【エジプト限定】オーパーツコレクション
追記:2008/4/26
修正:2014/12/04(リンク先&解説文)
フライホイールってなんだよ。と思ったら、機械に使う歯車みたいなもののことらしい。
だが、「Egyptian flywheel」なんて検索しても、出てくるページは少ない。そう、このブツ、オーパーツファン(?)の間では、あんまり人気がないか、認知度が低いようなのだ。日本語で検索した時も、数件しか出てこなかった。なんだかなあ。
というわけで、現地確認してきた。
ちなみにカイロ考古学博物館は行った時は写真撮影禁止だったので、この写真はそれ以前に行ったサイトの管理人さんからもらったもの。(サイトは2009年閉鎖)
★以下は2008年当時の現地情報
カイロ考古学博物館(2008年4月現在)の展示説明は以下のとおり。
6279 Vase of shist of unirueform, Intended to be mounted on a post and possibly intended to hold lotus flowers. First dynasty, Saqqara. Tomb of Sabu, Emery,1937. |
ちなみに隣にも同じ黒い石で出来た遺物が展示されていた。説明はシンプル。形状は盾のようで、平たい板。
Gray schist table with four legs. First dynasty. Saqqara. Tomb X. Fmary, 1937. |
出土はサッカラの第一王朝墓。最初のピラミッドが作られるよりも以前である。しかも第一王朝時代はまだピラミッド・テキストはないし、文法が確立されておらず文字があっても詳細が分かるとは思えない。これですよ。こういうモノこそ食いついてほしいわけですよ私は。なんかオーパーツっぽく見えるじゃないですか!
まぁ、いつもどおり見た目だけなんですけどね・・・・。
まずは詳細データを出しておく。
Webでは以下のURLで確認できる(英語)。というか、このページだけで既に説明はし尽くされているのだが…。
http://www.oocities.org/unforbidden_geology/Tomb_3111.html <<閉鎖>>
発見は1937年、発見者 Walter Brian Emery。発掘場所はサッカラの3111号墓。比較的最近の発掘で、しかも超有名なエジプト学者が携わっているため、きちんとしたデータがあり、考察もなされている。この時点で、オーパーツ扱いされない理由はなんとなく分かった。ちゃんとした考古学者が発掘しているから、「学者は言及していない!」という、いつもの言い訳が出来ないんだな(笑)
発掘時の状況。
第一王朝のサブー(またはアブー)という人物の墓で、当時の社会構造上のトップに近い地位におり、Den(デン)王とAnedjib (アネジブ)王のあたりの時代に生きていたという。
記録ではこの遺物は「The Ornamental Tri-lobed "schist" Bowl 」と呼ばれていた。訳すなら、「三裂片のある結晶片岩製のボウル(装飾用)」…だろうか。「世界美術大全集2 エジプト美術(小学館)」での名称は「異形石製容器」という名称になっている。
schistというのは地理用語で、日本語で言うと片岩。薄利しやすい、結晶の不連続な石材を指し、雲母や石墨がここに分類される。
遺物本体について。
最大直径は61cm、最大高低は10cm。損傷部分を復元され、現在はカイロ博物館で展示されている。(冒頭の写真がそれ)
カイロ博物館には、これ以外にもいくつか、類似品がある。このような遺物は第一王朝から第三王朝で見られるが、初期王朝の時代には類似するものが見つかっていない。
さて、このブツについての謎解きである。
まず材質だが、「schist」と呼ばれていることから分かるように、この石はあまり堅くない。むしろ柔らかいため、複雑な装飾を可能にしている。
また、ぱっと見た目、かなり精巧なつくりのように思えるが、この遺物は、横から見ると完全な左右対称ではなく、実はいびつであることが分かる。
よって、何らかの機械のパーツに使われたなどということは在り得ない。
まあなんかこれも見た目がたまたま現代の工業製品に似てたからオーパーツ扱いされたってだけの単純なものですね。
しかもこれ、一つだけではない。。
冒頭の現地確認情報に書いたように、周囲に同時代の同じような石製遺物が並べられている。その中からたまたま現代の工業品に見えるものを取り出して「オーパーツだ」と騒いでもしょうがないんである。石の加工技術だけでいうなら、同程度に複雑な製品がいくつも展示されているわけで…。
初期王朝時代には、副葬品にする日用品を石で作るという習慣があったようで、「石という不変の素材を使って、いかにして移ろいやすいこの世のものをリアルに表現するか」という思想的な追求が行われていたように思える。見たことは無いが、「葉脈までリアルに作りこんだ植物の彫刻」などというものも存在するという。
この石の「使い方」については、諸説あり、現在のところ定説はない。
説1.金属で出来た壷を真中の穴にさす。石の台は壷の足にあたる装飾品。
説2.儀式用のイグサの松明を真中にさす。広がった周囲の部分は油を入れるための受け皿。
などがあるが、いずれにしても、壊れやすいものなので実用には耐えられない。儀式か装飾用であろうと考えられている。
ただし、作り方ははっきりわかっている。
なんでかっていうと、最初に張ったページにもあるように、石に、削った方向とかの傷が残ってるから。
そして作りかけの(削る予定のアタリ線だけ書いた)遺物や、道具も出土しているからなのだね…。
これが第四王朝のギザ出土のコアドリル。これで石に穴を開けていく。
こちらは第三王朝に作られた同じ片岩の材質のお皿(?)。カイロ考古学博物館所蔵。
というわけで、使い方が不明なだけで、データは十分に揃っているべつに謎でもなんでもないシロモノだった。
オーパーツっぽいのは初見時のインパクトだけだった。まぁそりゃ古代の遺物だから、ぱっと見で使い方がわからんもんもありますよ。未来人が石臼見て「???」になるようなもんですわ。
オーパーツ説にかけるのであれば、用途の部分で何か理屈をこねくり回すほかなさそうだが(笑)、まぁお墓に入ってるもんだから、儀式用とか儀礼用という説に落ち着くのは妥当なセンだろうなあ。