有価証券無効宣言公示催告及び除権決定
2019(平成31)年1月10日
非訟事件手続法第二章(第114条~第118条)は、有価証券無効宣言公示催告事件を規定しています。
- 第1 有価証券無効宣言公示催告事件の対象となる有価証券は、概略以下の通りです。
- (1)民法施行法第57条に定める有価証券
約束手形
為替手形
記名式・指図式小切手
貨物引換証
船荷証券
倉荷証券
無記名小切手
無記名社債
受益証券
特殊債
地方債
記名式持参人払式小切手
等 - (2)新株予約権証券(会社法第291条)
- (3)抵当証券(抵当証券法第40条、民法施行法第57条)
- (4)出資証券(日本銀行法第9条、同法施行令第4条、会社法第291条)
- 第2 申立権者
- 非訟事件手続法第114条で以下のように規定されています。
- 盗取され、紛失し、滅失した有価証券で、
- ①無記名式の有価証券又は裏書によって譲り渡すことができる有価証券であって白地式裏書がなされたものの最終所持人
- ②前号に規定する有価証券以外の有価証券では、その有価証券により権利を主張することができる者
- 第3 管轄裁判所(非訟事件手続法第115号)
- 有価証券の無効宣言のための公示催告の管轄は、
- ①その有価証券に義務履行地が表示されているときは、その義務履行地を管轄する簡易裁判所
- ②その有価証券に義務履行地が表示されていないときは、その有価証券により義務を負担する者が普通裁判籍を有する地の簡易裁判所
- ③その者が普通裁判籍を有しないときは、その者がその有価証券により義務を負担した時に普通裁判籍を有した地を管轄する簡易裁判所
- 第4 申立ての方式及び疎明(非訟事件手続法第116条)
- ①有価証券の無効宣言のための公示催告の申立ては、公示催告の対象となる有価証券を特定しなければなりません。
- ②公示催告申立てに係る有価証券の盗難、紛失または滅失の事実その他有価証券を無効とする申立てをすることができる理由を疎明しなければなりません。
- 盗難や遺失の場合は、警察署等の発行する盗難届や遺失届を受理した旨の証明書、転居や罹災の混乱による紛失の場合は、転居証明書や罹災証明書、破棄や焼失等によって物理的な存在を失った場合は陳述書等でその事実を疎明することが考えられます。
- ③申立人は、自己が申立権者であることも疎明しなければなりません。
- 第5 公示催告の内容等
- 非訟事件手続法第117条には、公示催告の内容が定められています。
- 第6 除権決定により有価証券の無効の宣言等
- 非訟事件手続法第118条では、以下の内容を規定しています。
- ①裁判所は、有価証券無効宣言公示催告の申立てについての除権決定において、その申立てに係る有価証券を無効にする旨を宣言しなければなりません。
- この除権決定により、証券と権利との結合が解かれて証券は単なる紙片となります。
- その結果、証券の所持人を権利者と推定する効力(資格授与的効力)が失われます。
- ②除権決定がなされたときは、有価証券無効宣言公示催告の申立人は、その申立てに係る有価証券により義務を負担する者に対し、当該有価証券による権利を主張することができます。
- 第7 株券の除外
- 株券は有価証券でありますが、株券は有価証券無効宣言公示催告及び除権決定の対象にはなりません。(会社法第233条)
- 会社法第221条から第232条に規定されている株券喪失登録制度により、株券喪失登録された株券を無効する手続きがとられています。
- この株券の失効制度に関しては、
2016(平成28)年5月20日株券の失効制度
でご紹介しています。
参考文献等
- ・裁判所HP
- ・法務省HP
- ・逐条解説 非訟事件手続法
編著者 金子修
発行所 株式会社商事法務 - ・一問一答 非訟事件手続法
編著者 金子修
発行所 株式会社商事法務 - ・株式会社法 第7版
著者 江頭憲治郎
発行所 株式会社有斐閣 - ・会社法 第2版
著者 田中亘
発行所 一般財団法人東京大学出版会