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第13話 「積もれば山、ちりも小銭も(一票も)」 こんにちは。おいらは、飼い主も家も名前もとくに決めていない犬であります。川ぺりや町ををうろついていると、いろんな話が聞こえてきます。 その日、商店街の真ん中あたりで、赤ちゃんの大きな写真を掲げた人が10人くらい立っていました。「○○ちゃんの海外での臓器移植にあと三千万円必要です」「どうかご協力を!」などと書いてありました。写真の赤ちゃんのお父さんかな、若い男の人が特に真剣な顔で頭を下げてお願いしていました。おいら知ってるよ、「臓器移植」て、読めないけれど、重い病気を治す方法らしいんだ。だけどこの国ではできないから、外国で手術してもらうのに、お金がいっぱいかかるらしいんだよ。 道行く人たちは、その人たちの所へ近づいては「がんばってね」「お大事にね」などと声をかけて、チャリン、チャリンと小銭を箱に入れていました。 だからさ、今日はびっくりしちゃったよ! たまたま散歩していて商店街を通りかかったのだけれど、この前のお父さんが立っていて、「こちらの商店街のほかにも、近隣の駅前やお祭りに出向いてご協力をお願いしました結果、目標の三千万円に達することが出来ました。これでアメリカで手術を受けさせることが出来ます、本当にありがとうございました!」て話しているんだよ!「よかったなあ」「成功するといいね」と、お父さんに話しかける人が絶えません。 みんな知らない人同士のはずなのに、どうしてこんなにお金が集まるのだろう? 小銭って、たまに道路に落ちているし、たいしたものじゃないと思っていたけれど、すごい力があるんだね。 ところでおいら、小銭と似ている物があるのを思い出したよ。 (2006.1月掲載) |
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