『南京の真実』 講談社文庫版 (ラーベの日記)
12月26日 (P167) そこいら中に転がっている死体、どうかこれを片付けてくれ!担架にしばりつけられ、銃殺された兵士の死体を10日前に家のごく近くで見た。だが、いまだにそのままだ。だれも死体に近寄ろうとしない。紅卍字会さえ手を出さない。中国兵の死体だからだ。
12月28日 (P172〜175) 宣教師フォスターからジョージ・フィッチにあてた手紙 ジョージへ! 鴨羊街17号付近の謝公祠、この大きな寺院の近くに、中国人の死体がおよそ50体ある。中国兵だという疑いで処刑された人たちだ。2週間ほど前から放置されている。もうかなり腐敗が進んでいるので、できるだけ早く埋葬しなければならないと思っている。私のところには、埋葬を引き受けてもよいという人が何人かいるのだが、日本当局からの許可なしでは不安らしい。許可がいるのかなぁ? もしそうなら、許可を取ってもらえないだろうか? よろしく!
フィッチにあてたフォスターのこの手紙を見れば、南京の状況は一発でわかる。この50体のほか、委員会本部からそう遠くない沼の中にまだいくつもの死体がある。これまでに我々はたびたび埋葬の許可を申請したが、だめだ、の一点張りだ。いったいどうなるのだろう。このところ雨や雪が多いのでいっそう腐敗が進んでいる。
〜中略〜
このときとばかり私は福井氏に、12月13日に射殺された中国兵の死体をいいかげんに埋葬するよう、軍部にかけあってくれないかと頼んでみた。福井氏は約束してくれた。
1月7日 (P193) 「市内にはいまだに千ほどの死体が埋葬もされずに野ざらしになっています。なかにはすでに犬に食われているものもあります。でもここでは道端で犬の肉が売られているんですよ。この二十六日間というものずっと、遺体を埋葬させて欲しいと頼んできたがダメでした。」 福田氏は紅卍字会に埋葬許可を出すよう、もういちどかけあってみると約束してくれた。
1月12日 (P202) 南京が日本人の手に渡って今日で一カ月。私の家から約50メートルほどはなれた道路には、竹の担架に縛りつけられた中国兵の死体がいまだに転がっている。
1月22日 (P225) 竹の担架にしばりつけられた中国兵の死体については、これまでも幾度か書いてきた。12月13日からこのかた、わが家の近くに転がったままだ。死体を葬るか、さもなければ埋葬許可をくれと、日本大使館に抗議もし、請願もしてきたが、糠に釘だった。依然として同じ場所にある。しばっていた縄が切れて、竹の担架が二メートルほど先にころがっただけだ。いったいどうしてこんなことをするのか、理解に苦しむ。
1月26日 (P234) 中国兵士の死体はいまだに野ざらしになっている。家の近くだからいやでも目に入ってくる。
1月31日 (P250) 6週間もの間、わが家の前にうちすてらられていた中国兵の死体が、ようやく埋葬されたと聞いて、胸のつかえがおりた。
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