弁護士法人武田法律事務所設立・登録顛末記
- 1. 2002(平成14)年4月1日に弁護士法人設立が解禁になった。
- 2. 平成14年4月2日(以下はすべて平成14年のことである。)に「弁護士法人武田法律事務所」の名称で現在の事務所の住所地に弁護士法人設立をした。
- 3. 弁護士法人設立登記だけではまだ手続が不十分で,所属弁護士会及び日本弁護士連合会に弁護士法人成立の届出をする必要がある。
- 4. 「弁護士法人武田法律事務所」の社員は私1名である。
- 5. 「弁護士法人武田法律事務所」の出資金は1000万円にした。
- 6. 銀行口座は弁護士法人設立後速やかに弁護士法人名義の銀行口座を開設した。
- 7. 弁護士法人を設立したことから,顧問企業に対して,従来の私個人との法律顧問契約を弁護士法人との法律顧問契約に切り替えをお願いして,顧問企業と弁護士法人との法律顧問契約を締結した。
- 8. 弁護士法人設立により弁護士個人の立場は次の通り変容する。
- 9. 弁護士法人設立による事務局スタッフ関係の変化
- 1) これまで私個人が事務員を雇用してきたが,法人設立後は弁護士法人が事務員を雇用することになる。
- 2) それに伴い事務員の厚生年金・厚生保険等の雇用主の変更手続きが必要となる。
- 3) 弁護士法人に対する事務員の誓約書及び身元保証人の身元保証書を新たに提出してもらうことになる。
- 10. 賃貸借契約,リース契約の契約主体の変更
- 1) 事務所の賃貸借契約及びリース契約等弁護士個人が今まで契約主体となってきた賃貸借契約,リース契約等を弁護士法人が契約主体となる変更手続が必要となる場合がある。
- 11. 会費の増加
- 12. 以上述べた以外の行政機関等の届出が必要となる。
弁護士業界における規制緩和の一環と考えられる。
山形地方法務局に設立登記申請を4月2日になした。
私は弁護士とともに司法書士も登録しているので登記申請はある程度やっているので面倒ではなかったが,そうでない弁護士でも弁護士法人設立の手引き等を参照すれば,簡単に設立登記ができる。
設立登記するためには,まず定款の作成が必要だが,それは定款の雛型があり1番合ったものを使い住所や名称,資本金等を入れればできあがる。
その後公証人の認証が必要だが,そのときは弁護士法人の代表社員となる資格の証明書が必要となり,それを日弁連から発行してもらい公証人の認証時に提出する必要がある。
ちなみに,「弁護士法人武田法律事務所」の日弁連の届出番号は21番だった。
後で共同で法人を運営する弁護士がいれば,その時点で社員を増やすことができる。
加入する弁護士に出資してもらい増資するか,私が有する出資金の一部を譲渡するかの方法で加入してもらうことになろうか。
資本金が1000万円を超過すると,費用として計上できる接待交際費が減額されてしまうということもある。
そこでとりあえずは1000万円にした。
資本金1000万円は,今までの私個人で開設していた事務所の運転資金の預金口座から,新しく開設した法人名義の銀行口座に振り替え,また,事務所の運営のための設備等の資産を私個人から弁護士法人に移転した。
私個人で運営していた事務所の流動資産(上記の銀行預金,売掛金等)及び固定資産(事務所設備,事務機器等)を簿価で弁護士法人の資産に移転した。
弁護士法人に移転する資産と移転しないで弁護士個人にそのまま残す資産とを分ける作業が必要となる。
この作業は税理士など専門家と相談したほうがよいようである。
預り金の預金口座も私個人名義から弁護士法人名義に移し替えたが,弁護士法人が預り金返還債務も承継することから預り金口座の預金額と預り金返還債務が同額であり,預り金は資本金にはなり得ない。
しかし,従来の私個人名義の事務所の銀行口座にはしばらくの間顧問企業からの顧問料やその他の報酬や給料の振込みが継続してなされること,そして,引き去りでは電気,ガス等の公共料金の引き去り,また,個人の所得税や消費税等の公租公課の引き去りもあり,暫くは私個人名義の事務所の銀行口座と弁護士法人名義の銀行口座とを併用して使用していくことになる。
1年間位は併用することになると思う。
私が顧問企業に対し弁護士法人への契約切替のために弁護士法人設立の説明をしたら,関心を示してくれる顧問企業が多かった。
1) 厚生年金・厚生保険に加入できる。
これまで,事務所の事務員は厚生年金・厚生保険に加入していたが,弁護士本人は国民年金・国民健康保険に加入するしかなかった。
弁護士法人設立により,私個人も厚生年金・厚生保険に加入することが可能になった。
国民年金や国民健康保険より,厚生年金や厚生保険が福利厚生の面で保障が手厚いことは自明である。
弁護士個人が厚生年金や厚生保険に加入できることは有り難い。
2) 弁護士の所得は給料になる。
これまでは,事務所の売上から費用を差引いた残額が弁護士個人の所得として毎年12月31日に締て計上してきたが,弁護士法人になると,弁護士が弁護士法人から月々給料をいただくことになる。
私の弁護士法人からいただく給料月額は過去2年間の平均年間所得額を12で割った額にした。
もし弁護士法人の売上が減少して私個人に給料を支払うことにより弁護士法人が赤字になっても,その赤字は来期に繰越して経理処理できるので助かる。
弁護士法人設立により個人の金と法人の金を峻別することが必要となる。従来も事務所の費用と個人の支出を区別してきたが,弁護士個人が事業を行っていることからどうしても曖昧でどちらに属するか微妙な支出があった。
それが,弁護士法人に資産を移転し,報酬を弁護士法人の銀行口座に入金することによって弁護士個人と法人との資産並びに収入及び費用を峻別することがより明確にできるようになった。
弁護士法人が日弁連及び単位弁護士会に登録することにより,毎月の会費を弁護士個人の会費の他に法人として納入する必要がでてくる。
その額は合計月約3万円である。
主な行政機関は,税務署,地方税事務所,労働基準監督署,公共職業安定所,社会保険事務所である。
事務員の加入している中退金への届出も必要である。