個人保証の制限(保護)-その1
事業に係る債務について、個人保証人を保護するための「保証の方式制限」規定、及び極度額の定めのない個人の根保証契約は無効になること等について
2017(平成29)年4月20日
2019(令和元)年9月24日改訂
2019(令和元)年12月16日改訂
2020(令和2)年2月19日改訂
2022(令和4)年2月4日改訂
2019(令和元)年9月24日改訂
2019(令和元)年12月16日改訂
2020(令和2)年2月19日改訂
2022(令和4)年2月4日改訂
民法が改正され、2020年3月1日からは個人保証保護のための公正証書による保証意思確認手続に関する規定が施行され、2020年4月1日からは平成29年改正民法(債権法)が施行されました。
- 第1 事業に係る債務に関する個人保証保護のための公正証書による保証意思の確認手続について説明します。
- 1 この規定は個人保証人の保護の規定ですので、この規定は保証人が法人の場合は適用されません。(改正民法第465条の6第3項、第465条の8第2項)
- 2 改正民法では、事業のために負担する「貸金等債務」(=「金銭の貸渡し又は手形の割引を受けることによって負担する債務」をいいます。以下同じ。)を主たる債務としてそれを保証する個人の保証契約、または、主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる債務について個人が根保証契約を締結する場合は、その保証契約または根保証契約の締結日前1ヶ月以内に公証人が作成した公正証書で、保証人になろうとする個人が保証債務を履行する意思を表示することが必要になります。(改正民法第456条の6、第465条の7、第465条の8)
- 3 もし、個人の保証人が保証債務を履行する意思を表示する公正証書の作成がなされないで保証契約または根保証契約が締結された場合、その保証契約または根保証契約は無効となります。(改正民法第465条の6第1項)
- 4 この規定は、事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約、または主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約の保証人の主たる債務者に対する求償権についての個人保証(求償保証)に関しても準用されています。(改正民法第465条の8)
- 5 従って、事業者が銀行などから事業のために事業資金を借り入れる場合に、信用保証協会などが保証人になり、そして保証人になった信用保証協会などの主たる債務者である事業者に対する求償権について個人が保証契約または根保証契約をする場合も、その保証契約または根保証契約の締結日前1ヶ月以内に公証人が作成した公正証書で、保証人になろうとする個人が保証債務を履行する意思を表示することが必要になります。(改正民法第465条の8)
- 6 この場合も、個人の保証人が保証債務を履行する意思を表示する公正証書の作成がなされないで個人の保証契約または根保証契約が締結されたら、その保証契約または根保証契約は無効となります。 (改正民法第465条の8第1項、第465条の6第1項)
- 7 なお、この改正民法第465条の6第1項の規定は、事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約、または根保証契約に限定していますので、事業のため以外の例えば居住用のアパートの賃貸借契約の借主の債務を主たる債務とする個人保証契約には適用されません。
従って、この場合は、公正証書による保証意思の表示がなくても個人保証契約は有効です。 - 8 また、事業のために負担する貸金等債務を主たる債務としてそれを保証する個人の保証人の保証契約、または主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる債務について個人が根保証契約を締結する場合に、個人が保証契約または根保証契約の締結日前1ヶ月以内に公証人が作成した公正証書で、保証人になろうとする個人が保証債務を履行する意思を表示することが必要になり、その方式を守らなかった保証契約または根保証契約は無効とする改正民法第465条の6第1項の規定の適用については例外規定があります。 (改正民法第465条の9)
- 9 その適用の例外の場合は、以下の通りです。(改正民法第465条の9)
- ① 主たる債務者が法人である場合の、その理事、取締役、執行役、またはそれらに準ずる者が個人で保証契約または根保証契約を締結する場合(同条第1号)
- ② 主たる債務者が法人である場合の、主たる債務者である法人の総株主の議決権の過半数を有する者が個人で保証契約または根保証契約を締結する場合等(同条第2号)
- ③ 主たる債務者が個人の場合に、主たる債務者である個人と共同して事業を行う者、または主たる債務者である個人が行う事業に現に従事している主たる債務者の配偶者が個人で保証契約または根保証契約を締結する場合(同条第3号)
- 10 以上の場合は、個人が保証契約または根保証契約を締結する日前1ヶ月以内に公証人が作成する公正証書で、保証人になろうとする個人が保証債務を履行する意思を表示していなかったとしても、その保証契約または根保証契約は有効です。
- 11 なお、上記第9項③に関連して、主たる債務者が法人の場合は、主たる債務者である法人と共同して事業を行う者、または主たる債務者である法人が行う事業に現に従事している主たる債務者である法人の代表者の配偶者が保証契約または根保証契約を締結する場合には、保証契約または根保証契約を締結する日前1ヶ月以内に公証人が作成した公正証書で、保証人になろうとする個人が保証債務を履行する意思を表示していなかった場合、その保証契約または根保証契約は無効になります。(改正民法第465条の6第1項)
- 12 また、民法改正法平成29年6月2日法律第44号附則第21条第1項で、この改正民法は2020年4月1日に施行されますが、施行日前の2020年3月31日以前に締結された保証契約に係る保証債務については従前の例によるとされています。
- 第2 個人が根保証契約を締結する場合で、極度額の定めがない場合は,根保証契約は無効となります。(改正民法第465条の2第2項)
- 1 個人(会社等の法人でない者をいいます。)が根保証契約(一定の範囲に属する不特定の債務を保証する契約を「根保証契約」といいます。)を締結する場合には保証人が支払の責任を負う金額の上限となる「極度額」を定めなければ、その個人根保証契約は無効となります。
- 2 その極度額とは、主たる債務の元本,主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのもの、及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額の全部に係る極度額を言い、その極度額の限度で根保証契約をした個人根保証人はその履行責任を負います。(改正民法465条の2第1項)
- 3 個人根保証契約の元本の確定事由
個人が保証人になる根保証契約については、次の事情(元本確定事由)があったときは、その後に発生する主債務は保証の対象外になります。 - ① 一般原則
- ア 債権者が保証人の財産について、金銭の支払を目的とする債権についての強制執行や担保権の実行を申し立てたとき
- イ 保証人が破産手続開始の決定を受けたとき
- ウ 主たる債務者又は保証人が死亡したとき
(改正民法465条の4第1項) - ② 個人貸金等根保証契約に関しての元本の確定事由
改正民法465条の3に定める個人貸金等根保証契約における主たる債務の元本は上記①以外に次に掲げる場合にも確定します。 - ア 債権者が、主たる債務者の財産について、金銭の支払を目的とする債権についての強制執行又は担保権の実行を申し立てたとき
- イ 主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき
(改正民法465条の4第2項)
- 4 2020年3月31日以前に締結された保証契約
民法改正法平成29年6月2日法律第44号附則第21条第1項で、この改正民法は2020年4月1日に施行されますが、施行日前の2020年3月31日以前に締結された保証契約に係る保証債務については従前の例によるとされています。