|
|
||
第32話 「みじかい鎖がついている」 こんにちは。おいらは、飼い主も家も名前もとくに決めていない犬であります。川ぺりをうろついていると、いろんなお話が聞こえてきます。犬にとっては、息苦しいこともあるけれど。 この前、川ぺりの町から、女の子が一人減りました。おいら本当は知ってるんだよ、その子は自分で死んでしまった、てね。 お役所の偉い人や有名人、以前に自分の子どもを同じように死なせてしまった人などが、呼びかけているそうです。「一人で悩まないで!あなたは一人ではない!誰かに相談を!いやだったら休んでいいんだよ!」てね。 子どもの周りには家族がいて、学校の友達やクラスメイトがいて、先生がいて、保健室の先生や給食を作る人や校長先生がいて、ご近所の家の大人や赤ちゃんや犬や猫やカラスがいて、町には習い事の先生やお店の人や電車を動かす人やおまわりさんやお掃除をする人や何かがいます。 川ぺりを右の方へずうっと歩いていくと、海というすごく広い水が広がっているし、川ぺりを左の方へずうっと歩いていくと、山があって、たくさんの木や動物やきれいな空気があります。目の前の川の中にだって思いがけない世界があるし、足元の地面を掘るだけでも不思議な世界がある。見上げれば広い空があります。 素敵な洋服、楽しい絵本、おいしいお料理、知らない世界を描いた小説。宇宙や数字や、絵や音楽、名前も知らない草や虫。昔の人が成し遂げた良いこと悪いこと。とても古い物や、今まで誰も見たことがない未知の物。そんなことについて考えること、手を動かすこと、体を動かすこと、人と違うことをやってみること。 ・・そうか、子どもたちだけではなくて、大人たちにも、短い鎖がついているのかもしれないね。 (2006.11月掲載) |
|||
※「やらせタウンミーティング」なんて、2023年現在の作者にも「何だったっけ?」と思うような話題ですが、検索してみれば当時のニュース記事や、衆議院での質問項目として、ちゃんと残っていますので、若い方も興味があれば調べてみてください。 |
|||