「相続人の欠格事由」と「推定相続人の廃除」,それに関連する「代襲相続」
2020(令和2)年5月9日
2020(令和2)年5月13日改訂
2020(令和2)年5月13日改訂
- 第1 相続人の欠格事由(民法891条)
- 1 相続人の欠格事由とは,相続に関して犯罪的又は重大な倫理違反行為をした者について相続人としての資格を当然に失わせる事由であり,相続欠格者は,遺産分割の当事者に当然になりません。
- 2 相続欠格事由(民法891条)
- ① 故意に被相続人または相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ,又は至らせようとしたために,刑に処せられた者
- ② 被相続人の殺害されたことを知って,これを告発せず,又は告訴しなかった者。
但し,その者に是非の弁別がないとき,又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは,この限りでない。 - ③ 詐欺又は強迫によって,被相続人が相続に関する遺言をし,撤回し,取り消し,又は変更することを妨げた者
- ④ 詐欺又は強迫によって,被相続人に相続に関する遺言をさせ,撤回させ,取り消させ,又は変更させた者
- ⑤ 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し,変造し,破棄し,又は隠匿した者
- 第2 推定相続人の廃除(民法892条)
- 1 遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいいます。)が,被相続人に対して虐待をし,若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき,又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは,被相続人は,その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができます。(民法892条)
すなわち,推定相続人の廃除は,その推定相続人の相続権を剥奪する制度です。
廃除の審判がなされると,その推定相続人は相続資格を失い,遺産分割の当事者になりません。 - 2 なお,この推定相続人には,遺留分を有しないことから被相続人の兄弟姉妹は含まれていません。(民法1042条)
そして、遺留分に関しては,
2008(平成20)年3月26日遺留分
でご紹介しています。 - 3 被相続人は遺言により推定相続人の廃除を求めることができます。(民法893条)
被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは,遺言執行者は,その遺言が効力を生じた後,遅滞なく,その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければなりません。
この場合において,その推定相続人の廃除は,被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生じます。 - 4 推定相続人の廃除の取消し(民法894条)
- ① 被相続人は,いつでも,推定相続人の廃除の取消しを家庭裁判所に請求することができます。
- ② また,被相続人は遺言によっても推定相続人の廃除の取消しの意思を表示することが出来ます。(民法894条2項)
- ③ ②の場合は,遺言執行者は,その遺言が効力を生じた後,遅滞なく,その推定相続人の廃除の取消しを家庭裁判所に請求しなければなりません。(民法894条2項,893条)
- 5 推定相続人の廃除に関する審判確定前の遺産の管理(民法895条)
- ① 推定相続人の廃除又はその取消しの請求があった後,その審判が確定する前に相続が開始したときは,家庭裁判所は,親族,利害関係人又は検察官の請求によって,遺産の管理について必要な処分を命ずることができます。
- ② 推定相続人の廃除の遺言があったときも同様です。
- ③ なお,遺産の管理について必要な処分に関して,家庭裁判所が遺産の管理人を選任した場合は,民法27条ないし29条の不在者財産管理人の規定が準用されます。(民法895条2項)
- 第3 相続人の欠格事由ないし推定相続人の廃除による代襲相続
- 1 相続人の欠格事由により相続人でなくなった相続欠格者に子供がいる場合(被相続人の子の子である孫やその子のひ孫や被相続人の兄弟姉妹の子である甥や姪)は,それらの者が相続欠格者の代襲相続人として相続することになります。(民法887条2項・3項,889条1項2号・2項)
- 2 推定相続人の廃除により相続人でなくなった被相続人の子に子や子の子がいる場合(被相続人にとっては孫やひ孫)は,それらの者が代襲相続人として相続することになります。
- 3 なお,相続人が相続放棄をした場合は,相続放棄をした相続人は最初から相続人でなかったことになりますから代襲相続はおこりません。
相続放棄に関しては,
2008(平成20)年9月3日相続放棄について
でご紹介しています。