支払督促手続
1. 手続の概要
督促手続においては,債権者の金銭等の代替物を給付の目的物とする請求について,債権者の一方的申立により,その主張の審理の審査をすることなく,裁判所書記官が支払督促を発する。
支払督促正本は債務者に送達されてから2週間以内に債務者から督促異議の申出がなければ,裁判所書記官は債権者の申立により支払督促に仮執行宣言を付する。
債権者はその仮執行宣言付支払督促正本とその債務者に対する送達証明書により執行文の付与を受けることなく,その債務者に対して強制執行の申立ができる。
そして仮執行宣言付支払督促正本は債務者に送達されてから2週間以内に債務者から督促異議の申出がなければ支払督促が確定し,確定判決と同一の効力を有することになる。
支払督促に不服のある債務者が事件を通常訴訟へ移行させる方法を督促異議という。(民事訴訟法386条2項,393条)
適法な督促異議申立によって督促異議があった請求は,事物管轄の規定に従って,支払督促申立時に,訴額が140万円以下の時は支払督促を発した簡易裁判所に,訴額が140万円を超えるときはその簡易裁判所の所在地を管轄する地方裁判所にそれぞれ訴えの提起があったものとみなされる。
適法な督促異議申立によって,訴えの提起があったものとみなされると事件は原則として通常訴訟手続に移行する。
2. 管 轄
- ア) 債務者の普通裁判籍を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官に対して申立をすることができる。(民事訴訟法383条1項,4条)
- イ)
- 1. 事務所または営業所を有する債務者に対する請求で,その事務所または営業所における業務に関するものについては,当該事務所または営業所の所在地を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官に対しても(民事訴訟法383条2項1号)
- 2. 手形または小切手による金銭及びこれに附帯する請求については,手形または小切手の支払地を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官に対しても(民事訴訟法383条2項2号)それぞれ申立ができるものとされた。
- 新法383条の規定は,旧法431条の規定について,その内容につき実質的な変更を加えずに,規定を整備したものである。
a 支払督促は,
b 実務上の不都合
義務履行地として(民事訴訟法5条1項1号)債権者所在地で訴訟をやるのが債権者にとって有利である。
支払督促に対し督促異議が出されれば前述の通り債務者の普通裁判籍等を管轄する簡易裁判所又は地方裁判所が管轄裁判所となり,特に債務者所在地が遠方である場合などは大変不便であり,時間的経済的負担も大きい。
参考文献
株式会社民事法研究会発行「書式 支払督促の実務 全訂四版」