養子縁組で、自分の子供(実子)を養子にすることができるか。

2018(平成30)年6月22日

 

 民法に定める養子縁組の制限は、

 ①養親になるには成年に達していなければならない。(民法792条)

 ②尊属又は年長者を養子とすることはできない。(民法793条)

と規定されています。

 

 今回問題とするのは、自分の子供(実子)を養子にできるかという点です。

 

 民法798条但書は、自分の直系卑属を養子にすることができることを前提とする規定になっています。

 自分の子供(実子)も直系卑属にあたりますので,これを養子にすることが出来るようにも思われます。

 

 自分の子供で非嫡出子(婚姻外で生まれた子供)の子供を養子にすることは、その子に嫡出の身分を与えるという実益があるため、学説・判例・先例とも肯定しています。

 

 問題は、自分の嫡出子(婚姻関係により生まれた子供)を養子にできるかという点です。

 具体的には、離婚した夫婦で、夫を筆頭者とする戸籍からぬけた妻が子の親権者になっている場合で、夫の戸籍に残っている子を妻の戸籍に移すために、妻が子との養子縁組を届け出る事例が考えられます。(このような場合には、「子の氏の変更」の手続により子の戸籍を移すのが、適切な方法です。 )

 

 戸籍の先例は、民法798条但書に規定する直系卑属中には嫡出子は含まれないとしています。(昭和23・1・13民甲第17号)

 

 ただ例外として、自己の嫡出子を養子とする縁組も誤って受理されたときは、有効な縁組として取り扱うとしています。(昭和24年3月15日民甲3268号回答先例全集(2)1654)

 

 審判例では、自己の嫡出子を養子とする養子縁組は無効でないとしたものがあります。(大阪家審昭和52・8・24家月30・10・38)

 

 学説は、有効説と無効説に分かれています。

 

 無効説にたったとしても、自己の嫡出子を養子とする縁組が誤って受理されたときは、有効な縁組ではあるが取り消すことができる縁組となり、各当事者またはその親族からその取消しを裁判所に請求することができるということになります。(民法805条)

 

 なお、自分の孫や曾孫を養子にすることは、学説・判例とも肯定しており問題なくできます。

 

 

参考文献

・山本正憲著 
 先例判例養子法 
 発行 日本加除出版株式会社

 

・我妻栄著
 法律学全集23 親族法
 発行 株式会社有斐閣

 

・中川善之助、山畠正男編
 新版注釈民法(24)親族(4)
 発行 株式会社有斐閣

 

 

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