会社法に規定する「指名委員会等設置会社」では必ず置かなければならない「執行役」と、会社法には規定のない「執行役員」との違い
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第1 法定設置機関であるか否か
1 会社法に規定する「執行役」は、会社法に規定する「指名委員会等設置会社」では必ず置かなければならない法定の機関です。
2 一方、「執行役員」は、会社法に規定はなく、各会社が任意につけている名称で、法的には会社の機関ではありません。
第2 「執行役」について
1 会社法に規定する「指名委員会等設置会社」では、
- ①指名委員会
- ②監査委員会
- ③報酬委員会
- ④執行役
を置かなければなりません。(会社法(以下「法」と書きます。)400条、402条)
また、取締役会と会計監査人を置く必要があります。
(法327条)
従って、「執行役」は、「指名委員会等設置会社」では必ず置かなければならない機関です。
2 選任
「執行役」は、取締役会の決議で1人または2人以上が選任されます。
3 資格
「執行役」は、使用人(会社の従業員)でもなれます。
また、「執行役」は、取締役が兼ねることもできます。
しかし、「執行役」が、監査委員又は会計参与を兼ねることはできません。(法400条4項・333条3項1号)
また、親会社の監査役・監査委員・会計参与を兼任できません。(法400条4項・333条3項・335条2項)
4 任期
「執行役」の任期は、選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会終了後最初に召集される取締役会の終結のときまでです。(法402条7項)
5 登記
「代表執行役」は、氏名・住所が登記されます。
6 会社との契約・責任
「執行役」は、会社との関係で委任に関する規定に従いますので(法402条3項)、会社に対して取締役と同様に善管注意義務及び忠実義務を負担し、業務執行に関して過失があった場合は会社に対して債務不履行による損害賠償責任を負います。
第3「執行役員」について
1 「執行役員」は、業務執行に関して相当の裁量権限を有するものの一種の重要な使用人(法362条4項3号)です。
また、「執行役員」は、取締役の場合もあります。
2 「執行役員」と会社との契約は、雇用契約か委任契約またはその混合契約と考えられます。
いずれにしても、「執行役員」は会社に対して善管注意義務を負います。
3 選任
通常は取締役会によって選任され、代表取締役の指揮監督のもとで、分担をうけた特定の業務についてその執行を行います。
4 資格
特に制限はなく、取締役からでも、使用人(会社の従業員)からでも選任できます。
5 任期
会社法に規定のない「執行役員」について、会社法には任期の定めはありません。
各会社で任意に定めること、また定めないこともできます。
6 登記はされません。
「執行役員」は、選任されても商業登記に登記されません。
7 責任
雇用契約ないし委任契約に基づき、「執行役員」に業務執行について過失があれば、善管注意義務違反の債務不履行となり損害賠償責任を会社に対して負います。
8 「執行役員」を選任する理由
取締役の減員をはかることが理由の1つです。
使用人兼務取締役の取締役の兼務をはずし、「執行役員」として業務執行に専念させるねらいもあります。
取締役でない「執行役員」は、取締役会に出席する権利も義務も当然ありません。
経営の意思決定を取締役会が行い、「執行役員」は取締役会の意思決定に従い業務執行に専念できます。
参考文献
- ・江頭憲治郎著 株式会社法第6版 有斐閣発行
- ・ 神田秀樹著 会社法第18版 弘文堂発行
- ・中津晴弘・中島茂共著 会社役員の職務と個人責任
新日本法規出版株式会社発行 - ・秋山洋他共著 使用人兼務取締役をめぐる法律と税務
新日本法規出版株式会社発行