フェヒナー(G.T.Fechner)の法則と音階の話3
音が聞こえるということは、空気の振動が耳(脳)を刺激するということです。音の高低は、振 動数が変化することによって決定されます。振動数が増えれば、音は高く聴こえますし、振動数 が小さくなれば音は低く聴こえます。つまり、「音程の感覚(y)」は「振動数(刺激x)」の関数で あるということです。 さて、平均率の12音階は、周波数(振動数)440Hz(1秒間に440回振動)の音を「ラ」として、 その振動数に2の12乗根(約1.06)を次々かけて得ることができます。ですから、振動数は等 間隔ではありません。しかし、われわれはそれが等間隔に音程が上昇している感じを受けま す。これはなぜでしょうか。平均率の「ドレミファ」が小学校以来学んで染み付いているからな のか、または本来人間に標準に備わっている感覚なのか・・・ では、ちょっと実験しましょう。次の表のように、12音階を、400Hzを出発点(ここを仮のドとし ます)にして、2種類作ってみました。1つは公比を2の12乗根(約1.06)とした等比数列、もう1 種類は、公差を100/3(約33.3)とした等差数列です。 2つのスケールを聞き比べてみてください。特に、目をつぶって音程が上がるにつれて階段 を昇っていくことをイメージしてみてください。どんな階段がイメージできるでしょうか。 <振動数が等比数列のスケール> <振動数が等差数列のスケール>
どうでしょうか。等差数列の方は、音程が高くなるにつれ、階段の高さが小さくなっていく(ログ の階段の)ような印象を持ちませんでしたか。 では、次は、等比数列と等差数列でそれぞれドレミファソラシドを聴いてみましょう。今度は2オ クターブの音程です。1オクターブ目と2オクターブ目の音階を注意して聴いてください。 <振動数が等比数列のドレミファ> <振動数が等差数列のドレミファ> 等比数列のほうは、1オクターブ目と、2オクターブ目は「相似」な音階である印象を持ったと思 います。一方、等差数列は、1オクターブ目の音階と2オクターブ目の音階の相似性が崩れてい ます。1オクターブ高くなると、ドの音は等比数列は1600Hzに対して、等差数列は1200Hzとなりま すから、大きな違いがでてくるのです。 例えば、「蛙の歌」の出だしを等比数列、等差数列で1オクターブ拡大したものと聞き比べてみ ましょう。 等比数列「蛙の歌」オクターブ1 等差数列「蛙の歌」オクターブ1 等比数列「蛙の歌」オクターブ2 等差数列「蛙の歌」オクターブ2 等比数列のものはオクターブ違っていても、同じメロディーであるということがわかります。つま り、相似性が確保されているのです。一方、等差数列は明らかに相似性が崩れて、違うメロディ ーになっています。 つまり、キーワードは「等比数列の自己相似性と、音階の自己相似性」 なのです。平均率で音階を作っておくと、任意の拡大縮小(つまり転調)に対して相似な音階が出 来上がるというわけです。一方、分数で音階を作った場合は転調ごとに違う音階を考えることが 必要になってくるので困るのです。 因みに音楽の世界では、音程の定義は次の様にされているようです。 振動数、f1、f2の2つの音程に対し、2つの音の間の間隔(音程の大きさ)を I(2/1)=1200×log2(f2/f1) (単位はセント) これによると、オクターブの違いが1200セントとなります。
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