「債務名義」に関しては、
2020(令和2)年10月23日改訂の強制執行するにはー不動産差押・債権差押・動産差押などをするために必要なもの(債務名義)
でご紹介しています。 - 2 「代替執行」に関しては、
2018(平成30)年2月26日所謂「代替的作為債務」(たとえば建物収去債務など)や「不作為債務」を、債務者が履行しない場合における「代替執行」(民事執行法171条)
でご紹介しています。
EX:夫婦の同居義務、芸術作品の製作を求める請求権等
参考文献
- ・条解 民事執行法
編者 伊藤眞、園尾隆司、林道晴、山本和彦、古賀政治
発行所 株式会社弘文堂 - ・民事執行法
著者 中野貞一郎、下村正明
発行所 株式会社青林書院