「公益通報者保護法」による「公益通報」と「内部通報・内部告発」について
2020(令和2)年8月24日
- 第一 公益通報者保護法について
- 一 「公益通報者保護法」の解説
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- 1 「公益通報者保護法」は、
内部告発のうち、 - ①労働者が不正の目的をもたず、(同法2条1項)
- ②労務提供先又は当該労務提供先の事業に従事する場合におけるその役員、従業員、代理人、その他の者について、(同法2条1項)
- ③同法2条3項に定める特定の罰則付き法令違反行為(通報対象事実)が行われ、もしくは行われるおそれがある事実を、
- ④勤務先や監督行政庁、マスコミ等の第三者に申告(公益通報)した場合に、
- ⑤一定の要件を満たした公益通報の通報者に対する不利益処分を禁止し(同法5条)、公益通報をしたことを理由とする解雇ないし労働者派遣契約の解除を無効としている(同法3条、4条)
法律です。 - 2 公益通報者保護法に定める「公益通報」と、それ以外の通報との違い
- ①公益通報制度では、同法2条3項に定める「通報対象事実」に限定されるのに対し,それ以外の通報には、通報又は告発の対象となる事実に限定がありません。
- ②公益通報制度においては、同法で保護される通報者は労働者に限定されるのに対し,それ以外の通報は、通報者が労働者に限定されません。
- ③公益通報制度の通報先は、限定されていないのに対し、内部通報は勤務先が設けた窓口への通報に、外部通報は、勤務先が設けた窓口以外の外部への通報を意味します。
- 1 「公益通報者保護法」は、
- 第二 内部通報について
- 一 「内部通報制度」の意味
勤務先で生じている問題について、役職員等が勤務先に設けられた社内窓口や勤務先が委託した社外窓口などに対して通報できる、各事業者が設けた通報制度をいいます。 - 二 「内部通報制度」を構築する意義
企業が、「内部通報制度」を構築して、公益通報者保護法で保護されない通報についても広く受け付け、そして通報者を保護する姿勢を明らかにすることにより、早期に不正事実につながる事実を把握し、企業内部の自浄作用を機能させ、不正の未然防止や早期発見につなげてコンプライアンスを充実させることにあります。 - 第三 内部告発
「内部告発」の意味
勤務先で生じている問題(不正・不当な行為)について、役職員等が当事者(内部)あるいは行政機関やマスコミなどの外部の第三者に対して伝え,その問題の是正や処分を求める行為の総称です。
公益通報者保護法は,内部告発の一般法としての性格を持つと言われています。- 第四 内部通報制度の構築について
- 一 内部通報窓口の設置場所
- ・社内窓口
- ・社外窓口
- ・両方を設置する
- 二 通報者の範囲
- ・労働者
- ・元労働者
- ・役員
- ・元役員
- ・第三者
- ・匿名者
- 三 通報対象事実の範囲
- ・公益通報者保護法の通報対象事実に限定するか
- ・会社のルール(就業規則等)に違反する行為
- ・法令違反行為(公益通報制度の通報対象事実に限定されない法令違反行為)
- ・職場環境を害する行為(パワハラ・セクハラ等)
- 四 通報の方法(受付媒体)
- ・電話
- ・ファックス
- ・電子メール
- ・書面(封書)
- ・郵送文書
- ・面談
- ・口頭
- ・社内イントラネット
- ・ウエブサイト内の専用フォーム
- 五 通報を義務化するかどうか
- 1 内部通報を推奨するにとどまらず、内部通報を義務化するかどうかの問題もあります。
- 2 仮に、内部通報を従業員の「義務」あるいは「責務」としても、内部通報をしなかったことで直ちに懲戒処分の対象にしないという取り扱いも考慮する必要があります。
以上の選択がありえます。
通報者を限定するかどうかの問題があります。
通報対象事実を制限するかどうかの問題があります。
以上の方法が考えられます。
参考文献
- ・通報者のための公益通報者保護・救済の手引(第2版)
日本弁護士連合会消費者問題対策委員会 編集
株式会社民事法研究会 発行 - ・ここがポイント 事業者の内部通報トラブル
東京弁護士会 公益通報者保護特別委員会 編集
法律情報出版株式会社 発行 - ・内部通報・内部告発対応実務マニュアル
阿部・井窪・片山法律事務所
石嵜・山中総合法律事務所
編集
株式会社 民事法研究会 発行