ダニエル書 未来の予言部分

02:31 王よ、あなたは一つの大いなる像が、あなたの前に立っているのを見られました。
   その像は大きく、非常に光り輝いて、恐ろしい外観をもっていました。
02:32 その像の頭は純金、胸と両腕とは銀、腹と、ももとは青銅、
02:33 すねは鉄、足の一部は鉄、一部は粘土です。
02:34 あなたが見ておられたとき、一つの石が人手によらずに切り出されて、その像の鉄
   と粘土との足を撃ち、これを砕きました。
02:35 こうして鉄と、粘土と、青銅と、銀と、金とはみな共に砕けて、夏の打ち場のもみ
   がらのようになり、風に吹き払われて、あとかたもなくなりました。ところがその
   像を撃った石は、大きな山となって全地に満ちました。
02:36 これがその夢です。今わたしたちはその解き明かしを、王の前に申しあげましょう。
02:37 王よ、あなたは諸王の王であって、天の神はあなたに国と力と勢いと栄えとを賜い、
02:38 また人の子ら、野の獣、空の鳥はどこにいるものでも、皆これをあなたの手に与え
   て、ことごとく治めさせられました。あなたはあの金の頭です。
02:39 あなたの後にあなたに劣る一つの国が起ります。また第三に青銅の国が起って、全
   世界を治めるようになります。
02:40 第四の国は鉄のように強いでしょう。鉄はよくすべての物をこわし砕くからです。
   鉄がこれらをことごとく打ち砕くように、その国はこわし砕くでしょう。
02:41 あなたはその足と足の指を見られましたが、その一部は陶器師の粘土、一部は鉄で
   あったので、それは分裂した国をさします。しかしあなたが鉄と粘土との混じった
   のを見られたように、その国には鉄の強さがあるでしょう。
02:42 その足の指の一部は鉄、一部は粘土であったように、その国は一部は強く、一部は
   もろいでしょう。
02:43 あなたが鉄と粘土との混じったのを見られたように、それらは婚姻によって、互に
   混ざるでしょう。しかし鉄と粘土とは相混じらないように、かれとこれと相合する
   ことはありません。
02:44 それらの王たちの世に、天の神は一つの国を立てられます。これはいつまでも滅び
   ることがなく、その主権は他の民にわたされず、かえってこれらのもろもろの国を
   打ち破って滅ぼすでしょう。そしてこの国は立って永遠に至るのです。
02:45 一つの石が人手によらずに山から切り出され、その石が鉄と、青銅と、粘土と、銀
   と、金とを打ち砕いたのを、あなたが見られたのはこの事です。大いなる神がこの
   後に起るべきことを、王に知らされたのです。その夢はまことであって、この解き
   明かしは確かです」。

   説明)
     ネブカデネザルの夢は未来の世のもろもろの王国と、いつまでも滅びることが
     ない未来の神の王国を予告している。

       純金の頭       = バビロニア帝国
       銀の胸と両腕     = メデアとペルシャの帝国
       青銅の腹ともも    = マケドニヤ帝国
       鉄のすね       = ローマ帝国
       鉄と粘土の足とつま先 = ローマ帝国の崩壊後に起こるもろもろの王国
                    (ヨーロッパ諸国)
       一つの石       = 神によって立てられる神の王国

     ローマ帝国
       後にローマ帝国が分裂した。片方の長はローマにおり、もう片方の長はコ
       ンスタンチノープルにいた。この分裂した二つを象徴するのが鉄の両すね
       であった。やがてローマ帝国は、鉄や粘土の足と足指で表されるさらに小
       さい国々に分かれていった。この足は、鉄の国(ローマ帝国)が力を失っ
       た後に、この国から分かれて生じる国々を示している。あるものは強く、
       あるものは滅びる足指の10の王国である。鉄と粘土が混じったこの10の王
       国には、鉄のすねの力はない。鉄と粘土は強さと弱さの両方を表している。

     一つの石
       ヨーロッパの国々の世代になると、神は一つの国を立てる。
       末日聖徒イエス・キリスト教会は、神より数々の啓示を与えられた後、
       1830年に回復された。神によって立てられた王国であり、滅ぼされること
       も、取って代わられることもない。人手によらずに切り出され、大きな山
       となって全地を満たした、あの石である。

       *一般的なキリスト教会で言われている解釈
         再臨されるイエス・キリストであり、千年王国を樹立される。



07:01 バビロンの王ベルシャザルの元年に、ダニエルは床にあって夢を見、また悩中に幻
   を得たので、彼はその夢をしるして、その事の大意を述べた。
07:02 ダニエルは述べて言った、「わたしは夜の幻のうちに見た。見よ、天の四方からの
   風が大海をかきたてると、
07:03 四つの大きな獣が海からあがってきた。その形は、おのおの異なり、
07:04 第一のものは、ししのようで、わしの翼をもっていたが、わたしが見ていると、そ
   の翼は抜きとられ、また地から起されて、人のように二本の足で立たせられ、かつ
   人の心が与えられた。

   説明)
   ダニエルが見た獣は何を表していただろうか
     ここに述べられている獣は檸猛で忌むべき性格を備えた人々が住むこの世の王
     国を表している。彼らは人殺し、そして堕落した人間であり、人の肉を食した
     こともある、残忍な性格であった。しし、くま、ひょう、そのほか10の角を持
     つ獣などはこの世の王国を表すものである。実際のくまやししではなく、それ
     らの獣の姿や形を見たのである。

   4つの獣と歴史上の出来事の関連は何か
     17節に言われているとおり、4つの獣は「地に起らんとする四人の王」を表し
     ていた。

   第1の獣
     わしの翼を持つししのような第1の獣は、ネプカデネザルのバビロニヤ帝国を
     表していた。ししやわしは獣や鳥の王者である。2章の夢に出てきた金の頭も、
     それと同様に考えられる。金が様々な金属の中でも特に抜きんでたものであり、
     また頭が肢体の中で最も高い所にあるように、ししは百獣の王であり、わしは
     すべての鳥の上に君臨している。翼が抜き取られる(4節)のは、飛ぶ力、つ
     まり支配権、統治権を奪われることを表すと思われる。人の心が与えられたの
     は、明らかにネブカデネザルの狂気が静まることを指している(4:34-37)。

07:05 見よ、第二の獣は熊のようであった。これはそのからだの一方をあげ、その口の歯
   の間に、三本の肋骨をくわえていたが、これに向かって『起きあがって、多くの肉
   を食らえ』と言う声があった。

   説明)
   第2の獣
     2章の像の銀の胸と腕のように、メデア・ペルシャ帝国を表していた。古代中
     東の人々は、くまをししに次ぐ強い動物と考えていた。
     「からだの一方をあげ」るとは、獲物を襲うときに、くまが前足を上げる(後
     足で立つ)ことであろう。このようなメド・ペルシャのくまは二つの要素を持
     っている。メデア側は世界的な王国を立てた働きの後で休息し、かたやペルシ
     ャ側は、勃興した後で初めのよりも高く立ったばかりでなく、新たな略奪に備
     えてもいるのである。くまがくわえた肋骨と、「多くの肉」を食らうことは、
     その領土に加えられる狂暴な行為を意味している。
     三本の肋骨はペルシャがリティア、バビロン、エジプトを支配したことを表す。

07:06 その後わたしが見たのは、ひょうのような獣で、その背には鳥の翼が四つあった。
   またこの獣には四つの頭があり、主権が与えられた。

   説明)
   第3の獣
     第3の王国はアレキサンダー大王のギリシャ帝国に当たる。翼は、動いて影響
     を広める力を意味する。頭は、統治権または政権を意味する。ギリシャの王国
     はアレキサンダーの下で大いに発展し、世界の多くの地域をその傘下に収めた。

07:07 その後わたしが夜の幻のうちに見た第四の獣は、恐ろしい、ものすごい、非常に強
   いもので、大きな鉄の歯があり、食らい、かつ、かみ砕いて、その残りを足で踏み
   つけた。これは、その前に出たすべての獣と違って、十の角を持っていた。

   説明)
   第4の獣
     第4の獣は動物のようではなかった。しかし、それは非常に強くて恐ろしく、
     以前の国々の残りを粉砕した。それはローマ帝国と、この国が体現する悪の力
     である。10の角は、後にローマ帝国から分かれて生じる王国である。これは、
     ダニエル2章の大きな像の10の足指と同じである(23-24節)。

07:08 わたしが、その角を注意して見ていると、その中に、また一つの小さい角が出てき
   たが、この小さい角のために、さきの角のうち三つがその根から抜け落ちた。見よ、
   この小さい角には、人の目のような目があり、また大きな事を語る口があった。

   説明)
     それぞれの獣は上記の国々を意味して語られたであろうが、恐らく政治的支配
     だけではなく、国々の支配から世界に広まっていく諸悪を表現するものとも考
     えられる。この示現は特に「小さい角」を考えてみても、純粋に政治的なもの
     として考えるべきではない。この象徴は特定の人や国を意味するとは考えられ
     ず、ダニエルが見た(21-22,25節)ように、「海から上って来て、聖徒に戦い
     をいどむ」(黙示13:1,7)というヨハネが見た獣と同じようである。小さい角
     は、ローマ帝国時代の後に起きる有名な反キリスト教勢力を意味し、それはロ
     ーマ帝国以後に言われた10の王国とは別のものである。ダニエルは、この角が
     聖徒たちと戦ってキリストの再臨のときまで妨害する力を持つと言った(20-27
     節)。

     この巨大な悪の勢力とその元である獣について、ダニエルが見た、恐ろしい、
     大きなことを語る口を持った最後の獣(7,8節)は、わたしたちの持つ近代の
     聖典の「大きな忌まわしい教会」にほかならないと言ってよいだろうか。ダニ
     エルが「その獣は殺され、そのからだはそこなわれて、燃える火に投げ入れら
     れた」(11節)のを見た。再臨に先立って放たれる破壊的な力である悪の勢力
     は、明らかに、教義と聖約29章で言われ、預言者エゼキエルが証している力と
     同じものである(教義と聖約29:21;エゼキエル38:14-23)。モルモン書も、滅
     びに遭うこの悪の勢力について詳細に語っている(1ニーファイ22:13-18)。
     たとえこの「大きな忌まわしい教会」が、ダニエルが見た強い獣で表される勢
     力だとしても、その細部や、それが滅びの前にどの程度の領土を持つかは、現
     在のわたしたちにはよく分からない。

07:09 わたしが見ていると、もろもろのみ座が設けられて、日の老いたる者が座しておら
   れた。その衣は雪のように白く、頭の毛は混じりもののない羊の毛のようであった。
   そのみ座は火の炎であり、その車輪は燃える火であった。

   説明)
   アダムすなわち「日の老いたる者」と、地上の王としてその正しい地位に就かれる
   キリスト
     ダニエルは「もろもろのみ座が設けられ」るのを見た。それは、この世の政府
     が権力を失うことである(12,14,18,27節)。そして彼は、キリストを頭とし
     て天の王国が立てられるのを見た。この王国は「諸民、諸族、諸国語の者」
     (14節)を永遠に支配する。末日の啓示は、やがて世界のすべての国は、福千
     年のシオン到来に備えて、最後の時を迎えると教えている。
     日の老いたる者とはわたしたち人類の最年長者、父祖アダムすなわちミカエル
     のことである。彼は子供たちを集めて会議を開き、人の子の再臨に備えさせる
     であろう。アダムは人類家族の父であり、全人類の霊を管理する。また鍵を付
     与されていた者は皆この大会議において彼の前に立たなければならない。そし
     て人の子がアダムの前に立ち、栄光と支配権の返還を受ける。アダムは宇宙の
     鍵を持つ者として与えられていた自らの管理の職をキリストに渡す。しかし、
     人類の頭としての地位から外されることはない。

07:10 彼の前から、ひと筋の火の流れが出てきた。彼に仕える者は千々、彼の前にはべる
   者は万々、審判を行う者はその席に着き、かずかずの書き物が開かれた。
07:11 わたしは、その角の語る大いなる言葉の声がするので見ていたが、わたしが見てい
   る間にその獣は殺され、そのからだはそこなわれて、燃える火に投げ入れられた。
07:12 その他の獣はその主権を奪われたが、その命は、時と季節の来るまで延ばされた。
07:13 わたしはまた夜の幻のうちに見ていると、見よ、人の子のような者が、天の雲に乗
   ってきて、日の老いたる者のもとに来ると、その前に導かれた。

   説明)
   ミズーリ州のアダム・オンダイ・アーマンで開かれる神権者の大会議
     ダニエルはキリストの来臨について語っている。アダム・オンダイ・アーマン
     の谷におびただしい数の人々が集まり、そこで大会議が 開かれるであろう。
     日の老いたる者、すなわちアダムが席に着く。最後の裁きでない裁きが行われ、
     鍵を持っていた義人は報告し、鍵を返還し、使命を解かれるであろう。キリス
     トが降臨され、アダムが報告する。この会議でキリストは地上の正当な統治者
     として受け入れられ、認められるであろう。そしてサタンは支配者の地位から
     追われる。この後、世のすべての政府は、神の政府に統合される。こうして正
     義の統治が行われるようになる。地球は清められ、悪人は滅ぼされるであろう。
     そして平和の統治が始められる。

07:14 彼に主権と光栄と国とを賜い、諸民、諸族、諸国語の者を彼に仕えさせた。その主
   権は永遠の主権であって、なくなることがなく、その国は滅びることがない。

   説明)
   聖徒は、主が統治される王国の備えをしている
     天の雲に乗って人の子のような者がおいでになり、「彼に主権と光栄と国とを
     賜い、諸民、諸族、諸国語の者を彼に仕えさせた」。
     主がおいでになったときのために、王国の備えを末日聖徒がしている。

07:15 そこで、われダニエル、わがうちなる霊は憂え、わが脳中の幻は、わたしを悩まし
   たので、
07:16 わたしは、そこに立っている者のひとりに近寄って、このすべての事の真意を尋ね
   た。するとその者は、わたしにこの事の解き明かしを告げ知らせた。
07:17 『この四つの大きな獣は、地に起らんとする四人の王である。
07:18 しかしついには、いと高き者の聖徒が国を受け、永遠にその国を保って、世々かぎ
   りなく続く』。

   説明)
   聖徒は王国を所有する
     ダニエルは、主が戻られ、王国の頭として当然の地位に就かれた後、聖徒がそ
     の王国を所有するようになるとはっきり教えた。しかし、聖徒たちがその王国
     を受ける備えをすることが必要である。
     確固として主に従う民、悪魔に屈しない民、そうした民がいると判断されると
     き、それまではないが、そのときこそ、主は全地を満たす「王国」を、力と勢
     いの内にいと高き者の聖徒たちの手に渡されるであろう。どんな突発事態が起
     きようとも忠実で、我々の平和と福利を脅かすどんな困難とも戦うことができ、
     地上の神の王国、教会の伸展を阻害するどんな障害にも打ち勝つことができる
     と自ら証明したとき、そのとき天父は我々を信頼し、我々に信任を置いてくだ
     さるであろう。

07:19 そこでわたしは、さらに第四の獣の真意を知ろうとした。その獣は他の獣と異なっ
   て、はなはだ恐ろしく、その歯は鉄、そのつめは青銅であって、食らい、かつ、か
   み砕いて、その残りを足で踏みつけた。
07:20 この獣の頭には、十の角があったが、そのほかに一つの角が出てきたので、この角
   のために、三つの角が抜け落ちた。この角には目があり、また大きな事を語る口が
   あって、その形は、その同類のものよりも大きく見えた。
07:21 わたしが見ていると、この角は聖徒と戦って、彼らに勝ったが、
07:22 ついに日の老いたる者がきて、いと高き者の聖徒のために審判をおこなった。そし
   てその時がきて、この聖徒たちは国を受けた。
07:23 彼はこう言った、『第四の獣は地上の第四の国である。これはすべての国と異なっ
   て、全世界を併合し、これを踏みつけ、かつ打ち砕く。

   説明)
   *一般的なキリスト教会で言われている解釈
     ここでは、末日に登場するローマの文化を継承する世界統一政府を表す。

07:24 十の角はこの国から起る十人の王である。その後にまたひとりの王が起る。彼は先
   の者と異なり、かつ、その三人の王を倒す。

   説明)
   *一般的なキリスト教会で言われている解釈
     十の角は世界統一政府から分裂してできる十の国家。出てきた一つの角は反キ
     リストと言われる独裁者で、十のうち三つの国家を滅ぼす。

07:25 彼は、いと高き者に敵して言葉を出し、かつ、いと高き者の聖徒を悩ます。彼はま
   た時と律法とを変えようと望む。聖徒はひと時と、ふた時と、半時の間、彼の手に
   わたされる。

   説明)
   *一般的なキリスト教会で言われている解釈
     「ひと時と、ふた時と、半時の間」は3年半。反キリストが世界を荒らす期間。

07:26 しかし審判が行われ、彼の主権は奪われて、永遠に滅び絶やされ、
07:27 国と主権と全天下の国々の権威とは、いと高き者の聖徒たる民に与えられる。彼ら
   の国は永遠の国であって、諸国の者はみな彼らに仕え、かつ従う』。
07:28 その事はここで終った。われダニエルは、これを思いまわして、非常に悩み、顔色
   も変った。しかし、わたしはこの事を心に留めた」。



08:01 われダニエルは先に幻を見たが、後またベルシャザル王の治世の第三年に、一つの
   幻がわたしに示された。
08:02 その幻を見たのは、エラム州の首都スサにいた時であって、ウライ川のほとりにお
   いてであった。
08:03 わたしが目をあげて見ると、川の岸に一匹の雄羊が立っていた。これに二つの角が
   あって、その角は共に長かったが、一つの角は他の角よりも長かった。その長いの
   は後に伸びたのである。
08:04 わたしが見ていると、その雄羊は、西、北、南にむかって突撃したが、これに当る
   ことのできる獣は一匹もなく、またその手から救い出すことのできるものもなかっ
   た。これはその心のままにふるまい、みずから高ぶっていた。
08:05 わたしがこれを考え、見ていると、一匹の雄やぎが、全地のおもてを飛びわたって
   西からきたが、その足は土を踏まなかった。このやぎには、目の間に著しい一つの
   角があった。
08:06 この者は、さきにわたしが川の岸に立っているのを見た、あの二つの角のある雄羊
   にむかってきて、激しく怒ってこれに走り寄った。
08:07 わたしが見ていると、それが雄羊に近寄るや、これにむかって怒りを発し、雄羊を
   撃って、その二つの角を砕いた。雄羊には、これに当る力がなかったので、やぎは
   雄羊を地に打ち倒して踏みつけた。また、その雄羊を、やぎの力から救いうる者が
   なかった。
08:08 こうして、その雄やぎは、はなはだしく高ぶったが、その盛んになった時、あの大
   きな角が折れて、その代りに四つの著しい角が生じ、天の四方に向かった。
08:09 その角の一つから、一つの小さい角が出て、南に向かい、東に向かい、麗しい地に
   向かって、はなはだしく大きくなり、
08:10 天の衆群に及ぶまでに大きくなり、星の衆群のうちの数個を地に投げ下して、これ
   を踏みつけ、
08:11 またみずから高ぶって、その衆群の主に敵し、その常供の燔祭を取り除き、かつそ
   の聖所を倒した。
08:12 そしてその衆群は、罪によって、常供の燔祭と共に、これにわたされた。その角は
   また真理を地に投げうち、ほしいままにふるまって、みずから栄えた。
08:13 それから、わたしはひとりの聖者の語っているのを聞いた。またひとりの聖者があ
   って、その語っている聖者にむかって言った、「常供の燔祭と、荒すことをなす罪
   と、聖所とその衆群がわたされて、足の下に踏みつけられることについて、幻にあ
   らわれたことは、いつまでだろうか」と。
08:14 彼は言った、「二千三百の夕と朝の間である。そして聖所は清められてその正しい
   状態に復する」。
08:15 われダニエルはこの幻を見て、その意味を知ろうと求めていた時、見よ、人のよう
   に見える者が、わたしの前に立った。
08:16 わたしはウライ川の両岸の間から人の声が出て、呼ばわるのを聞いた、「ガブリエ
   ルよ、この幻をその人に悟らせよ」。

   解説)
   ガブリエルとはだれか。また彼はなぜ、ダニエルの示現を悟らせるために遣わされ
   るのか
     ダニエルに遣わされたのは古代の預言者ノアであった。神権は最初アダムに付
     与された。アダムは大管長会の地位に就き、世代を超えてその鍵を保持してい
     た。アダムがそれを得たのは創造の前であり、創世1:26-27にあるように、世
     にあるすべての生き物を支配する権能を与えられた。彼は聖典では天使長ミカ
     エルという名でも呼ばれている。次いでその鍵はガブリエルであるノアに与え
     られた。ノアは神権に関して言えばアダムの次に位する人である。ノアは神か
     らその職に召され、今の世に生を受けている全人類の父となった彼に対しても
     支配する権能が与えられたのである。これらの人々は先に地上で、鍵を受けた。
     そして天においてもそれを有している。

08:17 すると彼はわたしの立っている所にきた。彼がきたとき、わたしは恐れて、ひれ伏
   した。しかし、彼はわたしに言った、「人の子よ、悟りなさい。この幻は終りの時
   にかかわるものです」。
08:18 彼がわたしに語っていた時、わたしは地にひれ伏して、深い眠りに陥ったが、彼は
   わたしに手を触れ、わたしを立たせて、
08:19 言った、「見よ、わたしは憤りの終りの時に起るべきことを、あなたに知らせよう。
   それは定められた終りの時にかかわるものであるから。
08:20 あなたが見た、あの二つの角のある雄羊は、メデアとペルシャの王です。
08:21 また、かの雄やぎはギリシヤの王です、その目の間の大きな角は、その第一の王で
    す。
08:22 またその角が折れて、その代りに四つの角が生じたのは、その民から四つの国が起
   るのです。しかし、第一の王のような勢力はない。
08:23 彼らの国の終りの時になり、罪びとの罪が満ちるに及んで、ひとりの王が起るでし
   ょう。その顔は猛悪で、彼はなぞを解き、
08:24 その勢力は盛んであって、恐ろしい破壊をなし、そのなすところ成功して、有力な
   人々と、聖徒である民を滅ぼすでしょう。
08:25 彼は悪知恵をもって、偽りをその手におこない遂げ、みずから心に高ぶり、不意に
   多くの人を打ち滅ぼし、また君の君たる者に敵するでしょう。しかし、ついに彼は
   人手によらずに滅ぼされるでしょう。
08:26 先に示された朝夕の幻は真実です。しかし、あなたはその幻を秘密にしておかなけ
   ればならない。これは多くの日の後にかかわる事だから」。
08:27 われダニエルは疲れはてて、数日の間病みわずらったが、後起きて、王の事務を執
   った。しかし、わたしはこの幻の事を思って驚いた。またこれを悟ることができな
   かった。

   解説)
   ダニエルが見た雄羊と雄やぎの示現の意味は何か
     ダニエルがこの示現で見たことの多くは今や歴史上の事実となっているが、
     「旧約聖書」には載っていない。彼がこの章に記録したことの大半は、「旧約
     聖書」に記述がほとんどない紀元前500年からキリストの時代までの間に成就
     した。
     8章の示現は、7章に書かれている第2と第3の帝国のことに集中している。二つ
     の角を持つ雄羊はメデア・ペルシャ帝国を象徴し、角(3節)はメデアとペル
     シャの王を表していた(20節)。「後に伸びた」長い角は、後に同盟国を支配し
     てメデア人よりも勢力を得るペルシャ人を意味していた。やって来て「雄羊を
     撃って、その二つの角を砕いた雄羊を地に打ち倒して踏みつけた」(7節)雄
     やぎは、アレキサンダー大王とギリシャ帝国を表していた。アレキサンダー自
     身は、「大きな角」(21節)という表現にぴったりである。彼は隆盛の半ばに
     32歳で死んだ。「その盛んになった時、あの大きな角が折れて」(8節)とあ
     る。アレキサンダー大王の死後、4人の将軍が国を分けたが、それは一つの角
     の代わりに生じた4つの角(8,22節)であろう。その角の一つから生じた「一
     つの小さい角」(9節)は、紀元前175-164年にスリヤを治めたアンティオコス
     4世(エピファネス)を表すと一般に言われている。彼はモーセの律法を守る
     ことを大罪に定めて、ユダヤ人に厳しい迫害を加えた。この「小さい角」は
     アンティオコス・エピファネスを表すと古代記述者たちのほとんどは考えてい
     たが、「悪魔の教会」である「忌まわしい大勢力」が、この預言者によって、
     預言の完全な成就に必要なものとして暗示されている可能性は除外できない。
     マカベア家の時代のユダヤ人に対してアンテイオコスがしたことは、「悪魔
     の教会」がどの時代にも「キリストの教会」に対してしてきたことである。
     アンティオコス4世は預言の内容に適合するかもしれないが、それはサタンの
     力によって動き、「天の星」(神の子たち)を「投げ落」とそうとし、「君の
     君たる者」のキリストに対して「高ぶ」ろうとする(25節)人々の典型である
     とも思われる。アンティオコス4世が神殿の日々の犠牲を取り去り、主の至聖所
     (神殿)がある場所を荒らしたことは明らかである。同様の出来事はキリスト
     降誕後のローマ時代にも起きている。その王国の後半に、ユダ国の背きが頂点
     に達したとき、ローマの勢力がユダ国を滅ぼし、エルサレムを占領し、毎日の
     犠牲をやめさせた。そしてローマの権力者たちはそれだけにとどまらず、後に
     力ある聖なる民、すなわち使徒や初期のキリスト教徒を殺害して滅ぼしたので
     ある。
     この預言がマカベア家の時代だけに限定されないことは、19節の二つの語句が
     示している。「憤りの終りのときに」は、「憤りの終りの時代、すなわち末日
     に」を意味する。26節には、「これは多くの日の後にかかわる事だから」とあ
     る。



09:21 すなわちわたしが祈の言葉を述べていたとき、わたしが初めに幻のうちに見た、か
   の人ガブリエルは、すみやかに飛んできて、夕の供え物をささげるころ、わたしに
   近づき、
09:22 わたしに告げて言った、「ダニエルよ、わたしは今あなたに、知恵と悟りを与える
   ためにきました。
09:23 あなたが祈を始めたとき、み言葉が出たので、それをあなたに告げるためにきたの
   です。あなたは大いに愛せられている者です。ゆえに、このみ言葉を考えて、この
   幻を悟りなさい。
09:24 あなたの民と、あなたの聖なる町については、七十週が定められています。これは
   とがを終らせ、罪に終りを告げ、不義をあがない、永遠の義をもたらし、幻と預言
   者を封じ、いと聖なる者に油を注ぐためです。
09:25 それゆえ、エルサレムを建て直せという命令が出てから、メシヤなるひとりの君が
   来るまで、七週と六十二週あることを知り、かつ悟りなさい。その間に、しかも不
   安な時代に、エルサレムは広場と街路とをもって、建て直されるでしょう。
09:26 その六十二週の後にメシヤは断たれるでしょう。ただし自分のためにではありませ
   ん。またきたるべき君の民は、町と聖所とを滅ぼすでしょう。その終りは洪水のよ
   うに臨むでしょう。そしてその終りまで戦争が続き、荒廃は定められています。
09:27 彼は一週の間多くの者と、堅く契約を結ぶでしょう。そして彼はその週の半ばに、
   犠牲と供え物とを廃するでしょう。また荒す者が憎むべき者の翼に乗って来るでし
   ょう。こうしてついにその定まった終りが、その荒す者の上に注がれるのです」。

   解説)
   70週というガブリエルの説明
     普通に「週」と訳されているヘブライ語は、「7つ」と訳した方がもっと正確
     であろう。7つずつに分けられた時期を意味するのである。だから「70週」は、
     7の70倍の期間をいう。こうした7の期間は、日、週、月、年、あるいは不特定
     の継続期間を指して使われた。それが一定でないということで、ガブリエルの
     説明を歴史上の特定の時期に結びつけることは実に難しいが、これまで様々な
     試みがなされてきて、その結果、この聖句の解釈に幾つか違った説明がある。
     「旧約聖書」中で最も難解な聖句の一つである。
     言われている期間は特定するのが難しいが、前後関係やこの句の中の言葉から、
     この箇所が、ダニエルの民の救いが達成される期間と関係のあることが分かる。
     24節は明らかに、罪の赦しと、悔い改めによる神と人との和解を可能にする、
     キリストの降誕と贖いを指している。キリストは御父から遣わされたその使命
     を全うすることによって、キリスト来臨に関する預言者たちの言葉と律法を成
     就し、そうして「幻と預言者を封じ(確かにせ)」られた(24節)。
     25節は、エルサレム再建のためのユダヤ人の帰還から、メシヤ降誕までの時期
     についての記述である。
     26節には、「メシヤは断たれるでしょう。ただし自分のためにではありません」
     とあるが、これははりつけを暗示しているようである。9章のこれ以降の箇所
     にはエルサレムの荒廃について書かれている。それはマタイ24:15およびジョ
     セフ・スミスが霊感により改訂したその聖句(ジョセフ・スミス-マタイ1:12)
     とよく類似している。しかしながら、1週の間契約を結ぶ(27節)という言葉
     がこれまで十分に説明されておらず、したがって上述の解釈は確定的なもので
     はない。

   *一般的なキリスト教会で言われている解釈
     25節はBC538年のクロス王によるユダヤ人のエルサレムへの帰還許可を表す。
     週は7年を表す。そこから、69×7=483年後にキリストが誕生する。
     (実際には55年誤差がある)
     最後の一週はキリストの再臨前の7年間の艱難時代で、荒す者は反キリストを
     表す。反キリストは艱難時代の初めにイスラエル国と7年間の平和条約を結ぶ
     が、途中で、契約を破棄して、イスラエルに攻め込み、エルサレムの神殿を荒
     らす。



10:04 正月の二十四日に、わたしがチグリスという大川の岸に立っていたとき、
10:05 目をあげて望み見ると、ひとりの人がいて、亜麻布の衣を着、ウパズの金の帯を腰
   にしめていた。

   解説)
   主、ダニエルに現れたもう
     ダニエルは主の栄光と威厳を表現しようと努めた。彼の描写は、同じような経
     験をしたほかの預言者たちの言葉と非常によく似ている。主の前にいることで、
     ダニエルの力は萎えた。ほかの預言者たちも同様の経験をしている。

10:06 そのからだは緑柱石のごとく、その顔は電光のごとく、その目は燃えるたいまつの
   ごとく、その腕と足は、みがいた青銅のように輝き、その言葉の声は、群衆の声の
   ようであった。
10:07 この幻を見た者は、われダニエルのみであって、わたしと共にいた人々は、この幻
   を見なかったが、彼らは大いにおののいて、逃げかくれた。
10:08 それでわたしひとり残って、この大いなる幻を見たので、力が抜け去り、わが顔の
   輝きは恐ろしく変って、全く力がなくなった。
10:09 わたしはその言葉の声を聞いたが、その言葉の声を聞いたとき、顔を伏せ、地にひ
   れ伏して、深い眠りに陥った。
10:10 見よ、一つの手があって、わたしに触れたので、わたしは震えながらひざまずき、
   手をつくと、
10:11 彼はわたしに言った、「大いに愛せられる人ダニエルよ、わたしがあなたに告げる
   言葉に心を留め、立ちあがりなさい。わたしは今あなたのもとにつかわされたので
   す」。彼がこの言葉をわたしに告げているとき、わたしは震えながら立ちあがった。
10:12 すると彼はわたしに言った、「ダニエルよ、恐れるに及ばない。あなたが悟ろうと
   心をこめ、あなたの神の前に身を悩ましたその初めの日から、あなたの言葉は、す
   でに聞かれたので、わたしは、あなたの言葉のゆえにきたのです。
10:13 ペルシャの国の君が、二十一日の間わたしの前に立ちふさがったが、天使の長のひ
   とりであるミカエルがきて、わたしを助けたので、わたしは、彼をペルシャの国の
   君と共に、そこに残しておき、

   解説)
   アダムとノア、ダニエルに現れる
     ガブリエル(ノア)がダニエルを訪れたことは前に述べた。この章は、アダム
     であるミカエルについて語っている。

   「ペルシャの国の君」とはだれか
     アダムがペルシャの国の君と戦う天使を支援するために来たことは、この君が
     現実のペルシャの指導者ではなく、世の王国の不正な支配を助長する悪の軍勢
     の指導者であったことを示している。もしこの推論が正しければ、サタンまた
     はサタンの軍勢の一人が、ここで言われている君である。このほかの聖句にも、
     アダムがサタンと戦う義人たちの間に入り、彼らを助け、支えていることが記
     録されている。

10:14 末の日に、あなたの民に臨まんとする事を、あなたに悟らせるためにきたのです。
   この幻は、なおきたるべき日にかかわるものです」。

   解説)
   天使は何をダニエルに悟らせるために来たのか
     天使は、自分が来たのは「末の日に」ダニエルの民がどうなるかを知らせるた
     めであると言った。また、この示現は「きたるべき日にかかわるもの」である
     とも告げた。続く二つの章の内容は、ダニエルに告げられたことが単に末日の
     説明ではなく、ダニエルの時代から末日を含めて遠い将来にわたるものである
     ことを示している。

10:15 彼がこれらの言葉を、わたしに述べていたとき、わたしは、地にひれ伏して黙って
   いたが、
10:16 見よ、人の子のような者が、わたしのくちびるにさわったので、わたしは口を開き、
   わが前に立っている者に語って言った、「わが主よ、この幻によって、苦しみがわ
   たしに臨み、全く力を失いました。
10:17 わが主のしもべは、どうしてわが主と語ることができましょう。わたしは全く力を
   失い、息も止まるばかりです」。
10:18 人の形をした者は、再びわたしにさわり、わたしを力づけて、
10:19 言った、「大いに愛せられる人よ、恐れるには及ばない。安心しなさい。心を強く
   し、勇気を出しなさい」。彼がこう言ったとき、わたしは力づいて言った、「わが
   主よ、語ってください。あなたは、わたしに力をつけてくださったから」。
10:20 そこで彼は言った、「あなたは、わたしがなんのためにきたかを知っていますか。
   わたしは、今帰っていって、ペルシャの君と戦おうとしているのです。彼との戦い
   がすむと、ギリシヤの君があらわれるでしょう。
10:21 しかしわたしは、まず真理の書にしるされている事を、あなたに告げよう。わたし
   を助けて、彼らと戦う者は、あなたがたの君ミカエルのほかにはありません。



11:01 わたしはまたメデアびとダリヨスの元年に立って彼を強め、彼を力づけたことがあ
   ります。
11:02 わたしは今あなたに真理を示そう。見よ、ペルシャになお三人の王が起るでしょう。
   その第四の者は、他のすべての者にまさって富み、その富によって強くなったとき、
   彼はすべてのものを動員して、ギリシヤの国を攻めます。

   解説)
     ペルシャはクセルクセス王の時代に最も栄えるが、この王でペルシャが支配す
     る時代は終わった。

11:03 またひとりの勇ましい王が起り、大いなる権力をもって世を治め、その意のままに
   事をなすでしょう。

   解説)
     3-20節はギリシャとマケドニヤについて。
     ギリシャでアレキサンドロスが王位に就いて、ペルシャを制圧した。

11:04 彼が強くなった時、その国は破られ、天の四方に分かたれます。それは彼の子孫に
   帰せず、また彼が治めたほどの権力もなく、彼の国は抜き取られて、これら以外の
   者どもに帰するでしょう。

   解説)
     アレキサンドロスの死後、部下たちの後継争いの結果、アレキサンドロスの
     子供は殺され、国が4つに分割された。

11:05 南の王は強くなります。しかしその将軍のひとりが、彼にまさって強くなり、権力
   をふるいます。その権力は、大いなる権力です。
11:06 年を経て後、彼らは縁組をなし、南の王の娘が、北の王にきて、和親をはかります。
   しかしその女は、その腕の力を保つことができず、またその王も、その子も立つこ
   とができません。その女と、その従者と、その子およびその女を獲た者とは、わた
   されるでしょう。
11:07 そのころ、この女の根から、一つの芽が起って彼に代り、北の王の軍勢にむかって
   きて、その城に討ち入り、これを攻めて勝つでしょう。
11:08 彼はまた彼らの神々、鋳像および金銀の貴重な器物を、エジプトに携え去り、そし
   て数年の間、北の王を討つことを控えます。
11:09 その後、北の王は、南の王の国に討ち入るが、自分の国に帰るでしょう。
11:10 その子らはまた憤激して、あまたの大軍を集め、進んで行って、みなぎりあふれ、
   通り過ぎるが、また行って、その城にまで攻め寄せるでしょう。
11:11 そこで南の王は、大いに怒り、出てきて北の王と戦います。彼は大軍を起すけれど
   も、その軍は相手の手にわたされるでしょう。
11:12 彼がその軍を打ち破ったとき、その心は高ぶり、数万人を倒します。しかし、勝つ
   ことはありません。
11:13 それは北の王がまた初めよりも大いなる軍を起し、数年の後、大いなる軍勢と多く
   の軍需品とをもって、攻めて来るからです。
11:14 そのころ多くの者が起って、南の王に敵します。またあなたの民のうちのあらくれ
   者が、みずから高ぶって事をなし、幻を成就しようとするが失敗するでしょう。
11:15 こうして北の王がきて、塁を築き、堅固な町を取るが、南の王の力は、これに立ち
   向かうことができず、またそのえり抜きの民も、これに立ち向かう力がありません。
11:16 これに攻めて来る者は、その心のままに事をなし、その前に立ち向かうことのでき
   る者はなく、彼は麗しい地に立ち、その地は全く彼のために荒されます。
11:17 彼は全国の力をもって討ち入ろうと、その顔を向けるが、相手と仲直りをし、その
   娘を与えて、その国を取ろうとします。しかし、その事は成らず、また彼の利益に
   はならないでしょう。
11:18 その後、彼は顔を海沿いの国々に向けて、その多くのものを取ります。しかし、ひ
   とりの大将があって、彼が与えた恥辱をそそぎ、その恥辱を彼の上に返します。
11:19 こうして彼は、その顔を自分の国の要害に向けるが、彼はつまずき倒れて消えうせ
   るでしょう。
11:20 彼に代って起る者は、栄光の国に人をつかわして、租税を取り立てさせるでしょう。
   しかし彼は、怒りにも戦いにもよらず、数日のうちに滅ぼされます。
11:21 彼に代って起る者は、卑しむべき者であって、彼には、王の尊厳が与えられず、彼
   は不意にきて、巧言をもって国を獲るでしょう。
11:22 洪水のような軍勢は、彼の前に押し流されて敗られ、契約の君たる者もまた敗られ
   るでしょう。
11:23 彼は、これと同盟を結んで後、偽りのおこないをなし、わずかな民をもって強くな
   り、
11:24 不意にその州の最も肥えた所に攻め入り、その父も、その父の父もしなかった事を
   おこない、その奪った物、かすめた物および財宝を、人々の中に散らすでしょう。
   彼はまた計略をめぐらして、堅固な城を攻めるが、ただし、それは時の至るまでで
   す。
11:25 彼はその勢力と勇気とを奮い起し、大軍を率いて南の王を攻めます。南の王もまた
   みずから奮い、はなはだ大いなる強力な軍勢をもって戦います。しかし、彼に対し
   て、陰謀をめぐらす者があるので、これに立ち向かうことができません。
11:26 すなわち彼の食物を食べる者たちが、彼を滅ぼします。そして、その軍勢は押し流
   されて、多くの者が倒れ死ぬでしょう。
11:27 このふたりの王は、害を与えようと心にはかり、ひとつ食卓に共に食して、偽りを
   語るが、それは成功しません。終りはなお定まった時の来るまでこないからです。
11:28 彼は大いなる財宝をもって、自分の国に帰るでしょう。しかし、彼の心は聖なる契
   約にそむき、ほしいままに事をなして、自分の国に帰ります。
11:29 定まった時になって、彼はまた南に討ち入ります。しかし、この時は前の時のよう
   ではありません。
11:30 それはキッテムの船が、彼に立ち向かって来るので、彼は脅かされて帰り、聖なる
   契約に対して憤り、事を行うでしょう。彼は帰っていって、聖なる契約を捨てる者
   を顧み用いるでしょう。
11:31 彼から軍勢が起って、神殿と城郭を汚し、常供の燔祭を取り除き、荒す憎むべきも
   のを立てるでしょう。
11:32 彼は契約を破る者どもを、巧言をもってそそのかし、そむかせるが、自分の神を知
   る民は、堅く立って事を行います。
11:33 民のうちの賢い人々は、多くの人を悟りに至らせます。それでも、彼らはしばらく
   の間、やいばにかかり、火に焼かれ、捕われ、かすめられなどして倒れます。
11:34 その倒れるとき、彼らは少しの助けを獲ます。また多くの人が、巧言をもって彼ら
   にくみするでしょう。
11:35 また賢い者のうちのある者は、終りの時まで、自分を練り、清め、白くするために
   倒れるでしょう。終りはなお定まった時の来るまでこないからです。
11:36 この王は、その心のままに事をおこない、すべての神を越えて、自分を高くし、自
   分を大いにし、神々の神たる者にむかって、驚くべき事を語り、憤りのやむ時まで
   栄えるでしょう。これは定められた事が成就するからです。
11:37 彼はその先祖の神々を顧みず、また婦人の好む者も、いかなる神をも顧みないでし
   ょう。彼はすべてにまさって、自分を大いなる者とするからです。
11:38 彼はこれらの者の代りに、要害の神をあがめ、金、銀、宝石、および宝物をもって、
   その先祖たちの知らなかった神をあがめ、
11:39 異邦の神の助けによって、最も強固な城にむかって、事をなすでしょう。そして彼
   を認める者には、栄誉を増し与え、これに多くの人を治めさせ、賞与として土地を
   分け与えるでしょう。
11:40 終りの時になって、南の王は彼と戦います。北の王は、戦車と騎兵と、多くの船を
   もって、つむじ風のように彼を攻め、国々にはいっていって、みなぎりあふれ、通
   り過ぎるでしょう。
11:41 彼はまた麗しい国にはいります。また彼によって、多くの者が滅ぼされます。しか
   し、エドム、モアブ、アンモンびとらのうちのおもな者は、彼の手から救われまし
   ょう。
11:42 彼は国々にその手を伸ばし、エジプトの地も免れません。
11:43 彼は金銀の財宝と、エジプトのすべての宝物を支配し、リビヤびと、エチオピヤび
   とは、彼のあとに従います。
11:44 しかし東と北からの知らせが彼を驚かし、彼は多くの人を滅ぼし絶やそうと、大い
   なる怒りをもって出て行きます。
11:45 彼は海と麗しい聖山との間に、天幕の宮殿を設けるでしょう。しかし、彼はついに
   その終りにいたり、彼を助ける者はないでしょう。

   解説)
   ダニエルが見た次代の王たち、戦争、抗争の示現
     ダニエルの意図が歴史的展開を強調することではなく、ただ主の民に影響を及
     ぼす時代背景として語ったのであることは、この章の時代の出来事がおおまか
     にしか預言されていないことから明瞭である。この預言はセレウコスとプトレ
     マイオスの歴史上の戦争を預言したものではなく、北と南の王たちの戦争一般
     を観念的に語っているのである。それによって、預言の言葉の個々の多様な要
     素が現実に成就したのは確かだが実際の歴史上の出来事が預言の内容にはっき
     り対応するわけではない。
     この章と歴史上の事実との間に直接の一致がないことはダニエルが将来の出来
     事を詳細に書き連ねるのではなく、主の民に影響する主要な出来事を幾つか概
     観するつもりだったことを示していると思われる。この章で預言されている出
     来事の幾つかは、世の王国と神の王国の抗争の様子を示すものとして語られた
     かもしれない。つまり、それは将来の出来事の予型であるというのである。覇
     権を競う2王国(プトレマイオスとセレウコス)の戦いによって、聖約の地と聖
     約の民は悲惨な境遇に陥ったばかりか、世の王国と神の王国の関係を象徴する
     戦争の特別な的ともなった。生ける神への礼拝を根絶してユダヤ人の宗教をつ
     ぶそうという王の企みは、世の勢力が発展の最終局面で神の王国に対して挑む
     大戦争の予型でもあった。
     ダニエルが述べた幾つかの事柄は、一時代に限られない両義性を持っているよ
     うに思われる。ダニエル11:31の「荒す憎むべきもの」はその一例である。こ
     の節は、アンティオコス・エピファネスによってエルサレムが破壊され、神殿
     が汚されたことを表すと解釈されている(多くの学者たちの結論である)。確
     かにそれは正しいが、「荒らす憎むべきもの」の行為は、主が紀元70年のロー
     マ人によるエルサレムと神殿の破壊について語られたときにも言われてもいる
     それはまた、これ以後の将来の破壊にも該当するのである。
     憎悪と邪悪が引き起こすこの荒廃した状態は、ダニエルの言葉の成就として2
     度起こるはずであった。最初は、テイトスの指揮するローマ軍団が紀元70年に
     エルサレムを包囲して、民を滅ぼし、追い立て、汚された神殿の石の上に一つ
     の石も残さず、前代未聞の恐怖と破壊をまき散らしたときのことである。
     そして、末日について語り、わたしたちの主はこう言われた。「荒らす憎むべ
     き者について預言者ダニエルによって言われたことが、再び成就するであろう。」
     つまり、エルサレムは再び包囲されるであろう。キリストが来られるのはこの
     包囲のさなかであり、悪人は滅ぼされて、福千年の時代が始まるのである。
     ダニエルはこの両義的な預言を通して、近い将来と遠い将来の出来事を同じ象
     徴で示したということが考えられる。ダニエル11章の多くの箇所は将来のハル
     マゲドンの戦いを示しているが、アンティオコス・エピファネスに対するマカ
     ベアの反乱に関係していると思われる記述もある。それは、ローマに対するユ
     ダの降伏に関連づけることもできよう。
     これはいまだかつてなかったような悩みの時であるというダニエル12:1を引い
     て、ハルマゲドンの戦いを意味するという解釈がある。この節の言葉は、ハル
     マゲドンの預言であるヨエル2:2と黙示16:18を思わせる。しかしながら、救い
     主はダニエル12:1を、紀元70年のユダの崩壊に具体的に引用しておられる。さ
     らに教義と聖約88:110-116では、ミカエルを福千年の後の、神の軍勢の司令官
     として述べている。
     また別に、アンティオコスの下でのユダヤ人迫害は、その点で民族の歴史中、
     最も悪辣、残酷なものであったと解説する人々もいる。どちらが正しいのだろ
     うか。この恐ろしい時代の成就は、紀元前167年か、あるいは紀元70年か、ま
     たは福千年の前のハルマゲドンか、それともその後であろうか。「旧約聖書」
     の預言の両義性からして、以上の4つはいずれも正しい可能性がある。



12:01 その時あなたの民を守っている大いなる君ミカエルが立ちあがります。また国が始
   まってから、その時にいたるまで、かつてなかったほどの悩みの時があるでしょう。
   しかし、その時あなたの民は救われます。すなわちあの書に名をしるされた者は皆
   救われます。
12:02 また地のちりの中に眠っている者のうち、多くの者は目をさますでしょう。そのう
   ち永遠の生命にいたる者もあり、また恥と、限りなき恥辱をうける者もあるでしょ
   う。
12:03 賢い者は、大空の輝きのように輝き、また多くの人を義に導く者は、星のようにな
   って永遠にいたるでしょう。
12:04 ダニエルよ、あなたは終りの時までこの言葉を秘し、この書を封じておきなさい。
   多くの者は、あちこちと探り調べ、そして知識が増すでしょう」。

   解説)
   末の日に知識が増す。
     19世紀の神学者たちは、蒸気機関車やミシンや自動車の出現に、この預言の成
     就を見た。彼らの見たものは、人類が初めて地上に住んで以来、最も目覚まし
     い知識の拡充のおぼろげな始まりにすぎなかった。もし彼らが今生き返って、
     空飛ぶ巨大なロケットや人工衛星、月や火星の様子を映すテレビ画面や、サウ
     スダコタ州の有名なコーラスの歌声が衛星放送で世界中の人に届くのを見たと
     したら、彼らはそれらのことやそのほか数多くの宇宙時代の不思議に、自分た
     ちの予想をはるかに越えた、しかし紛れもないその成就を知ったことであろう。

12:05 そこで、われダニエルが見ていると、ほかにまたふたりの者があって、ひとりは川
   のこなたの岸に、ひとりは川のかなたの岸に立っていた。
12:06 わたしは、かの亜麻布を着て川の水の上にいる人にむかって言った、「この異常な
   できごとは、いつになって終るでしょうか」と。

   解説)
    「この異常なできごとは、いつになって終るでしょうか」
     ここの句で言われている期間の説明を、主はまだ啓示しておられない。様々な
     方式や計算法が提案されてきたが、その都度間違っているとして打ち消されて
     いる。アドベンティスト運動の創始者ウィリアム・ミラー師は、1844年にキリ
     ストが来臨すると預言したが、ジョセフ・スミスはそれを間違いであると語っ
     た。ミラーの計算法は、ダニエル書のこの句の解釈から来ていた。折々に、鍵
     が見つかったと思って人を説得しようと試みる人がいたが、落胆するのが落ち
     であった。現在もダニエル書のこの句を基に、特定の日に地震や大災害が起き
     ると預言する人がいて、悲しいかな、なおも人々に信じさせようとしている。
     ジョセフ・スミスは、聖典に出てくる象徴や比喩の解釈について、その鍵とな
     るものが主から与えられていないかぎり、わたしたちがその件で責任を問われ
     ることはないと言った。今はまだ明らかにされていない理由によって、主はこ
     の句を解釈する鍵を啓示しておられない。主が教えられるまでは、いかなる推
     測も計算も徒労である。

12:07 かの亜麻布を着て、川の水の上にいた人が、天に向かって、その右の手と左の手を
   あげ、永遠に生ける者をさして誓い、それは、ひと時とふた時と半時である。聖な
   る民を打ち砕く力が消え去る時に、これらの事はみな成就するだろうと言うのを、
   わたしは聞いた。
12:08 わたしはこれを聞いたけれども悟れなかった。わたしは言った、「わが主よ、これ
   らの事の結末はどんなでしょうか」。
12:09 彼は言った、「ダニエルよ、あなたの道を行きなさい。この言葉は終りの時まで秘
   し、かつ封じておかれます。
12:10 多くの者は、自分を清め、自分を白くし、かつ練られるでしょう。しかし、悪い者
   は悪い事をおこない、ひとりも悟ることはないが、賢い者は悟るでしょう。
12:11 常供の燔祭が取り除かれ、荒す憎むべきものが立てられる時から、千二百九十日が
   定められている。
12:12 待っていて千三百三十五日に至る者はさいわいです。
12:13 しかし、終りまであなたの道を行きなさい。あなたは休みに入り、定められた日の
   終りに立って、あなたの分を受けるでしょう」。



ダニエルの示現の中の王国

       |ダニエル2章  |ダニエル7章 |ダニエル8章|ダニエル11-12章
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バビロン   |純金の頭    |しし     |      |
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メデアと   |銀の胸と両腕  |熊      |雄羊    |11:1-2
 ペルシャ  |        |       |      |
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ギリシャと  |青銅の腹ともも |ひょう    |雄やぎ   |11:3-20
 マケドニヤ |        |       |      |
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ローマ    |鉄のすね    |ものすごい獣 |      |
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多くの王国  |粘土の足とつま先|10の角   |      |
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末日における |石       |アダムとイエ |      |12:1-3
 神の王国  |        |ス・キリスト |      |
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反キリストの力|        |10の角の中か|4つの角から|11:21-45
       |        |ら出た小さい角|出た小さい角|
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