離婚前における子供の引き渡し
2014(平成26)年4月2日
- 第1 子供の引き渡しを求める方法
夫婦間に子供がいる場合、離婚前に子供の争奪の争いが起きる場合があります。
配偶者に子供を奪われた場合や、子供を置いたまま家を追い出された場合などに、子供を自分の手元に取り戻す子供の引き渡し手続きには、以下の方法があります。
-
1 家事審判ないし家事調停と審判前の保全処分
家庭裁判所に、家事事件手続法に基づいて、子供の監護(子供を現実に養育すること)に関する事件として子供の引き渡しを請求する「審判」申し立てをして、その審判を本案とする審判前の保全処分として子供の引き渡しを求める仮処分を申し立てることが出来ます。
また、家庭裁判所に子供の監護に関して子供の引き渡しを求める「調停」申し立てをして、その調停を本案とする審判前の保全処分、又は、その調停前の処分の仮の措置として、子供の引き渡しを求めることも出来ます。 -
2 離婚訴訟と保全処分
家庭裁判所に、人事訴訟法に基づいて離婚訴訟等を提起し、その付帯請求として子供の監護に関する処分である子供の引き渡しを請求することが出来ます。
この離婚訴訟を本案とする保全処分として子供の引き渡しの仮処分を申し立てることが出来ます。 -
3 人身保護法による請求
地方裁判所に、人身保護法に基づいて、子供の引き渡しを請求することが出来ます。
-
4 民事訴訟法による請求
民法上明文の規定はないですが、親権または監護権に基づく妨害排除請求として、子供の引き渡しを請求することが出来ます。 - 5 子供の連れ去りが略取行為と評価できる場合には、未成年者略取罪による告訴を行い、警察に介入を求める方法も考えられます。
-
第2 子供の引き渡しを求める各方法の検討
-
1 現在の実務では、家事調停ないし家事審判を申し立て、その審判前の保全処分として子供の引き渡しを求める仮処分を申し立てるのが一次的かと思います。
-
2 以前は人身保護法に基づく子供の引き渡し請求をする方法が多用されていましたが、最高裁判所が人身保護の補充性を厳格に解釈する判例を出したことから、従前ほどの利用はされなくなりました。
- 3 離婚訴訟と保全処分や、民事訴訟法による保全処分は、それほど一般的には利用されていないものと思われます。