沖縄の昔話
ハブに足があったころの話です。
旧暦の10月は神様の集まりで留守になる月です。
出かけるときに神様は留守番するハブに言いました。
神様:「御嶽にあるチーミーの実がうれてきた。
ハブよ、チーミーの実は、お乳の出をよくする。
赤子のいる女にあげるんだよ。
まだ子供を生んでいない女には、あげてはいけないよ。」
ハブ:「わかりました。行ってらっしゃいませ。」
この頃のハブは足が二本あり、
トカゲのように速く走ることができました。
ハブ:「なんて、おいしそうなんだろう。
きっと、甘いんだろうなあ。」
そこに若い娘が通りかかりました。
ハブ:「おい、そこの娘よ。お前に子供はいるか?」
若い娘:「私はまだ嫁に行っていませんし、子供もいません。」
ハブ:「そうか、娘よ。そのチーミーは、とてもおいしいぞ。
お前に食べてもらいたいのだが、残念なことに、私には届かない。
お前が取って、一緒に食べないか?」
若い娘:「わかりました。」
娘は木から実を取って、ハブと一緒に食べました。
ハブ:「甘くて、おいしいなあ。」
若い娘:「本当に、こんな甘い実は初めてです。」
神様が集まりから帰ってきました。
神様:「ハブよ、あのチーミーの実が無くなっているぞ。
誰が食べたのじゃ?」
ハブ:「あそこで畑仕事している女が、食べてしまいました。」
神様:「女よ、お前が勝手に御嶽のチーミーを食べたのか?」
若い娘:「いいえ、ハブが届かないので、取ってほしいと頼まれました。
そして、半分に割って食べました。ごめんなさい。」
神様:「あのハブめ。
ハブよ、お前は神である私に、嘘をついただけでなく、
正直な娘を陥れようとしたな。赦さんぞ。
このような嘘つきは反省のため腹ばいで進むようにする。」
それからと言うもの、ハブは今のように地面をはう動物になりました。
注)
ハブ:沖縄にいる毒を持った蛇
御嶽(うたき):神が存在、あるいは来訪する場所、また神を祀る場所。
チーミー:パパイヤの沖縄古来の言い方。
乳(ち)実(み)が語源と思われる。
創世記3章、モーセ書4章の話と似ている。
=> NHKのサイト「ハブとパパヤーの実」
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