道東にて(廃線跡)
「ああ、彼女は
とおいまちのひと、
列車に轢かれて死ぬために
ここまで来て、
覚悟を決めて
あの線路上に
座り込んだ。
ここが廃線になったと
知らずにね。
それから10年
ずうっとあそこに座り込んで
列車を待っている 。」
「通りすがりの若者が
自分の街に むりやり
連れて行こうともしたさ。
でも、無理とわかって、
結局捨てちゃった。 」
「ところであんた、
彼女が座り込んでいるのが
よく見えるね。
あんなに草が生えてしまったのにさ。 」
---最初に捨てたのは
僕ですから。
「ハッハッハ、
同じことを言う若者が
何人いたことやら。」
今は廃線跡もどんどん撤去されているから、
居座るのも難しい。
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