モーサヤ書


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第1章

ベニヤミン王、息子たちに彼らの先祖の言葉と預言を教える。いろいろな版に書き継がれた記録のおかげで、彼らの宗教と文明が残される。モーサヤ、王として選ばれ、また、記録とほかの品々を保管する責任が与えられる。紀元前約130年から124年に至る。

01 さて、ゼラヘムラの全地では、ベニヤミン王に従ったすべての民の中に、もはや争いが起こらなかったので、ベニヤミン王は残る生涯を引き続き安らかに送った。
02 さて、彼には3人の息子があって、それぞれモーサヤ、ヒローラム、ヒラマンと名付けられた。彼は、先祖のすべての言葉によって彼らが教育を受けられるようにし、それによって彼らが思慮分別のある者となるように、また先祖の口を通して語られ、主の手によってもたらされた数々の預言について知ることができるようにした。
03 また彼は、真鍮の版に刻まれた記録についても彼らに教え、次のように言った。「息子たちよ、これらの記録とこれらの戒めが載っているこの版がなかったならば、わたしたちは今でも神の奥義を知らずに無知のままでいたに違いない。あなたがたは、このことを覚えておいてほしい。
04 この版の助けがなければ、先祖のリーハイは、これらの事柄をすべて思い出して子供たちに教えることなどできなかったであろう。彼はエジプト人の言葉を教えられていたので、これらの刻まれたものを読み、それを子供たちに教えることができた。そして、子供たちもまたその子供たちに教え、そのようにして現在に至るまで、神の命令が果たされてきたのである。
05 息子たちよ、わたしはあなたがたに言う。これらのものが神の御手によって書き継がれ、そして残されたのは、わたしたちがこれを読んで神の奥義を理解し、神の戒めを常に目の前に置いておけるようにするためであって、もしこれらのものがなかったならば、わたしたちの先祖でさえも不信仰に陥っていたであろう。そしてわたしたちは、同胞のレーマン人のようになっていたに違いない。レーマン人はこれらのことについてまったく知らず、たとえ教えられても、彼らの先祖の正しくない言い伝えがあるために信じないのである。
06 おお、息子たちよ、わたしが望むのは、これらの言葉が真実であり、これらの記録も真実であることを覚えておいてほしいということである。そして見よ、エルサレムを出たときから今に至るまでの先祖の記録と言葉が載っているニーファイの版も真実である。これが今わたしの目の前にあるので、これが確かであることが分かる。
07 さて、息子たちよ、あなたがたはこれらの記録を努めて丁寧に調べることを忘れず、それによって益を得るようにしてほしい。また、神の戒めを守り、主がわたしたちの先祖に立てられた約束どおりに、この地で栄えることができるようにしてほしい。」
08 そしてベニヤミン王は、ほかにもこの書に書き記されていない多くのことを息子たちに教えた。

09 そして、息子たちに教え終えた後、ベニヤミン王は年老いて、自分ももうすぐに世のすべての人が行く道を行かなければならないことを知っていたので、王位を息子の一人に譲る方が望ましいと考えた。
10 そこで、王はモーサヤを自分の前に連れて来させた。王がモーサヤに語った言葉は次のとおりである。「息子よ、全地のすべての民に、すなわちこの地に住んでいるゼラヘムラの民とモーサヤの民に、皆集まるように布告を出してもらいたい。それは明日、わたしの口から、あなたが、主なるわたしたちの神が託してくださった、民を治める王であり統治者であることを、民に宣言するためである。
11 そしてさらに、わたしはこの民に一つの名を与え、主なる神がエルサレムの地から連れて来られたほかのすべての民と区別できるようにしよう。わたしがこうするのは、彼らが主の戒めを熱心に守る民であったからである。
12 そしてわたしは、彼らに名を与えるが、それは戒めに背かなければ決して消されることはない。
13 また、わたしはさらにあなたに言っておく。主の厚い恵みを受けているこの民が、戒めに背くようになり、邪悪で不義な民となるならば、主は彼らを引き渡される。その結果、彼らは同胞のように弱くなるであろう。そして主は、これまでわたしたちの先祖を残してこられたように、もはやそのたぐいない驚くべき力でこの民を残すことはなさらない。
14 わたしはあなたに言うが、もしも主が御腕を伸べてわたしたちの先祖を残してくださらなかったならば、先祖はレーマン人の手に落ちて、彼らの憎悪の犠牲になっていたに違いない。」
15 そして、ベニヤミン王は息子にこれらの言葉を語り終えると、王国の政務のすべてに関する責任を息子にゆだねた。
16 そしてさらに、彼は真鍮の版に刻まれた記録と、ニーファイの版と、ラバンの剣と、荒れ野の中で先祖を導いた球、すなわち指示器についても息子に責任をゆだねた。この指示器は、先祖がそれぞれ主に向けた注意力と熱意に応じて導かれるように、主の手によって備えられたものである。
17 したがって、彼らが忠実でないときには、旅は順調に進まず、またはかどらず、かえって押し戻されて、神の不興を招いた。そしてまた彼らは、自分たちの義務を思い出すように促す飢饉と、ひどい艱難に悩まされたのであった。
18 さて、モーサヤは父から命じられたとおりに行い、ゼラヘムラの地にいるすべての人に、皆連れ立ってモーサヤの父の語る言葉を聞くために神殿に集まるように布告を出した。


【動画】ベニヤミン王、民に話をする



【動画】ベニヤミン王


第2章

ベニヤミン王、民に語る。自分の治世が平等かつ公正で、霊的な意義の深いものであったことを述べる。天の王に仕えるように民に勧告する。神に背く者は消すことのできない火のような苦しみを受ける。紀元前約124年。


01 さて、モーサヤが父から命じられたとおりに行い、全地に布告を出したところ、民は全地から集まり、ベニヤミン王の語る言葉を聞くために神殿にやって来た。
02 そして、集まった者の数はたいそう多く、数え切れないほどであった。民はすでに非常に増えて、この地で大きな数になっていたからである。
03 そして彼らはまた、自分たちの家畜の群れの初子も連れて来た。それは、モーセの律法に従って犠牲と燔祭をささげるためであった。
04 また、主なる神に感謝をするためでもあった。この神は彼らをエルサレムの地から連れ出し、敵の手から救い出し、また正しい人々を教師に任じ、また一人の正しい人を王に任じてくださった。そしてその王は、ゼラヘムラの地に平和を確立し、神の戒めを守るように民に教えて、民が喜びを味わい、神とすべての人に対する愛で満たされるようにしたのであった。
05 さて、彼らは神殿に来ると、その周りに天幕を張った。男たちは皆、自分の妻と息子、娘、孫から成る各々の家族に応じて、最年長の者から最年少の者まで、すべての家族が互いに離れて場所を取った。
06 彼らは神殿の周りに天幕を張ったが、天幕の中にいながらベニヤミン王の語る言葉を聞けるように、すべての者がその天幕の入り口を神殿の方へ向けていた。

07 集まった群衆が非常に大勢であったため、ベニヤミン王は神殿の中ですべての人を教えることができなかった。そこで彼は、自分の語る言葉を民が聞けるように、やぐらを建てさせた。
08 そして王は、そのやぐらから民に語り始めた。しかし、大勢の群衆であったため、王の言葉を聞けない者もいた。それで王は、自分の語る言葉を書き取らせ、それを声の届かない所にいる人々のもとに送って、彼らにもその言葉を知らせた。
09 このときにベニヤミン王が語って書き取らせた言葉は、次のとおりである。「こうして連れ立って集まり、今日わたしが語る言葉を聞くことのできる同胞よ、わたしがあなたがたにここに来るように命じたのは、これからわたしが語る言葉を軽んじさせるためではない。わたしの言葉を聴かせるためである。だから、耳を開いて聞き、胸を開いて理解し、また心を開いて、神の奥義があなたがたの心に明らかにされるようにしなさい。
10 わたしがあなたがたに、ここに来るように命じたのは、あなたがたにわたしを畏れさせるためでもなければ、わたしが死すべき人間以上の者であると思わせるためでもない。
11 わたしはあなたがたと同じで、心身ともにあらゆる弱さを持っている。それでもわたしは、この民を治める統治者となり王となるように、この民に選ばれ、父によって任じられ、主の御手によって認められた。そして、主から授かった勢力と思いと力を尽くしてあなたがたのために努めるように、主のたぐいない力によって守られてきたのである。
12 あなたがたに言うが、わたしは現在まで、生涯をあなたがたのための務めに費やすことを許されてきた。しかし、金も銀も、そのほかどんな富もあなたがたに求めたことはない。
13 わたしはあなたがたを地下牢に閉じ込めることも、あなたがたが互いを奴隷にすることも、殺すことも、略奪することも、盗むことも、姦淫を犯すことも許したことはない。また、あなたがたがどのような悪を行うことも許したことはなく、主から命じられたすべてのことについて、主の戒めを守るようにあなたがたに教えてきた。

14 そして、わたし自身でさえ、自分の手を使って働いてきた。それは、わたしがあなたがたのために務めることができるように、またあなたがたが税に苦しむことなく、それに、堪え難いことを何一つ身に受けなくてもよいようにするためであった。わたしがこれまで語ったこれらすべてのことについては、今日あなたがた自身がその証人である。
15 しかし、わたしの同胞よ、わたしは自慢するためにこれらのことを行ってきたのでもなければ、あなたがたを責めるためにこれらのことを語っているのでもない。これらのことを語るのは、わたしが今日神の御前で澄んだ良心をもって申し開きができるということを、あなたがたに知らせるためである。
16 見よ、わたしはあなたがたに言う。わたしは自分の生涯をあなたがたのための務めに費やしてきたと言ったが、それは自慢したくて言ったのではない。わたしは神のために務めてきたにすぎないからである。
17 そして見よ、わたしがこれらのことを語るのは、あなたがたに知恵を得させるためである。すなわち、あなたがたが同胞のために務めるのは、とりもなおさず、あなたがたの神のために務めるのであるということを悟らせるためである。
18 見よ、あなたがたは、わたしのことを王と呼んできた。あなたがたが王と呼んでいるわたしでさえも、あなたがたのために務めているとすれば、ましてあなたがたは、互いに務め合うようにすべきではないだろうか。
19 また見よ、あなたがたから王と呼ばれ、生涯をあなたがたのための務めに費やし、それによって神に仕えてきたわたしが、あなたがたから幾らかでも感謝を受ける値打ちがあるとすれば、おお、あなたがたはどれほど天の王に感謝すべきであろうか。
20 わたしの同胞よ、わたしはあなたがたに言う。あなたがたを造り、あなたがたを守り、あなたがたに喜びを得させ、互いに平和に暮らせるようにしてくださった神に、たとえあなたがたが全身全霊の力を尽くして一切の感謝と賛美をささげたとしても、
21 さらに言うが、あなたがたがまた、たとえ世の初めからあなたがたを造り、あなたがたが自分の意のままに生きて動き、行動できるようにあなたがたに息を与えて日々守り、いかなる瞬間にもあなたがたを支えてくださっている御方に、たとえ全身全霊を尽くして仕えたとしても、それでもなお、あなたがたはふつつかな僕である。
22 見よ、神があなたがたに要求しておられるのは、神の戒めを守ることだけである。そして神は、戒めを守るならばこの地で栄えると約束してくださっている。神は一度言われたことは決して変更されないので、あなたがたが神の戒めを守れば、神はあなたがたを祝福し、栄えさせてくださる。
23 さて、まず第1に、神はあなたがたを造り、あなたがたに命を与えられた。そのために、あなたがたは神に恩を受けている。
24 そして第2に、神はあなたがたが神から命じられたとおりに行うことを要求しておられる。そして、あなたがたが命じられたとおりに行うならば、神はすぐに祝福を授けてくださる。また現にこれまで、あなたがたに報いてくださった。そのためにあなたがたは、今も神に恩を受けているし、これからもとこしえにいつまでも恩を受けるであろう。だから、あなたがたに何か自慢できるものがあるだろうか。
25 さて、わたしは尋ねたい。あなたがたは自分自身のことを何か少しでも言えるだろうか。言えないと、わたしはあなたがたに答える。あなたがたは、大地のちりに等しい者であるとさえ言うことができない。あなたがたは大地のちりから造られたが、見よ、そのちりは、あなたがたを造られた御方のものである。
26 そしてわたし、すなわちあなたがたが王と呼ぶわたしでさえも、あなたがたより優れてはいない。わたしもちりから造られた者だからである。そして、あなたがたの見るとおり、わたしは年を取り、まさに死すべき体を母なる大地に返そうとしている。
27 それでわたしは、自分が澄んだ良心をもって神の御前を歩みながら、あなたがたのために務めてきたと言ったが、この度わたしがあなたがたを集めさせたのは、わたしがあなたがたに関して神から命じられてきたことについて、神に裁かれるために立つときに、わたしが罪なしと認められるように、また、あなたがたの血がわたしに降りかかることのないようにするためである。
28 わたしはあなたがたに言う。わたしがあなたがたを集めさせたのは、わたしがまさに墓に入ろうとしているこの時期に、わたしの衣からあなたがたの血を取り除いて安らかに行けるように、またわたしの不滅の霊が天の聖歌隊に加わって、公正な神を賛美して歌えるようにするためである。
29 さらにあなたがたに言う。あなたがたを集めたのは、わたしがもはや、あなたがたの教師ではなく王でもないことを告げ知らせるためである。
30 あなたがたに語っている今でさえ、わたしの全身はひどく震えている。しかし、主なる神がわたしを支えてくださっている。そして、主なる神はあなたがたに語れるようにしてくださり、息子モーサヤがあなたがたを治める王であり統治者であることを、今日宣言するようにわたしに命じられた。
31 さて、わたしの同胞よ、今まで行ってきたことをこれからも行ってほしい。あなたがたはわたしが命じたことと、わたしの父が命じたことを守って栄え、敵の手に落ちないように守られてきたが、同じように今後もわたしの息子の命じること、すなわち息子があなたがたに告げる神の戒めを守るならば、あなたがたはこの地で栄え、敵はあなたがたを支配する権力をまったく持たないであろう。
32 しかし、おお、わたしの民よ、あなたがたの中に争いが起こらないように、また父のモーサヤが語った悪霊に従おうとすることのないように気をつけなさい。
33 見よ、あの霊に従おうとする者には、災いが宣言される。もしも悪霊に従うことを望んで、罪の中にとどまったまま死ぬならば、自分自身に罰の定めを招く。なぜならその人は、知っていながら神の律法に背き、その報いとして永遠の罰を受けるからである。
34 わたしはあなたがたに言う。あなたがたの中には幼い子供たちを除いて、これらのことについて教えられていない者はだれ一人おらず、あなたがたは自分の持ち物と能力をすべてささげるに値するほど、天の御父にとこしえに恩を受けていることを知っている。また、わたしたちの先祖リーハイがエルサレムを去るときまで、聖なる預言者たちが語ってきた数々の預言を載せている記録についても、あなたがたは教えられてきた。
35 また、これまで先祖が語ってきた事柄もすべて教えられている。そして見よ、彼らは、主から命じられたことを語ったので、それらは正しくて真実である。
36 さて、わたしの同胞よ、わたしはあなたがたに言う。あなたがたがこれらのことをすべて知った後、また教えられた後、もしもそれに背いてすでに告げられていることに反した行いをし、主の御霊から身を引いて、祝福と繁栄と守りを得るための知恵の道に導く御霊を自分の内に宿さないようにするならば、
37 わたしはあなたがたに言うが、このようにする者は、公然と神に背く者であって、悪霊に従うことを望み、あらゆる義の敵となる。したがって、主は清くない宮には住まわれないので、このような者の内には決して宿られない。
38 そこで、その者がもしも悔い改めず、神の敵である状態で死ぬならば、神の正義の要求が、その者の不滅の霊に強烈な罪の意識を起こさせる。そして、その罪の意識のために、その者は主の御前からしりごみし、またその胸は罪悪感と心痛と苦しみで満たされる。その罪悪感と心痛と苦しみは、炎がとこしえにいつまでも立ち上る、消すことのできない火のようである。
39 さて、わたしはあなたがたに言う。そのような者には憐れみは及ばない。したがって、その者の最後の状態は、決して終わることのない苦痛に耐えることである。
40 おお、わたしの言葉を理解できるすべての年老いた人々よ、若い人々よ、幼い子供たちよ。わたしはあなたがたが理解できるように、分かりやすく語ってきた。わたしはあなたがたが目を覚まして、神の律法に背いた者の受ける恐ろしい状態を思い起こすように祈っている。

41 そしてさらにあなたがたは、神の戒めを守る者の祝福された幸福な状態についても考えてほしい。見よ、これらの者は物質的にも霊的にも、すべてのことについて祝福を受ける。そして、もし最後まで忠実であり続けるならば、彼らは天に迎えられ、決して終わりのない幸福な状態で神とともに住めるのである。これらのことが真実であることを記憶にとどめ、覚えておきなさい。主なる神がこれを言われたからである。」

第3章

ベニヤミン王、説教を続ける。全能の主が将来、土の幕屋に宿って、人々の中で教え導かれる。主が世の罪を贖われるとき、あらゆる毛穴から血が流れ出る。主の名は救いをもたらす唯一の名である。人は贖罪によって、生まれながらの人を捨てて聖徒となることができる。悪人の受ける苦痛は、火と硫黄の池である。紀元前約124年。

01 「また、わたしの同胞よ、わたしはもう少しあなたがたに話したいことがあるので、さらにあなたがたの注意を促したい。見よ、将来起こる出来事について述べることがある。
02 そして、これから述べることは、神から遣わされた天使がわたしに知らせてくれたものである。天使がわたしに、『目を覚ましなさい』と言ったので目を覚ましたところ、見よ、天使はわたしの前に立っていた。
03 そして、天使はわたしに言った。『目を覚まして、わたしが告げる言葉を聞きなさい。見よ、わたしはあなたに、胸躍る大いなる喜びのおとずれを告げ知らせよう。
04 主はあなたの祈りを聞き、あなたの義を裁かれた。そして、わたしを遣わしてあなたに告げ知らせ、あなたが喜びを得られるように、またあなたが民に告げ知らせて、あなたの民も喜びに満たされるようにされた。

05 見よ、現在世を統治しておられ、永遠から永遠にわたってまします全能の主が、力をもって天から人の子らの中に降って来て、土の幕屋に宿り、人々の中に出て行って大きな奇跡を行われる時が来る。しかもそれは遠い先のことではない。この御方はそのときに、病人を癒し、死者を生き返らせ、足の不自由な者を歩けるようにし、目の見えない者を見えるようにし、耳の聞こえない者を聞こえるようにし、すべての病気を癒される。

06 またこの御方は、悪霊、すなわち人の子らの心の中にとどまる悪い霊どもを追い出される。

07 見よ、この御方は数々の試練に耐え、肉体の苦痛や飢え、渇き、疲労に耐えられるが、それは、人にとっては死ぬ以外に耐えようのないものである。見よ、御自分の民の悪事と忌まわしい行いのためにこの御方が受けられる苦しみは非常に激しく、あらゆる毛穴から血が流れ出るほどだからである。
08 そしてこの御方は、イエス・キリスト、神の御子、天地の父、時の初めからの万物の創造主と呼ばれ、母はマリヤと呼ばれる。

09 見よ、この御方は、御自分の民のところに来られ、人の子らがその御名を信じる信仰を持ちさえすれば、救いが与えられるようにされる。ところが、このようなことがあるにもかかわらず、彼らはこの御方をただの人と思い、また悪魔につかれていると言い、この御方を鞭打ち、十字架につける。

10 しかしこの御方は、3日目に死者の中からよみがえられる。そして見よ、この御方は世を裁く立場に立たれる。また見よ、これらのことはすべて、人の子らに義にかなった裁きが下されるために行われるのである。
11 そして見よ、この御方の血は、アダムの背きのために堕落した者たちの中で、自分たちに関する神の御心を知らずに死んだ者たち、あるいは気づかないで罪を犯した者たちの罪も贖う。
12 しかし、自分が神に背いていることを承知している者は、災いである。災いである。悔い改めて、主イエス・キリストを信じるのでなければ、このような者には決して救いは与えられないからである。
13 そして、主なる神はこれらのことをすべての部族、国民、国語の民に告げ知らせるために、聖なる預言者たちをすべての人の子らの中に遣わされた。またそのことによって、キリストが来られると信じるすべての者が、あたかもキリストが自分たちの中にすでに来ておられるかのように自分たちの罪の赦しを受け、また非常に大きな喜びを味わえるようにされた。
14 しかし、主なる神は御自分の民が強情な民であることを知って、彼らに律法、すなわちモーセの律法を定められた。
15 そして主なる神は、御自分の来臨に関する多くのしるしと不思議、予型と影を彼らに示された。聖なる預言者たちもまた、主の来臨について彼らに語った。それでも、彼らは心をかたくなにし、主の血の贖罪によらなければモーセの律法は決して役に立たないということを理解しなかった。
16 また幼い子供たちは、たとえ罪を犯すことができるとしても、贖罪がなければ救いは得られない。しかし、あなたに言っておくが、幼い子供たちは祝福されている。見よ、アダムによって、すなわち生まれながらの本性のために人は堕落することがあるが、それと同じように、キリストの血は人の罪を贖うからである。
17 さらにわたしはあなたに言う。全能の主であるキリストの御名のほか、またその御名を通じてでなければ、どのような名も道も方法も、人の子らに救いをもたらすことはできない。
18 見よ、主は裁きをなさり、その裁きは公正である。そして、幼いときに死ぬ乳飲み子は滅びることがない。しかし、大人はへりくだって幼い子供のようになり、救いは過去も現在も未来も、全能の主であるキリストの贖いの血によって、また贖いの血を通じてのみ与えられるということを信じないかぎり、自分自身に罰の定めを招く。
19 生まれながらの人は神の敵であり、アダムの堕落以来そうであって、今後もそうである。また人は、聖なる御霊の勧めに従い、主なるキリストの贖罪により、生まれながらの人を捨てて聖徒となり、子供のように従順で、柔和で、謙遜で、忍耐強く、愛にあふれた者となり、子供が父に従うように、主がその人に負わせるのがふさわしいとされるすべてのことに喜んで従わないかぎり、とこしえにいつまでも神の敵となるであろう。
20 そしてさらに、わたしはあなたに言う。救い主についての知識が、あらゆる国民、部族、国語の民、民族の間に広まる時が来る。
21 そして見よ、その時が来ると、悔い改めて全能者である主なる神の御名を信じるのでなければ、幼い子供たちを除いて、神の御前に罪がないと認められる者はだれもいないであろう。
22 また、今でさえ、すなわちあなたが主なる神から命じられてきたことを民に教える現在でさえ、わたしがあなたに語っている言葉に従わなければ、彼らはもはや神の目から見て罪がないとは認められない。
23 さて、わたしは主なる神が命じられた御言葉を語り終えた。
24 そして、主はこのように言われる。「これらの言葉は裁きの日にこの民を責める明らかな証となる。これらの言葉によって、この民はそれぞれ皆、自分の行いが善いかそれとも悪いか、その行いに応じて裁かれる。
25 そして、もし行いが悪ければ、彼らは自分の罪と忌まわしい行いの恐ろしい思いに引き渡される。そして、その恐ろしい思いは彼らを主の前からしりごみさせ、決して戻ることのできない、惨めな無窮の苦痛の状態に彼らを陥れる。これらの者は、自分自身に罰の定めを招いたのである。
26 それゆえ、これらの者は神の激しい怒りの杯から飲んだのである。正義は彼らに対する怒りの杯を取り消すことはできない。それは、アダムが禁断の実を食べたために堕落することになったのを取り消せないのと同様である。したがって、憐れみはもはやとこしえに彼らに及ぶことはない。
27 そして、彼らの受ける苦痛は、消えることなく炎が上り、とこしえにいつまでも煙を吐く火と硫黄の池のようである。」主はこのように言うことをわたしに命じられた。アーメン。』」

第4章

ベニヤミン王、説教を続ける。贖罪のゆえに救いが及ぶ。救われるように神を信じること。忠実であることによって罪の赦しを保つこと。貧しい者に持ち物を分け与えること。賢明に秩序正しくすべてのことを行うこと。紀元前約124年。


01 さて、ベニヤミン王が、主の天使から告げられた言葉を語り終えて、群衆を見渡したところ、見よ、彼らは地に伏していた。主への畏れが彼らに生じたからである。

02 そして彼らは、自分たちがこの世的な状態にあり、大地のちりよりも劣っていると思った。そして彼らは皆、声を合わせて大声で叫んだ。「おお、憐れんでください。わたしたちが罪の赦しを受けて心が清められるように、キリストの贖いの血の効力を及ぼしてください。わたしたちは、天地と万物を創造され、また将来人の子らの中に降って来られる神の御子イエス・キリストを信じています。」

03 そして、彼らがこれらの言葉を語り終えると、主の御霊が彼らに降られた。そして彼らは、罪の赦しを受け、良心の安らぎを得たので、喜びに満たされた。それは、彼らがベニヤミン王の語った言葉のとおりに、将来来られるイエス・キリストを深く信じたためである。
04 それからベニヤミン王は、再び口を開いて彼らに語り始めた。「わたしの友よ、わたしの同胞よ、わたしの親族よ、わたしの民よ、これからわたしが語る言葉を聞いて理解できるように、もう一度あなたがたの注意を促したい。
05 見よ、もしも今、あなたがたが神の慈しみを知ったことで、自分たちを無力な者、値打ちのない者、堕落した状態にある者と感じるようになっているならば、
06 あなたがたに言うが、もしあなたがたが、神の慈しみと神のたぐいない力、神の知恵、神の忍耐、人の子らへの神の寛容を知るようになり、また主に頼り、主の戒めを熱心に守って、自分の生涯、すなわち、死すべき体の生涯の最後まで信仰を持ち続ける人に救いが与えられるように、世の初めから贖罪が備えられてきたことをも知るようになったならば、
07 わたしは言うが、その人は、アダムの堕落以来この世に住んだ、あるいは現在住んでいる、あるいは世の終わりまでに住む全人類のために、世の初めから備えられた贖罪によって救いを受ける人である。
08 これが救いが与えられる方法である。これまで語ってきたこのことのほかにどのような救いもなく、わたしがあなたがたに述べてきた条件のほかに人が救われる条件はない。

09 神を信じなさい。神がましますことと、神が天と地の万物を創造されたことを信じなさい。神はすべての知恵を備え、また天と地の両方で一切の権威を持っておられることを信じなさい。さらに、人は主が理解される事柄すべては理解しないということを信じなさい。

10 さらにあなたがたは、罪を悔い改めてその罪を捨て、神の御前にへりくだらなければならないことを信じなさい。そして、神があなたがたを赦してくださるように真心から求めなさい。これらのことをすべて信じるならば、必ずそれを実行しなさい。
11 そして再び、すでに語ったように、わたしはあなたがたに言う。あなたがたはすでに神の栄光を知るようになったので、すなわち、神の慈しみを知り、神の愛を味わい、心にこのような非常に大きな喜びを与えた罪の赦しを受けたので、今後も神の偉大さと自分自身の無力さ、それに取るに足りない人間であるあなたがたに対する神の慈しみと寛容、これらを覚えて、いつも記憶にとどめておくようにしてほしい。また、心底謙遜にへりくだって、日々主の御名を呼び、天使の口を通して語られた将来の出来事を確固として信じ続けてほしい。
12 そして見よ、わたしはあなたがたに言う。あなたがたがこのようにするならば、いつも喜びを感じ、神の愛で満たされ、またいつも罪の赦しを保てるであろう。またあなたがたを造られた御方の栄光、すなわち、正しく真実な事柄をますます知るようになるであろう。
13 またあなたがたは、互いに傷つけ合う心を持たず、平和に暮らし、あらゆる人にその人が当然受けるべきものを与えたいと思うようになるであろう。

14 またあなたがたは、自分の子供たちが飢えていたり、着る物がなかったりするのをほうってはおかないであろう。あなたがたは子供たちが神の律法に背くのも、互いに戦うのも、争い合うのもほうってはおかないであろう。また、罪の頭である悪魔、すなわち、わたしたちの先祖が語ってきた悪霊であり、あらゆる義の敵である悪魔に仕えることも許さないであろう。

15 むしろあなたがたは、彼らに真理の道をまじめに歩むように教えるであろう。互いに愛し合い、互いに仕え合うように教えるであろう。
16 そしてまた、あなたがたは自分自身でも、助けを必要としている人を助け、乏しい人に自分の持ち物を与えるであろう。また、物乞いがあなたがたに請い願うのに応じないで、追い払って死なせるようなことをしないであろう。
17 あるいは、あなたがたは次のように言うかもしれない。『その人は自分でその不幸を招いたのだから、わたしは手を差し伸べない。彼が苦しまなくて済むように食物を与えることはしないし、持ち物を分けることもしない。彼が罰を受けるのは当然なのだから。』
18 しかし人々よ、わたしはあなたがたに言う。このようにする者はだれでも、大いに悔い改める必要がある。このような者は、自分の行ってきたことを悔い改めなければ、とこしえに滅びて、神の王国にあずかることはない。
19 見よ、わたしたちは皆、物乞いではないだろうか。わたしたちは皆、持っているすべてのものについて、すなわち食物も衣服も、金も銀も、そのほか持っているあらゆる富について、同一の御方、すなわち神に依存してはいないだろうか。
20 そして見よ、今でさえあなたがたは神の御名を呼び、罪の赦しを請い願っている。神はあなたがたが請い願うのに応じないで、聞き流してこられただろうか。いや、神はあなたがたに御霊を注ぎ、あなたがたの心を喜びで満たし、あなたがたが語る言葉を見いだせないで口をつぐむほどにされた。それほどあなたがたの喜びが非常に大きかったのである。
21 さて、もしもあなたがたを造られた神、あなたがたが自分の命についても自分の持ち物と能力のすべてについても頼っている神が、あなたがたが必ず与えられると信じて、信仰をもって求める正当なものを、何でもすべて与えてくださるとすれば、ましてあなたがたは、自分たちの持っているものを互いに分かち合って当然ではないだろうか。
22 また、死を免れるために物乞いをする人を、あなたがたが裁いて罪に定めるならば、自分の持ち物を与えないことで罪に定められることの方が、もっと理にかなってはいないだろうか。あなたがたの持ち物はあなたがたのものではなく、神のものであり、命もまた神のものである。にもかかわらず、あなたがたは神にまったく物乞いをせず、自分の行ってきたことを悔い改めもしない。
23 わたしはあなたがたに言う。そのような者は災いである。その持ち物はその者とともに滅びるからである。わたしはこれらのことを、この世のものに富んでいる者たちに告げる。
24 さらに、わたしは、富めるほどではないが、日々の生活には足りるほどの物を持っているあなたがた貧しい人々、すなわち、自分にはないからということで、物乞いに与えることを断るあなたがたに言う。あなたがたは心の中で、『わたしにはないので与えないが、もしあれば与えるであろう』と言うようにしてほしい。
25 さて、このように心の中で言うのであれば罪はないが、そうでなければ罪に定められる。まだ得ていないものをむさぼるのであるから、罪の宣告を受けて当然である。
26 さて、あなたがたに語ってきたこれらのことのために、すなわち、神の御前を罪なく歩めるよう、日々罪の赦しを続けて受けるために、自分の持っている分に応じて、それぞれ持ち物を貧しい人に分け与えるようにしてほしい。例えば、飢えている人に食べさせ、着る物のない人に着せ、病人を見舞い、各々の入り用に応じて霊的にも物質的にも助けを与えることである。
27 これらのことはすべて、賢明に秩序正しく行うようにしなさい。人が自分の力以上に速く走ることは要求されてはいないからである。しかしまた、賞を得るために勤勉に励むのは必要なことである。したがって、何事も秩序正しく行うようにしなさい。
28 また、あなたがたはだれであっても、隣人から物を借りたなら、その物を約束どおりに返すようにしなければならないことを覚えておいてほしい。そうでなければ、自分が罪を犯すばかりでなく、隣人にも罪を犯させることになる。
29 最後に言うが、あなたがたが罪を犯すもとになることをすべて告げることはできない。その方法や手段はいろいろあって、数え上げられないほど多いからである。

30 しかし、これだけは言える。もし自分自身や自分の思い、言葉、行いに注意を払わず、神の戒めを守らず、主の来臨について聞いた事柄を生涯の最後まで信じ続けないならば、あなたがたは滅びるに違いない。おお、人々よ、覚えておきなさい。滅びてはならない。」

第5章

聖徒たちは、信仰によってキリストの息子および娘となる。その後、キリストの名によって呼ばれる。ベニヤミン王、確固として揺らぐことなく善い行いをするように民に説き勧める。紀元前約124年。


01 さて、ベニヤミン王はこのように民に語り終えると、自分の語った言葉を民が信じているかどうか知りたいと思い、使いを民の中に遣わした。
02 すると民は皆、声を合わせて叫んだ。「そのとおり、わたしたちは、王がわたしたちに語ってくださった言葉をすべて信じています。また、全能の主の御霊のおかげで、わたしたちは王の言葉が確かで真実であることを知っています。御霊は、わたしたちが悪を行う性癖をもう二度と持つことなく、絶えず善を行う望みを持つように、わたしたちの中に、すなわちわたしたちの心の中に大きな変化を生じさせてくださいました。
03 そして、わたしたち自身もまた、神の限りない慈しみと神の御霊の現れによって、将来起こることをはっきりと示されており、ふさわしければすべての物事について預言することができます。
04 また、この偉大な知識が与えられたのは、わたしたちが、王が語ってくださったことを信じたからです。その結果、わたしたちはこのように、非常に大きな喜びを得ています。

05 そしてわたしたちは、残りの全生涯、神の御心を行い、神から命じられるすべてのことについて神の戒めに従うという聖約を交わします。そして、天使によって告げられたような、決して終わることのない苦痛を自分自身に招くことのないように、また神の激しい怒りの杯から飲まないようにします。」
06 さて、これはベニヤミン王が彼らから聞きたいと望んでいた言葉であった。そこで、王は彼らに言った。「あなたがたは、わたしの望んでいた言葉を語ってくれた。あなたがたが交わした聖約は義にかなった聖約である。
07 さて、あなたがたが交わした聖約のために、あなたがたはキリストの子と呼ばれ、キリストの息子および娘と呼ばれる。見よ、それは、今日キリストが霊的にあなたがたを子としてもうけられたからである。あなたがたは、キリストの御名を信じて心が改まったと言う。だから、あなたがたはキリストから生まれ、キリストの息子および娘となったのである。
08 そしてあなたがたは、この称号の下で自由を得た。このほかにはあなたがたに自由を得させる称号はない。救いをもたらす名はほかに与えられていない。だから、キリストの御名を受けて、神と聖約を交わしたあなたがたは皆、生涯の最後まで従順であってほしい。
09 そして、このとおりにする者はだれでも、自分がどのような名で呼ばれるか分かるので、神の右に見いだされるであろう。なぜならば、キリストの御名で呼ばれるからである。
10 そして、キリストの御名を受けない者はだれでも、何かほかの名で呼ばれる。それゆえ、神の左にいる自分に気づくであろう。
11 そして、これこそが、戒めに背かなければ決して消されることのない名で、わたしがあなたがたに与えると言ったその名であることをあなたがたは覚えておいてほしい。だから、この名があなたがたの心から消えてなくならないように、あなたがたは戒めに背くことのないよう注意しなさい。
12 わたしはあなたがたに言う。あなたがたはこの名をいつも心にしっかりと記しておくことを忘れないようにしてほしい。そうすればあなたがたは、神の左に見いだされることがなく、自分がどの声で呼ばれ、どの名で呼ばれるかが聞いて分かるであろう。
13 なぜならば、仕えたこともなく、見も知らぬ他人で、心の思いと志を異にしている主人を、どのようにして人は知ることができようか。
14 人はまた、隣人の持ち物であるろばを連れて来て、これを飼うだろうか。そのようなことはしないと、わたしはあなたがたに言おう。人は、そのろばが自分の群れの中で草をはむことさえ許さず、それを駆り立てて追い出すであろう。わたしはあなたがたに言う。もしあなたがたがどの名で呼ばれるのか知らなければ、同じようなことがあなたがたの中で起こるであろう。
15 したがって、あなたがたは確固として揺らぐことなく、いつも多くの善い行いをして、全能者である主なる神、キリストから御自分のものとして印を押されるように、また天に招き入れられて、永遠の救いと永遠の命にあずかるようにしてほしい。この永遠の救いと永遠の命は、天地の万物を創造された、あらゆるものに勝る神の知恵と力、公正、憐れみによって与えられるものである。アーメン。」

第6章

ベニヤミン王、民の名を記録し、彼らを教える祭司たちを任命する。モーサヤ、義にかなった王として統治する。紀元前約124年から121年に至る。

01 さて、ベニヤミン王は民に語り終えると、神の戒めを守るという聖約を神と交わしたすべての人の名を書き留めておく方がよいと思った。
02 そこで民は、幼い子供を除いて一人残らず聖約を交わし、キリストの名を受けた。

03 そして、さらにベニヤミン王は、これらのことをすべて終えると、息子モーサヤを聖別して民の統治者とし、王とし、王国に関する一切の責任を彼にゆだねた。また、民を教える祭司たちも任命した。人々が神の戒めを聞いて知ることができるように、またすでに立てた誓いを思い起こすように促すためである。その後、ベニヤミン王は群衆を解散させた。そこで民は、それぞれ家族ごとに各自の家へ帰って行った。
04 そして、モーサヤが父に代わって統治を始めた。モーサヤが統治を始めたのは30歳の年であり、リーハイがエルサレムを去ってからおよそ476年後のことになる。
05 そしてベニヤミン王は、その後3年生き長らえて死んだ。

06 さて、モーサヤ王は主の道を歩み、主の掟と裁決を守り、主から命じられたすべてのことについて主の戒めを守った。
07 またモーサヤ王は、民に地を耕させた。そして、彼自身も地を耕して、民に負担をかけることのないようにし、すべてのことについて、父の行ったとおりに行おうとした。そして3年間、民の中にはまったく争いがなかった。

第7章

アンモン、リムハイが王となっているリーハイ・ニーファイの地を発見する。リムハイの民、レーマン人の奴隷の状態にある。リムハイ、自分の民の歴史を語る。預言者(アビナダイ)はキリストが万物の神であり父であることを証した。汚れをまく者は旋風を受け、主を信頼する者は救われる。紀元前約121年。

01 さて、モーサヤ王は3年間引き続き平和を保った後、かつてリーハイ・ニーファイの地、すなわちリーハイ・ニーファイの町に住もうとして出て行った人々のことを知りたいと思った。それは、その人々がゼラヘムラの地を去って以来、何の音さたもなかったので、民がうるさく訴えて王を煩わしたからである。
02 そこでモーサヤ王は、16人の屈強な男たちがリーハイ・ニーファイの地へ出かけて行って、同胞のことを調べるのを許した。
03 そしてその翌日、彼らはアンモンという男とともに出発した。このアンモンは屈強な力の強い男で、ゼラヘムラの子孫であって、一行の統率者でもあった。
04 さて、彼らは、リーハイ・ニーファイの地へ行くのに、荒れ野をどの方向へ旅をしてよいか分からなかったので、荒れ野の中をさまよった。実に、40日間もさまよった。
05 そして、40日間さまよった後に、彼らはシャイロムの地の北方にある丘にたどり着き、そこに天幕を張った。
06 そしてアンモンは、一行の中からアマレカイ、ヘレム、ヘムという名の3人の同僚を連れて、ニーファイの地へ向かった。
07 すると見よ、彼らは、ニーファイの地とシャイロムの地に住む人々の王に出会った。そして、王の衛兵に取り囲まれて捕らえられ、縛られて牢に入れられてしまった。
08 そして彼らは、牢に2日置かれてから再び王の前に連れて行かれ、縄を解かれた。そして彼らが王の前に立つと、王の問いに答えるのを許された。いや、答えるように命じられた。
09 王は彼らに言った。「見よ、わたしはリムハイといって、ノアの息子である。ノアはゼニフの息子であり、このゼニフは先祖の土地であったこの地を継ごうとしてゼラヘムラの地から出て来て、民の声によって王となった者である。
10 ところで、わたしが衛兵と町の門の外にいたとき、おまえたちはなぜあえて城壁に近づいて来たのか。
11 わたしはそのことを尋ねるために、おまえたちを生かしておいた。そうでなければ、衛兵に殺させていたであろう。それでは、おまえたちが話すのを許す。」
12 さて、アンモンは話すのを許されたことを知ると、王の前に進み出て身をかがめ、また再び身を起こすと、次のように言った。「王様、わたしは今日、自分がまだ生きていて、話すのを許されたことを、神の御前に深く感謝しています。わたしは思い切って話したいと思います。

13 王様は、もしわたしのことを知っておられたら、きっとわたしを縛ることはなさらなかったでしょう。わたしはアンモンといって、ゼラヘムラの子孫で、ゼニフがゼラヘムラの地から連れて出た同胞のことを調べるために、その地からやって来た者だからです。」
14 そこでリムハイは、アンモンの言葉を聞いて非常に喜んで言った。「ゼラヘムラの地にいた同胞が、今もなお生きていることが確かに分かった。うれしいことだ。明日、わたしの民にも喜んでもらおう。
15 見よ、我らは今、レーマン人の奴隷となって堪え難い税をかけられている。しかしながら、見よ、同胞は我らを奴隷の状態から、すなわちレーマン人の手から救い出してくれるであろう。そうしたら、我らは同胞の奴隷になろう。レーマン人の王に貢ぎ物を納めるよりも、ニーファイ人の奴隷になる方がよい。」
16 そこでリムハイ王は衛兵たちに、もうアンモンも彼の同僚たちも縛ってはならないと命じた。そして、アンモンたちをシャイロムの北方にある丘に行かせ、同僚たちを町に連れて来させて、彼らが飲食し、旅の疲れをいやせるようにした。彼らは多くの苦しい目に遭い、飢えと渇きと疲労に苦しんできたからである。

17 そして翌日、リムハイ王はすべての民の中に布告を出し、すべての者が連れ立って神殿に集まり、王の語る言葉を聞くようにさせた。
18 そして民が連れ立って集まると、リムハイ王は彼らにこのように言った。「おお、わたしの民よ、頭を上げて慰めを得なさい。見よ、我らがもはや敵に隷従しなくて済む時が近づいている。それは遠い先のことではない。これまでの多くの戦いは実を結ばなかったが、実りある戦いがまだ残されていることを、わたしは確信している。

19 だから、頭を上げて喜び、神に頼りなさい。アブラハム、イサク、ヤコブの神に頼りなさい。この神はイスラエルの子らをエジプトの地から導き出し、乾いた地を歩いて紅海を渡らせ、また彼らが荒れ野で滅びることのないように、マナで彼らを養われた。そのほか、もっと多くのことをイスラエルの子らのためになさった。
20 さらに、この同じ神は、我らの先祖をエルサレムの地から導き出し、現在に至るまで御自分の民を守ってこられた。見よ、その神が我らを奴隷の状態に落とされたのは、我らの罪悪と忌まわしい行いのためである。
21 今日、あなたがたは皆、わたしが次に述べることの証人である。かつてこの民を治める王とされたゼニフは、先祖の地を受け継ぎたいという望みが強すぎたので、レーマン王の悪知恵と悪巧みにだまされてしまった。レーマン王はゼニフ王と条約を結び、国の領土の一部であるリーハイ・ニーファイの町とシャイロムの町、およびその周辺の土地をゼニフ王の手に渡した。
22 レーマン王がこうしたのは、この民を従える、すなわち奴隷の状態に置くというただ一つの目的があったからである。そして見よ、今我らは貢ぎ物として、とうもろこしの半分と大麦の半分とあらゆる穀物の半分、および大小の家畜の群れの増加分の半分をレーマン人の王に納めている。レーマン人の王は、実に我らの持つ、すなわち所有するすべてのものの半分を、我らから厳しく取り立てる。これを出さなければ、我らの命を求める。
23 これは堪え難いことではないか。我らの受けているこの苦難は、甚だしいではないか。見よ、嘆き悲しんで当然ではないか。
24 まことに、あなたがたに告げる。嘆き悲しんで当然な理由がたくさんある。何と多くの同胞が殺され、血が無駄に流されたことか。これはすべて罪悪の結果である。
25 もしこの民が戒めに背かなかったならば、主はこのように大きな災いが民のうえに及ぶのを許されなかったであろう。ところが見よ、民は主の御言葉に聞き従おうとしなかった。そして、民の中に争いが起こり、それが高じて彼らは血を流し合った。
26 また彼らは主の預言者、すなわち神の選ばれた人も殺した。まことに、その人は民に彼らの悪事と忌まわしい行いについて告げ、将来起こる多くのこと、まことにキリストの来臨さえ預言した。
27 その人は民に、キリストは万物の父なる神であられると述べ、またキリストは後に人の形を取られること、そしてその形は人が初めにそれに倣って造られた形であることを告げた。言い換えれば、人が神の形に造られたこと、また神が人の子らの中に降って来て血肉を受け、地の面に出て行かれることを、その人は民に告げたのである。
28 さて、その人がそう言ったので、民は彼を殺してしまった。また彼らは、ほかにももっと多くのことを行い、神の怒りを自分たちに招いたのである。だから、この民が現在奴隷の状態にあること、またひどい苦難に打たれていることを不思議に思う者がだれかいるであろうか。
29 見よ、主は言われた。『わたしは、自分の民が戒めに背く日にはこれを助けず、彼らが栄えないようにその道をふさごう。彼らの行いは、彼らの前に置かれたつまずきの石のようになる。』
30 さらに主は、『わたしの民は、もし汚れをまくなら旋風の中でその殻を取り入れることになる。そしてその結果は毒である』と言われる。
31 また、『わたしの民は、もし汚れをまくなら、速やかな滅亡をもたらす東風を招くことになる』と言われる。
32 さて見よ、主の約束は果たされ、あなたがたは打たれて苦しんでいる。
33 しかし、もしあなたがたが十分に固い決意をもって主に立ち返り、主に頼り、力のかぎり主に仕えるならば、もしあなたがたがこのようにするならば、主は御自分の意のまま、思いのままに、奴隷の状態から救い出してくださるであろう。」

第8章

アンモン、リムハイの民を教える。アンモン、ヤレド人の24枚の版のことを知る。聖見者は昔の記録を翻訳することができる。聖見者の賜物より大いなる賜物はない。紀元前約121年。

01 さて、リムハイ王は民に多くのことを語ったが、わたしはその中からわずかな事柄だけをこの書に書き記した。王は民に語り終えると、ゼラヘムラの地にいる同胞についても、すべてのことを彼らに告げた。
02 そして彼はアンモンを群衆の前に立たせて、ゼニフがゼラヘムラを立ち去ったときからアンモン自身がゼラヘムラを出るときまでに同胞に起こったことを、すべて詳しく語らせた。
03 そこでアンモンはリムハイ王の民に、ベニヤミン王がゼラヘムラの民に教えた最後の言葉についても詳しく語り、またリムハイ王の民がベニヤミン王の語った言葉をすべて理解できるように、その言葉を解説した。
04 そして、アンモンがこれをすべて終えると、リムハイ王は群衆を解散させ、一人残らず各自の家に帰らせた。
05 そして王は、彼の民がゼラヘムラの地を出たときからの記録が載っている版をアンモンの前に持って来させ、彼がそれを読めるようにした。
06 さて、アンモンがその記録を読み終えるとすぐに、王は彼に外国の言葉を翻訳できるかどうか尋ねた。アンモンはできないことを王に告げた。
07 そこで王はアンモンに言った。「わたしは民の苦難を見て悲しく思い、民の中から43人の者を荒れ野へ旅立たせた。彼らがゼラヘムラの地を見つけ、我らを奴隷の状態から救い出してくれるように同胞に頼めると思ったからである。
08 ところが彼らは、幾日もの間荒れ野の中で迷ってしまった。それでも彼らは熱心に探したので、ゼラヘムラの地は見つからなかったものの、またこの地に戻って来た。その間、彼らは多くの水のある地方を旅し、人間と獣の骨が辺り一帯に散乱しており、またあらゆる建物の廃虚が一面に散在している地を発見した。すなわち、イスラエルの大群ほどに数多くの人が住んでいた地を発見した。
09 そして彼らは、自分たちの語ることが真実であるという証拠として、文字が一面に刻んである24枚の版を持ち帰った。その版は純金でできている。
10 また見よ、彼らは幾つかの大きな胸当ても持ち帰ったが、それらは真鍮と銅でできており、まったく傷んでいない。
11 さらに彼らは、剣も何本か持ち帰ったが、その柄は朽ち、刃はさびで腐食していた。ところで、その言葉、すなわちその版に刻まれている事柄を解釈できる者はこの地に一人もいない。だからあなたに、翻訳できるかと尋ねたのである。
12 わたしはもう一度言うが、あなたは翻訳のできる人をだれか知っているか。わたしはこの記録をわたしたちの言葉に翻訳してもらいたい。そうすればこの記録から、この記録を残して滅びた民の残りの者のことがきっと分かるであろう。あるいは、滅びてしまったこの民そのものについて、分かるかもしれない。わたしは、彼らが滅びた訳を知りたい。」
13 そこでアンモンは王に言った。「王様、わたしはその記録を翻訳できる人を確かにお教えできます。その方は、あるものを持っていて、それを使って見れば、昔の記録でもすべて翻訳することができます。それは神から授けられた賜物です。それは解訳器と呼ばれており、神から命じられないかぎり、だれもそれをのぞいて見ることはできません。求めてはならないものを求めて滅びることのないためです。また、それをのぞいて見るように命じられる人は、聖見者と呼ばれます。
14 まことに、ゼラヘムラの地にいる民の王が、これらのことを行うように命じられた方で、神からこの貴い賜物を授かっています。」
15 すると王は、「聖見者は預言者よりも偉大である」と言った。
16 そこでアンモンは言った。「聖見者は啓示者であり、預言者でもあります。だれ一人として持つことのできないこの神の力を備えていなければ、これより大いなる賜物をだれも持つことはできません。しかし、大きな力が神から授けられることもあります。
17 聖見者は過去のことも将来のことも知ることができます。解訳器によってすべてのことが示されるのです。というよりむしろ、秘密のことが明らかにされ、隠れたことが明るみに出るのです。知られていないことが解訳器によって知られるようになり、またほかの方法では知ることのできないことが、解訳器によって知られるようになります。
18 このように、神は人が信仰によって偉大な奇跡を行うことができるように、一つの手段を与えてくださいました。それでその人は、同胞に大きな利益をもたらすようになるのです。」
19 さて、アンモンがこれらの言葉を語り終えると、王は非常に喜び、次のように言いながら神に感謝した。「これらの版には疑いもなく大いなる奥義が載っている。そしてその解訳器は、このようなすべての奥義を人の子らに明らかにするために備えられたものである。
20 おお、主の業は何と驚くべき業であろう。主は何と長い間、民のために耐えてこられたことか。人の子らは何と理解力がなく鈍感なことか。人の子らは知恵を求めようとせず、また知恵に支配されるのを望まない。
21 まことに人の子らは、羊飼いから逃げて散り散りになり、森の獣に追われてえじきになる野生の羊の群れのようだ。」

ゼニフの記録――ゼラヘムラの地を出てからレーマン人の手より救い出されるまでのゼニフの民の話。次の第9〜22章がそれに相当する。

第9章

ゼニフ、リーハイ・ニーファイの地を所有するためにゼラヘムラから人々を率いて行く。レーマン人の王、彼らがその地を受け継ぐことを認める。レーマン人とゼニフの民の間に戦争が起こる。紀元前約200年から187年に至る。


01 わたしゼニフはニーファイ人の言葉のすべてを教えられており、また先祖の最初の受け継ぎの地であるニーファイの地のことも知っていたので、密偵としてレーマン人の中に遣わされた。それは、レーマン人の軍を偵察し、わたしたちの軍がこれを襲って滅ぼすためであった。しかし、わたしはレーマン人の中に善いものがあるのを見て、彼らが滅ぼされないように願った。
02 そこでわたしは、荒れ野で同胞と論争をした。わたしたちの統率者にレーマン人と条約を結んでもらいたかったからである。ところが、この統率者は冷酷で、血を流すことを好む男であったから、わたしを殺すように命じた。しかしわたしは、多くの流血の末に救い出された。父親同士が戦い、兄弟同士が戦って、とうとうわたしたちの軍の大半が荒れ野で死んでしまった。そこでわたしたち、すなわち命の助かった者は、ゼラヘムラの地に帰り、死んだ者の妻や子供たちにその出来事を話した。
03 それでもわたしは、先祖の地を受け継ぎたいという望みが強かったので、行ってその地を所有したいと思う人々を皆集め、その地へ出て行こうと再び荒れ野へ旅立った。しかしわたしたちは、主なるわたしたちの神を思い起こすのが遅かったので、飢饉やひどい苦難に悩まされた。
04 にもかかわらず、わたしたちは多くの日を荒れ野でさまよった末、前に同胞の殺された場所に天幕を張った。そこは、わたしたちの先祖の地に近い所であった。
05 そしてわたしは、一行のうち4人の男たちを伴って再び町へ行き、王のもとを訪れた。それは、王の意向を知り、またわたしの民を連れてその地へ入り、平穏にその地を所有できるかどうかを知るためであった。

06 王のもとに行くと、王はわたしにリーハイ・ニーファイの地とシャイロムの地を所有してもよいと誓約してくれた。
07 王はまた、その地に住んでいる民に立ち退くように命じてくれた。そこでわたしとわたしの民はこの地に入り、ここを所有することになった。

08 そこで、わたしたちは数々の建物を建設し、町の城壁、すなわち、リーハイ・ニーファイの町とシャイロムの町の城壁の補修に着手した。
09 また、わたしたちは地を耕し、あらゆる種、すなわち、とうもろこしや小麦、大麦の種、またニアスや、シウム、それにすべての種類の果物の種をまき始めた。こうしてわたしたちはこの地で増え、栄え始めた。
10 レーマン王がこの地を譲って、わたしたちがここを所有できるようにしてくれたのは、わたしの民を奴隷にしようとする彼の悪知恵と悪巧みによるものであった。

11 さて、わたしたちがこの地に住んで12年たつと、レーマン王は、わたしの民が何らかの方法でこの地で強くなり、自分たちがわたしの民を打ち負かして奴隷にすることができなくなるのではないかと、心配になってきた。
12 レーマン人は怠惰で偶像を礼拝する民であったから、わたしたちを奴隷にして、わたしたちの手の労働によって腹を満たし、まことに、わたしたちの牧場の家畜の群れを飽きるほど食べたいと思っていた。
13 そこでレーマン王が、民を扇動してわたしの民と戦わせるようにしたので、この地に戦争と争いが起こり始めた。
14 ニーファイの地でのわたしの治世の第13年に、民がシャイロムの地のはるか南で家畜の群れに水を飲ませ、草をはませ、また地を耕していたとき、レーマン人の大軍が襲いかかって彼らを殺し始め、家畜の群れと畑のとうもろこしを奪い始めた。

15 そして、レーマン人に追いつかれなかった者は皆、ニーファイの町へ逃げ込み、わたしに保護を求めてきた。
16 そこでわたしは、弓と矢、剣、三日月刀、こん棒、石投げ、そのほか考えつくかぎりのあらゆる武器で彼らを武装させた。そして、わたしと民はレーマン人と戦うために出陣した。

17 まことにわたしたちは、主の力を受けて、レーマン人と戦うために出陣した。わたしと民は、先祖が救われたことを思い出し、わたしたちを敵の手から解放してくださるように主に熱烈に叫び求めた。
18 すると神は、わたしたちの嘆願を聞き、祈りにこたえてくださった。そして、まことにわたしたちは神の力を受けて出て行き、レーマン人と戦って1昼夜に3043人を殺した。わたしたちはレーマン人を殺して、とうとうわたしたちの地から彼らを追い払ってしまった。
19 そしてわたしも、自分の手でレーマン人の死体を葬るのを手伝った。しかし見よ、わたしたちにとって非常に悲しく、また痛ましいことであるが、わたしたちの同胞も279人殺された。


【動画】ゼニフ


第10章

レーマン王、死ぬ。レーマン人は野蛮であり、残忍で、偽りの言い伝えを信じている。ゼニフと彼の民、レーマン人に勝利を得る。紀元前約187年から160年に至る。

01 さて、わたしたちは再び王国の確立に着手し、また再び平穏にその地を所有することになった。わたしはあらゆる武器を造らせ、レーマン人がまたやって来てわたしの民と戦いをするときに備えて、民が武器を持てるようにした。

02 また、わたしはこの地の周囲に見張りの兵を置き、レーマン人がまた不意に襲って来て、わたしたちを滅ぼすことのないようにした。こうしてわたしは、民と家畜の群れを守って、敵の手に落ちないようにした。
03 そして、わたしたちは長年、まことに22年の間先祖の地を受け継いだ。

04 わたしは、男たちには地を耕させて、あらゆる穀物とあらゆる果物を栽培させた。
05 そして、女たちには糸を紡がせ、骨折って働かせ、わたしたちの裸にまとうあらゆる織り目の細かい亜麻布と、あらゆる織物を織らせた。このようにして、わたしたちはこの地で栄え、22年間この地は引き続き平和であった。

06 さて、レーマン王が死んで、代わって息子が統治を始めた。彼は、わたしの民に敵対して立ち上がるように、自分の民を扇動し始めた。そのため、彼らは戦争の準備を始め、攻めて来てわたしの民と戦おうとした。
07 しかしわたしは、シェムロンの地の方々に密偵を出していた。そうすることによって、レーマン人の準備の状態を知って彼らに対する防備を固め、民が襲われて滅びることのないようにしたのである。
08 さて、彼らは大軍でシャイロムの地の北方に進軍して来た。その兵は、弓と矢、剣、三日月刀、石、石投げで武装しており、頭をそり、腰に皮帯を締めていた。
09 そこでわたしは、民の中の女子供を荒れ野に隠れさせた。そして、武器を持てる男たちを、年老いた者も若い者も皆、レーマン人と戦うために集合させ、それぞれの年齢に応じて整列させた。

10 そしてわたしたちは、レーマン人と戦うために出て行った。わたしも年老いていたが、レーマン人と戦うために出て行った。わたしたちは戦うために主の力を受けて出て行った。
11 さて、レーマン人は主についても主の力についてもまったく知らなかったので、自分の力だけを頼みにしていた。しかし、人の力について言えば、彼らは強い民であった。
12 彼らは野蛮で残忍で、血に飢えた民であって、先祖の言い伝えを信じていた。彼らが信じている言い伝えとは、彼らの先祖はそのまた先祖の罪悪のためにエルサレムの地から追い出されたこと、そして、荒れ野で同胞から不当な扱いを受け、また航海中にも不当に扱われたということである。
13 そしてまた、海を渡った後も、彼らは最初の受け継ぎの地で不当な扱いを受けたというのであった。しかし、これはすべて、ニーファイが兄たちよりも忠実に主の戒めを守ったためである。そのためニーファイは主の恵みを受けた。主はニーファイの祈りを聞いて、祈りにこたえられた。そしてニーファイは、荒れ野で彼らの旅を導いたのである。
14 ところが兄たちは、主の計らいを理解しなかったので、ニーファイに対して腹を立てた。彼らは主に対して心をかたくなにしたので、海の上でも彼に対して腹を立てた。
15 そしてまた、彼らは約束の地に着いてからも、ニーファイが民を治める権限を自分たちから奪ったと言って彼に対して腹を立て、彼を殺そうとした。
16 そしてまた、ニーファイが主に命じられるままに荒れ野へ出て行き、しかも真鍮の版に刻まれた記録を持って行ったので、彼らはニーファイがその記録を自分たちから盗んだと言って、彼に対して腹を立てた。
17 このようにして、彼らは子供たちに、ニーファイの子孫を憎むように、また彼らを殺すように、彼らから盗み、略奪し、彼らを滅ぼすためにできるかぎりのことをするように教えた。そのためにレーマン人は、ニーファイの子孫に対して、尽きることのない憎しみを抱いている。
18 まさにこのために、レーマン王は悪知恵と悪巧みを働かせ、もっともらしい約束をしてわたしをだまし、この民をこの地へ連れて来るようにさせて、彼の民にわたしの民を滅ぼさせるようにしたのである。それでわたしたちは、長年の間この地で苦しんできた。
19 さて、わたしゼニフは、レーマン人についてこれらのことをすべて民に語り終えると、主を信頼して、力を尽くして戦いに出るように民を励ました。それからわたしたちは、レーマン人と相対して戦った。
20 そしてわたしたちは、レーマン人を再び自分たちの国から追い払った。わたしたちはレーマン人を大勢殺し、その人数は実に多かったので数えなかった。
21 そして、わたしたちは再び自分の土地へ帰り、民はまた家畜の群れの世話をし、地を耕し始めた。
22 さて、わたしは年老いて、王位を息子の一人に譲ったので、これ以上は述べない。主がわたしの民を祝福してくださるように。アーメン。

第11章

ノア王、邪悪な統治をし、妻やそばめたちとの放埒な生活にふける。アビナダイ、民が奴隷になることを預言する。ノア王、アビナダイの命をねらう。紀元前約160年から150年に至る。


01 さて、ゼニフが王位を息子の一人ノアに譲ったので、ノアが父に代わって統治を始めた。しかし、彼は父の道を歩まなかった。

02 見よ、ノア王は神の戒めを守らず、自分の心の望むままに歩んだ。彼は多くの妻とそばめを持ち、また民にも罪を犯させ、主の目から見て忌まわしいことを行わせた。そして彼の民は、みだらなこととあらゆる悪事とを行った。

03 また彼は、民が所有するすべてのものに5分の1の税をかけた。すなわち、民の金と銀の5分の1を、そしてジフと銅と真鍮と鉄の5分の1を、また民の肥えた若い家畜の5分の1を、それに穀物の5分の1を徴税した。

04 そして彼は、この税をすべて、自分自身と妻たちとそばめたち、また祭司たちとその妻たちとそばめたちの生活を支えるために取り立てた。このようにして彼は、王国の政務を変えてしまった。

05 彼はかつて父が任命した祭司たちをすべて辞めさせ、代わりに高慢な、心の高ぶっている新しい祭司たちを任命した。
06 このようにして、祭司たちは怠惰に暮らして、偶像を拝し、みだらな行いをしながら、ノア王が民に課した税で養われた。このように、民は罪悪を支えるために、非常な骨折りをしたのであった。
07 そして民はまた、王や祭司たちのむなしいへつらいの言葉にだまされ、彼らも偶像を礼拝するようになった。王や祭司たちが民にへつらい事を語ったからである。

08 そしてノア王は、風雅で広々とした建物をたくさん建て、それらの建物を見事な木細工と、金や銀、また鉄や真鍮やジフや銅などのあらゆる貴重な品から造った見事な細工で飾った。
09 彼はまた、自分のために大きな宮殿を建ててその中に王座を設けたが、それらはすべて上等な材木で作り、金や銀や貴重な品で飾った。
10 彼はまた職人たちに、上等な材木と銅と真鍮で、神殿内にあらゆる見事な細工をさせた。
11 そして彼は、ほかのすべての座よりも高い、大祭司たちのために設けられた座を純金で飾った。そして、大祭司たちがむなしい偽りの言葉を民に述べるときに、体と腕をもたせかけることができるように、台を作らせた。
12 そして彼は、神殿の近くに一つの塔、つまり非常に高い塔を建てた。それはきわめて高く、その上に立てば、シャイロムの地と、レーマン人の所有しているシェムロンの地と、付近一帯の地を見渡すことができた。
13 そして彼は、シャイロムの地にも多くの建物を建てさせ、シャイロムの地の北方の丘の上にも一つの大きな塔を建てさせた。そこはかつてニーファイの子らが、この地から逃げ出したときに集合場所とした所であった。ノア王は民に課税して得た富でこのように行った。

14 さて、王は富に心を寄せ、妻たちやそばめたちとの放埒な生活に時を過ごした。また、王の祭司たちも娼婦たちと時を費やした。
15 そして彼は、国内の至る所にぶどう園を設け、ぶどうの搾り場を設けてぶどう酒をたくさん造った。そのために、彼も民も大酒飲みになってしまった。
16 そこで、少数でいるノア王の民を、畑にいるときや家畜の群れの世話をしているときに、レーマン人が襲いかかって殺すようになった。
17 そこでノア王は、レーマン人の来襲を防ぐために見張りの兵を国の周囲に送った。しかし、彼が十分な数の兵を送らなかったので、レーマン人は民を襲って殺し、この国から家畜の群れをたくさん連れ去った。このようにして、レーマン人は彼の民を滅ぼし始め、また彼らに憎しみをあらわにするようになった。
18 そこでノア王は軍隊を送り、彼らを撃退した。すなわち、ノア王の軍は一時レーマン人を撃退した。そこで彼らは分捕り品を得たことを喜びながら帰って来た。
19 さて、この大勝利のために、ノア王の民は高慢な心を募らせ、おごり高ぶりながら、自分たちの50人は数千人のレーマン人に立ち向かうことができると言って、血を見ることと同胞の血を流すことを喜んだ。これは、王や祭司たちの悪事がもたらしたものである。

20 さて、ノア王の民の中に、アビナダイという名の一人の男がいた。彼は人々の中に出て行って、預言して言った。「見よ、主は次のように言われ、次のようにわたしに命じられた。『出て行って、この民に主が次のように言われると告げなさい。この民は災いである。わたしはこの民の忌まわしい行いと、悪事と、みだらな行いを見たからである。悔い改めなければ、わたしは怒って彼らを罰しよう。
21 彼らが悔い改めて主なる神に立ち返らなければ、見よ、わたしは彼らを敵の手に渡そう。彼らは奴隷になり、敵の手によって苦しめられるであろう。
22 そして彼らは、わたしが主なる神であり、わたしの民の罪悪を罰するねたむ神であることを知るようになる。
23 そしてこの民は、悔い改めて主なる神に立ち返らなければ、奴隷になるであろう。そのときには、主なる全能の神のほかに、だれも彼らを救うことができない。
24 そして、彼らがわたしに叫び求めても、わたしはその叫びを聞き届けることを遅くし、彼らが敵に打たれるままにしよう。
25 彼らが粗布をまとい、灰をかぶって悔い改め、主なる神に熱烈に叫び求めなければ、わたしは彼らの祈りを聞き届けず、彼らを苦難から救い出すこともしない。』主はこのように言われ、このようにわたしに命じられた。」
26 さて、アビナダイが人々にこれらの言葉を語り終えると、人々は彼に腹を立てて、彼の命を奪おうとした。しかし主は、アビナダイを彼らの手から救い出された。

27 ノア王はアビナダイが人々に語った言葉を伝え聞くと、彼もまた腹を立てて言った。「わたしとわたしの民を裁くアビナダイとは何者か。そのようにひどい苦難をわたしの民にもたらす主とは何者か。
28 わたしが殺すことのできるように、アビナダイをここに連れて来るよう、おまえたちに命じる。その男はわたしの民を扇動して互いに怒らせ、民の中に争いを生じさせようとして、これらのことを述べた。だからわたしはその男を殺そう。」
29 さて、人々は目をくらまされていたので、アビナダイの言葉に対して心をかたくなにした。それで彼らは、そのときからアビナダイを捕らえようとした。またノア王は、主の言葉に対して心をかたくなにし、自分の悪い行いを悔い改めなかった。


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第12章

アビナダイ、民の滅亡とノア王の死を預言して投獄される。偽祭司たち、聖文を引用し、モーセの律法を守っていると主張する。アビナダイ、彼らに十戒を教え始める。紀元前約148年。

01 さて、それから2年後、アビナダイは人に分からないように姿を変えてやって来て、人々の中で預言し始めた。「主はわたしに次のように命じられた。『アビナダイよ、行ってわたしのこの民に預言しなさい。彼らは、わたしの言葉に対して心をかたくなにしており、まだ自分たちの悪い行いを悔い改めていない。それゆえ、わたしは怒って彼らを罰する。まことに、彼らの罪悪と忌まわしい行いに対して、わたしは激しく怒って彼らを罰しよう。
02 まことに、この時代の人々は災いである。』主はまたわたしに言われた。『あなたの手を伸ばし、次のように預言しなさい。主はこのように言われる。この時代の者たちは罪悪のために奴隷にされ、頬を打たれ、人々に追われて殺される。また、空を飛ぶはげたかと、犬と、野獣がその肉を食う。
03 そして、ノア王の命は、熱い炉の中の衣ほどの値打ちもなくなる。彼はわたしが主であることを知るであろう。
04 そして、わたしはこの民をひどい苦難で、また飢饉と疫病で打とう。彼らは終日泣きわめくであろう。
05 また、わたしは、彼らが重荷を背に負わされ、物を言えないろばのように追い立てられるようにしよう。
06 また、わたしは、彼らの中に雹を降らせ、彼らを打たせよう。彼らは東風にも悩まされるであろう。また、昆虫が彼らの地を襲い、穀物を食うであろう。
07 また、彼らはひどい疫病に悩まされるであろう。わたしは、彼らの罪悪と忌まわしい行いのゆえに、すべてこのように行おう。
08 そして、彼らが悔い改めなければ、わたしは彼らを地の面からことごとく滅ぼし去ってしまおう。しかし彼らは記録を後に残すであろう。わたしはその記録を将来、この地を所有するほかの国民のために残そう。わたしがこのように行うのは、この民の忌まわしい行いをほかの国民に明らかにするためである。』」アビナダイはこのほか、この民に災いとなる多くの事柄を預言した。
09 そこで人々は彼のことを怒り、彼を捕らえて縛り上げ、王の前に連れて行った。そして、王に言った。「御覧ください。あなたの民について災いを預言し、神がこの民を滅ぼすと語った男を御前に連れてまいりました。
10 この男はまた、あなたの命についても災いを預言し、あなたの命は火の燃える炉の中の衣のようになると言っています。
11 この男はまた、あなたが草の茎、それも獣に踏まれて足で踏みにじられる、野の枯れた茎のようになると言っています。
12 この男はまた、あなたのことを、満開のときに風が吹けば地面に吹き散らされてしまうあざみの花のようになると言っています。そしてこの男は、主がそのように語ったと主張しています。またこの男は、あなたが悔い改めなければ、このことはすべてあなたに起こる、あなたの罪悪のためにこのことが起こると言っています。
13 王様、あなたがどのような大きな悪事をなさり、またあなたの民がどのような重大な罪を犯したので、わたしたちは神から罪に定められ、またこの男から裁かれなければならないのでしょうか。
14 王様、わたしたちには罪はありません。王様、あなたもこれまで罪を犯してはこられませんでした。ですから、この男があなたについて語ったことは偽りであり、ありもしないことを預言したのです。
15 まことに、わたしたちは強いので、これから先、奴隷になることも、敵に捕らえられることもありません。そして、あなたはこの地で栄えてこられましたし、今後も栄えられることでありましょう。
16 御覧ください。ここにいるのがその男です。わたしたちはこの男をあなたの手にお渡ししますので、お好きなようになさってください。」
17 そこでノア王は、アビナダイを牢に投げ込ませた。そして、祭司たちに集まるように命じ、アビナダイをどのようにするかについて、彼らと協議するための会合を開いた。

18 そこで祭司たちは王に、「その男をここへ連れて来て、わたしたちが尋問できるようにしてください」と言った。そこで王は命令を下して、アビナダイを祭司たちの前に連れて来させた。

19 そこで祭司たちは彼に尋問し始め、彼に矛盾したことを言わせて、彼を訴える口実を得ようとした。しかし、アビナダイは大胆に答え、まことに祭司たちが驚くほど、彼らのすべての問いを論破した。アビナダイはすべての問いについて彼らを論破し、彼らのすべての言葉について彼らを言い負かした。
20 そこで、祭司の中の一人がアビナダイに言った。「記録に記されていて、わたしたちの先祖から教わってきた次の言葉はどういう意味か。
21 『よきおとずれを伝え、平和を告げて広め、善のよきおとずれを伝え、救いを告げて広め、シオンに向かって「あなたの神が統治しておられる」と言う者の足は、山の上にあって何と麗しいことであろう。
22 あなたの見張り人は声を上げ、声を合わせて歌う。主がシオンを元に戻されるとき、彼らはそれを目の当たりに見るからである。
23 エルサレムの荒れた所よ、喜びの声を上げ、ともに歌え。主が御自分の民を慰め、エルサレムを贖われたからである。
24 主はその聖なる腕を、すべての国民の目の前に現された。地の果てに至るすべての人は、わたしたちの神の救いを見るであろう』とある。」
25 そこでアビナダイは彼らに答えた。「あなたがたは祭司であり、また自分たちはこの民を教えており、預言の霊に通じていると主張していながら、これらのことが何を意味するかをわたしから聞いて知りたいと言うのか。
26 わたしはあなたがたに言う。主の道を曲げているあなたがたは災いである。あなたがたはこれらのことを理解しているかもしれないが、それを民に教えてこなかったので、主の道を曲げてきたことになる。
27 あなたがたは心を注いで理解しようとしてこなかった。したがって、あなたがたは賢明ではなかった。あなたがたはこの民に何を教えているのか。」
28 すると彼らは、「我々はモーセの律法を教えている」と言った。
29 そこでアビナダイはまた彼らに言った。「もしあなたがたがモーセの律法を教えているのならば、なぜそれを守らないのか。なぜあなたがたは富に執着するのか。なぜみだらな行いをし、娼婦と過ごして精力を費やすのか。また、なぜこの民に罪を犯させるのか。それゆえ主はこの民に対して預言を、まことにこの民に対して大きな災いの預言を述べるために、わたしを遣わされたのである。
30 あなたがたは、わたしが真実を語っているのを知らないのか。いや、あなたがたは、わたしが真実を語っているのを知っている。だからあなたがたは、神の御前で震えおののかなければならない。
31 そしてあなたがたは将来、自分の罪悪のために打たれるであろう。あなたがたはモーセの律法を教えていると言っているからである。モーセの律法についてあなたがたが知っているのは何か。モーセの律法によって救いが与えられるのか。あなたがたは何と答えるか。」
32 すると彼らは、モーセの律法によって救いが与えられると答えた。
33 そこでアビナダイは彼らに言った。「あなたがたが神の戒めを守れば救われることを、わたしは知っている。まことに、主がシナイの山でモーセに告げられた戒めを守るならば、あなたがたは救われる。その戒めは次のとおりである。
34 『わたしは主なるあなたの神であって、あなたをエジプトの地、奴隷の家から連れ出した者である。
35 あなたはわたしのほかに、何ものをも神としてはならない。
36 あなたは自分のために、刻んだ像を造ってはならない。上は天にあるもの、下は地にあるものの、どのような形をも造ってはならない。』」
37 そしてアビナダイは彼らに言った。「あなたがたはこれをすべて守ってきたか。いや、守ってこなかったとわたしはあなたがたに言う。あなたがたはこの民に、これらのことをすべて守るように教えてきたか。いや、教えてこなかったと、わたしはあなたがたに言う。」

第13章

アビナダイ、神の力によって守られる。十戒を教える。救いはモーセの律法だけでは与えられない。将来、神御自身が贖罪を行われ、御自身の民を贖われる。紀元前約148年。


01 さて、王はこれらの言葉を聞くと、祭司たちに、「この男を連れ出して、殺してしまえ。我らはこの男と何のかかわりがあるか。この男は気が狂っている」と言った。
02 そこで祭司たちが前に出て、アビナダイを捕らえようとしたところ、アビナダイは彼らを防いで言った。

03 「わたしに触れるな。わたしに手をかければ、神があなたがたを打たれるであろう。わたしは、主がわたしを遣わして告げさせようとされたことをまだ伝え終えていない。また、あなたがたがわたしに説明するように求めたことについても、まだ説明していない。したがって、神はわたしが今滅ぼされることを許されない。
04 わたしは神から受けた命令を果たさなければならない。わたしが真実を告げたので、あなたがたはわたしに対して怒っている。また、神の御言葉を告げたので、あなたがたはわたしを気が狂っていると言って裁いた。」
05 さて、アビナダイがこれらの言葉を語ったところ、ノア王の民はあえて彼に手をかけようとしなかった。主の御霊がアビナダイのうえにあったからである。そして、彼の顔は非常な輝きを放っていた。それはまるで、モーセがシナイの山で主と語ったときの顔の輝きのようであった。

06 そしてアビナダイは、神から受けた力と権能をもって語り、言葉を続けた。
07 「あなたがたは、わたしを殺す力があなたがたにないことを知っている。だからわたしは、自分の伝えたいことを言ってしまおう。わたしはあなたがたの罪悪について真実を告げるので、それがあなたがたの心を刺すことを承知している。
08 そして、わたしの言葉によってあなたがたは不思議な思いと驚きと、また怒りに満たされている。
09 しかし、わたしは自分の言うことを伝えてしまおう。その後、自分がどこへ行くことになろうとかまわないし、救われればそれでよいと思っている。
10 ただ、これだけはあなたがたに言っておく。これから後あなたがたがわたしに対してすることは、将来起こることの予型であり、影となる。
11 さて、あなたがたに神の戒めの残りの部分を読んで聞かせよう。これらの戒めが、まだあなたがたの心に書き記されていないことが分かるからである。あなたがたがこれまで人生の大半を、罪悪を習い、教えることに費やしてきたことを、わたしは知っているからである。
12 さて、あなたがたが覚えているように、わたしは前にこう言った。『あなたは自分のために刻んだ像を造ってはならない。上は天にあるもの、下は地にあるもの、地の下の水の中にあるものの、どのような形をも造ってはならない。』
13 さらに、このようにある。『あなたはそれらにひれ伏してはならない。それらに仕えてはならない。主なるあなたの神であるわたしは、ねたむ神であるから、わたしを憎む者には、先祖の罪悪を子孫に報いて、3代、4代にまで及ぼし、
14 わたしを愛し、わたしの戒めを守る者には、千代に及ぶまで憐れみを示すからである。
15 あなたは、主なるあなたの神の名をみだりに唱えてはならない。主は、その名をみだりに唱える者を、罪のない者とはしないからである。
16 安息日を覚えて、これを聖なる日として保ちなさい。
17 6日の間働いて、あなたのすべての仕事をしなさい。
18 しかし、7日目、すなわち主なるあなたの神の安息日には、あなたはどのような仕事もしてはならない。あなたもあなたの息子、娘、僕、はしため、家畜、それにあなたの門の内にいる来訪者もそうである。
19 主は6日の間に、天地と海と、その中にある万物を造ったからである。それで、主は安息日を祝福し、これを聖なるものとした。
20 あなたの父と母を敬いなさい。主なるあなたの神があなたに与える地で、末長く暮らせるためである。
21 あなたは殺してはならない。
22 あなたは姦淫してはならない。あなたは盗んではならない。
23 あなたは隣人に対して偽証してはならない。
24 あなたは隣人の家をむさぼってはならない。隣人の妻も、僕も、はしためも、牛も、ろばも、何であっても隣人のものをむさぼってはならない。』」
25 さて、アビナダイはこれらの言葉を語り終えると、彼らに次のように言った。「あなたがたはこれらの戒めを守るために、これらのことをすべて努めて行うようこの民に教えてきたか。
26 いや、教えてこなかったと、わたしはあなたがたに言う。もしあなたがたが教えていれば、主はわたしを遣わして、この民について災いを預言させるようなことはされなかったであろう。
27 さて、あなたがたは先ほど、救いはモーセの律法によって与えられると言った。わたしはあなたがたに言う。今はまだモーセの律法を守る必要がある。しかし将来、もはやモーセの律法を守る必要のない時が来ることを、あなたがたに言っておく。
28 そしてさらに、わたしはあなたがたに言う。救いは律法だけで与えられるものではない。もしも神御自身が民の罪と不義のために行われる贖罪がなければ、たとえモーセの律法があっても、彼らは滅びるほかはない。
29 さて、わたしはあなたがたに言う。イスラエルの子らに律法が、まことに非常に厳しい律法が与えられたのは必要なことであった。彼らは強情な民で、罪悪を行うことは早いが、主なる彼らの神を思い起こすことの遅い民であったからである。
30 そこで、彼らに律法が、まことに、勤めと儀式の律法が与えられた。その律法は、神と、神に対する義務を思い起こさせるために、日々厳密に守らなければならないものであった。
31 しかし見よ、わたしはあなたがたに言う。これらのものはすべて、将来起こることの予型であった。
32 さて、彼らは律法を理解しただろうか。いや、すべての者が理解したわけではないとわたしはあなたがたに言う。それは、彼らの心がかたくなであったからである。神の贖いによらなければだれも救われないことを、彼らは理解しなかった。

33 見よ、モーセはメシヤの来臨について、また神が御自分の民を贖われることについて、彼らに預言しなかったであろうか。また、世界が始まって以来、預言を述べてきたすべての預言者たちも、これらのことについて多少にかかわりなく述べてこなかったであろうか。
34 神御自身が人の子らの中に降って来て、人の形を取り、偉大な力をもって地の面に出て行かれることを、彼らは述べてこなかったであろうか。
35 また、神が死者の復活をもたらされることと、神御自身が虐げられ、苦しめられることも、彼らは述べてこなかったであろうか。」

第14章

イザヤ、メシヤについて述べる。メシヤが受けられる屈辱と苦難が宣言される。メシヤは御自分を罪のためのささげ物とし、背く者のために執り成しをされる。イザヤ書第53章と比較せよ。紀元前約148年。

01 「まことにイザヤは次のように述べているではないか。『だれがわたしたちの告げたことを信じたか。主の腕はだれに現されたか。
02 彼は主の前に、か弱い苗木のように、また乾いた土から出る根のように育つ。彼には見目の良さもなく、華麗さもない。わたしたちが彼を見るときに、彼を慕うような美しさも彼にはない。
03 人々から侮られて捨てられている彼は悲しみの人で、悲哀を知っている。そこでわたしたちは、彼から顔を背けるかのように振る舞った。彼は侮られ、わたしたちは彼を尊ばなかった。
04 まことに彼はわたしたちの悲哀を負い、わたしたちの悲しみを担った。ところがわたしたちは彼のことを、打たれ、神に罰せられ、苦しめられているのだと受け止めた。
05 しかし彼は、わたしたちの背きのために刺し貫かれ、わたしたちの罪悪のために傷つけられた。わたしたちの平安のために、懲らしめが彼に及んだ。彼の鞭の打ち傷によって、わたしたちは癒されている。
06 わたしたちは皆、羊のように迷って、各々自分の道に向かって行った。主はわたしたちすべての者の罪悪を彼に負わせられた。
07 彼は虐げられ、苦しめられたが、口を開かなかった。彼は小羊のようにほふり場に引かれて行く。毛を刈る者の前の物を言わない羊のように、彼は口を開かなかった。
08 彼は獄から連れ去られ、裁きから取り去られたが、だれが彼の子孫であると名乗るだろうか。なぜなら、彼は生きている者の地から絶たれたからである。また、わたしの民の背きのために、彼は打たれたからである。
09 また彼は、悪人とともにその墓を設け、死んでは富裕な者とともにあった。なぜなら、彼は決して悪を行わず、その口には少しの欺きもなかったからである。
10 それでも、彼を傷つけることは主の御心にかなっていた。主は彼に苦痛を受けさせられた。あなたが彼を罪のささげ物とするとき、彼は自分の子孫を見てその命を延ばし、主の御心は彼の手によって栄える。
11 彼は自分自身の苦しみを知り、それに満足する。彼の知識により、わたしの義にかなった僕は多くの者を義とするが、それは、彼が彼らの罪悪を身に負うからである。
12 それゆえ、わたしは彼に大いなる者とともに物を分かち取らせ、得たものを強い者に分け与えよう。彼が自分の魂を死に至るまで注いだからである。彼は背く者たちとともに数えられ、多くの者の罪を負い、背く者たちのために執り成しをした。』」

第15章

キリストが御父であり、御子である理由。キリストは執り成しをし、御自分の民の背きを身に負われる。キリストの民とすべての聖なる預言者たちは、キリストの子孫である。キリストは復活をもたらされる。幼い子供たちは永遠の命を得る。紀元前約148年。

01 さて、アビナダイは彼らに言った。「わたしはあなたがたに、神御自身が人の子らの中に降って来て、御自分の民を贖われるということを理解してほしいと思う。
02 この神は肉体に宿られるので、神の御子と呼ばれる。またその肉体を御父の御心に従わせられるので、御父にして御子なのである。
03 御父とは、神の力によって胎内に宿られるからであり、御子とは、肉体を持たれるからである。このようにして、御父にもなり、御子にもなられるのである。
04 そして御二方は一つの神、まことに、まさに天と地の永遠の父であられる。
05 このように、肉体が御霊に従い、あるいは御子が御父に一つの神として従われた後、御子は誘惑を受けてもその誘惑に負けず、かえって御自分の民からあざけられ、鞭打たれ、追い出され、拒まれるままになさる。
06 そして、このようなことの後、また人の子らの中で多くの大きな奇跡が行われた後、この御方は、イザヤが、『毛を刈る者の前の物を言わない羊のように、彼は口を開かなかった』と言ったように連れて行かれる。
07 まことにこの御方は連れて行かれて、十字架につけられ、殺され、その肉体は死に従うが、御子の御心は御父の御心にのみ込まれてしまう。
08 こうして、神は死の縄目を断って死に対して勝利を得、人の子らのために執り成しをする力を御子に授けられる。
09 また天に昇り、憐れみの心を持ち、人の子らを哀れむ思いに満たされており、人の子らと正義の間に立ち、死の縄目を断ち、人の子らの罪悪と背きを身に負い、彼らを贖い、正義の要求を満たされる。
10 さて、わたしはあなたがたに言うが、だれが御子の子孫であると名乗るであろうか。見よ、わたしはあなたがたに言う。御子は罪のためのささげ物にされると、御自分の子孫を御覧になる。では、あなたがたは何と答えるか。御子の子孫とはだれか。
11 見よ、わたしはあなたがたに言う。預言者たち、まことに、主の来臨について預言してきたすべての聖なる預言者の言葉を聞いた人々、預言者たちの言葉を聴き、主が御自分の民を贖われることを信じ、自分たちの罪の赦しのためにその日を待ち望んできたすべての人、わたしはあなたがたに言うが、これらの人々が御子の子孫なのである。すなわち、彼らは神の王国を受け継ぐ者である。
12 これらの人々は、御子が罪を負ってくださる人々だからである。御子はこれらの人々を背きから贖おうとして、彼らのために死なれた。だから彼らは、御子の子孫ではないだろうか。
13 また、口を開いて預言し、戒めに背くことのなかったすべての預言者、すなわち世界が始まって以来のすべての聖なる預言者も、御子の子孫ではないだろうか。彼らは御子の子孫であると、わたしはあなたがたに言う。
14 そして彼らは、平和を告げて広め、善のよきおとずれを伝えた人々であり、救いを告げて広め、シオンに向かって、『あなたの神が統治しておられる』と言った人々である。
15 おお、彼らの足は山の上にあって何と麗しかったことであろう。
16 そしてまた、今なお平和を告げて広めている者たちの足も、山の上にあって何と麗しいことであろう。
17 そしてまた、これから後とこしえに平和を告げて広める者たちの足も、山の上にあって何と麗しいことであろう。
18 見よ、わたしはあなたがたに言うが、これだけではない。よきおとずれを伝えられる御方、平和の創始者、すなわち御自分の民を贖われた主、御自分の民に救いを授けられた御方、まことに、この御方の足は、山の上にあって何と麗しいことであろう。
19 もし、御自分の民のために主が行われる、世の初めから備えられた贖いがなければ、わたしはあなたがたに言うが、これがなければ、全人類は滅びるほかはなかった。
20 しかし見よ、死の縄目は断たれ、御子が統治し、死者を治める力を持たれる。そこで、御子は死者の復活をもたらされる。
21 こうして、復活が起こる。これは第1の復活、すなわち、過去の人々と、現在の人々と、キリストの復活までの将来の人々の復活である。御子はキリストと呼ばれる。
22 さて、すべての預言者と、預言者たちの言葉を信じた人々、すなわち神の戒めを守ったすべての人の復活は、最初の復活の時にある。したがって、その復活は第1の復活である。
23 彼らはよみがえって、彼らを贖ってくださった神とともに住む。このようにして彼らは、死の縄目を断ってくださったキリストによって、永遠の命を得るのである。
24 彼らは、第1の復活にあずかる人々である。また、これらの人々こそ、救いのことを告げ知らされなかったために無知のままで、キリストが来られる前に死んだ人々である。主はこれらの人々に回復をもたらされる。そして彼らは、主に贖われて第1の復活にあずかり、永遠の命を得る。
25 また、幼い子供たちも永遠の命を得る。
26 しかし見よ、あなたがたは神の御前で畏れ、震えおののきなさい。あなたがたは震えおののいて当然である。主は、御自分に背いて罪の中で死ぬ者、すなわち、世界が始まって以来、故意に神に背き、神の戒めを知っていながらそれらを守ろうとせず、罪の中に滅びてしまったすべての者については、決して贖いをなさらないからである。これらの者は、第1の復活に決してあずかれない者たちである。
27 だから、あなたがたは震えおののいて当然ではないか。救いはこのような者には決して与えられない。主はこのような者を贖われないからである。まったく、主はこのような者を贖うことがおできにならない。主は御自分の御言葉をお取り消しになれないからである。主は正義がその権利を主張するときに、正義を拒むことがおできにならないからである。
28 さて、あなたがたに言っておく。将来、主の救いがあらゆる国民、部族、国語の民、民族に告げ知らされる時が来るであろう。
29 まことに主よ、あなたの見張り人は声を上げ、声を合わせて歌うことでしょう。主がシオンを元に戻されるとき、彼らはそれを目の当たりに見るからです。
30 エルサレムの荒れた所よ、喜びの声を上げ、ともに歌え。主が御自分の民を慰め、エルサレムを贖われたからである。
31 主はその聖なる御腕を、すべての国民の目の前に現された。地の果てに至るすべての人は、わたしたちの神の救いを見るであろう。」

第16章

神は人々を、迷い堕落した状態から贖われる。肉欲にふける者は、あたかも贖いがないかのような状態にとどまる。キリストは復活をもたらし、人は無窮の命か、無窮の罰の定めを受ける。紀元前約148年。

01 さて、アビナダイはこれらの言葉を語り終えると、手を伸ばして言った。「将来、すべての人が主の救いを見る時が来る。あらゆる国民、部族、国語の民、民族が目と目を合わせて見て、神の裁きが公正であることを神の御前で認める時が来る。
02 そのとき、悪人は追い出されるであろう。そして、彼らは泣きわめき、涙を流し、嘆き悲しみ、歯ぎしりをするに違いない。それは、彼らが主の声に聞き従おうとしなかったからである。そのために、主は彼らを贖われない。
03 彼らは肉欲にふけり、悪魔に従うので、悪魔が彼らを支配する力を持つ。この悪魔はわたしたちの始祖をだました、年を経たあの蛇である。その年を経た蛇が始祖をだましたために始祖は堕落し、そのためにすべての人は肉欲や官能におぼれ、悪魔に従い、善と悪を知りながら悪魔に従うようになった。
04 このようにして、全人類は迷った状態になった。そして見よ、もし神が御自分の民を迷い堕落した状態から贖われなければ、彼らは限りなく迷った状態になっていたであろう。
05 自分自身の肉の性質の中にとどまり、罪の道と神に背く道を進む者は、その堕落した状態にとどまって、悪魔がその者を支配するすべての力を持つということを忘れるな。だから、その者は神の敵であって、あたかも贖いがなかったかのようである。悪魔もまた神の敵なのである。
06 さて、将来起こることをすでに起こったことのように話すと、もしもキリストがこの世に来られなかったならば、贖いは決してあり得なかった。
07 また、墓が勝利を得ないように、そして死がとげを持たないように、もしキリストが死者の中からよみがえられなかったならば、すなわち死の縄目を断たれなかったならば、復活はあり得なかった。
08 しかしながら、復活は実際にあるので、墓は勝利を得ず、死のとげはキリストにのみ込まれてしまう。
09 キリストは世の光であり命であられる。まことに、決して暗くなることのない無窮の光であり、また決して死ぬことのない無窮の命であられる。
10 この死すべき体は不死をまとい、この朽ちるものは朽ちないものをまとって、神の法廷に立つように連れ出され、自分の行いが善いか悪いか、その行いに応じて神に裁かれる。
11 すなわち、行いが善ければ無窮の命と幸福の復活にあずかる。また、行いが悪ければ無窮の罰の定めの復活にあずかることになるが、それは、彼らを服従させてきた悪魔に引き渡されるということである。
12 彼らは、自分の肉の思いと欲望のままに振る舞い、主の憐れみの御腕が伸べられている間にも決して主に請い願わず、主の憐れみの御腕が彼らに伸べられても、彼らは頼ろうとせず、罪悪について戒められても、それから離れようとせず、悔い改めるように命じられても、悔い改めようとしなかった。

13 そこであなたがたは、震えおののくことなく罪を悔い改め、キリストによって、またキリストを通じてのみ救われるということを覚えておくべきではないか。
14 それゆえ、あなたがたがモーセの律法を教えるのであれば、それは将来起こるこれらのことの影であるということも教えなさい。
15 贖いはまことの永遠の父である主なるキリストを通じて与えられるということを、民に教えなさい。アーメン。」

第17章

アルマ、アビナダイの言葉を信じて書き留める。アビナダイ、火で焼かれて死ぬ。アビナダイ、自分を殺す者たちが病気になり、また火で焼かれて死ぬことを預言する。紀元前約148年。


01 さて、アビナダイがこれらの言葉を語り終えると、王は祭司たちに、彼を捕らえて殺させるように命じた。

02 ところが、祭司たちの中にアルマという名の者がいて、彼もまたニーファイの子孫であった。彼は年の若い男で、アビナダイが語った言葉を信じた。アビナダイが彼らに向かって証言した罪悪のことを、彼は知っていたからである。そこで、彼は王に、アビナダイを怒らずに、彼が安らかに去るのを許すように懇願し始めた。


03 しかし、王はますます腹を立てて、彼らの中からアルマを追い出させ、そのうえ、召し使いたちに彼の後を追わせて殺させようとした。
04 しかし、アルマは彼らの前から逃げ出し、彼らに見つからないように身を隠した。彼は幾日も隠れたままで、その間にアビナダイが語った言葉をすべて書き記した。
05 さて、王は衛兵にアビナダイを取り囲んで捕らえさせた。そこで衛兵は彼を縛り、牢に投げ込んだ。

06 それから3日後、王は祭司たちと相談した末、アビナダイをもう一度自分の前に連れて来させた。
07 そして王は彼に言った。「アビナダイよ、おまえの罪状は確定している。おまえは死に値する。

08 神自らが人の子らの中に降って来ると言ったからだ。だから、わたしとわたしの民について災いを述べた言葉をすべて取り消さないかぎり、おまえはこの理由で殺されることになる。」

09 すると、アビナダイは王に言った。「わたしは王に申し上げます。わたしがこの民についてあなたに申し上げた言葉は真実ですから、わたしは取り消しません。わたしはその言葉が確かであることをあなたに知っていただくために、自らあなたの手に落ちることにしたのです。
10 そして、わたしは死に至るまでも苦しみに耐え、自分の言葉を取り消すことはせず、その言葉はあなたを責める証となるでしょう。わたしを殺すならば、あなたは罪のない者の血を流すことになり、これもまた、終わりの日にあなたを責める証となるでしょう。」
11 そこでノア王は、彼の言葉を恐れ、彼を釈放しようとした。神の裁きが自分に下ることを恐れたからである。
12 ところが祭司たちは、彼に対して声を上げ、彼のことを訴えて、「この男は王をののしった」と言った。そのため王は、彼に対する怒りをかき立てられ、彼を殺すために引き渡した。

13 そこで祭司たちはアビナダイを捕らえて縛り上げ、薪を燃やしてその肌を焼き苦しめ、火あぶりにして殺した。
14 さて、炎が体を焼き始めると、彼は祭司たちに叫んで言った。
15 「見よ、まことにあなたがたがわたしに行ったように、あなたがたの子孫も多くの人に、わたしが今受けている苦しみ、火あぶりの死の苦しみを与えるであろう。その人々が、主なる彼らの神の救いを信じているという理由でそうするのである。
16 そしてあなたがたは、自分の罪悪のために、あらゆる病気で苦しむであろう。
17 またあなたがたは、至る所で打たれ、野生の羊の群れが猛獣に追われるように、追われてあちらこちらに散らされるであろう。
18 その日にあなたがたは狩り出され、敵の手に捕らえられ、その後、わたしが今受けているように、火あぶりの死の苦しみを受けるであろう。
19 このようにして、神は御自分の民を滅ぼす者に報復をされる。おお、神よ、わたしの霊をお受けください。」
20 アビナダイはこれらの言葉を述べ終えると、倒れて焼け死んだ。まことに、彼は神の命令を拒もうとしなかったために殺され、自分の言葉が真実であることを死によって確かなものとしたのである。


【動画】教えをとき,バプテスマをほどこすアルマ


第18章

アルマ、ひそかに教えを説く。バプテスマの聖約を宣言し、モルモンの泉でバプテスマを施す。キリストの教会を設立し、祭司たちを聖任する。祭司たち、自活し、民を教える。アルマと彼の民、ノア王から逃れ、荒れ野に旅立つ。紀元前約147年から145年に至る。


01 さて、ノア王の召し使いたちから逃れたアルマは、自分の罪と不義を悔い改め、人々の中をひそかに巡って、アビナダイの言葉を教え始めた。
02 まことに、将来起こる事柄について、また死者の復活について、そしてキリストの力や受難、死、復活、昇天によってもたらされる人々の贖いについて、教え始めた。
03 そしてアルマは、自分の言葉を聞こうとする人々すべてに教えた。彼は王に知られることのないように、ひそかに教えた。そして、多くの人がアルマの言葉を信じた。
04 そして、アルマの語ったことを信じた人々は皆、モルモンと呼ばれた地へ行った。そこは王がその名を付けた所で、境の地にあり、時節によっては野獣が群れを成していた所である。

05 さて、モルモンには水の清らかな泉があり、アルマはそこへ行った。そこには、泉の近くに小さな木の茂みがあり、彼は日中そこに身を隠して王の捜索から逃れた。
06 そして、アルマの語ったことを信じた人々は皆、彼の言葉を聞くためにそこへ行った。
07 さて、多くの日の後、アルマの言葉を聞くためにモルモンの地に集まった人々は、相当な数に上った。まことに、彼の言葉を信じた人々は皆、彼の語ることを聞くために集まった。そこで彼は、これらの人々を教え、悔い改めと贖いと主を信じる信仰とを説いた。

08 そして、アルマは言った。「見よ、ここにモルモンの泉がある。(この泉はこのように呼ばれていた。)あなたがたは神の羊の群れに入って、神の民と呼ばれたいと願っており、重荷が軽くなるように、互いに重荷を負い合うことを望み、
09 また、悲しむ者とともに悲しみ、慰めの要る者を慰めることを望み、また神に贖われ、第1の復活にあずかる人々とともに数えられて永遠の命を得られるように、いつでも、どのようなことについても、どのような所にいても、死に至るまでも神の証人になることを望んでいる。
10 まことに、わたしはあなたがたに言う。あなたがたが心からこれを望んでいるのであれば、主からますます豊かに御霊を注いでいただけるように、主に仕えて主の戒めを守るという聖約を主と交わした証拠として、主の御名によってバプテスマを受けるのに何の差し支えがあろうか。」
11 人々はこの言葉を聞くと手をたたいて喜び、「それこそわたしたちが心から望んでいることです」と叫んだ。
12 さて、アルマは、最初この地にやって来た人々の一人であるヘラムを連れて水の中に立ち、祈り願って言った。「おお、主よ、あなたの僕が聖い心でこの務めを果たせるように、僕にあなたの御霊を注いでください。」
13 そして彼がこの言葉を語ったとき、主の御霊が彼のうえにあった。そこで彼は言った。「ヘラム、わたしは全能の神から権能を授かっているので、あなたの肉体が死ぬまで全能の神に仕えるという聖約を交わした証拠として、あなたにバプテスマを施す。主の御霊があなたに注がれるように。また全能の神が、世の初めから備えてくださっているキリストの贖いによって、あなたに永遠の命を授けられるように。」
14 アルマがこれらの言葉を語り終えると、アルマとヘラムはともに水の中に沈んだ。それから二人は立ち上がると、御霊に満たされて、喜びながら水から出て来た。
15 さらに、アルマはまた別の一人を連れて、もう一度水の中に入って行くと、最初のときと同じようにバプテスマを施したが、今度は自分自身は水の中に沈まなかった。
16 このようにして、彼はモルモンの地にやって来たすべての人にバプテスマを施した。その数は204人ほどであった。そして、これらの人々はモルモンの泉でバプテスマを受けると、神の恵みに満たされた。
17 そしてそれ以後、彼らは神の教会、すなわちキリストの教会と呼ばれた。また、神の力と権能によってバプテスマを受けた人々はだれでも、神の教会に加えられた。

18 そしてアルマは、神から権能を授かっていたので、祭司たちを聖任した。すなわち、彼は50人ごとに一人の祭司を聖任して、彼らに教えを説き、また神の王国にかかわる事柄について教えられるようにした。
19 またアルマは祭司たちに、自分が教えたことと、聖なる預言者たちの口を通して述べられたことのほかは、何も教えないように指示した。
20 まことに、彼は祭司たちに、悔い改めと、御自分の民を贖われた主を信じる信仰のほかは、何も説かないように指示したのである。
21 また彼は祭司たちに、決して互いに争うことなく、互いに和合し、愛し合って結ばれた心を持ち、一つの信仰と一つのバプテスマをもって、一つの目で将来を見詰めるようにと指示した。
22 彼はこのように祭司たちに、教えを説くように指示した。このようにして、人々は神の子となった。
23 また、アルマは彼らに、安息日を守って聖なる日として保つこと、また毎日主なる自分たちの神に感謝することを指示した。
24 また、聖任を受けた祭司たちは自分自身の手を使って生活の糧を得るようにすべきであると、アルマは指示した。
25 さらに、彼らが人々を教え、また主なる自分たちの神を礼拝するために集まる日を週に1日定めること、またほかにもできるかぎりしばしば集まることとした。
26 そして、祭司たちは生活の糧を人々に頼るべきでなく、自分の労働に対して神の恵みを受けるべきであるとされた。それは、彼らが御霊を受けて強くなり、神の知識を得られるようにするため、また神からの力と権能をもって教えることができるようにするためである。
27 アルマはまた、教会の人々が各々自分の持っている分に応じて持ち物を分け与えるように、つまり、ほかの人よりも豊かに持っていれば、ほかの人よりも多く分け与えるべきであり、少ししか持っていない人には少ししか求めず、持っていない人には分け与えるべきであると指示した。
28 このように、人々は自分の自由意志と神にかかわる善い望みから、自分の持ち物を、それを必要としている祭司たちと、乏しくて着る物のないすべての人に分け与えなければならなかった。

29 アルマは神から命じられたので、このように彼らに告げた。そして彼らは、各々の必要と入り用に応じて物質的にも霊的にも互いに助け合い、神の前をまっすぐに歩んだ。
30 さて、これはすべてモルモンにおいて、まことにモルモンの泉のそば、つまりモルモンの泉に近い森の中で行われたことである。モルモンの地も、モルモンの泉も、モルモンの森も、自分たちの贖い主を知るようになった人々の目には何と麗しいことか。また、これらの人々は何と祝福されていることか。だから、彼らはとこしえに贖い主を賛美して歌うであろう。
31 これらのことは、ノア王に知られることのないように、国の境で行われた。

32 しかし見よ、王は民の中に動きがあるのを知り、召し使いたちを遣わして民を見張らせた。そのため、人々が神の言葉を聞こうとして集まった日に、彼らのことが王に知られてしまった。
33 そこで王は、アルマが民を扇動して自分に対する謀反を起こしていると言って、アルマと彼に従う人々を滅ぼすために、軍隊を派遣した。

34 そこでアルマと主の民は、王の軍隊が来るという知らせを受けたので、天幕を持ち、家族を連れて荒れ野へ旅立った。
35 その数はおよそ450人であった。

第19章

ギデオン、ノア王を殺そうとする。レーマン人が攻め込んで来る。ノア王、火で焼き殺される。リムハイ、貢ぎ物を納め、王として統治する。紀元前約145年から121年に至る。


01 さて、王の軍隊は主の民を捜し回ったが、徒労に終わり、引き返した。

02 さて見よ、王の軍勢は人数が減って小規模になり、残った民の中に分裂が生じ始めた。
03 そして、少数派が王を脅す言葉を吐き始め、残りの民の中にひどい争いが起こった。
04 さて、少数派の中にギデオンという名の者がいた。彼は屈強な男で、王を敵としていたので、自分の剣を抜き、王を殺すと怒りの誓いを立てた。
05 そして彼は王と戦った。王は彼に打ち負かされそうになったところで逃げ出し、走って神殿の近くにある塔に登ってしまった。
06 そこでギデオンは王の後を追いかけ、王を殺すためにその塔に登ろうとした。このとき、王がシェムロンの地の方を眺めると、見よ、レーマン人の軍隊がすでに国の境を越えていた。
07 そこで王は心に苦しみを覚え、叫んで言った。「ギデオンよ、命を助けてくれ。レーマン人が攻めて来ており、我らを滅ぼそうとしている。まことに、民を滅ぼそうとしている。」
08 実のところ、王は民のことよりも自分の命のことを心配していたのである。にもかかわらず、ギデオンは王の命を助けた。

09 そこで王は、レーマン人から逃れるように民に命じて、自分がその先頭に立って逃げた。民も女や子供たちを連れて荒れ野へ逃げ込んだ。
10 そこでレーマン人は彼らを追いかけ、追いついて彼らを殺し始めた。
11 そこで王は男たちに、皆、妻子を捨ててレーマン人から逃れるように命じた。

12 しかし、妻子を捨てるくらいなら、一緒にとどまって死ぬ方がよいと考える者が多かった。ほかの者たちは妻子を捨てて逃げ去った。
13 そして妻子とともにとどまった者たちは、美しい娘たちを前に立たせ、自分たちを殺さないようにレーマン人に懇願させた。
14 そこでレーマン人は、彼らの娘たちの美しさに魅せられ、哀れみの心を示した。

15 レーマン人は彼らの命を助け、彼らを捕虜にしてニーファイの地へ連れ戻した。そして、ノア王をレーマン人の手に引き渡すこと、また彼らが所有するものの半分、金や銀やすべての貴重な品々の半分を渡すことを条件として、彼らがその地を所有することを許した。このようにして、彼らは毎年、レーマン人の王に貢ぎ物を納めることになったのである。
16 さて、捕らえられた者たちの中に王の息子が一人おり、その名をリムハイといった。

17 さて、リムハイは、父が殺されることのないようにと願っていた。それでもリムハイ自身は正しい人であったので、父の犯した罪悪を知らないわけではなかった。
18 さて、ギデオンは、ひそかに人々を荒れ野に遣わして、王と、また王と一緒にいる者たちを捜させた。すると彼らは荒れ野で、王とその祭司たちを除くすべての人に会った。

19 彼らはニーファイの地へ帰って、もし妻子や一緒にとどまった者たちが殺されていたら、その敵を討って、一緒に死のうと心に誓っていた。

20 ところが、王が彼らに帰らないように命じたので、彼らは怒って王を焼き殺してしまった。

21 また彼らは、祭司たちも捕らえて殺そうとしたが、祭司たちは逃げてしまった。
22 そして、彼らがちょうどニーファイの地へ帰ろうとしていたところで、ギデオンに遣わされた人々に出会ったのである。ギデオンに遣わされた人々は彼らに、自分たちの妻子に起こったすべてのことを告げ、またレーマン人に自分たちの所有するすべてのものの半分を貢ぎ物として納めることによって、その地を所有できると、レーマン人から認められたことを話した。
23 また彼らも、ギデオンに遣わされた人々に、自分たちが王を殺したことと、王の祭司たちが荒れ野の奥へ逃げ込んでしまったことを告げた。
24 そして彼らは、あいさつを終えると、自分たちの妻子が殺されなかったことを喜びながら、ニーファイの地へ帰った。それから彼らは、自分たちが王に行ったことをギデオンに告げた。
25 さて、レーマン人の王は、自分の民がニーファイ人を殺すことはないとニーファイ人に誓った。
26 そしてまた、ノア王の子であり、民から王位を与えられたリムハイも、レーマン人の王に、自分の民は所有するすべてのものの半分を貢ぎ物として彼に納めると誓った。

27 そして、リムハイは王国を確立し、民の中に平和を確立する業に着手した。
28 またレーマン人の王は、その国の周囲に見張りの兵を配置し、リムハイの民を国内にとどまらせ、荒れ野に出て行くことのないようにした。そして王は、ニーファイ人から受け取る貢ぎ物の一部で見張りの兵を養った。
29 さて、リムハイ王は、2年間引き続き王国の平和を保ち、レーマン人は彼らを苦しめ悩ますことも、彼らを滅ぼそうとすることもなかった。


【動画】リムハイの民の脱出


第20章

レーマン人の娘たち、ノア王の祭司たちに誘拐される。レーマン人、リムハイと彼の民に戦争を仕掛ける。レーマン人、撃退され、心を和らげる。紀元前約145年から123年に至る。

01 さて、シェムロンには、レーマン人の娘たちが集まって歌い、踊り、そして楽しむ場所があった。
02 そしてある日のこと、少数のレーマン人の娘たちが、歌ったり踊ったりするためにそこに集まった。
03 ノア王の祭司たちはニーファイの町へ帰ることを恥じ、また民に殺されることを恐れたので、妻子のところへ帰る勇気がなかった。
04 そして、荒れ野にとどまっていたときにレーマン人の娘たちを見つけたので、彼らは身を伏せて娘たちを見ていた。
05 そして、踊るために集まった娘たちが少ないときに、彼らは隠れている所から飛び出して娘たちを捕まえ、荒れ野へ連れ去った。まことに、レーマン人の娘たちを24人、荒れ野へ連れ去ってしまった。
06 さて、レーマン人は娘たちがいなくなったことを知ると、リムハイの民の仕業であると思って、リムハイの民のことを怒った。
07 それで彼らは軍隊を出した。まことに、王自身が民を率いて、リムハイの民を滅ぼすためにニーファイの地へ向かった。
08 しかしながら、リムハイはすでに塔の上から彼らを見ていた。まことに、彼らが戦いの準備をすべて整えているのを見た。そこで彼は、自分の民を召集し、畑でも森でもレーマン人を待ち伏せた。
09 そして、レーマン人がやって来ると、リムハイの民は待ち伏せていた場所から襲いかかり、彼らを殺し始めた。
10 そして、彼らは獲物を襲うライオンのように戦ったので、その戦闘は非常に激しいものになった。
11 そして、リムハイの民は、レーマン人を追い散らし始めた。彼らはレーマン人の半数にも満たなかったが、自分たちの命のため、また妻子たちのために戦っていたので、力を尽くし、龍のように戦った。
12 そして彼らは、レーマン人の死体の間にレーマン人の王を見つけた。しかし、王は傷を負っていただけで死んではいなかった。兵の逃げ足が速かったために、その場に置き去りにされたのであった。
13 そこでリムハイの民は、王を捕らえて傷口に包帯を巻き、リムハイのもとへ連れて来て言った。「ここにいるのはレーマン人の王です。王は負傷してレーマン人の死体の間に倒れ、置き去りにされていました。それでわたしたちは、御前に連れてまいりました。この王を殺してしまいましょう。」
14 しかし、リムハイは彼らに、「殺してはならない。わたしが会えるように、ここに連れて来なさい」と言った。そこで、彼らはレーマン人の王を連れて来た。そして、リムハイは彼に尋ねた。「あなたがたはどのような理由で、わたしの民と戦うために攻めて来たのですか。まことに、わたしの民は、わたしがあなたに立てた誓いを破ってはいません。それなのに、なぜあなたはわたしの民に立てた誓いを破ったのですか。」
15 すると、レーマン人の王は言った。「わたしが誓いを破ったのは、おまえの民がわたしの民の娘たちを連れ去ったからだ。だから、わたしは怒って、おまえの民と戦うためにわたしの民を攻めさせたのだ。」
16 さて、リムハイはこのことについて何も聞いていなかったので、「わたしは民の中を捜し、そのようなことをした者はだれであろうと殺す」と言った。そして、彼は民の中を捜索させた。
17 さて、ギデオンはこれらのことを聞くと、彼はリムハイ王の軍隊の長であったので、王のもとへ行って、言った。「どうか思いとどまり、この民を調べることなく、またこのことを彼らの責任とすることのないようにしてください。
18 父君の祭司であって、この民が殺そうとした者たちのことを王は覚えておられませんか。彼らは今、荒れ野にいるではありませんか。レーマン人の娘たちをさらったのは、彼らではないでしょうか。
19 どうかレーマン人の王にこれらのことをお話しください。そうすれば、王は彼の民に話し、彼らはわたしたちに対して心を和らげることでしょう。まことに、彼らはわたしたちを攻めようと、すでに準備を進めていますし、わたしたちの人数はわずかです。
20 そしてまことに、彼らは大軍でやって来ます。ですから、もしこの王がわたしたちに対して彼らの心を和らげてくれなければ、わたしたちは滅びてしまうに違いないのです。
21 わたしたちについてアビナダイが預言した言葉は、わたしたちが主の御言葉に聞き従って自分たちの罪悪から離れようとしなかったので、すべて成就しているではありませんか。
22 ですから、王の心を和らげましょう。わたしたちは王に立てた誓いを守ります。わたしたちは、命を失うよりも奴隷の状態にある方がよいからです。ですから、このように多くの血を流すことはやめましょう。」
23 そこでリムハイはレーマン人の王に、自分の父のことと、荒れ野へ逃げ込んだ祭司たちのことをすべて話し、レーマン人の娘たちを連れ去ったのはその祭司たちの仕業であると告げた。
24 そこでレーマン人の王は、リムハイの民に対して心を和らげ、彼らに言った。「武器を持たないで、わたしの民に会いに行こう。そうすれば、わたしの民がおまえの民を殺さないことを誓って約束する。」
25 そして彼らはレーマン人の王に従い、武器を持たずにレーマン人に会いに出かけた。そして、彼らはレーマン人に会った。するとレーマン人の王は、自分の民の前に伏して、リムハイの民のために執り成してくれた。
26 そこでレーマン人は、リムハイの民が武器を持っていないのを見て、彼らを哀れに思い、心を和らげ、王とともに安らかに自分の国へ帰って行った。

第21章

リムハイの民、レーマン人に打たれ、打ち負かされる。リムハイの民、アンモンに会い、改宗する。アンモンにヤレド人の24枚の版のことを告げる。紀元前約122年から121年に至る。

01 さて、リムハイと彼の民はニーファイの町に帰り、再び平和にその地に住むことになった。
02 そして多くの日の後、レーマン人はまたニーファイ人に対して怒りをかき立てられ、周囲の境の地に侵入して来るようになった。
03 しかし、彼らの王がリムハイに立てた誓いがあるので、彼らはあえてニーファイ人を殺しはしなかった。それでも彼らは、ニーファイ人の頬を打ち、権力を振るった。そして彼らの背に重荷を負わせ、彼らを物を言えないろばのように追い立てるようになった。
04 まことに、これはすべて、主の言葉が成就するために起こったことである。
05 さて、ニーファイ人の苦難はひどかったが、レーマン人にあらゆる方面から取り囲まれていたので、彼らがレーマン人の手から逃れる手立てはまったくなかった。
06 そして民は、自分たちの苦難のことで王につぶやくようになり、また、レーマン人に向かって出て行って戦いたいと願うようになった。このように、彼らが不平を言ってひどく王を悩ましたので、王は彼らに望みどおりにすることを許した。
07 そこで彼らは再び集まり、よろいを着け、レーマン人を自分たちの国から追い出すために、彼らに向かって出て行った。
08 そして、レーマン人が勝ってリムハイの民を追い返し、多くの者を殺した。
09 そのため、リムハイの民の中に大きな嘆きと悲しみがあった。やもめは夫のために嘆き、息子と娘は父のために嘆き、兄弟は兄弟のために嘆いた。
10 さて、国内には非常に多くのやもめがおり、そのやもめたちはレーマン人に対するひどい恐れが募っていたので、毎日毎日激しく泣き叫んだ。
11 そして、やもめたちが絶え間なく泣き叫んだため、リムハイの民の残りの者たちは、レーマン人に対する怒りをかき立てられた。そして、彼らは再び戦いに出たが、大きな損害を被り、またもや追い返された。
12 まことに彼らはもう一度、すなわち3度目の戦いに出たが、同じように損害を被った。そして、殺されなかった者たちは、ニーファイの町にまた帰った。
13 また彼らは、地に伏すほどにへりくだって、奴隷のくびきを受け、敵の望むままに打たれ、あちらこちらに追い立てられ、荷を負わされるに任せた。
14 それで彼らは、心底謙遜にへりくだり、神に熱烈に叫び求めた。彼らは、自分たちの受けている苦難から救い出してくださるように、終日神に叫び求めた。
15 しかし、主は彼らの罪悪のために、彼らの嘆願を聞き届けるのを遅くされた。それでも主は、彼らの嘆願を聞き届け、レーマン人の心を和らげてくださったので、レーマン人はリムハイの民の重荷を軽くするようになった。しかし主は、彼らを奴隷の状態から救い出すのを、ふさわしいとは思われなかった。
16 さてその後、彼らはその地で次第に栄え始めた。以前よりも豊かに穀物を栽培し、大小の家畜の群れを飼うようになったので、飢えに苦しむことはなかった。
17 ところが、女の数が非常に多くて男の数を上回っていたので、リムハイ王は、やもめとその子供たちが飢えて死ぬことのないように、すべての男に、生活の糧を彼らに分け与えるよう命じた。殺された者がおびただしい数に上っていたので、彼らはそうしたのである。
18 さて、リムハイの民はできるかぎり一団となって生活し、自分たちの穀物と家畜の群れを守った。
19 また、王自身も何らかの方法でレーマン人の手に落ちることを恐れ、衛兵を連れずには、町の城壁の外に安心して出ようとはしなかった。
20 また王は、自分の民に周辺の地を見張らせた。そして、荒れ野の中に逃げ込んでレーマン人の娘たちをさらい、自分の民にこのようなひどい破壊をもたらしたあの祭司たちを、何とかして捕らえさせようとした。
21 リムハイの民は、彼らを捕らえて罰したいと思っていた。それは彼らが、夜ニーファイの地へやって来て、民の穀物や多くの貴重な品々を運び去ったからである。それで民は彼らを待ち伏せした。
22 そしてその後、アンモンと彼の同僚たちがその地に来るまで、レーマン人とリムハイの民の間に二度と争いがなかった。

23 そして、王が衛兵とともに町の門の外にいたときに、アンモンと彼の同僚たちを見つけたのであった。そのとき、王は彼らのことをノアの祭司たちだと思ったので、彼らを捕らえて縛らせ、牢に投げ込ませたのであった。もし彼らがノアの祭司たちであったら、王は殺させたことであろう。
24 ところが王は、彼らがそうではなく、自分の同胞で、ゼラヘムラの地からやって来たことを知り、非常に大きな喜びに満たされた。
25 さて、リムハイ王は、アンモンが来る前にゼラヘムラの地を探すために少数の人々を派遣したことがあった。しかし、彼らはその地を見つけることができなくて、荒れ野の中で迷ってしまった。
26 それでも彼らは、かつて人々の住んでいた地、干からびた骨が辺り一帯に散乱していた地、まことに、かつて人々が住み、滅びてしまった地を発見した。そして彼らは、そこをゼラヘムラの地であると思って、ニーファイの地に引き返し、アンモンが来る少し前に、境の地に到着したのであった。
27 そのときに、彼らは記録を持ち帰った。すなわち、彼らが発見した、骨を残した民の記録を持ち帰った。それは金属の版に刻まれていた。
28 さて、リムハイは、モーサヤ王が神からの賜物を持っており、それによってこのような刻まれた記録を解釈できるということをアンモンの口から聞いて、またもや喜びに満たされた。そして、アンモンも喜んだ。
29 しかし、アンモンと彼の同僚たちは、自分たちの同胞がそのように大勢殺されていたので、悲しみでいっぱいになった。
30 またノア王と彼の祭司たちが、そのように多くの人に神に対して罪と不義を犯させたことについても、彼らは悲しんだ。また彼らは、アビナダイが死んだことも、アルマや彼と行動を共にした人々が立ち去ったことについても、悲しんだ。アルマとその人々は、神の力と権威と、またアビナダイが語った言葉を信じる信仰によって、神の教会を設立していた。
31 まことにアンモンと彼の同僚たちは、彼らが立ち去ったことを悲しんだ。リムハイと彼の民は、彼らがどこへ逃げて行ったか知らなかったからである。もし知っていれば、アルマや彼とともにいた人々は、神に仕え、神の戒めを守るという聖約を神と交わしていたので、リムハイと彼の民は、喜んで彼らと行動を共にしたことであろう。
32 さて、アンモンがやって来た後、リムハイ王も彼の民の多くの者も、神に仕え、神の戒めを守るという聖約を神と交わした。
33 そして、リムハイ王と彼の民の多くの者は、バプテスマを受けたいと願った。しかしその地には、神から権能を授かっている者は一人もいなかった。またアンモンは、自分自身をふさわしくない僕であると考えて、そのことを行うのを辞退した。
34 そこで彼らは、そのとき自分たちで教会を設けることをせずに、主の御霊を待ち望むことにした。彼らは荒れ野に逃げ込んだアルマと彼の同胞のようになりたいと願っていた。
35 彼らは心を尽くして喜んで神に仕える証拠として、また証明としてバプテスマを受けたいと願っていたにもかかわらず、その時期は引き延ばされた。彼らのバプテスマについての話は、後に載せることにする。
36 さて、アンモンとその一行、およびリムハイ王とその民は、レーマン人の手から、また奴隷の状態から抜け出すことをひたすら考え続けた。

第22章

民がレーマン人の下での奴隷の状態から逃れるための計画が立てられる。レーマン人、酒に酔う。民は逃れ、ゼラヘムラに帰り、モーサヤ王の臣民となる。紀元前約121年から120年に至る。

01 さて、アンモンとリムハイ王は、奴隷の状態から抜け出す方法について民と相談を始めた。彼らはすべての民を連れ立って集まらせた。彼らはこの件について民の声を聞くことができるように、こうしたのである。
02 さて、彼らが奴隷の状態から抜け出すには、女子供を伴い、大小の家畜の群れを連れ、天幕を携えて荒れ野へ出て行く以外に何の方法も見いだせなかった。レーマン人が非常に大勢であったため、リムハイの民は剣によって奴隷の状態から抜け出そうと考えても、彼らと戦うことは不可能だったからである。
03 さてこのとき、ギデオンが進み出て王の前に立ち、そして言った。「王様、わたしたちが同胞であるレーマン人と戦ったときに、あなたはこれまでに何度も、わたしの言葉を聞き入れてくださいました。
04 そして王様、もしわたしをふつつかな僕であったと思われなければ、すなわち、これまで多少なりともわたしの言葉をお聴きになって、それがあなたのお役に立っていましたならば、この度もわたしの言葉をお聴きくださるようにお願いいたします。わたしはこれからもあなたの僕となり、この民を奴隷の状態から救い出しましょう。」
05 そこで、王は彼に語ることを許した。すると、ギデオンは王に言った。

06 「町の裏手の城壁を通って行く裏道に御注目ください。そこにいるレーマン人、すなわちレーマン人の見張りの兵は、夜は酒に酔っています。ですから、民の全体に布告を出して大小の家畜の群れを集めさせ、夜の間に荒れ野に群れを追って行けるようにしましょう。
07 そして、わたしはあなたの命令に従い、最後の貢ぎ物であるぶどう酒をレーマン人に納めます。すると彼らは、飲んで酔うでしょう。彼らが酔って眠っている間に、わたしたちは彼らの宿営の左手にある間道を通って行きましょう。
08 こうしてわたしたちは、女子供を伴い、大小の家畜の群れを連れて荒れ野に出て行き、シャイロムの地を回って進みましょう。」
09 そこで王は、ギデオンの言葉を聞き入れることにした。

10 そこでリムハイ王は、民に彼らの家畜の群れを集めさせた。また王は、貢ぎ物のぶどう酒をレーマン人に、贈り物としていつもよりたくさん届けた。すると彼らは、リムハイ王が届けたぶどう酒をふんだんに飲んだ。

11 さて、リムハイ王の民は、夜の間に大小の家畜の群れを連れて荒れ野へ出て行った。彼らは荒れ野の中をシャイロムの地を回って行き、アンモンとその同僚たちに導かれて、ゼラヘムラの地へ向かって道を進んだ。
12 彼らは、自分たちの金や銀、貴重な品々、それに食糧を運べるかぎり持って荒れ野に出て、旅を続けた。

13 このようにして、彼らは荒れ野の中で幾日も過ごした後、ゼラヘムラの地に到着してモーサヤの民に加わり、彼の臣民となった。
14 そして、モーサヤ王は喜んで彼らを迎え入れ、彼らの記録と、以前にリムハイの民が見つけた記録を受け取った。
15 さて、レーマン人は、リムハイの民が夜の間にその地を出て行ったことを知ると、彼らを追跡するために荒れ野に軍隊を送り出した。
16 軍隊は2日間彼らを追跡した後、もはやその跡を見つけることができず、荒れ野の中で迷ってしまった。

ノア王の民により荒れ野に追われたアルマと主の民の話。次の第23〜24章がそれに相当する。

第23章

アルマ、王になることを断る。アルマ、大祭司として務める。主、アルマの民を懲らしめられる。レーマン人、ヘラムの地を征服する。ノア王の邪悪な祭司たちの統率者であるアミュロン、レーマン人の王の臣民を治める。紀元前約145年から121年に至る。

01 さて、アルマは、ノア王の軍隊がやって来ると主から警告を受け、それを民に知らせたので、民は家畜の群れを集め、穀物を持ち、ノア王の軍隊を避けて荒れ野に出て行った。
02 主は彼らを強くし、ノア王の民に追いつかれて滅ぼされることのないようにされた。

03 それで彼らは、荒れ野に逃げ込んで、8日間旅をした。
04 彼らは非常に美しく、心地よい地、清らかな水のある地に着いた。
05 そこで彼らは天幕を張り、地を耕し、建物を建て始めた。まことに、彼らは勤勉であり、非常によく働いた。

06 また民は、アルマを愛していたので、彼が王になることを願った。
07 しかし、彼は民に言った。「わたしたちに王がいるのは決して望ましいことではない。主は、『あなたがたは、ある人をほかの人よりも優れていると思ってはならない。すなわち、人は自分自身をほかの人よりも優れていると考えてはならない』と言われた。したがって、あなたがたに王がいるのは望ましいことではないと、わたしはあなたがたに言う。
08 しかしながら、あなたがたが正しい人をいつも王に頂くことが可能であれば、王がいるのもよいであろう。
09 しかし、ノア王と彼の祭司たちの罪悪を思い出してほしい。わたし自身もわなにかかり、主の目から見て忌まわしいことをたくさん行い、つらい悔い改めをした。
10 にもかかわらず、わたしが多くの艱難を味わった後、主はわたしの嘆願を聞いて、わたしの祈りにこたえ、わたしを主の御手に使われる者にしてくださり、このように、あなたがたの多くに主の真理を知らせることができるようにしてくださった。
11 それでも、わたしはこのことを誇らない。わたしは自分自身について誇るにふさわしくないからである。
12 今、わたしはあなたがたに言う。あなたがたはかつてノア王に虐げられ、彼と彼の祭司たちに対して奴隷の状態にあり、彼らによって罪悪に引き込まれたため、罪悪の縄目をかけられてしまった。
13 ところがあなたがたは、神の力によってこれらのかせから、すなわちノア王と彼の民の手から、また罪悪のかせから救い出されているので、わたしはあなたがたが解放されたこの自由にしっかりと立つように、まただれもあなたがたを治める王としないように望んでいる。
14 また、神の道を歩み、神の戒めを守っている神の人でなければ、だれも、あなたがたの教師や教え導く者としてはならない。」
15 このようにアルマは、人は皆、自分自身のように隣人を愛し、民の中に決して争いがないようにしなければならないことを、彼の民に教えた。
16 さて、アルマは彼らの教会の創設者であったので、彼らの大祭司であった。
17 そして、アルマを通じて神から与えられなければ、だれも説教をする権能や教える権能を受けられなかった。したがってアルマは、民のすべての祭司とすべての教師を任命した。また、正しい人でなければだれも任命されなかった。
18 そして、彼らは民を見守り、義にかかわることをもって彼らを養った。
19 さて、彼らはその地で非常に栄え、その地をヘラムと名付けた。
20 そして、彼らはヘラムの地で増え、非常に栄えた。そして、一つの町を築いてヘラムの町と名付けた。
21 にもかかわらず、主は御自分の民を懲らしめるのを、御心にかなうことと見ておられる。まことに、主は民の忍耐と信仰を試される。
22 しかしながら、主に頼る者はだれであろうと、終わりの日に高く上げられる。そして、この民はそのように試されたのであった。
23 見よ、わたしは、これからあなたがたに、彼らが奴隷の状態に落とされたことと、主なる彼らの神、すなわちアブラハムとイサクとヤコブの神のほかに、だれも彼らを救い出せなかったことを示そう。
24 さて、主が彼らを救い出し、彼らに御自分の偉大な力を示されたので、彼らの喜びは大きかった。

25 さて見よ、彼らがヘラムの地、まことに、ヘラムの町にいて周辺の地を耕していたところ、レーマン人の軍隊がその地の境に現れた。

26 そこでアルマの同胞は、畑から逃げてヘラムの町に集まった。レーマン人が現れたことで、彼らはひどくおびえていた。
27 しかし、アルマは出て行って民の中に立ち、怖がらないように、また主なる自分たちの神を覚えていれば主は助けてくださると彼らに説いた。
28 そこで彼らは恐れを静め、レーマン人が自分たちと妻子を助けてくれるように、彼らの心を和らげてくださることを主に叫び求めた。

29 そこで主は、レーマン人の心を和らげてくださった。そこで、アルマと彼の同胞は出て行って、自分たちの身を彼らにゆだねた。そしてレーマン人は、ヘラムの地を占領した。
30 ところで、リムハイ王の民を追っていたレーマン人の軍隊は、幾日もの間荒れ野をさまよっていた。
31 そして見よ、彼らは、ノア王の祭司たちがアミュロンと名付けた地で、その祭司たちを見つけた。祭司たちはアミュロンの地を所有し、土地を耕し始めていた。
32 そして、祭司たちの統率者の名はアミュロンといった。
33 さて、アミュロンはレーマン人に懇願し、さらにレーマン人の娘である妻たちを遣わして、夫を殺すことのないように同胞に懇願させた。
34 そこでレーマン人は、アミュロンと彼の仲間を哀れみ、その妻たちに免じて彼らを殺さなかった。
35 このようにして、アミュロンと彼の仲間はレーマン人に加わった。そして彼らは、ニーファイの地を探して荒れ野の中を旅していたときに、アルマと彼の同胞が所有していたヘラムの地を発見したのである。

36 さて、レーマン人はアルマと彼の同胞に、ニーファイの地へ通じている道を教えるならば命を助けて、自由を認めると約束した。

37 ところが、アルマがニーファイの地へ通じる道を教えたところ、レーマン人はその約束を守ろうとせず、彼らはアルマと彼の同胞を見張る兵をヘラムの地の周辺に置いた。
38 そして、残りの者たちはニーファイの地へ向かった。それから一部の者は、ヘラムの地に残された見張りの兵の妻子を連れて、またこの地に戻って来た。

39 レーマン人の王はアミュロンに、ヘラムの地にいる自分の民の王となり統治者となることを許していた。しかし、それでも彼は、レーマン人の王の意に反して事を行う力は持っていなかった。


【動画】主,リムハイの民とアルマの民を救い出される



【動画】逃れるアルマの民


第24章

アミュロン、アルマと彼の民を虐げる。祈る者は殺されることになる。主は彼らの重荷を軽くされる。主は彼らを奴隷の状態から救い出され、彼らはゼラヘムラの地に帰る。紀元前約145年から120年に至る。

01 さて、アミュロンはレーマン人の王の歓心を買った。そこで、レーマン人の王はアミュロンと彼の仲間を、自分の民、すなわちシェムロンの地とシャイロムの地とアミュロンの地に住んでいる民を教える者として任命させた。
02 レーマン人は、すでにこれらの地をすべて占領していたからである。またそのためにレーマン人の王は、これらすべての地を治める王たちを任命していた。
03 ところでレーマン人の王の名は、その父の名を取って付けられ、レーマンといった。そのため、彼はレーマン王と呼ばれた。彼は大勢の民を治める王であった。
04 彼は自分の民が所有するあらゆる地で、アミュロンの仲間の中から教える者を任命した。このようにして、レーマン人のすべての民の中で、ニーファイの言語が教えられるようになった。
05 レーマン人は互いに親しみ合う民であった。しかし、神を知らなかった。アミュロンの仲間は彼らに、主なる自分たちの神についてはどのようなことも教えず、モーセの律法についても教えなかった。また、アビナダイの言葉も教えなかった。
06 しかし彼らは、記録を書き記すようにレーマン人に教え、また彼らが互いに文書でやり取りができるように教えた。
07 このようにしてレーマン人は富を殖やし始め、互いに商売をして富むようになった。また彼らは、俗世の知恵ということではずる賢く抜け目のない民、まことに、非常に悪知恵にたけた民になり、自分の仲間以外に対して、あらゆる悪事と略奪を働くのを喜びとした。
08 さて、アミュロンはアルマと彼の同胞に対して権力を振るうようになり、アルマを迫害し、また自分の子供たちにアルマとその同胞の子供たちをいじめさせるようになった。
09 アミュロンはアルマを知っており、アルマがかつてノア王の祭司の一人であり、アビナダイの言葉を信じて王の前から追い出された者であることを知っていたからである。そのために、アミュロンはアルマに憤りを感じていた。彼はレーマン王の支配を受けていたにもかかわらず、アルマと彼の同胞に対して権力を振るい、彼らに苦役を課し、彼らを見張る監督を置いた。

10 さて、彼らの苦難は非常に大きかったので、彼らは熱烈に神に叫び求めるようになった。
11 ところが、アミュロンは叫び求めることをやめるように彼らに命じた。そして、彼らを見張る者を置いて彼らを見張らせた。神に叫び求めているところを見つかった者はだれであろうと、殺すことにした。
12 そこでアルマと彼の民は、主なる自分たちの神に声を上げることなく、自分たちの心を主に注ぎ出した。そして主は、彼らの心の思いを御存じであった。
13 そして、苦難の中にいる彼らに主の声が聞こえて、言われた。「あなたがたの頭を上げて喜びなさい。わたしは、あなたがたがわたしと交わした聖約を知っている。わたしは自分の民と聖約を交わし、その民を奴隷の状態から救い出す。

14 またわたしは、あなたがたの肩に負わされる荷を軽くし、あなたがたが奴隷の状態にある間、あなたがたの背にその荷が感じられないほどにしよう。わたしがこのようにするのは、あなたがたがこの後、わたしのために証人になれるようにするため、また主なる神であるわたしが、苦難の中にいる自分の民を訪れるということを、あなたがたが確かに知ることができるようにするためである。」
15 そこで、アルマと彼の同胞に負わされた重荷は軽くなった。まことに、主は、彼らが容易に重荷に耐えられるように彼らを強くされた。そこで彼らは心楽しく忍耐して、主の御心にすべて従った。

16 さて、彼らは信仰が篤く、忍耐強かったので、主の声が再び聞こえて、言われた。「喜びなさい。明日、わたしはあなたがたを奴隷の状態から救い出す。」
17 そして、主はアルマに言われた。「あなたはこの民の先頭に立たなければならない。わたしはあなたとともに行き、この民を奴隷の状態から救い出そう。」

18 そこでアルマと彼の民は、夜間自分たちの家畜の群れを集め、また穀物の幾分かを集めた。まことに、彼らは一晩中家畜の群れを集め続けた。
19 そして朝、主はレーマン人を深く寝入るようにされたので、彼らの監督たちは皆、深い眠りに落ちていた。
20 そこで、アルマと彼の民は荒れ野に出て行った。そして彼らは一日中旅をして、ある谷に天幕を張った。彼らは、アルマが荒れ野の中で彼らを導いたので、その谷をアルマの谷と名付けた。
21 そして、神が自分たちに憐れみをかけ、重荷を軽くし、自分たちを奴隷の状態から救い出してくださったので、彼らはアルマの谷で神に感謝の気持ちを注ぎ出した。彼らは奴隷の状態にあって、主なる彼らの神のほかに、だれも彼らを救い出すことができなかったからである。
22 そして、彼らは神に感謝をささげた。まことに、男も女も子供も、語ることのできる者は皆、声を上げて神を賛美した。
23 すると、主がアルマに言われた。「あなたとこの民は急いでこの地を立ち去りなさい。レーマン人が目を覚まして、あなたを追っているので、この地を立ち去りなさい。レーマン人がこれ以上この民を追わないように、わたしは彼らをこの谷でとどめよう。」
24 そして、彼らはその谷を出て、荒れ野に旅立った。

25 そして彼らは、12日間荒れ野を旅した後、ゼラヘムラの地に着いた。モーサヤ王は喜んで彼らを迎え入れた。

第25章

ゼラヘムラのミュレクの子孫はニーファイ人になる。彼らはアルマの民とゼニフの民のことを知る。アルマ、リムハイと彼の民の全員にバプテスマを施す。モーサヤ、神の教会を設立することをアルマに許す。紀元前約120年。

01 さて、モーサヤ王はすべての人を集めさせた。
02 当時ニーファイの子ら、すなわちニーファイの子孫であった人々は、ミュレクと、また彼とともに荒れ野へ出た人々の子孫である、ゼラヘムラの民ほど多くはなかった。
03 また、ニーファイの民とゼラヘムラの民を合わせても、レーマン人ほど多くはなかった。まことに、彼らはその半分にも満たなかった。
04 さて、ニーファイの民は皆集まり、ゼラヘムラの民も皆集まった。彼らは集まって二つの集団を作った。
05 そして、モーサヤ王は民にゼニフの記録を自ら読んで聞かせ、また人にも読ませた。まことに、彼は、ゼニフの民がゼラヘムラの地を立ち去ったときから再び帰って来るまでの、彼らの記録を読んで聞かせた。
06 彼はまた、アルマと彼の同胞の話と、また彼らがゼラヘムラの地を立ち去ったときから再び帰って来るときまでに受けた、あらゆる苦難の話を読んで聞かせた。
07 さて、モーサヤ王がこれらの記録を読み終えると、その地にとどまっていた彼の民は、不思議な思いと驚きに打たれた。
08 彼らには思いも及ばなかったからである。彼らが奴隷の状態から救い出された人々を見ると、その人々は非常に大きな喜びに満たされていた。
09 またその人々は、レーマン人に殺された自分たちの同胞のことを思っては、悲しみでいっぱいになり、悲哀の涙を流した。
10 さらに彼らは、アルマと彼の同胞をレーマン人の手と奴隷の状態から救い出してくださった神の直接の慈しみと神の力のことを思っては、声を上げ、神に感謝をささげた。
11 また彼らは、罪深く汚れた状態にある自分たちの同胞のレーマン人のことを思っては、彼らの幸いを案じて苦痛と苦悩にさいなまれた。
12 さて、レーマン人の娘たちを妻としたアミュロンと彼の仲間の子供たちは、自分の父たちの行為を快く思っていなかった。そして、彼らはもはや父たちの名で呼ばれることを望まなかったので、ニーファイの名を受けた。それは、ニーファイの子らと呼ばれ、ニーファイ人と呼ばれる人々の中に数えられるようにするためであった。
13 今やゼラヘムラの民はすべて、ニーファイ人とともに数えられた。それは、ニーファイの子孫である人々のほかに、だれにも王位が授けられなかったからである。
14 さて、モーサヤ王は民に語り終え、読み終えると、アルマにも民に語ってもらいたいと思った。
15 そこでアルマは、民が幾つもの大きな集団を成して集まっているときに、彼らに語った。彼は一つの集団から次の集団へと巡って、悔い改めと主を信じる信仰を民に宣べ伝えた。
16 また彼は、リムハイと彼の同胞から成る民、すなわち奴隷の状態から救い出されたすべての人に、彼らを救い出してくださったのが主であることを覚えておくように勧めた。
17 さて、アルマが民に多くのことを教え、彼らに語り終えると、リムハイ王はバプテスマを受けたいと願った。また、彼の民も皆、バプテスマを受けたいと願った。
18 そこでアルマは水の中に入って行き、彼らにバプテスマを施した。まことに、彼はモルモンの泉で同胞に授けた方法で、彼らにバプテスマを施した。そして、彼がバプテスマを施した人々は皆、神の教会に属した。それは彼らがアルマの言葉を信じたからである。

19 さて、モーサヤ王はゼラヘムラの全地に教会を設立することをアルマに許し、またそれぞれの教会をつかさどる祭司と教師を聖任する力を彼に授けた。
20 さて、このように行われたのは、人々の数が非常に多く、一人の教師ですべての人をつかさどることができなかったからであり、また一つの集会ですべての人に神の言葉を聞かせることもできなかったからである。
21 それで彼らは、教会と呼ばれた別々の集団に集まった。それぞれの教会に祭司と教師がいて、祭司は皆、アルマの口により伝えられたとおりの言葉を宣べ伝えた。
22 このように、多くの教会があったにもかかわらず、それらはすべて一つの教会、すなわち神の教会であった。どの教会でも、悔い改めと神を信じる信仰以外に、どのようなことも説かれなかったからである。
23 さて、ゼラヘムラの地には7つの教会があった。そして、キリストすなわち神の名を受けることを望んだ者はだれでも皆、神の教会に加わった。
24 そして、彼らは神の民と呼ばれた。主は彼らに主の御霊を注がれ、彼らは祝福され、その地で栄えた。

第26章

多くの教会員が不信仰な者たちによって罪に誘い込まれる。アルマ、永遠の命を約束される。悔い改めてバプテスマを受ける者は赦しを得る。罪を犯した教会員で、悔い改めてアルマと主に告白する者は赦される。そのようにしない者は教会の民の中に数えられない。紀元前約120年から100年に至る。

01 さて、当時の若者の中には、ベニヤミン王が民に語ったときにまだ幼い子供であったために、彼の言葉を理解できなかった者が大勢いた。彼らは、自分たちの先祖の言い伝えを信じなかった。
02 彼らは、死者の復活について述べられたことも信じなければ、キリストの来臨についても信じなかった。
03 また、彼らは自分の不信仰のために、神の言葉を理解できなかった。そして、彼らの心はかたくなであった。
04 彼らは、バプテスマを受けようともしなければ、教会に加わろうともしなかった。彼らは信仰に関してはまったく違った民になっており、いつまでもそのままで肉欲にふける罪深い状態にとどまっていた。彼らは主なる自分たちの神に請い願おうとしなかったからである。
05 モーサヤ王の治世に、このような者の数は神の民の半分に満たなかったが、教会の兄弟たちの中に不和が起こったために、やがて神の民よりも多くなった。
06 そして、これらの者は教会に属していた多くの者をだまし、彼らに多くの罪を犯させた。そのため、教会に属していながら罪を犯した者を、教会は説諭しなければならなかった。
07 そこで、教師たちはこれらの者を祭司たちの前に連れて行き、祭司たちに引き渡した。そして祭司たちは、彼らを大祭司アルマの前に連れて行った。
08 当時モーサヤ王は、教会を管理する権能をアルマに与えていた。
09 さて、アルマは彼らのことについて知らなかったが、彼らを訴える証人は大勢いた。まことに、人々は立って、彼らの罪悪についてたくさんの証言をした。
10 ところで、このようなことはこれまで教会の中で起こったことがなかったので、アルマは心の中で思い悩み、これらの者を王の前に連れて行かせた。
11 そして、アルマは王に言った。「まことにわたしたちは、教会の兄弟たちから訴えられたこれらの多くの者を、王の御前に連れてまいりました。彼らはいろいろな罪悪を犯して連れて来られた者たちですが、自分たちの罪を悔い改めません。ですから、罪科に応じて王に裁いていただくために、王の御前にこれらの者を連れてまいりました。」
12 ところが、モーサヤ王はアルマに言った。「まことに、わたしはこの人々を裁きません。あなたが裁くようにあなたの手に渡します。」
13 そこでアルマは、再び心を悩ました。そして彼は、この問題について何を行えばよいか主に尋ねた。神の目にかなわないことを行うのを恐れたからである。
14 アルマが自分の心のすべてを神に注ぎ出したところ、主の声が聞こえて言われた。
15 「アルマよ、あなたは幸いである。モルモンの泉でバプテスマを受けた者たちも幸いである。あなたはわたしの僕であるアビナダイの言葉だけを深く信じたので、幸いである。
16 また彼らは、あなたが彼らに語った言葉だけを深く信じたので、幸いである。
17 あなたはこの民の中に教会を設立したので、幸いである。この民は立てられ、わたしの民となるであろう。
18 まことに、喜んでわたしの名を受けるこの民は幸いである。わたしの名によって彼らは呼ばれるからである。彼らはわたしのものである。
19 あなたは、戒めに背いた者についてわたしに尋ねたので、幸いである。
20 あなたはわたしの僕である。わたしはあなたに、あなたが永遠の命を受けると聖約する。あなたはわたしに仕え、わたしの名によって出て行き、わたしの羊を集めなさい。
21 そして、わたしの声を聞く者はわたしの羊となる。あなたはその者を教会に受け入れなさい。その者をわたしも受け入れよう。
22 見よ、これはわたしの教会である。バプテスマを受ける者はだれでも、悔い改めのためのバプテスマを受けなければならない。あなたが受け入れる者はだれでも、わたしの名を信じなければならない。そうすれば、その者をわたしは惜しみなく赦そう。
23 世の罪を負うのはわたしである。世の人々を造ったのはわたしであり、最後まで信じる者にわたしの右の場所を与えるのは、わたしである。
24 見よ、これらの者はわたしの名によって呼ばれる。これらの者はわたしを知るならば、進み出て、永遠にわたしの右に一つの場所を得るであろう。
25 そして、第二のラッパが鳴ると、そのとき、わたしをまったく知らなかった者たちが出て来て、わたしの前に立つであろう。
26 そのとき、彼らはわたしが主なる彼らの神であり、彼らの贖い主であることを知るであろう。しかし、彼らは贖われないであろう。
27 そのとき、わたしは彼らに、彼らをまったく知らなかったと告げよう。これらの者は、悪魔とその使いのために用意された永遠の火の中に入るであろう。
28 わたしはあなたに言う。わたしの声に耳を傾けない者を、あなたはわたしの教会に受け入れてはならない。そのような者を、わたしは終わりの日に受け入れないからである。
29 わたしはあなたに言う。行きなさい。そして、だれであろうとわたしに背く者を、あなたはその者の犯した罪に応じて裁きなさい。もしその者があなたとわたしの前で罪を告白し、真心から悔い改めるならば、その者をあなたは赦しなさい。わたしもその者を赦そう。
30 そしてわたしは、民が悔い改める度に、わたしに対する彼らの過ちを赦そう。
31 あなたがたも互いに過ちを赦し合わなければならない。まことに、わたしはあなたに言う。隣人が悔い改めると言うときにその過ちを赦さない者は、自分自身に罪の宣告を招くことになる。
32 さて、わたしはあなたに言う。行きなさい。罪を悔い改めようとしない者はだれであろうと、わたしの民の中に数えてはならない。今後、このことを守るようにしなければならない。」
33 さて、アルマはこれらの御言葉を聞くと、それを保存できるように、また神が命じられたとおりに教会の人々を裁けるように、それを書き記した。
34 そして、アルマは行って、罪悪を犯して連れて来られた者たちを主の言葉に従って裁いた。
35 また、罪を悔い改めてそれを告白した者はだれであろうと、教会の人々の中に数えた。
36 しかし、罪を告白しようとせず、罪悪を悔い改めようとしない者は、教会の人々の中に数えられることなく、彼らの名は消された。
37 そして、アルマは教会の諸事をすべて整えた。人々は再び平和を得て、教会の諸事において非常に栄えるようになり、神の前を慎み深く歩み、多くの人を受け入れ、多くの人にバプテスマを施した。
38 さて、ともに教会を管理したアルマと彼の同僚たちは、これらのことをすべて行い、力のかぎり歩み、すべてのことについて神の言葉を教え、あらゆる苦難に耐え、また、神の教会に属していないすべての者から迫害を受けた。
39 彼らは教会の兄弟たちを戒めた。また、彼らも各々、神の言葉により、自分の罪、すなわち過去に犯した罪に応じて戒めを受け、絶えず祈るように、またすべてのことについて感謝をささげるように神から命じられた。

第27章

モーサヤ、迫害を禁じ、平等を指示する。息子アルマとモーサヤの4人の息子たち、教会を滅ぼそうとする。一人の天使が現れ、悪行をやめるように命じる。アルマ、口が利けなくなる。人は皆、救いを得るためには再び生まれなければならない。アルマとモーサヤの息子たち、喜びのおとずれを告げ知らせる。紀元前約100年から92年に至る。


01 さて、不信仰な者たちが教会員に加える迫害が非常にひどくなったので、教会員はつぶやき、その件について指導者たちに訴え始めた。そこで、指導者たちはアルマに訴えた。アルマはその件を王であるモーサヤの前に持ち出し、モーサヤは祭司たちに意見を求めた。
02 そしてモーサヤ王は、不信者は神の教会に属している者を迫害してはならないと、周辺の全地に布告を出した。
03 また、すべての教会に次のような厳しい命令が出された。すなわち、教会の中に迫害があってはならない。すべての者は平等でなければならない。
04 高慢あるいは傲慢になって、平和を乱すようなことがあってはならない。すべての者は隣人を自分自身のように尊ばなければならない。また、自分自身の手で働いて生活の糧を得なければならない。
05 また、教会の祭司と教師は皆、病気のときやひどく生活に困ったときのほかは、どのような場合でも、自分自身で働いて生活の糧を得るようにしなければならない、というものであった。彼らはこれらのことを守ったので、神の恵みを豊かに受けた。
06 そして、国内は再び非常に平和になってきた。また、民は非常に多くなり始め、地の面に、まことに、東西南北に広く分散して、その地の全域に大きな町や村を築き始めた。
07 そして、主は彼らを顧み、栄えさせられた。そのため、彼らは裕福で大きな民となった。

08 ところで、モーサヤの息子たちは不信仰な者たちの中に数えられており、アルマの息子の一人もその中に数えられていた。アルマのその息子は、父の名を取ってアルマと名付けられていた。にもかかわらず、彼は非常に邪悪な男で、偶像を礼拝する者になってしまった。また、彼は言葉数の多い男で、民に多くの世辞を述べ、多くの者に自分と同じような罪悪を犯させた。

09 そして彼は、民の心を奪って民の中にひどい不和を生じさせ、神の敵に民を支配する権力を振るう機会を与えたので、神の教会の繁栄にとって大きな妨げとなった。

10 さて、彼が神の教会を滅ぼそうとして歩き回っていたときに、すなわち、彼が神の戒めにも王の命令にも逆らって、教会を滅ぼし、主の民を惑わそうと、モーサヤの息子たちとともにひそかに歩き回っていたときに、


11 わたしが前に述べたように、彼らが神に背いて歩き回っていたときに、見よ、主の天使が彼らに現れた。その天使は、まるで雲に包まれて来たかのように降って来て、さながら雷のような声で語り、その声は彼らの立っていた大地を震わせた。

12 彼らはそのためにひどく驚き、地に倒れた。しかし、彼らには天使の語った言葉が分からなかった。

13 それでも天使は、また大声で言った。「アルマよ、起き上がって立ちなさい。あなたはなぜ神の教会を迫害するのか。主はかつて、『これはわたしの教会である。わたしがこれを設ける。わたしの民の背きのほかに、これを覆すものはない』と言われた。」

14 天使はまた言った。「見よ、主は、御自分の民の祈りと、御自分の僕であり、またあなたの父であるアルマの祈りを聞かれた。あなたの父が、あなたが真理の知識に導かれるように、深い信仰をもってあなたのことを祈ってきたからである。したがって、わたしは神の力と権能が存在することをあなたに認めさせるために来た。神の僕たちの祈りが、彼らの信仰に応じてかなえられるためである。

15 さて見よ、あなたは神の力に抵抗することができるか。わたしの声は大地を震わせているではないか。あなたには、わたしがあなたの前にいるのが見えないか。わたしは神から遣わされた者である。
16 さて、わたしはあなたに言う。あなたの先祖がヘラムの地とニーファイの地で囚われの状態にあったことを思い出しなさい。また、神があなたの先祖のために、どれほど大いなることを行われたかを思い起こしなさい。あなたの先祖は奴隷の状態にあったが、神が救い出してくださった。アルマよ、わたしはあなたに言う。行きなさい。これからはもう教会を滅ぼそうとしてはならない。たとえあなた自身が捨てられようとも、彼らの祈りが聞き届けられるためである。」
17 そしてこれは、天使がアルマに語った最後の言葉である。そのようにして、天使は去って行った。

18 さて、アルマと、またアルマとともにいた者たちは、ひどく驚いて、再び地に倒れた。それは、自分の目で主の天使を見、天使の声が雷のようであって大地を震わせ、また大地を震わせてそれが引き裂けるほどに揺り動かせるのは、神の力のほかにないことを、知ったからである。


19 このときアルマは、ひどく驚いたために物が言えなくなった。口を開くことができなくなったのである。また、体の力が弱くなり、手も動かせないほどになった。そこで、身動きができないまま彼と一緒にいた者たちに運ばれて、彼の父の前に置かれた。

20 そして彼らは、彼の父に、自分たちに起こったことをすべて詳しく告げた。すると彼の父は、それが神の力によって起こったことを知って喜んだ。

21 彼は主が自分の息子と、また息子と一緒にいた者たちに行われたことを見せようとして、大勢の人を集めた。

22 また、彼は祭司たちも集めた。そして、彼らは断食して、主なる自分たちの神に祈り始め、アルマの口を開いて物が言えるようにしてくださること、また彼の手足に力が与えられること、そして、それによって民の目が開かれて、彼らが神の慈しみと栄光を見て知るようになることを請い願った。

23 そして、彼らが2日2晩断食して祈ったところ、アルマの手足は力を取り戻した。そして、アルマは立ち上がると、彼らに語り始め、安心するように彼らに言った。

24 彼はこのように述べた。「わたしは自分の罪を悔い改め、主に贖われました。まことに、わたしは御霊によって生まれました。

25 主はわたしに言われました。『全人類、すなわち男女を問わず、すべての国民、部族、国語の民、民族が再び生まれなければならないことを不思議に思ってはならない。まことに、人は神から生まれ、肉欲にふける堕落した状態から義の状態に変わって、神に贖われ、神の息子や娘にならなければならない。
26 このようにして、彼らは新たな者となる。このようにならないかぎり、決して神の王国を受け継ぐことはできない。』
27 わたしは皆様に申し上げます。人は実際にこのような状態にならないかぎり、必ず捨てられます。わたしは一度捨てられそうになったので、このことが分かります。

28 にもかかわらず、多くの艱難を耐え抜いて、死ぬほどの悔い改めをしたところ、主はわたしを憐れんで、永遠に燃える火からわたしを救い出すことがふさわしいとされました。そして、わたしは今、神から生まれたのです。
29 わたしはすでに苦汁と罪悪のかせから贖われました。わたしはかつて、最も暗く深い淵の中にいましたが、今は神の驚くべき光を見ています。わたしはかつて永遠の苦痛に責めさいなまれましたが、今は救い出されており、もう心に苦痛を感じません。
30 わたしはかつて贖い主を拒み、わたしたちの先祖が語ってきたことを受け入れませんでした。しかし今は、贖い主が将来来られるのを全人類が先見できること、また贖い主が御自分の造られたすべてのものを覚えていて、将来すべての人に御自身を現されるということをわたしは知っています。
31 まことに、すべてのひざがかがみ、すべての舌が贖い主の御前で告白します。すべての人が立って贖い主に裁かれる終わりの日に、彼らは贖い主が神であられることを告白します。またそのとき、神に頼らずにこの世の中で生きている者たちは、永遠の罰の裁きが自分たちにとって公正であることを告白します。そして、彼らはすべてのことを見通す贖い主の目の下で震えおののき、縮み上がります。」

32 さて、アルマはこのとき以来、民を教え始めた。また、天使が現れたときにアルマと一緒にいた者たちとともに、全地を旅して回り、自分たちの聞いたり見たりしたことをすべての民に告げ、多くの艱難の中で神の言葉を宣べ伝えた。そして、不信仰な者たちからひどい迫害を受け、彼らの多くから打たれた。
33 しかし、このような目に遭ったにもかかわらず、彼らは教会員に大きな慰めを与え、彼らの信仰を強め、また、ひどい苦労をしながらも、寛容をもって彼らに神の戒めを守るように勧めた。
34 これらの者のうちの4人はモーサヤの息子であり、その名をアンモン、アロン、オムナー、ヒムナイといった。以上はモーサヤの息子たちの名である。


35 そして、彼らはゼラヘムラの全地を旅し、モーサヤ王が治めているすべての民の中を巡って、自分たちがかつて教会に加えたすべての害悪の償いをしようと熱心に努め、自分たちのすべての罪を告白し、自分たちが見たすべてのことを告げ、また自分たちの言葉を聞きたいと望んだすべての人に、預言と聖文について解説した。

36 このようにして、彼らは神の手に使われる者となって多くの人を真理の知識に導き、まことに、贖い主について知らせた。
37 何と彼らは祝福されていることか。彼らは平和を告げて広め、善のよきおとずれを告げて広め、主が統治しておられることを民に告げ知らせたからである。


【動画】息子アルマ、主に改心する



【動画】息子アルマの悔い改め


第28章

モーサヤの息子たち、レーマン人に宣べ伝えに行く。モーサヤ、二つの聖見者の石を使ってヤレド人の版を翻訳する。紀元前約92年。


01 さて、モーサヤの息子たちはこれらのことをすべて終えた後、少数の人々を連れて、自分たちの父である王のもとに帰った。そして、自分たちの選んだこれらの人々とともにニーファイの地へ行き、同胞であるレーマン人に自分たちの聞いたことを宣べ伝え、神の言葉を告げることができるように、許可を与えてほしいと願った。
02 それは、このようにすれば、レーマン人に主なる彼らの神のことを悟らせ、彼らの先祖の罪悪を立証し、ニーファイ人に対する憎悪をなくさせ、主なる彼らの神を信じて喜ばせ、互いに友好を深めさせて、またニーファイ人とレーマン人の両方に対して主なる彼らの神が与えてくださった全地に、もはや争いがないようにすることができると思ったからである。
03 さて、モーサヤの息子たちは、救いがすべての造られたものに告げ知らされることを願った。彼らは、だれであろうと人が滅びるのに耐えられなかったからである。まことに、無窮の苦痛を受ける人がいると考えただけで、彼らは震えおののいた。
04 このように、主の御霊が彼らに働きかけた。彼らはかつて罪人の中でも最も罪深い者であった。しかし主は、その限りない憐れみにより、彼らを救うのが御心にかなうとされた。それでも彼らは、自分たちの罪悪のために心にひどい苦しみを受け、とこしえに捨てられてしまうのではないかと非常に悩み、心配した。
05 そして彼らは、ニーファイの地へ行くことができるように、幾日も父に懇願した。

06 そこでモーサヤ王は、息子たちをレーマン人の中へ行かせて御言葉を宣べ伝えさせるべきかどうか、主に尋ねた。
07 すると、主はモーサヤに言われた。「彼らを行かせなさい。多くの者が彼らの言葉を信じるからである。そして、彼らは永遠の命を得るであろう。また、わたしはあなたの息子たちをレーマン人の手から救い出そう。」
08 そこでモーサヤは、彼らの願いどおりにすることを許した。

09 そして、彼らは荒れ野に旅立ち、レーマン人の中で御言葉を伝えるために出かけて行った。彼らが行ったことについての話は後に書き記す。
10 さて、モーサヤ王には王位を継ぐ者が一人もいなかった。王の息子たちの中に、王位を受けたいと思う者がだれもいなかったからである。
11 そこでモーサヤ王は、リムハイの民が発見し、リムハイの手から王に渡された金の版の記録を翻訳し、書き取らせた後、真鍮の版に刻まれた記録と、ニーファイの版と、神の命令に従って王自身が守り、保存してきたすべてのものを取りまとめた。
12 彼がそうしたのは、彼の民がそれを切望したからである。彼らはすでに滅びてしまった人々のことを非常に知りたいと思った。
13 さて、彼は、弓形のものの両端にしっかり取り付けられたあの二つの石を用いて、それらを翻訳した。
14 これらのものは世の初めから用意され、言語を解訳するために代々伝えられたものであり、
15 また、この地を所有するすべての者に、御自分の民の罪悪と忌まわしい行いを明らかにするために、主が御自分の手により守り、保存してこられたものである。
16 そして、これらのものを持つ者は、昔言われたように聖見者と言われる。
17 さて、モーサヤがこの記録を翻訳したところ、見よ、それはすでに滅びた民についての話であった。彼らが滅びたときからさかのぼって、主が民の言葉を乱されて、民が全地の面に広く散らされた時代の大きな塔の建設に至るまでのこと、さらにその時代からさかのぼって、アダムの創造に至るまでのことが書き記されていた。
18 さて、モーサヤの民はこの話を聞いて非常に嘆き、まことに、悲しみでいっぱいになった。しかし、それでも彼らはこの話から多くのことを知り、喜びも得た。
19 そして、この話の中に書き記されていることを知るのは、見よ、すべての人にとって望ましいので、この話は後に書き記すことにする。
20 さて、前にあなたがたに述べたように、モーサヤ王はこれらのことを行った後、真鍮の版と、自分が保存してきたすべてのものを取りまとめ、これらのものをアルマの子であるアルマに託した。まことに、すべての記録と解訳器を取って彼に与え、これらのものを守り、保存すること、また民の記録を書き続けること、そして、リーハイがエルサレムを出たときから伝えられてきたように、今後も代々これらのものを伝えることを彼に命じた。


【動画】宣教師になったモーサヤの息子たち


第29章

モーサヤ、王の代わりにさばきつかさを選ぶことを提案する。不義な王は民を罪に陥らせる。息子アルマ、民の声によって大さばきつかさに選ばれる。また、教会の大祭司も務める。父アルマとモーサヤ、死ぬ。紀元前約92年から91年に至る。

01 さて、モーサヤはこれを終えると、だれが民の王になるべきかについて民の気持ちを知りたいと思い、全地に、すなわち民の全員に自分の言葉を伝えた。
02 そして、「わたしたちは王の子アロンが王となり、統治者となることを願っています」というのが民の声であった。
03 ところが、アロンはすでにニーファイの地へ行った後であったので、王は彼に王位を譲れなかった。またアロンも、王位を受けることを望まなかったであろう。さらに、モーサヤの息子たちの中には、王位を受けたいと思う者はだれもいなかった。
04 そこでモーサヤ王は、民にもう一度自分の言葉を伝えた。すなわち、自分の言葉を書き記した文書を民に送った。その言葉は次のとおりである。
05 「見よ、おお、わたしの民、わたしの同胞よ、わたしはあなたがたを同胞と思っているので、考慮するように求められている事柄について、よく考慮してほしい。あなたがたは王を持ちたいと願っているからである。
06 さて、あなたがたに告げる。王位を継ぐ権利のある者は辞退し、王位を受けようとしない。
07 もし彼の代わりにほかの者が任命されるならば、あなたがたの中に争いが起こる恐れがある。王位を継ぐ権利のあるわたしの息子が後に怒って、民の一部を率いるようにならないともかぎらない。そうなれば、あなたがたの中に戦争と対立が起こって、多くの血が流され、主の道が曲げられる原因になり、また多くの人の霊が滅ぼされることになる。
08 わたしはあなたがたに告げる。知恵をよく働かせて、これらのことをよく考えよう。わたしたちにはわたしの息子を滅ぼす権利はまったくないし、彼に代わって任命されるほかの者を滅ぼすいかなる権利もない。
09 わたしの息子は、もし再び高慢になり、むなしいことに戻るならば、自分が前に言ったことを取り消し、王国に対する自分の権利を主張するであろう。そうなれば、わたしの息子もこの民もひどい罪を犯すことになる。
10 そこでわたしたちは、知恵を働かせてあらかじめこれらのことを考え、この民の平和に役立つことを行うようにしよう。
11 したがって、わたしは余生をあなたがたの王として過ごすことにする。しかしわたしたちは、自分たちの法に従ってこの民を裁くさばきつかさを任命しよう。また、神の戒めに従ってこの民を裁く賢明な人々をさばきつかさとして選任し、この民の政務を新たに整えよう。
12 さて、人は、神に裁かれる方が人に裁かれるよりもよい。神の裁きはいつも公正であるが、人の裁きは必ずしも公正でないからである。
13 したがって、もし神の律法を確立して、神の律法に従ってこの民を裁こうとする正しい人々を、王に持つことが可能であれば、まことに、もしもわたしの父ベニヤミンがこの民のために行ったように行おうとする人々を、自分たちの王に持つことができるならば、あなたがたに告げる、もしもこのようにいつもできるのであれば、いつもあなたがたを治める王がいるのが望ましいであろう。
14 そして、わたし自身、戦争や争い、盗み、略奪、殺人、そのほかどのような罪悪も存在することのないように、わたしの持つあらゆる力と知力を働かせて、あなたがたに神の戒めを教えようと、また全地に平和を確立しようと努めてきた。
15 また、わたしは罪悪を犯した者に、それがだれであろうと、わたしたちの先祖から与えられた法に従って、その者の犯した罪科に応じて罰を与えてきた。
16 さて、あなたがたに告げる。すべての人は必ずしも正しくないので、あなたがたを治める王、あるいは王たちがいるのは望ましいことではない。
17 見よ、一人の悪い王が犯させる罪悪は何とひどいことか。また、滅亡の何と大きいことか。
18 まことに、ノア王を思い出しなさい。ノア王の悪事と忌まわしい行いと、また彼の民の悪事と忌まわしい行いを思い出しなさい。見よ、何と大きな滅亡が彼らに及んだことか。また彼らは、自分たちの罪悪のために奴隷の状態に陥ってしまった。
19 もしも彼らが心から悔い改めて、全知の創造主の介在を受けなかったならば、彼らは必ず現在まで奴隷の状態のままでいたに違いない。
20 しかし見よ、彼らが主の御前にへりくだったので、主は彼らを救い出された。また、彼らが主に熱烈に叫び求めたので、主は彼らを奴隷の状態から救い出された。このように、どの場合でも、主は人の子らの中で御自分の力をもって働き、主に頼る者に憐れみの御腕を伸ばされる。
21 そして見よ、わたしはあなたがたに告げる。あなたがたは罪深い王を退位させる場合、ひどい争いと多くの流血によらなければ、それができない。
22 見よ、罪深い王には罪悪を犯す仲間がいる。また彼は、身辺に衛兵を置き、自分よりも前に義をもって治めてきた王たちの法を破棄し、神の戒めを足の下に踏みにじり、
23 新しい法律、まことに、自分の悪事にかなう法律を制定して民の間に発布し、その法律に従わない者はだれであろうと殺させ、自分に背く者にはだれであろうと軍隊を派遣して戦わせ、できればそれらの者を滅ぼそうとするからである。このように、不義な王はあらゆる義の道を曲げる。
24 さて見よ、わたしはあなたがたに告げる。このような忌まわしいことがあなたがたに及ぶのは、望ましいことではない。
25 したがって、あなたがたは、わたしたちの先祖から与えられた法に従って裁かれるように、この民の声によってさばきつかさを選びなさい。先祖によって与えられた法は正しいものであって、主の御手によって先祖に授けられたものである。
26 さて、民の声が正しいことに反する事柄を望むのはまれであるが、民の少数が正しくないことを求めるのは度々あることである。したがって、あなたがたは民の声によって職務を果たすように留意し、それをあなたがたの法とすべきである。
27 そして、もしも民の声が罪悪を選ぶ時が来れば、それは神の裁きがあなたがたに下る時であり、神がこれまでこの地に報いを下してこられたように、あなたがたにひどい滅亡を及ぼされる時である。
28 さて、もしあなたがたにさばきつかさたちがいて、彼らが与えられている法に従ってあなたがたを裁かなければ、あなたがたは、彼らを上級さばきつかさに裁いてもらうことができる。
29 もし上級さばきつかさが義にかなった判決を下さなければ、あなたがたは下級のさばきつかさを集め、彼らに民の声に従って上級さばきつかさを裁かせるようにしなさい。
30 わたしはあなたがたに、主を畏れてこれらのことを行うようにと命じる。わたしはあなたがたに、王を持つことなくこれらのことを行うように命じる。もしこのような状態にある人々が罪と不義を犯すならば、その責任は人々の頭に帰するであろう。
31 見よ、わたしはあなたがたに告げる。過去の多くの人の罪は、彼らの王の罪悪によって引き起こされた。したがって、彼らの罪悪の責任は彼らの王の頭に帰する。
32 さて、わたしはもう二度とこの不平等がこの地に、特にわたしのこの民の中にないことを願っている。この地が自由の地となり、わたしたちがこの地に住んでこれを受け継ぐことを、主が御心にかなうと見なしてくださるかぎり、またわたしたちの子孫が一人でもこの地の面に残っているかぎり、すべての人が権利と特権を等しく享受できることを、わたしは願っている。」
33 モーサヤ王は、ほかにも多くのことを民に書き記し、義を守る王の直面するあらゆる試練と苦難、まことに、民のために感じる心の苦しみのすべて、民が王に訴える不平のすべてを彼らに明らかにし、また彼らにそれをすべて説明した。
34 また、モーサヤ王は彼らに、このようなことはあってはならないこと、責任は民の全体で分担して、すべての人が自分の責任を負わなければならないことを告げた。
35 彼はまた、不義な王が治めるときに民が被る不利益、
36 まことに、不義な王のすべての罪悪と忌まわしい行い、またすべての戦争と争い、流血、盗み、略奪、みだらな行い、そのほか一々数え上げられないすべての罪悪について彼らに明らかにし、またこれらのことがあってはならないこと、これらのことは明らかに神の戒めに反することを彼らに告げた。
37 そして、モーサヤ王がこれらのことを民に書き送ったところ、彼らは王の言葉が真実であると確信した。
38 そこで彼らは、王を持とうとする望みを捨て、国中のすべての人が平等な機会を得ることを非常に切望するようになった。そして、すべての人が自分自身の罪の責任を喜んで負うことを言明した。
39 そして彼らは、自分たちに与えられた法に従って裁く、さばきつかさとなるべき人々を、自分たちの声によって選ぶため、国の方々で幾つかの集団を成して集まった。そして彼らは、自分たちに与えられた自由を非常に喜んだ。
40 彼らはモーサヤ王への愛の気持ちをますます深め、ほかのだれよりも彼を敬った。彼らは王のことを、利益すなわち人を堕落させるあの利得を追求する暴君とは思わなかったからである。彼は民から富を厳しく取り立てたことはなく、血を流すことを喜びとしたこともなく、国内に平和を確立し、民があらゆる束縛から救い出されるようにしてきたからである。そのため、彼らは王を非常に、まことに計り知れないほど敬った。

41 さて、彼らは自分たちを治めるさばきつかさたち、すなわち法に従って自分たちを裁くさばきつかさたちを任命した。彼らは国中でこれを行った。
42 そして、アルマは最初の大さばきつかさに任命されたが、彼は大祭司でもあった。アルマの父は彼にその職を授け、教会の諸事全般に関する責任をゆだねていた。
43 さて、アルマは主の道を歩み、主の戒めを守り、義にかなった裁きを行ったので、引き続き国中が平和であった。
44 このようにして、ゼラヘムラの全地で、すなわちニーファイ人と呼ばれたすべての民の中で、さばきつかさの統治が始まった。そして、アルマが最初のさばきつかさであり、大さばきつかさであった。
45 さて、アルマの父は神の命令を果たし終えるまで生きて、82歳で死んだ。
46 そしてモーサヤも、在位の第33年に、63歳で死んだ。リーハイがエルサレムを出たときから数えて509年になる。
47 このようにして、ニーファイの民を治めた王たちの統治は終わり、また、民の教会の創設者であったアルマの時代も終わった。


【動画】アルマとニーホル