従業員にお金を貸したときに,月々の従業員の給料から天引きで返済してもらう方法
2015(平成27)年7月17日
従業員に頼まれて会社が従業員にお金を貸し付けることがあります。
この様な場合通常は一括返済の約束はせず,従業員に対して支給する月々の給料やボーナスの中から天引きして分割して支払って貰うと約束することが多いと思います。
この様な場合に問題になってくるのが, 第1に,労働基準法17条の「前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない。」という規定です。
通常の社内貸付制度は,いわゆる「前借金」ではなく,労働することを条件としていないので同条違反にはならないと考えられます。
第2に問題になるのが,労働基準法24条1項に定める,使用者は原則として労働者に対して賃金全額を支払わなければならず,賃金の一部を控除して支払うことは出来ないという「全額払いの原則」です。
この「全額払いの原則」の「例外」として以下の3つの場合があります。
- ①給与所得税の源泉徴収,社会保険料の控除,財形貯蓄金の控除等法令に別段の定めがある場合です。
- ②として,当該事業所の労働者の過半数で組織する労働組合があるときは,その労働組合,労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による労働協約または労使協定がある場合,使用者が労働者に対しての賃金の一部を貸付金の返済として天引きして返済してもらうことが出来ます。
この労働協約または労使協定は労働基準監督署に届け出る必要はないようです。
- ③として,前記②の労使協定が存在しない場合でも,使用者と労働者が個別に給料から天引きして返済することに合意して,かつ,その合意が労働者の自由な意思に基づくものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するといえる場合にも給料から天引きして返済を受けることが出来ます。
従って,この様な場合使用者は労働者に充分に説明を行い,考える時間的余裕を与え,労働者の文書による同意を得た上で毎月の返済について賃金から天引きすることになります。
但し,出来れば前記②の労働協約または労使協定を締結した上で給料から天引きして返済を受ける方が法的安定性の観点からはベターです。