ヤコブ書
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ニーファイの弟ヤコブの書
同胞に説き教えるヤコブの言葉。ヤコブ、キリストの教義を覆そうとする男を言い伏せる。ニーファイの民の歴史についての言葉。
第1章
ヤコブとヨセフ、キリストを信じてキリストの戒めを守るように人々に説き勧める。ニーファイの死。ニーファイ人の中に悪事が広がる。紀元前約544年から421年に至る。
01 さて見よ、リーハイがエルサレムを去ったときからもはや55年が過ぎ去った。そして、ニーファイはわたしヤコブに、これらの事柄が刻まれている小さい版について指示を与えた。
02 彼はまたわたしヤコブに、いちばん貴いと思うわずかなことだけをこの版に書き記すこと、またニーファイの民と呼ばれるこの民の歴史については、少ししか触れてはならないことを命じた。
03 ニーファイは、彼の民の歴史は彼のほかの版に刻まなければならないこと、そしてこの小さい版はわたしが保存して、代々わたしの子孫に伝えなければならないことを告げた。
04 また神聖な説教や重要な啓示、あるいは預言があれば、それらの要点をこの版に刻むように、そしてキリストのため、またわたしたちの民のためにできるだけ多く書き記すようにと言った。
05 わたしたちは信仰を持ち、また民のことを大いに心配していたので、将来彼らに何が起こるかが、すでに明らかにされていた。
06 また、わたしたちは多くの啓示を受け、十分な預言の霊を授かっていたので、将来来られるキリストのことも、将来築かれるキリストの王国のことも知っていた。
07 それゆえ、わたしたちは、民が神の安息に入るようにするために、民の中で熱心に働いて、キリストのもとに来て神の慈しみにあずかるように彼らに説き勧めた。もし民がそうしなければ、かつてイスラエルの子らが荒れ野にいた試練の日々にそうであったように、神が激しい怒りを示して、わたしたちの民も安息に入ってはならないと誓いをされる恐れがあったからである。
08 それで、わたしたちが神に願ったのは、すべての人が神に背くことや神を怒らせることをせず、キリストを信じ、キリストの死について考え、キリストの十字架を負い、世の辱めを忍耐するよう、わたしたちが彼らを説得できるようにということであった。それゆえ、わたしヤコブは、兄ニーファイから命じられたことを果たす責任を引き受けるのである。
09 ところで、ニーファイは老いが進み、自分の死が近いことを知った。それで彼は一人の男に油を注ぎ、彼を王たちの統治に従ってその民を治める王とし、統治者とした。
10 民はニーファイを非常に愛していた。ニーファイは彼らの偉大な守り手であり、彼らを守るためにラバンの剣を振るい、生涯民の幸いのために働いてきたからである。
11 そのために、民は彼の名を記憶にとどめておきたいと願った。それで民は、ニーファイに代わって治める者を、それがだれであろうと、王たちの統治に従って、ニーファイ2世、ニーファイ3世などと呼んだ。彼らの実際の名がどうであろうと、民はこのように呼んだのである。
12 そして、ニーファイは死んだ。
13 さて、レーマン人でない民はニーファイ人であったが、民はそれぞれニーファイ人、ヤコブ人、ヨセフ人、ゾーラム人、レーマン人、レムエル人、イシマエル人と呼ばれた。
14 しかし、わたしヤコブは、今後このような名で民を区別しない。ニーファイの民を滅ぼそうとする者をレーマン人と呼び、ニーファイに好意を持っている者をニーファイ人、すなわち、王たちの統治に従ってニーファイの民と呼ぶ。
15 さて、2代目の王の治世になって、ニーファイの民は次第に心をかたくなにし始め、多少悪習にふけるようになった。その悪習とは、昔ダビデと息子ソロモンが、多くの妻とそばめを好んだようなことである。
16 そのうえ彼らは、多くの金と銀を探し求めるようになり、また多少高慢になり始めた。
17 それで、わたしヤコブは、すでに主から務めを託されていたので、神殿で教えを説いたときに次の言葉を彼らに告げた。
18 わたしヤコブと弟ヨセフは、ニーファイの手によってこの民の祭司と教師に任じられていたからである。
19 そしてわたしたちは、もし自分たちが力のかぎり神の言葉を民に教えなければ、民の罪を自分たちの頭に受けるという覚悟で責任を受けたので、主に対して自分たちの務めを尊んで大いなるものとした。そしてわたしたちは、民の血がわたしたちの衣にかかることのないように、力のかぎり働いた。そうしなければ、彼らの血がわたしたちの衣にかかって、わたしたちは終わりの日に染みのない者とは認められないであろう。
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第2章
ヤコブ、富を愛することや高慢、不貞を非難する。同胞を助けるためであれば、富を求めることができる。ヤコブ、主の認められない多妻結婚を行うことをとがめる。主は婦人たちの貞節を喜ばれる。紀元前約544年から421年に至る。
01 ニーファイの死後、ニーファイの弟ヤコブがニーファイの民に語った言葉。
02 「さて、わたしの愛する同胞よ、わたしヤコブは、まじめに自分の務めを尊んで大いなるものとするという責任を神から受けており、また、わたしの衣からあなたがたの罪を取り除きたいので、今日こうして神殿に来て、あなたがたに神の御言葉を告げる。
03 あなたがたも知っているように、わたしは召された職務にこれまで努め励んできた。しかし今日のわたしは、あなたがたの幸いを願う気持ちと心配がこれまでよりも大きいので、心が沈んでいる。
04 見よ、あなたがたは、今までわたしが宣べてきた主の御言葉に従ってきた。
05 しかし見よ、わたしの言うことをよく聴きなさい。そして、わたしが天地の全能の創造主の助けによって、あなたがたの思いについて告げることができるということを知りなさい。それはどういうことかといえば、あなたがたが、わたしにとって非常に忌まわしく、また神にとっても忌まわしく思われる罪を犯し始めていることである。
06 まことに、あなたがたの心が邪悪であることをあなたがたに証言しなければならないのは、わたしにとって悲しいことであり、またわたしはこのために、造り主の御前で恥じて縮み上がる思いである。
07 また、あなたがたの妻子の前で、あなたがたのことをひどくあからさまに話さなければならないのは、わたしにとって悲しいことである。あなたがたの妻子の多くは、神の御前にあって非常に感じやすく、清く、繊細である。これは神にとって喜ばしいことである。
08 そしてあなたがたの妻子は、喜びをもたらす神の御言葉、まことに傷ついた心を癒す御言葉を聞こうとして、ここに来たことと思う。
09 それゆえ、わたしの心は重い。というのは、神から受けた厳しい命令があるので、どうしてもあなたがたの罪悪についてあなたがたを戒めなければならず、そのようにすることで、すでに傷を負っている者たちを慰め、その傷を癒す代わりに、ますますその傷を深くすることになってしまうからである。また、傷を負っていない者たちに対しても、喜びをもたらす神の御言葉を味わわせる代わりに、短刀で彼らの心を刺し貫き、繊細な心を傷つけることになってしまうからである。
10 しかし、この務めが大変であっても、わたしは神の厳しい命令に従ってこれを果たし、心の清い者と打ち砕かれた心を持つ者の前で、また全能の神が鋭い目で御覧になる所で、あなたがたの悪事と忌まわしい行いについて、あなたがたに告げなければならない。
11 したがって、わたしは神の御言葉の率直さのまま、あなたがたに事実を告げなければならない。見よ、わたしが主に尋ねたところ、主の御言葉がわたしに下って、『ヤコブよ、明日神殿に行き、わたしがあなたに授ける言葉をこの民に告げ知らせなさい』と言われた。
12 さて見よ、わたしの同胞よ、わたしがあなたがたに告げ知らせる言葉は次のとおりである。あなたがたと子孫のための約束の地であるこの地に非常に豊富にある金や銀、そのほかあらゆる貴重なあらがねを、あなたがたの多くは探し求めるようになってきた。
13 このようにしてあなたがたは、神の御心の御手があなたがたにほほえんで、たくさんの富を手に入れた。ところがある者たちは、ほかの者より豊かに富を得たことで心が高慢になり、また自分の衣服が高価なことで強情になって高ぶり、さらに、自分はほかの者よりも優れていると思って同胞を苦しめている。
14 さて、わたしの同胞よ、あなたがたはこのようなことを行っていて、神から義とされると思うか。見よ、わたしはあなたがたに言う。そうではない。かえって神はあなたがたを罪に定められる。このようなことを続けるならば、神の裁きが速やかに下るに違いない。
15 おお、神があなたがたを刺し貫き、一目であなたがたを地に打ち倒すこともおできになることを、あなたがたに示されるように。
16 おお、神があなたがたを、この罪悪と忌まわしい行いから解き放してくださるように。おお、あなたがたが神の命じられる御言葉を聴き、心の高慢によって霊に滅びを招かないように。
17 同胞を自分自身のように思いなさい。そして、すべての人と親しくし、あなたがたのように彼らも豊かになれるよう、所有物を惜しみなく与えなさい。
18 しかし、富を求める前に神の王国を求めなさい。
19 キリストに望みを抱いてから富を求めるならば、富は得られるであろう。しかし、富を求める目的は、裸でいる者に着せ、飢えている者に食物を与え、束縛されている者を自由にし、病人や苦しんでいる者を救うなど、善を行うことである。
20 さて、わたしの同胞よ、わたしは高慢についてあなたがたに語った。神から与えられたものを心の中で誇って、隣人を苦しめ悩まし、虐げてきた者よ、あなたがたは今そのことをどのように考えているか。
21 このようなことは、すべての人を造られた御方にとって忌まわしいことであるとは思わないか。神の目には、人は皆等しく貴い存在である。すべての人はちりから造られている。そして、神の戒めを守り、とこしえに神をあがめるという同一の目的をもって、神により造られたのである。
22 わたしはこれで、高慢についてあなたがたに語ることを終わりにするが、もっとひどい罪悪について話さなくてよかったならば、あなたがたのことで心に非常に大きな喜びを感じたであろう。
23 しかし、あなたがたのもっとひどい罪悪のために、神の御言葉がわたしに重くのしかかっている。見よ、主はこう言われる。『この民の罪悪はますますひどくなっている。彼らは聖文を理解しておらず、ダビデとその息子ソロモンについて書き記されていることをもって、自分たちがみだらな行いをしていることの言い訳にしようとしている。
24 見よ、ダビデとソロモンは事実、多くの妻とそばめを持ったが、それは、わたしの目に忌まわしいことであった。』
25 そして、主は言われる。『それゆえわたしは、わたしの腕の力によってこの民をエルサレムの地から連れ出し、ヨセフの腰から出た者の中から1本の義にかなった枝をわたしのために起こせるようにした。
26 それゆえ主なる神であるわたしは、この民が昔の者たちのような行いをするのを許さない。』
27 したがって、わたしの同胞よ、わたしの言うことを聞き、主の御言葉に耳を傾けなさい。万軍の主はこう言われる。『あなたがたの中のどの男も、妻は一人しか持ってはならない。また、そばめは一人も持ってはならない。
28 主なる神であるわたしは、婦人たちの貞節を喜ばしく思う。みだらな行いは、わたしの目に忌まわしいことである。
29 さて、この民は、わたしの戒めを守らなければならない。さもなければ、地は民のためにのろわれるであろう。』
30 万軍の主は言われる。『将来わたしのために子孫を起こしたいと思う時が来れば、わたしは民に命じよう。その命令がない間は、民はこれらのことに聞き従わなければならない。
31 見よ、主なるわたしは、エルサレムの地に住むわたしの民の娘たちと、わたしの民が住む全地の娘たちが、夫の悪事と忌まわしい行いのために悲しむのを見、嘆くのを聞いた。
32 わたしがエルサレムから導き出したこの民の美しい娘たちの叫びが、わたしの民の男たちのことをわたしに訴えるのを、わたしはほうっておくことはできない。
33 男たちは、わたしの民の娘たちを、彼女たちの優しさに付け込んで奴隷のようにしてはならない。さもなければ、わたしは男たちにひどいのろいを下し、彼らを滅ぼしてしまうであろう。男たちは昔の者のようにみだらな行いをしてはならない。』万軍の主はこのように言われる。
34 さて見よ、わたしの同胞よ、あなたがたは父リーハイにもこの戒めが与えられたことを知っている。したがって、あなたがたは以前からこの戒めを知っていた。にもかかわらず、あなたがたは、行ってはならないこれらのことを行ったので、重い罪の宣告を受けたのである。
35 見よ、あなたがたは、同胞であるレーマン人よりもひどい罪悪を犯した。あなたがたは妻子の前に良くない手本を示して、感じやすい妻の胸を張り裂けさせ、子供たちの信頼を失った。彼らの心のむせび泣きが神のみもとに上って、あなたがたを訴えている。また、あなたがたを責める神の御言葉が厳しいために、多くの者が心に深い傷を負って、死んだようになっている。」
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第3章
心の清い者は、喜びをもたらす神の言葉を受け入れる。レーマン人の義がニーファイ人の義をしのぐ。ヤコブ、不貞や好色、そのほかあらゆる罪を遠ざけるように戒める。紀元前約544年から421年に至る。
01 「しかし見よ、わたしヤコブは、心の清いあなたがたに述べたい。確固とした思いをもって神に頼り、篤い信仰をもって祈りなさい。そうすれば、神は苦難のときにあなたがたを慰めてくださる。また、あなたがたのことを弁護してくださり、あなたがたを滅ぼそうとする者たちに罰を下される。
02 おお、あなたがた、心の清いすべての人よ、頭を上げて、喜びをもたらす神の御言葉を受け入れ、神の愛をよく味わいなさい。あなたがたの思いが確固としていれば、とこしえにそうすることができるからである。
03 しかし、心が清くなく、今日、神の御前に汚れている者は災いである。災いである。悔い改めなければ、地はあなたがたのためにのろわれるからである。レーマン人はひどいのろいをもってのろわれているが、あなたがたのように汚れてはいない。そのレーマン人があなたがたをひどく苦しめ、滅ぼすであろう。
04 また、あなたがたが悔い改めなければ、レーマン人があなたがたの受け継ぎの地を所有し、さらに主なる神があなたがたの中から義人を連れ出される時が速やかに来る。
05 見よ、あなたがたは、自分たちの同胞であるレーマン人を、彼らが汚く、またのろいをその肌に受けていることで嫌うけれども、彼らはあなたがたよりも義にかなっている。彼らは、わたしたちの父に与えられた主の戒め、すなわち、妻は一人しか持ってはならない、そばめは一人も持ってはならない、民の中にみだらな行いがあってはならない、という戒めを今でも忘れていないからである。
06 彼らは今も、この戒めを守るように努めている。したがって、この戒めを守ろうとこのように努めているので、主なる神は彼らを滅ぼすことなく、彼らに憐れみを示される。そして、彼らはいつの日か、祝福された民になるであろう。
07 見よ、レーマン人の夫は妻を愛し、妻は夫を愛し、夫と妻は子供たちを愛している。彼らの不信仰とあなたがたに対する憎しみは、彼らの先祖の罪悪のためである。そうであるとすれば、大いなる創造主の目から見て、あなたがたは彼らよりどれほど立派だと言えるだろうか。
08 おお、わたしの同胞よ、あなたがたが罪を悔い改めなければ、彼らとともに神の御座の前に連れ出されるとき、彼らの肌はあなたがたの肌よりも白いであろう。
09 さて、わたしは戒めをあなたがたに与える。これは神の御言葉である。あなたがたは彼らの肌が黒ずんでいるからといって、彼らを二度とののしってはならない。汚いからといって彼らをののしってはならない。むしろ、あなたがた自身の汚れを思い起こし、彼らが汚いのは彼らの先祖のためであることを覚えておきなさい。
10 そして、あなたがたは自分の子供たちのことを思い起こし、自分が彼らの前に示した手本で、どれほど彼らの心を悲しませてきたかを考えなさい。また、あなたがたは自分の汚れのために子供たちを滅びに至らせる恐れがあり、そうなれば彼らの罪が、終わりの日にあなたがたの頭に積み上げられるということを覚えておきなさい。
11 おお、わたしの同胞よ、わたしの言葉を聴きなさい。あなたの精神に宿る能力を奮い立たせなさい。身を震わせて死の眠りから目覚めなさい。悪魔の使いとなって第2の死であるあの火と硫黄の池に投げ込まれることのないように、地獄の苦しみから自分自身を解き放しなさい。」
12 さて、わたしヤコブはこのほかにも多くのことをニーファイの民に語り、不貞や好色、そのほかあらゆる罪を遠ざけるように戒め、これらの罪がもたらす恐ろしい結果を告げた。
13 今やおびただしい数になり始めたこの民の行いは、100分の1もこの版に書き記せない。しかし、大きい版には民の行いの多くが書き記されており、戦争と争い、王たちの統治のことも書き記されている。
14 この版はヤコブの版と呼ばれているが、ニーファイの手で造られたものである。ここでこれらのことを述べるのを終わりにする。
第4章
預言者はすべて、キリストの名によって御父を拝した。アブラハムがイサクをささげようとしたことは、神と神の独り子の相似であった。人は贖罪を通じて神と和解しなければならない。ユダヤ人は土台石を拒む。紀元前約544年から421年に至る。
01 さて見よ、わたしは、言葉で民に多くのことを教えた。(しかし、わたしたちの言葉を版に刻むのは難しいので、わたしは自分の言葉を少ししか書き記すことができない。)わたしたちは、版に書き記すことは必ず残ることを知っている。
02 しかしながら、版でないほかのものに書き記すことは、すべて朽ちて消え去ってしまうに違いない。しかし、わたしたちは子孫と愛する同胞に、わたしたちについて、すなわち彼らの先祖について少々知らせるために、版にわずかばかりの言葉を書き記すことができる。
03 さて、このことをわたしたちは喜んでいる。わたしたちは、愛する同胞とわたしたちの子孫が感謝の心をもってこれらを受け、またこれらを見て、自分たちの最初の先祖のことを悲しみや侮りではなく、喜びをもって知るようになることを望みながら、これらの言葉を版に刻むことに励んでいる。
04 わたしたちがこれらのことを書き記してきたのは、わたしたちがキリストのことを知っていたということと、キリストの来臨の何百年も前にキリストの栄光を待ち望んでいたこと、また、わたしたちばかりでなく、前の時代の聖なる預言者もすべてキリストの栄光を待ち望んでいたことを、彼らが知ることができるようにするためである。
05 見よ、預言者たちはキリストを信じ、キリストの名によって御父を拝した。また、わたしたちも、キリストの名によって御父を拝している。モーセの律法は、わたしたちの心をキリストへ向けるものであるから、わたしたちは今それを守っている。そして、そのためにわたしたちは聖められ、義とされているのである。それはまさに、息子イサクをささげるようにとの神の命令に従順であった、荒れ野のアブラハムが義とされたのと同様である。アブラハムがイサクをささげようとしたことは、神と神の独り子の相似であった。
06 それゆえ、わたしたちは預言者の書を調べている。また、わたしたちには多くの啓示があり、また預言の霊がある。このように証するものが数々あるので、わたしたちは希望を抱いており、わたしたちの信仰は揺るぎないものになっている。実際にイエスの名によって命じれば、木々も山々も海の波も従うほどである。
07 にもかかわらず、主なる神はわたしたちの弱点を示される。それは、このようなことを行う力がわたしたちにあるのは、神の恵みと人の子らに対する神の大いなるへりくだりによるということを、わたしたちに分からせるためである。
08 見よ、主の業は大いなる驚くべきものである。主の奥義の深さは何と計り知れないことか。主の道を知り尽くすことは、とても人にできることではない。主の道は、啓示されないかぎりだれも知ることはできない。それゆえ同胞よ、神の啓示を侮ってはならない。
09 見よ、神の言葉の力によって人は大地の面に現れ、その大地も神の言葉の力によって創造された。したがって、神が御言葉を発して世界が存在するようになり、また、御言葉を発して人が造られたとするならば、どうして神は御自分の意のまま、思いのままに、大地やその面にある神の手により造られたものに、命令をお下しになれないことがあろうか。
10 それゆえ、同胞よ、主に助言しようとしないで、主の手から助言を受けるようにしなさい。見よ、あなたがたは、主が、造られたすべてのものに知恵と公正と深い憐れみをもって助言を与えられることを知っているからである。
11 それゆえ、愛する同胞よ、神の独り子キリストの贖罪を通じて神と和解しなさい。そうすれば、あなたがたはキリストの内にある復活の力によって復活することができる。またあなたがたは信仰を持ち、キリストが肉にあって御自身を現される前に、キリストにある栄光を確固として待ち望んでいたので、キリストの初穂として神のためにささげられるのである。
12 さて、愛する人々よ、わたしがこれらのことをあなたがたに述べているのを驚いてはならない。キリストの贖罪について語るのに、また復活と来るべき世についての知識を得るのと同じように、キリストについて完全な知識を得るのに、何の差し支えがあろうか。
13 見よ、わたしの同胞よ、預言する者には、人々が理解できるように預言させなさい。御霊は真実を語り、偽りを言われることがない。したがって、御霊は現在のことをありのままに示し、未来のこともまた、ありのままに述べられる。それゆえ、これらのことはわたしたちの救いのために、わたしたちに分かりやすく示されているのである。しかし見よ、これらのことについての証人は、わたしたちだけではない。神は昔の預言者にもこれらのことを語っておられる。
14 しかし見よ、ユダヤ人は強情な民であって、彼らは分かりやすい言葉を侮り、預言者たちを殺し、自分たちの理解できないものを求めた。それゆえ、彼らは的のかなたに目を向けたために盲目となり、盲目のために堕落しなければならなかった。神が分かりやすいことを彼らから取り去り、彼らが理解できないことを多く伝えられたからであり、彼らがそれを望んだためである。彼らが望んだので、神はそのように行われ、彼らはつまずいた。
15 そして今、わたしヤコブは、預言するように御霊に促されている。わたしは、わたしの内にある御霊の働きによって、ユダヤ人が、自分たちがつまずいたためにそのつまずいた石を拒むことを知っている。その石は、その上に建物を建てることのできる安全な土台であった。
16 しかしながら見よ、聖文によると、その石は、ユダヤ人がその上に建物を建てることのできる、偉大な、最後の、しかも唯一の堅固な土台となるものである。
17 さて、わたしの愛する人々よ、これらの者がその堅固な土台を拒んだ後に、どうしてそれを隅のかしら石として、その上に建物を建てることができるであろうか。
18 見よ、わたしの愛する同胞よ、もしわたしが何かによって強い御霊を失ったり、あなたがたを心配するあまり口ごもったりするようなことがなければ、わたしはあなたがたにこの奥義を明らかにしよう。
第5章
ヤコブ、栽培されたオリーブの木と野生のオリーブの木の比喩について述べたゼノスの言葉を引用する。それらのオリーブの木は、それぞれイスラエルと異邦人とをたとえたものである。イスラエルの散乱と集合があらかじめ示される。ニーファイ人とレーマン人、およびイスラエルの家に属するすべての者について示される。異邦人はイスラエルに接がれる。果樹園は最後に焼かれる。紀元前約544年から421年に至る。
01 見よ、わたしの同胞よ、あなたがたは、預言者ゼノスがイスラエルの家に語った彼の言葉を読んだのを覚えていないか。その言葉は次のとおりである。
02 「聴きなさい、おお、あなたがたイスラエルの家よ。主の預言者であるわたしの言葉を聞きなさい。
03 見よ、主はこう言われる。『おお、イスラエルの家よ、わたしはあなたを、人が自分の果樹園に植えて養いを与えた、1本の栽培されたオリーブの木にたとえよう。その木は生長し、やがて老い、朽ち始めた。
04 そして、果樹園の主人がやって来て、オリーブの木が朽ち始めたのを見て言った。「この木を刈り込み、木の周りを掘り、養いを与えよう。そうすれば、この木は柔らかい若枝を出し、枯れないであろう。」
05 さて、主人はその言葉のとおりにその木を刈り込み、木の周りを掘って養いを与えた。
06 そして、多くの日の後に、その木は柔らかい若枝を少し出し始めた。ところが見よ、その木の中心の先の方が枯れ始めた。
07 そこで、果樹園の主人はそれを見て僕に言った。「この木を失うのは悲しい。だから、野生のオリーブの木から何本か枝を切り取って、わたしのところに持って来なさい。わたしたちは枯れ始めた大枝を切り落とし、それらを火の中に投げ込んで燃やしてしまおう。」
08 また見よ、果樹園の主人は言った。「わたしはこの木の柔らかい若枝をたくさん取って、わたしが良いと思う所で接ぎ木をしよう。この木の根が枯れても、わたしのためにこの木の実を保存できればよい。だから、これらの柔らかい若枝を取って、わたしが良いと思う所で接ぎ木をしよう。
09 あなたは野生のオリーブの木の枝を何本か取って、枯れた枝の代わりにそれらの枝を接ぎなさい。わたしは切り落としたこれらの枝を、果樹園の土地をふさがないように、火の中に投げ込んで燃やしてしまおう。」
10 そこで、僕は果樹園の主人の言葉のとおりにし、野生のオリーブの木の枝を接いだ。
11 また、果樹園の主人は僕にその木の周りを掘らせ、木を刈り込ませ、養いを与えさせて言った。「この木を失うのは悲しい。それで、根を枯らさずに残しておくことができると思い、また、わたし自身のために残しておくことができると思ってこうしたのである。
12 さあ、仕事にかかり、わたしの言葉のとおりに木を見守り、養いを与えなさい。
13 わたしはこれらの若枝を、果樹園のいちばん低い場所で、わたしが良いと思う所に置こう。それがどこか、あなたは知らなくてよい。こうするのは、わたし自身のためにこの木の自然の枝を残し、また実のとれない時節に備えてわたし自身のために実を蓄えられるようにするためである。この木と実の両方を失うのは悲しいことだからである。」
14 そして、果樹園の主人は仕事にかかり、栽培したオリーブの木の自然の枝を、果樹園のいちばん低い場所で、自分の意のまま、思いのままに、ある枝はあちらに、ある枝はこちらにと隠した。
15 さて、久しく時がたって、果樹園の主人は僕に、「さあ、一緒に果樹園に行って働こう」と言った。
16 そして、果樹園の主人と僕は、働くために果樹園に行った。そのとき、僕は主人に、「御覧ください。ここです。この木を御覧ください」と言った。
17 そこで、果樹園の主人がそちらを向いて、野生のオリーブの枝を接いだ木を見ると、その木はすでに枝を伸ばし、実を結び始めていた。見ると、それは良く、その実は自然の実のようであった。
18 主人は僕に言った。「見よ、野生の木の枝はこの木の根から養分を吸い上げ、根は十分な力を与えている。そして、根に十分な力があるので、野生の枝は、栽培した木が結ぶような実を結んだ。これらの枝を接がなかったならば、この木は枯れていたであろう。さあ、この木が結んだたくさんの実を蓄えよう。実のとれない時節に備えて、わたし自身のためにこの木の実を蓄えることにしよう。」
19 そして、果樹園の主人は僕に言った。「さあ、一緒に果樹園のいちばん低い場所へ行き、その木の自然の枝もたくさん実を結んでいるかどうか見よう。実を結んでいれば、実のとれない時節に備えて、わたし自身のためにその実を蓄えることができる。」
20 そして二人は、前に主人がその木の自然の枝を隠した所へ行った。そして、主人は僕に、「これらの枝を見なさい」と言った。僕が最初の枝を見ると、それはたくさんの実を結んでいた。僕には、それが良いものであることが分かった。また、主人は僕に言った。「この実をとり入れ、わたし自身のために保存できるように、実のとれない時節に備えてこれを蓄えなさい。見よ、わたしがこれまで長い間養いを与えてきたので、これはたくさんの実を結んだ。」
21 そこで僕は主人に言った。「この木を、いや、木のこの枝を植えるために、どうしてここにおいでになったのですか。まことに、ここはあなたの果樹園のすべての土地の中でいちばんやせた場所です。」
22 果樹園の主人は僕に言った。「わたしに助言は要らない。わたしはここがやせ地であることを知っていた。わたしが前にあなたに言ったように、わたしはこれまで長い間これに養いを与えてきた。それであなたの見るとおり、これはたくさんの実を結んだのである。」
23 さて、果樹園の主人は僕に言った。「こちらを見なさい。わたしはもう1本、木の枝を植えておいた。あなたの知っているように、この土地は最初の土地よりもやせていた。しかし、この木を見なさい。わたしはこれまで長い間これに養いを与えてきたので、これはたくさんの実を結んだ。だから、実を集め、わたし自身のために保存できるように、実のとれない時節に備えてそれを蓄えなさい。」
24 そして、果樹園の主人は再び僕に言った。「こちらも見なさい。わたしが前に植えたもう1本の枝を見なさい。これにも養いを与えてきたので、実を結んだ。」
25 また、主人は僕に言った。「こちらを向いて、最後の枝を見なさい。見よ、わたしはこれを良い土地に植え、これまで長い間養いを与えてきたが、この木は一部分だけが、栽培した木が結ぶような実を結び、ほかの部分は野生の実を結んだ。見よ、わたしは、この木にもほかの木と同じように養いを与えてきた。」
26 そして、果樹園の主人は僕に言った。「良い実を結ばなかった枝は切り落として、火の中に投げ込みなさい。」
27 しかし見よ、僕は主人に言った。「木を刈り込み、木の周りを掘って、もうしばらく養いを与えましょう。そうすれば、この木はあなたのために良い実を結び、実のとれない時節に備えて実を蓄えられることでしょう。」
28 そして、果樹園の主人と僕は、果樹園のすべての実に養いを与えた。
29 さて、久しく時がたって、果樹園の主人は僕に言った。「さあ、一緒に果樹園に行って、また果樹園で働こう。見よ、時が近づいており、終わりはすぐに来る。だから実のとれない時節に備えて、わたし自身のために実を蓄えなければならない。」
30 そして、果樹園の主人と僕は果樹園へ行き、自然の枝を折り取って野生の枝を接いだ木の所へ行ってみた。すると見よ、いろいろな種類の実を木いっぱいに結んでいた。
31 そこで、果樹園の主人は、その実を種類ごとにすべて味見して言った。「見よ、わたしたちは、これまで長い間この木に養いを与え、実のとれない時節に備えてわたし自身のためにたくさんの実を蓄えてきた。
32 ところが見よ、この度はたくさんの実を結んだけれども、一つとして良い実はない。見よ、あるのはすべて悪い種類の実であり、わたしたちのあらゆる骨折りにもかかわらず、まったくわたしの利益にならない。しかし、この木を失うのは悲しい。」
33 そして、果樹園の主人は僕に、「もう一度わたし自身のためにこの木の良い実を保存できるようにするには、どうすればよいだろうか」と言った。
34 すると僕は、主人に言った。「まことにあなたが野生のオリーブの木の枝を接がれたので、枝が根を養い、根は今も枯れずに生きています。ですから御覧のとおり、根はまだ大丈夫です。」
35 そこで、果樹園の主人は僕に言った。「この木が悪い実を結ぶかぎり、これはわたしにとって何の利益にもならないし、またこの根も何の役にも立たない。
36 それでもわたしは、この根が良いことを知っており、わたし自身のためにこれを残してきた。この根は十分な力があったので、これまで野生の枝に良い実を結ばせてきた。
37 ところが見よ、野生の枝が生長して根を負かしてしまった。野生の枝が根を負かしてしまったために、この木は悪い実をたくさん結んだ。そして、この木は悪い実をたくさん結んだために、あなたの見るとおり枯れ始めている。だから、わたしたちがこれを残すために何かしなければ、これはすぐだめになってしまい、火の中に投げ込まれることになる。」
38 さて、果樹園の主人は僕に言った。「さあ、果樹園のいちばん低い場所へ行き、元の自然の枝も悪い実を結んでいないかどうか、見ることにしよう。」
39 そして、二人が果樹園のいちばん低い場所へ行ってみると、元の自然の枝の実も悪くなっていた。まことに、最初の枝も、第2の枝も、また最後の枝も、実がすべて悪くなっていた。
40 また、最後の枝の野生の実は、木の良い実を結んだ部分を負かしてしまい、枝は弱り果てて枯れていた。
41 そこで、果樹園の主人は涙を流し、僕に言った。「わたしの果樹園のために、これ以上何ができたであろうか。
42 見よ、果樹園の実が、これらのものを除いてすべて悪くなっていたことは分かっていた。ところが、かつて良い実を結んでいたこれらの枝も悪くなっている。わたしの果樹園の木はどれもこれも役に立たないので、切り倒して火の中に投げ込むしかない。
43 見よ、もう枝が枯れてしまったこの最後の木は、わたしが良い土地に植えたものである。まことに、ここはわたしの果樹園の中で、ほかのあらゆる土地に勝ったえり抜きの土地であった。
44 しかも、あなたの見たとおり、わたしは、この土地をふさいでいたものを切り払って、その代わりにこの木を植えた。
45 また、あなたの見たとおり、この木の一部分は良い実を結び、また一部分は野生の実を結んだ。しかし、わたしが野生の実を結んだ枝を切り落として火の中に投げ込まなかったので、見よ、その枝は良い枝を負かして枯らしてしまった。
46 さて見よ、わたしたちが果樹園でできるだけの世話をしたにもかかわらず、果樹園の木はだめになってしまい、少しも良い実を結ばない。わたしはこれらの木を残しておいて、実のとれない時節に備えて、わたし自身のために実を蓄えようとしてきた。ところが、これらの木は野生のオリーブの木のようになってしまった。これらの木はもう何の価値もないので、切り倒して火の中に投げ込んでしまうしかない。これらの木を失うのは、わたしには悲しいことである。
47 しかしわたしは、果樹園でこれ以上何ができたであろうか。わたしは怠けて養いを与えなかったであろうか。いや、わたしは養いを与えてきた。果樹園を掘り起こし、刈り込み、肥料もやった。ほとんど一日中、手を差し伸べてきた。しかし、終わりが近づいている。果樹園の木をすべて切り倒し、火の中に投げ込んで燃やしてしまわなければならないのは、わたしには悲しいことである。わたしの果樹園をだめにしたのは何者であろうか。」
48 そこで、僕は主人に言った。「それは果樹園の木が高くそびえているからではありませんか。そのために、木の枝が良い根を負かしたのではありませんか。枝が根を負かしたために、枝が根の力以上に生長し、勢力を奪ったのです。まことに、果樹園の木がだめになった原因はこれであると、わたしは申し上げます。」
49 そこで、果樹園の主人は僕に言った。「行って果樹園の木を切り倒し、火の中に投げ込み、それらの木が果樹園の土地をふさがないようにしよう。わたしは手を尽くしてきた。果樹園のためにこれ以上何ができたであろうか。」
50 しかし見よ、僕は果樹園の主人に、「もうしばらくお待ちください」と言った。
51 すると主人は言った。「よろしい。果樹園の木を失うのは悲しいので、もうしばらく待つことにしよう。
52 そして、わたしが果樹園のいちばん低い場所に植えておいたこれらの木の枝を取り、親木に接ぎ返そう。いちばん渋い実のなる枝を何本か親木から切り落とし、代わりに親木の元の自然の枝を接ぐことにしよう。
53 わたしがこうするのは、親木を枯らさないためである。こうすれば、わたし自身のためにその根を残せるかもしれない。
54 また見よ、わたしが良いと思う所に植えた親木の自然の枝の根は、まだ生きている。これらの根もわたし自身のために残せるように、この親木の枝を取って、これらの根に接ごう。まことに、これらの根にその親木の枝を接げば、わたし自身のためにそれらの根も残すことができ、根が十分に強くなるとわたしのために良い実を結べるようになる。そうすれば、わたしは果樹園の実によって、まだ栄えを得ることができる。」
55 そして二人は、すでに野生のようになった自然の親木から枝を取り、これまたすでに野生のようになった自然の木にそれらを接いだ。
56 また二人は、すでに野生のようになった自然の木の枝を取り、それらを親木に接いだ。
57 果樹園の主人は僕に言った。「いちばん渋い実を結ぶ枝のほかは、野生の枝を木から切り落としてはならない。また、切り落とした木には、わたしが言ったように接ぎ木をしなさい。
58 わたしたちは、もう一度果樹園の木に養いを与えよう。そして、枝を刈り込もう。また、もう実を結ばず、枯れることが分かっている枝は、木から切り落として、火の中に投げ込んでしまおう。
59 わたしがこうするのは、根がまだ良いので、枝を取り替えることで根がまた強くなり、良い枝が悪い枝を負かしてしまうのではないかと思うからである。
60 わたしは元の自然の枝と根を残し、また自然の枝をもう一度親木に接ぎ返して親木の根も残したので、わたしの果樹園の木はきっとまた良い実を結ぶであろう。そして、わたしは果樹園の実によって再び喜びを得られるであろう。またきっと、最初の実を結んだ根と枝を残したことを非常に喜びに感じるであろう。
61 だから、行って僕たちを呼び集めなさい。わたしたちは果樹園で力を尽くして熱心に働き、もう一度自然の実を結ばせる準備をしよう。自然の実は良い実であり、ほかのどんな実よりも価値のあるものである。
62 だから、行って、この最後の時に当たって、わたしたちの力を尽くして働こう。終わりは近づいている。これはわたしが果樹園で刈り込みをする最後の時である。
63 枝を接ぎなさい。最後の枝が最初となり、最初の枝が最後となるように、最後の枝から始めなさい。そして、古い木も新しい木も、最初の木も最後の木も、その周りを掘って、最後の木から最初の木までのすべてが、最後にもう一度養いを与えられるようにしなさい。
64 終わりが近づいているので、最後にもう一度木の周りを掘り、刈り込み、肥料をやりなさい。そして、これらの最後の接ぎ穂が生長して自然の実を結ぶようであれば、生長できるように必要な準備をしなさい。
65 そして、接ぎ穂が生長し始めたら、良い枝の力とその大きさに応じて、渋い実を結ぶ枝を取り除きなさい。しかし、悪い枝を一度にすべて取り除いてはならない。そのようなことをすれば、接ぎ穂に対して根の方が強くなりすぎて、接ぎ穂が枯れてしまい、果樹園の木を失ってしまうことになる。
66 果樹園の木を失うのは悲しいことである。だからあなたがたは、根とこずえの力の釣り合いを取りながら、良い枝が生長するに応じて悪い枝を取り除き、良い枝が悪い枝を負かすようにしなさい。それから、悪い枝を切り取って火の中に投げ込み、悪いものが果樹園の土地をふさがないようにしなさい。このようにして、わたしは自分の果樹園から悪いものを一掃してしまおう。
67 わたしは、元の自然の木の枝を、もう一度自然の親木に接ぎ返そう。
68 また、自然の親木の枝を、親木の自然の枝に接ごう。こうしてわたしは、再びそれらのものを組み合わせて、それらの木が自然の実を結び、一つとなるようにしよう。
69 そして、悪いものをわたしの果樹園の全体から捨て去る。そのために、見よ、わたしはもう一度だけ、わたしの果樹園の刈り込みをしよう。」
70 そして、果樹園の主人は僕を遣わした。それで僕は行って、主人から命じられたとおりにし、ほかの僕たちを連れて来た。その数は少なかった。
71 それで果樹園の主人は僕たちに言った。「行って、果樹園で力を尽くして働きなさい。これが、わたしが果樹園に養いを与える最後の時である。終わりはすでに近く、時節はすぐに来る。しかし、あなたがたがわたしと一緒に力を尽くして働くならば、わたしがもうすぐやって来る時節に備えてわたし自身のために実を蓄える、その実によってあなたがたは喜びを得るであろう。」
72 そこで、僕たちは行って、力を尽くして働いた。果樹園の主人も彼らと一緒に働いた。僕たちは何事もすべて果樹園の主人の命令に従った。
73 すると、自然の実がまた果樹園で結び始め、自然の枝も生長してよく生い茂り始めた。それで、野生の枝を切り落とし、捨て始めた。僕たちは、木の根とこずえの力に応じて、それらの釣り合いを保つようにした。
74 こうして、僕たちは果樹園の主人の命じたとおりに、力のかぎり働き、とうとう悪い枝を果樹園から捨ててしまった。そして、主人は自分自身のために木を保存し、これらの木は再び自然の実を結んだ。また、これらの木は一つの体のようになり、実はすべて同じであった。こうして、果樹園の主人は、初めから自分にとって最も価値があると考えていた自然の実を、自分自身のために保存できたのである。
75 そして果樹園の主人は、その実が良く、また自分の果樹園がもはや悪い状態にないことを知ると、僕たちを呼び集めて、彼らに言った。「この最後の時に、わたしたちは果樹園に養いを与えてきた。あなたがたの見るとおり、わたしは自分の望むままに行い、自然の実を保存した。その実は最初の時と同じように良い実である。あなたがたは幸いである。あなたがたは、わたしの果樹園でわたしと一緒に熱心に働き、わたしの命じたことを守り、わたしのために再び自然の実が得られるようにしてくれたからである。わたしの果樹園はもはや悪くない。悪い枝は捨ててしまった。だから、あなたがたはわたしの果樹園の実のことで、わたしと一緒に喜びを得るであろう。
76 さて見よ、わたしはしばらくの間、もうすぐやって来る実のとれない時節に備えて、わたし自身のために果樹園の実を蓄えよう。わたしはこれを最後として、果樹園に養いを与えてきた。刈り込み、周りを掘り、肥料をやってきた。わたしはすでに言ったように、しばらくの間自分自身のために実を蓄えることにしよう。
77 そして、将来再びわたしの果樹園に悪い実が生じる時が来れば、わたしはそのときに良い実と悪い実を集めさせ、良い実はわたし自身のために保存し、悪い実はそれ相応の場所に捨ててしまおう。その後、実を結べない時節、すなわち終わりが来る。そうすれば、わたしは自分の果樹園を火で焼かせよう。」』」
【動画】オリーブの木の比喩について教えるヤコブ
第6章
主は終わりの時にイスラエルを回復される。世界は火で焼かれる。人は火と硫黄の池を避けるには、キリストに従わなければならない。紀元前約544年から421年に至る。
01 さて見よ、わたしの同胞よ、わたしは前にあなたがたに預言をすると言ったが、わたしの預言は次のとおりである。すなわち、この預言者ゼノスがイスラエルの家を栽培されたオリーブの木にたとえて語ったことは、必ず起こるに違いない。
02 主なる神が主の民を元に戻す業に再び着手されるのは、主の僕たちが主の果樹園に養いを与え、刈り込みを行うために主の力をもって出て行く日、すなわち最後の時である。そして、その後すぐに終わりが来る。
03 主の果樹園で熱心に働いてきた人々は、何と幸いであろうか。また、自分の定められた場所に投げ込まれる者たちは、何と災いであろう。世界は火で焼かれるであろう。
04 神はわたしたちに対して何と憐れみ深いことか。神はイスラエルの家を根も枝もともに覚えて、終日彼らに手を差し伸べておられる。ところが、彼らは強情で反抗的な民である。しかし、心をかたくなにしない者たちは皆、神の王国に救われる。
05 だから、わたしの愛する同胞よ、あなたがたが悔い改めて、十分に固い決意をもって神のもとに来て、神があなたがたを心にかけてこられたと同じように、あなたがたも神に堅くついて離れないように、わたしはまじめな言葉であなたがたに勧める。神の憐れみの腕が、昼の光の中であなたがたに伸べられている間、あなたがたの心をかたくなにしてはならない。
06 まことに今日、神の声を聞こうとするならば、あなたがたの心をかたくなにしてはならない。なぜあなたがたは死のうとするのか。
07 見よ、あなたがたは、終日神の善い言葉によって養われてきた後に悪い実を結び、そのため切り倒されて、火の中に投げ込まれなければならないようなことをするのだろうか。
08 見よ、あなたがたはこれらの言葉を拒むのだろうか。預言者たちの言葉を拒むのだろうか。非常に多くの人がキリストについて語った後に、あなたがたはキリストについて語られた言葉をすべて拒むのだろうか。またあなたがたは、キリストの善い言葉と、神の力と、聖霊の賜物を否定し、聖なる御霊を退けて、あなたがたのために備えられた偉大な贖いの計画をあざけるのだろうか。
09 もしもあなたがたがこれらのことを行うならば、キリストの内にある贖いと復活の力が、あなたがたを恥とひどい罪悪感をもって神の法廷に立たせる。あなたがたはこのことを知らないのか。
10 正義の要求は拒めないので、正義の力によって、あなたがたは、炎が消えることなく上り、煙がとこしえにいつまでも立ち上るあの火と硫黄の池に、必ず投げ込まれることになる。その火と硫黄の池は、無窮の苦痛である。
11 おお、わたしの愛する同胞よ、悔い改めなさい。そして、狭い門から入り、永遠の命を得るまで細い道を歩み続けなさい。
12 おお、賢くありなさい。わたしはこのうえ、何を言えようか。
13 最後に、悪人を非常に恐れおののかせる神の楽しい法廷であなたがたに会うまで、わたしはあなたがたに別れを告げる。アーメン。
第7章
シーレム、キリストを否定し、ヤコブと議論してしるしを求め、神によって打たれる。預言者はすべてキリストとキリストの贖罪について語る。ニーファイ人は流浪の民として生涯を過ごし、艱難の中で生まれ、レーマン人に憎まれる。紀元前約544年から421年に至る。
01 さて、それから何年かたって、シーレムという名の男がニーファイの民の中にやって来た。
02 そしてこの男は、民の中で教えを説き、キリストなどというものは存在するはずがないと、民に宣べ始めた。また彼は、民にへつらう事柄をたくさん説いた。これは彼が、キリストの教義を覆そうとして行ったことである。
03 彼は、民の心を惑わそうと熱心に努めたので、多くの人を惑わすのに成功した。また彼は、わたしヤコブが将来来られるキリストを信じているのを知っていたので、わたしのもとに来る機会をしきりに求めていた。
04 彼は博学で、民の言葉に完全に通じていたので、悪魔の力によって多くの甘言と十分な弁舌の力を用いることができた。
05 わたしが多くの啓示を受け、またこれらの事柄についてたくさんのことを先見していたにもかかわらず、彼はわたしの信仰を動揺させることができると思っていた。しかしわたしは、実際に天使に会って教えを受け、また主の声がまことにわたしに言葉をかけてくださるのを時折聞いていたので、動揺することはなかった。
06 さて、彼はわたしのところに来ると、このように言った。「ヤコブ兄弟、わたしはあなたと話ができるように、度々機会を求めてきました。あなたが方々を巡って、あなたが福音と呼んでいるもの、すなわちキリストの教義を宣べ伝えていることをわたしは耳にし、知っているからです。
07 あなたがこの民の多くの者を惑わしたので、彼らは神の正しい道を曲げ、正しい道であるモーセの律法を守っていません。また、モーセの律法を変えて、あなたがたの言う、何百年か後に来る一人の人を礼拝しています。さてまことに、わたしシーレムはあなたに言明します。これは神への冒涜です。だれにもそのようなことは分からないからです。だれも将来のことを告げることはできません。」このようにして、シーレムはわたしに論争を仕掛けた。
08 しかし見よ、主なる神がわたしに神の御霊を注いでくださったので、わたしは彼のすべての言葉について彼を説き破った。
09 わたしは彼に言った。「あなたは将来来られるキリストを否定するのですか。」すると彼は言った。「キリストが必ず存在するのであれば、わたしは否定しません。しかし、キリストなどというものが、現在にも、過去にも、未来にも存在しないことを、わたしは知っています。」
10 次にわたしが、「あなたは聖文を信じていますか」と言うと、彼は、「はい」と言った。
11 それでわたしは彼に言った。「それならば、あなたは聖文を理解していません。聖文はまことにキリストについて証しているからです。見よ、わたしはあなたに言いますが、このキリストについて述べることなしに書き記したり預言したりした預言者は一人もいません。
12 それだけではない。キリストのことは、わたしにも示されました。わたしは目で見、耳で聞いたからです。また、聖霊の力によってもわたしに明らかにされました。ですから、贖罪が行われなければ、全人類が必ず失われた状態になることを、わたしは知っています。」
13 そこで、彼はわたしに、「それでは、そのように多くのことをあなたに教える聖霊のその力によって、わたしにしるしを見せてください」と言った。
14 それで、わたしは彼に言った。「わたしは何者なので、あなたがすでに真実であると知っていることについて、しるしをあなたに見せるために神を試みることができましょうか。あなたはしるしを見ても否定するでしょう。あなたは悪魔に従う者だからです。しかしながら、わたしの思いが行われるのではなく、神があなたを打たれるならば、それがすなわち、神が天と地の両方で力を持っておられることと、キリストが将来来られることをあなたに示すしるしとなるでしょう。おお、主よ、わたしの思いではなく、あなたの御心が行われますように。」
15 さて、わたしヤコブがこれらの言葉を語り終えると、主の力が彼に下り、彼は地に倒れた。その後、彼は何日もの間、介抱を受ける身となった。
16 そこで、彼は民に言った。「明日集まってほしい。わたしはもう死ぬ。だから死ぬ前に民に話しておきたい。」
17 さて、翌日、大勢の人が集まった。すると、シーレムは彼らにはっきり語って、自分がこれまで彼らに教えてきたことを取り消し、キリストと、聖霊の力の実在と、天使の働きを告白した。
18 また彼は、彼らにはっきりと、自分が悪魔の力によって欺かれていたことを語り、地獄と永遠と永遠の罰についても語った。
19 また、彼は言った。「わたしは赦されない罪を犯したのではないかと恐れています。神に偽りを言ったからです。また、聖文を信じていると言いながら、キリストを否定したからです。聖文は確かにキリストのことを証しています。わたしはこのように神に偽りを言ったので、わたしの境涯が恐ろしいものになるのではないかと非常に恐れています。しかし、わたしは神に告白します。」
20 そして、彼はこれらの言葉を語り終えると、何も言えなくなって息絶えた。
21 群衆は、シーレムがまさに息を引き取ろうとするときにこれらのことを語ったのを見て、非常に驚いた。そのために、神の力が彼らに及び、彼らは圧倒されて地に倒れた。
22 ところで、これはわたしヤコブにとってうれしいことであった。わたしはこのことを前もって天におられる御父にお願いし、御父はわたしの嘆願に耳を傾けて、祈りにこたえてくださったからである。
23 そして、平和と神の愛が再び民の中に回復された。民は聖文を詳しく調べ、二度とこの邪悪な男の言葉に聞き従わなかった。
24 さて、レーマン人を再び正して真理の知識のもとに連れ戻すために、多くの手段が講じられたが、いずれも無駄に終わった。彼らは戦争と流血を喜びとし、また、彼らの同胞であるわたしたちに対して、永遠の憎しみを抱いていたからである。そして彼らは、武力で絶えずわたしたちを滅ぼそうとした。
25 それゆえ、ニーファイの民は自分たちの救いの岩である神に頼りながら、武器とあらんかぎりの力をもって、レーマン人に対する防備を固めた。そのため、この当時までは敵に勝利を収めていた。
26 さて、わたしヤコブは、もう老いが進んだ。この民の記録はニーファイのほかの版に書き継がれるので、わたしは自分の知っているかぎりの事柄を書き記してきたことを宣言し、この記録を終えることにする。わたしたちの時はもう過ぎ去った。一生はあたかも夢のように過ぎてしまった。わたしたちは孤独でまじめな民であり、流浪の民であって、エルサレムから追い出され、艱難のただ中に荒れ野で生まれ、わたしたちの同胞に憎まれてきた。そして、その憎しみが戦争と争いを引き起こし、わたしたちは生涯を嘆き悲しんで送ってきたのである。
27 わたしヤコブは、間もなく墓に入らなければならないことを知った。それで息子のエノスに、「この版を受け継ぎなさい」と言い、また兄ニーファイから命じられたことを告げたところ、息子はその命令に従うことを約束してくれた。これまで書き記してきたことはわずかであるが、わたしはこの版に書き記すのをこれで終える。そして、わたしの同胞の多くがわたしの言葉を読めるように期待しながら、わたしは読む者に別れを告げる。同胞よ、さらば。
【動画】シーレム,キリストを否定する