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 第28話 「こっちの知ったこっちゃない」

  こんにちは。おいらは、飼い主も家も名前もとくに決めていない犬であります。川ぺりをうろついていると、いろんな人たちと出会います。犬にとっては、縁のないこともあるけれど。
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 いつも川ぺりで散歩しているおじさんたちが、今日は選挙の話をしています。選挙というのは、「おねがいしまーす」とペコペコ頭を下げて、ポスターを貼ったりすることだよね? そして最後の日に、ペコペコしてた人の中から何人か選んで、その人たちに町とか国とかの難しいことを決める役を任せるのです。それが「議員さん」なんだよ。
 だけど、今おじさんたちが話している「選挙」は、少し違うみたい。今度の選挙で決めるのは議員ではなくて「総裁」だそうです。

 「・・だけどさ、安○、麻○、谷○、候補者は3人とも、親父さんの後を継いだ世襲議員だよなあ」
 「そうそう、候補にはならなかったが福○さんとか鳩○さんとかもそうだろ。最近は多いよな、世襲議員が。・・おっと、今の○泉さんもそうだったな」
 ふうん、今の「総裁」も次の「総裁」も、お父さんの後を継いで議員になった人だそうです。それを「世襲」というらしいよ。
 だけどちょっと変だね、議員というのはペコペコして走り回って、やっと選ばれるもののはずなのに、「世襲議員」の人はお父さんが議員だったからといって後を継げるのかな?

 「世襲ってのは結局、親父さんの地盤や看板やら、そっくり受け継ぐんだものなあ。『世襲なりの苦労や努力があります』なんて言われたところでさ、こっちの知ったこっちゃない。御神輿に担がれてお気楽なもんだとしか見えないよなあ。」
 「だからさ、どの候補者も、信念とか決意とか言っても、担いでる支持者の考えを代弁しているようにしか見えないんだよ。あとはせいぜい『人柄の良さ』なんてあいまいなイメージで票を集めるだけだ。○泉さんは過激な物の言い方とかパフォーマンスとかで乗り切ったけど。」

 おいらは親のことも知らない犬だから、受け継ぐジバンもカバンも犬小屋もないよ。少し昔に『総裁』になった人で、そんな人がいたらしいけれど。
 「・・・世襲議員といえば、田中真○子さんは最近、どうしてるっけなあ? まあどっちみち、総裁選は俺たちが投票できるわけじゃなし。」

 あれれ? おじさんたちは、自分たちが選べない選挙の話をしていたのだね。ていうことは、「総裁」というのはこの川ぺりの町には関係なさそうだなあ。お話聞いてて損しちゃった。
わんわん。またね。

(2006.9月掲載)