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第六十六章

アメンエムヘプのパピルスより


 書記生マアフ曰く、
 「我は知識を有す。我は女神ヘケトによりて孕まれたり。而して女神ネイト、我を産めり。
 我はホルスなり。我はウアジェトにしてホルスの眼より出現せり。而して飛び、自ら天にあるラーの船のへさきにて、ラーの額に静止す。」


▽意訳…?

これだけだと何のこっちゃ分からん電波系の文章なんスけど…。
書かれたのがテーベ時代、ってことでテーベの信仰から推測。

まずヘケトとネイトは王権の守護者にして王の「代理母」。最初の文章「孕まれたり」「産めり」は、ヘケトとネイトは我が母である、という意味と解釈できる。
次の「我はホルスなり」も、「我は王なり」と読み替えれば問題なし。
蛇の女神ウアジェトは、ラーの眼と呼ばれ、王の額を守る聖なるコブラ、ウラエウスの眷属。
ちなみに、ホルスの眼も、ラーの眼も「ウジャト」と呼ばれ、護符になっている。ウジャトは王の額を飾るシンボルであり、同時に、太陽神ラーの額をはなれ、また戻っていく「浮遊する眼」でもある。

ラーの船とは、太陽神が乗って天を移動する「太陽の船」のことで、王の魂は天へ昇り、この太陽の船にピックアップされて、ともに西の地平線の彼方にある死者の国へと沈んでいくという信仰があった。

以上をもって意訳すると…

「我は以下の知識を持っている。
我は王たるホルスであり、ヘケトとネイトは我が母である。我はウジャトとなって、太陽の船へ飛び、元ありし太陽神ラーの額へと戻る。(そして、ともに死者の国へと赴かん。)」

ラーを死者の守護神とする、庶民よりは王侯の宗教に近い内容が、この中に隠されていると見るべきだろう。

ただこの解釈の一番の難点は、最初に「書記生マアフ曰く」と、ついていることだ…。
王じゃなくてマアフが言うんですかい。



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