のらねこ

ここから下はポエム

わたしには
死んだ猫を
抱き上げる
勇気がなかった

死んだ猫を
思い出すとき
どの場面で
泣きたくなるか
きのうから何度か
巻き戻しては
再生してみた

それは
死体そのものの
哀れさよりも
二度とそれが
動いてくれず
こちらを見てくれないということに
思いが到るとき だった

一番その猫を
可愛がっていた
おばあさんは
こわばった死体を
ためらうことなく
抱き上げた

以前読んだ 本の
終わりの一行を
そのまま手向けよう
「また生まれておいで。」

ここまではポエム

最後の連の、「また生まれておいで。」の出典は、
『ねこを写せば心が映る』(日沖宗弘・勁草書房)です。