外国籍の人と婚姻した日本人がその外国籍の配偶者と離婚する場合の、国際裁判管轄と離婚の準拠法(渉外離婚)(国際離婚)
2017(平成29)年10月24日
2021(令和3)年1月16日改訂
2021(令和3)年1月16日改訂
外国籍の人と婚姻した日本人がその外国籍の配偶者と離婚する場合の、国際裁判管轄と離婚の準拠法について考察します。
第一 離婚における国際裁判管轄
離婚に関する国際裁判管轄については、人事訴訟法第3条の2に概ね以下の規定があります。
人事に関する訴えは,次のいずれかに該当するときは、日本の裁判所に提起することが出きます。
- ①身分関係の当事者の一方に対する訴えであって、当該当事者の住所が日本国内にあるとき
- ②身分関係の当事者の双方に対する訴えであって、その一方又は双方の住所が日本国内にあるとき
- ③身分関係の当事者の一方からの訴えであって,他の一方がその死亡の時に日本国内に住所を有していたとき
- ④身分関係の当事者の双方が死亡し、その一方又は双方がその死亡の時に日本国内に住所を有していたとき
- ⑤身分関係の当事者の双方が日本の国籍を有するとき
- ⑥日本国内に住所がある身分関係の当事者の一方からの訴えであって、当該身分関係の当事者が最後の共通の住所を日本国内に有していたとき
- ⑦日本国内に住所がある身分関係の当事者の一方からの訴えであって、他の一方が行方不明であるとき,他の一方の住所がある国においてされた当該訴えに係る身分関係と同一の身分関係についての訴えに係る確定した判決が日本国で効力を有しないときその他の日本の裁判所が審理及び裁判をすることが当事者間の衡平を図り、又は適正かつ迅速な審理の実現を確保することとなる特別の事情があると認められるとき
第二 離婚の準拠法
「法の適用に関する通則法」第27条及び第25条は、
- ①夫婦の本国法が同一であるときはその共通本国法による
- ②共通本国法がない場合において夫婦の常居所地法が同一であるときはその共通常居所地法による
- ③共通本国法も共通常居所地法もないときは夫婦に最も密接な関係にある地の法律(密接関連地法)による
- ④夫婦の一方が日本に常居所を有する日本人であるときは、日本の法律による
とされています。
上記の②と④に規定されている「常居所」とは、
単なる居所とは異なり、人が相当長期間にわたって居住する場所を意味します。
以上により離婚を希望する日本人が日本に常居所を有する場合は、離婚の準拠法は日本法になります。
以下、準拠法が日本法である場合について考察します。
日本法の離婚の方式には、
- ①協議離婚
- ②調停離婚
- ③審判離婚
- ④裁判上の離婚
の4つの方式があります。
このことは、
でご説明しています。
そして、日本法が準拠法であれば外国籍の配偶者と協議離婚をすることも認められます。
しかし、外国籍の配偶者の本国法が裁判上の離婚しか認めていない場合は、そのことを理由として最初から裁判上の離婚を求めて離婚訴訟を提起するのが実務上は無難であると考えます。
なお、日本法では、裁判上の離婚を求めて離婚訴訟を提起する前提として予め離婚の調停をしなければならないとする調停前置主義がとられていますが、上記の外国籍の配偶者の本国法が裁判上の離婚しか認めていないことを理由にすれば離婚調停をしていなくても離婚訴訟は受け付けられると思います。
参考文献
外国人の法律相談Q&A 第三次改訂版
株式会社ぎょうせい発行
渉外離婚の実務
ー離婚事件の基礎からハーグ条約までー
日本加除出版株式会社発行
Q&A渉外戸籍と国際私法
日本加除出版株式会社発行
外国人のための日本のくらしと法律Q&A101
株式会社エディックス発行