休日労働における振替休日と割増賃金
「休日の振替え」とは,法定休日(労基法35条)とされている日を労働日に変更し,その代わりに他の労働日を休日に変更することをいいます。振替には,あらかじめ振替え休日の日を指定したうえで特定の休日を労働日とする事前の振替えと,休日に労働をさせた後に代休日を与える事後の振替え(いわゆる「代休」の制度)があります。
「事前の休日振替え」には,労働協約や就業規則等で業務の必要により就業規則で定める休日を他の日に振り替えることができる規定が存在し,それに従って行われることではじめて有効となります。
このような規定がない場合は,労働者の個別的同意が必要となります。
また,事前の休日振替えは,労働基準法の1週1回の法定休日(変形週休制をとっている事業ではそれに従った休日)の要件を満たさなければなりません。
そして週休制の要件を満たすかぎりは本来の休日における労働は労働日の労働となり,それについては労働法上の休日労働のための労使協定や,割増賃金を要しません。
ただし,労働日となった休日における労働が当該週において40時間をこえて時間外労働になった場合は,労使協定等の要件を満たす必要がありますし,割増賃金を支払う必要があります。
「事後の休日振替え」も,労働契約上の根拠が必要で労働協約または就業規則の根拠規定に従って行うか,労働者の個別的同意が必要です。
また,所定休日に労働した労働者に対して,使用者がその代替措置として,休日以外の労働日の就労義務を免除して休日を与えたとしても,休日の事前の振替と異なり,現に行われた所定休日の労働が,事後的に休日を与えることによって休日労働でなくなるわけではないことから,それが労働基準法の要請する休日であった場合には,同法上の休日労働の要件を満たすことが必要で,所定休日労働に対する割増賃金分の支払は免がれることは出来ません。
なお,代休日を与えることは労働基準法上は要求されていませんので,代休日を与えるにしても,その定め方については週休制の要件は適用されません。