不時の茶事とは前触れなく催される茶事です。
たとえば友人宅を訪ねた時、茶室に通していただいて
その場にあるあり合わせのもので、懐石や八寸、お茶が始まる、そんな茶事です。
ですから亭主の力量が十分ないとスムーズに進行しない、
とても難しい茶事です。
後座は掛け花入れに
2000年9月1日
友人と待ち合わせて施茶釜に行き、有意義な一時を過ごしました。
帰路、お香を聞かせて下さるという、
嬉しいお誘いを頂いて友人宅にお邪魔しました。
すでに夕方でしたので、皆で相談の上、
香席と茶席の間に夕食を頂く事に決めました。
ご自宅に到着。上品でセンスの良いお暮らしの様子が伝わってきます。
リビングで身支度を整えて白湯を頂戴している間に、
準備が整いましたという、席入りのご案内を頂きました。
蹲いを使い席入りをすると、茶室は真新しく、畳の青さもまぶしい程です。
長盆に乗せた香道具が運ばれ、香席が始まりました。
羅国、伽羅、真那伽 等、とても贅沢に聞かせて頂き、
しばし幽玄の世界を漂いました。
後座では二文字の灰型のさわやかさと、
お庭で丹精の花が印象的でした。
不時にもかかわらず、さらりとした接待をなさるご亭主の、
楚々としたお姿の中には、逆に力強さを感じます。
不時の茶事には茶道の精進に加えた「何か」が必要で、
その「何か」とはその人の生き方かもしれませんネ。
夜も更けた頃、お暇いたしましたが、
翌日、脱いだ着物の傍を通ると伽羅の香りがしました。