共有不動産の管理・処分及び共有物分割
2020(令和2)2月9日改訂
1 不動産の共有とは,複数人が同一の不動産を共同所有している形態をいいます。
共有者の共有持分は何分の1という割合で表示されます。
共有持分が明らかでない場合は,各共有者の共有持分は等しいものと推定されます。(民法250条)
2 共有不動産を共有者の誰が使用するかについては,管理行為に該当するので,共有不動産の使用収益に関することとして共有持分の価格に従い,その過半数で決定します。(民法252条本文)
3 共有物の変更
各共有者は,他の共有者の同意を得なければ,共有物に変更を加えることはできません。(民法251条)
この変更には,共有物の物理的損傷や改変(程度にもよりますが改修工事も含まれると思います。)が含まれます。
4 共有不動産の地目を農地から宅地に変更することや,共有不動産について民法602条所定の短期賃貸借を越える期間の賃貸借契約をすることや,共有不動産を売却することは,処分行為なので,共有者全員の同意が必要です。(民法251条)
5 なお,共有不動産を賃貸している場合にその賃貸借契約を解除する行為は,共有物の管理行為に該当し,共有持分の過半数で決定出来ます。ただ,解除権の行使は共有者全員で行う必要があります。(民法252条本文,544条1項)
6 また,共有不動産が第三者に不法に占拠されている場合にその不法占拠を排除し共有不動産の占有を回復する行為は,保存行為と考えられ,各共有者が単独で権利行使出来ます。(民法252条但書)
7 共有不動産の分割(共有物分割)について(民法256条)
各共有者はいつでも共有物の分割請求をすることが出来ます。しかし,5年以内の期間に限り不分割の特約を結ぶことが出来,この期間は同じく5年を超えない限りで更新することが出来ます。
共有物分割の方法は,協議による方法と裁判による方法があり,協議による分割が原則で,協議が整わない場合に裁判による分割を求めることが出来ます。(民法258条1項)
裁判による共有物分割の場合は,現物分割が原則であり,それが不可能な場合や,分割によって著しく共有物の価格を減少させるおそれがある場合に,競売による分割の方法がとられることとなります。(民法258条2項)
そして,判例は,共有者の一部の者がその余の共有者にその持分に相当する代償金を支払うことによって共有物の全部について所有権を取得する全面的価額賠償の方法による共有物分割を認めるべき特段の事情がある場合に全面的価額賠償の方法による共有物分割を認めています。
なお,共有者が遺産を共有している場合は,各共有者(相続人)は遺産分割の方法によってしか共有物分割を求めることが出来ません。(民法906条以下)