給料等債権の差押の範囲(差押禁止債権)
2020(令和2)年12月5日
給料・賃金・俸給・退職年金・賞与ならびにこれらの性質を有する給与に係る債権を差押えた場合の差押の範囲は、以下の通りになります。
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①原則として「支払期に受けるべき給付」(給与の名目総額でなく、源泉徴収される給与所得税・住民税・社会保険料を差し引いた手取額になります。)の4分の3に相当する部分は、差押えが禁止されています。
(民事執行法152条1項柱書カッコ外)
従って、給料等債権を差し押さえ出来る範囲は、「支払期に受けるべき給付」の4分の1になります。 - ②但し、「標準的な世帯の必要生計費を勘案して政令で定める額」を超えるときは、政令で定める額に相当する部分が差押禁止となり、それを超える部分は、差押禁止が解除されますので差し押さえられます。(同項カッコ内)
従って、給与の手取月額が44万円を超えるならば,給与の手取月額の33万円を超える部分全部を差し押さえることができます。 - ③例外として、債権者の執行債権が扶養料請求権等(民事執行法151条の2第1項各号処掲の金銭債権、例示しますと、婚姻費用・養育費・扶養料等の金銭債権です。)である場合は、差押禁止の範囲は、「支払期に受けるべき給付」の2分の1に相当する部分に縮減されます。(民事執行法152条3項)
この場合でも、給与の手取月額の33万円超過部分は差し押さえできますので、差押禁止範囲の縮減が機能するのは、給与債権の月額が66万円に達するまでの部分であり、その範囲では2分の1の限度で差押禁止となります。
なお、強制執行を申し立てるのに必要な債務名義に関しては、
2020(令和2)年10月23日改訂の強制執行するにはー不動産差押・債権差押・動産差押などをするために必要なもの(債務名義)
でご紹介しています。
参考文献
民事執行法
中野貞一郎・下村正明著
株式会社青林書院発行