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第2話「クビワ、じゃなくてネクタイ」 こんにちは。おいらは、飼い主も家も名前もとくに決めていない犬であります。川ぺりをとことこ歩いていると、どういうわけか人に声をかけられて、ひとりごとの相手にさせられたります。 ああ、向こうから歩いてきたのは「お願いしまーす」のおじさんだな。「お願いしまーす」のおじさんは、短パン一丁で歩いたりしない。グレーの長ズボンと上着を着て、ワイシャツ、ていうシャツで、ネクタイを締め、黒い革靴をはいています。その姿でたまにやってきて、紙切れを配りながら「××××をよろしくお願いしまーす」と言ったり、紙切れを電柱に貼ったり、おじぎをしたりするのが仕事らしいです。「××××」のところはいつもよく聞こえないんだけど。 今年の夏に入ってからのおじさんは、なんかいつもと違いました。この辺の人たちと、ちょっと似てるみたい。なんでだろう?・・・そうか、ネクタイをしていないのでした。上着も着ていません。だからちょっぴり涼しそうに見えました。相変わらずペコペコ頭を下げて「××××をよろしくお願いしまーす」と紙切れ配りだけど。誰かが「ハハッ、あいつもクールビズかね?」と笑っていました。 ・・・あれ?今日のおじさんは、ネクタイ姿です。今日もとっても暑いというのに。涼しく過ごすためにネクタイをやめたのかと思ったのにな。「××××をよろしくお願いしまーす」という声が、気のせいかあまり元気がありません。 「××××さんが反対派に回ることにしたらしいぜ。」 おいらは首輪をしたことがないから、よくわからないんだけど、飼われている犬たちはうれしそうに首輪をつけて散歩してるから、ネクタイというのも喜んで締めている人はいっぱいいるのだろうな。「お願いしまーす」のおじさん、来年の夏は首輪、じゃなくてネクタイどうするのかな。ワンワン。またね。 (2005.8月掲載) |
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※2005年は小泉政権が提唱した「クール・ビズ」元年でした。小泉政権の考え方に反発する人たちはネクタイをし続けていた、という印象でした。自分がどうしたい、じゃなくて、属する団体によって身なりを変える人たちが滑稽でした。 | |||
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