村山市の甑岳(こしきだけ)登山と3つのトラブル
今年の10月に山形県村山市にある甑岳(こしきだけ)に登った際,3つのトラブルに遭ったことを書きます。
参考文献は,山と渓谷社刊,「新・分県登山ガイド5 山形県の山」(以下「山形県の山」という。)と同社刊の上村信太郎著「山でピンチになったらー思わぬ危機 防げる危険」(以下「山でピンチ」という。)です。
第1 甑岳(こしきだけ)の概要
甑岳は,山形県村山市の東側,日本一のバラ公園で有名な東沢公園の背後にそびえる標高1015,5メートルの堂々たる風格のある山です。
甑(こしき)とは,広辞苑に,「米などを蒸すために用いる器。瓦製で,形は円く,底に蒸気を通ずる穴がある。のちの蒸籠(せいろう)にあたる。」とあります。
横に広いどっしりした感じの威厳のある山です。
国道13号線バイパスにある「道の駅村山」の駐車場から見ると山容がよく分かります。
甑岳では毎年5月頃に村山市民登山が行われ,小学生から大人まで大勢の村山市民が参加するとのことです。
私が登った当日は,朝方は濃い霧が出ましたが,太陽が昇る頃には霧が晴れて秋晴れの快晴で素晴らしく良い天気でした。
「道の駅村山」から見た甑岳
第2 甑岳への道順と所要時間
甑岳へは,村山駅からまっすぐ東に東沢公園に向い進むと,東沢公園手前の右手に甑岳の案内板がありますので,そこから右に入って林道を終点まで登っていきます。
「山形県の山」によれば,登山の標準所要時間は,登山口から東根側からの登山道との合流点まで1時間20分,合流点から山頂広場まで40分の合計2時間とのことです。
因(ちなみ)に,山頂広場は甑岳の本来の山頂ではなく,本来の山頂は山頂広場から10分歩いた稜線上にあるとのことです。
ただここは林になっており,見晴らしは良くないとのことです。
山頂広場は結構広い芝生の広場になっていて展望がきき,東側の宮城県側の山々が,南側の東根市や天童市や山形市方面の市街や山々が,西側の村山市街,葉山,月山や朝日連峰が見え,眺望が素晴らしいところです。
また,山頂広場には,郷土の探検家最上徳内の碑があります。
甑岳からの展望
頂上広場にある最上徳内の碑
第3 3つのトラブル
今回の登山で遭った3つのトラブルとは,1つ目が駐車場のトラブル,2つ目が熊のトラブル,3つ目が登山靴の底が剥(は)がれてしまったトラブルです。
1 駐車場のトラブル
甑岳への登山口は,林道の終点にありますが,その林道は両脇が杉林や沢の大変狭い林道で,車のすれ違いは全くできません。
尚且(なおか)つ,舗装はされておらず道路中央付近に石が剥(む)き出しになっていて結構凸凹の山岳道路です。
私は,普通乗用自動車で行ったので,自動車の腹を道路の石に擦(こす)り付けないよう慎重に運転しましたが,たまにガリガリと自動車の腹を擦(す)ってしまいました。
そして,途中から急カーブと急勾配になったので,普通乗用自動車でこの先本当に行けるか不安になり,また,どこが林道の終点なのかわからず,途中の道の脇の車1台がやっと駐車できるような杉林の間の草原に車を停めました。
車から登山靴を出して履き(この登山靴が第3のトラブルのもとです。),リュックを背負い林道を歩き始めました。
そうしたら,林道終点の登山道入口の小さな丸太橋まで10分以上歩かなければなりませんでした。
その登山道入口の丸太橋のすぐ近くに車1台が駐車できるスペースがあり,また,その少し手前に車4台位駐車できる駐車場がありました。
しかし,登山道入口まで普通乗用自動車で凸凹道を登ってくるのは,車が可哀想です。
私の友人の登山のベテランのI氏は,車が傷つくのを避けるため,東沢公園の広い駐車場に車を停めて,そこから甑岳登山道入口まで約1時間林道を登ってくるとのことでした。
皆さんがもし甑岳に登られるのなら,登山道入口まで車高の高いRV車に乗ってこられることをお奨めします。
また,駐車場はほんの数台分しかないので,出来るだけ早く出発されるのがよいと思います。
2 熊とのトラブル
あやうく熊と接近遭遇しそうになりました。
今回甑岳に登る数日前に甑岳に登ることを村山市内に住んでいる知人に話したら,「熊が出るので注意してくださいよ。」と注意されました。
しかし,その日から登山の日まで山形新聞を見ても甑岳で熊が出たとのニュースもなかったことから,少し安心して登りはじめましたが,念のため熊除けの鈴を2個リュックに下げて賑やかに音をたてながら登りました。
私が登り始めたのは午前8時30分で,他の登山者は誰もいなかったのです。
熊が出ると言われていたものですから,一人で心細い出発でした。
登山道入口から登って1時間くらいのところで,東根側からの登山道との合流点手前に山栗の木が沢山生えている「栗林」という地名のところがあります。
そこは,登山道の両側に栗の木が林立していて,10月ですから栗が実り栗のいがが登山道に沢山落ちていました。
そして,落ちている栗のいがの中身の栗はほとんど山の動物に食べられてなくなっていました。
ところが,そのうち登山道に落ちている栗のいがの中に栗が沢山残っている場所に来ました。
そうしたら,栗のいがが沢山落ちている登山道の真中に,人間のものの4倍くらいも太い巨大な真新しい排泄物がとぐろを巻いて鎮座していました。
これを見て私は,ぞっとしました。
この排泄物は,間違いなく熊のものなのです。
そして,前にも後ろにも私以外に登山者は誰もいませんでした。
私は急いで周りを見回しましたが,近くに熊はいませんでした。
しかし,熊がすぐ近くのどこか木の陰とかに隠れているかも知れないと思い,急いでその場所を離れることにしました。
「山でピンチ」によれば,熊に遭(あ)わないようにするために,鈴や携帯ラジオで音を出して熊に知らせる等の方法と,出会ってしまったときの対処法として,あわてない,走って逃げない,大声で威嚇する,熊撃退スプレーを浴びせる等のことが書いてあります。
しかし,熊に出会わないことが一番です。
それまでは,鈴だけを鳴らしていましたが,急いで携帯ラジオを取り出してボリュームを最大にしてラジオをかけながら,急いでその場所を通過しました。
3 登山靴の底が剥(は)がれたトラブル
甑岳の山頂広場に着いても,山頂広場には私以外誰もいませんでした。
山頂広場の眺望は前述のように素晴らしいパノラマで,それを眺めながらマグカップに紅茶のティーバッグを入れ,持参したポットからお湯を注いで熱い紅茶をゆっくり飲みました。
10時過ぎになると,東根のほうの登山口から登ってきた数名の中学生のグループがやってきました。
山頂広場でゆっくり休んで10時45分頃に元来た道を下り始めました。
山頂広場の手前の徳内坂登り口のところまで降りると,沢山の登山者が下から登って来ました。
甑岳山頂手前の「徳内坂」登り口
その人達とすれ違い,また下り始めたら私の履いている登山靴がパタパタと音がするようになりました。
それでおかしいと思い,止まって登山靴の底をみたら,両方の靴の底に貼ってあるゴム底が半分剥(は)がれてパタパタ音を立てていたのです。
それを見て私は慌(あわ)てました。
しかし,ハッと思いだしたことがありました。
以前山登りのベテランのI氏からアドバイスを受けた,ガムテープをある程度の長さに切り取って巻いて持っていけば,靴の底が剥(は)がれたときに,その持参したガムテープを靴からゴム底にかけてぐるぐる巻いて応急手当が出来るということでした。
幸い私はそのアドバイスを聞いてからすぐにガムテープを巻いたものをウエストバッグに入れておいたので,それ
を取り出して両方の靴のつま先付近と土踏まず付近の底と靴の甲(こう)にかけてぐるぐる巻きました。
それで,1時間くらい登山道を下り何とか登山口近くまでゴム底が靴から剥がれませんでした。
しかし,登山口近くでガムテープの地面に接する底の部分がボロボロになり切れてしまい,ゴム底が登山靴から剥(は)がれてしまいました。
登山靴のゴム底が剥(は)がれても,その上にもう一枚ツルツルのゴム底が登山靴にはあるので,裸足(はだし)で歩くような悲惨なことにはなりませんでした。
そのようなことで,ようやく駐車した車までたどり着きました。
すぐ登山靴を脱(ぬ)いでサンダルを履き,碁点温泉で汗をゆっくり流した後に,山形に戻り,まっすぐスポーツ店に行き,「マインドル」の登山靴を購入しました。
登山されるときは,ある程度の長さのガムテープを巻いて持参することをお奨めします。