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セベク(ソベク) Sebek、Sobek、Suchos

古代名:セベク/ギリシア名;スコス/別称・別綴り:ギリシャ語での地方名 ソクノパイオス(島の主セベク)、セクネブティニス(テブテュニスの町のセベク)、ソクネブクニス(ベクネの主セベク)
性別:男性


――――緑なす水に潜むもの

主な称号
集めるもの、種子の主人、すべての神々の魂、バク(フ)の主わにわに
主な信仰
ワニの姿をとる神で、名前「ソベク」も「鰐」を意味する。
が、末期王朝時代以降、エジプト人お得意の語呂合わせにより「復元されたるもの」や「復元したるもの」を意味する、という考え方も出てきた。

古代より穀倉地帯として知られたファイユーム地方で主に信仰された。農耕地の守護神であり、豊穣の神という性格を持つ。ファイユーム地方はナイルの支流が低地に流れこんで湿地帯を作っているが、中王国時代ごろから灌漑が始まり、人工的に農地を広げる試みが行われた。その際、湿地に多く住んでいたワニが重要な神として祀り上げられたと思われる。
頭上にいただく羽毛の冠は緑色だったらしく「羽毛飾りの緑なるもの」という呼びかけもある。イメージカラーの緑はナイル河畔の植物の色である。

河に流されたオシリス神の体のパーツを拾い集めるのを手伝ったという神話があり、そういう意味ではオシリス神の陣営。ただしワニは危険な動物であり、嫌われるものでもあったため、セト陣営に属する悪神とされることもあった。そのためファイユーム以外の地域では一般的にワニは悪神とされる。地方によって崇められることも、迫害されることもあった複雑な方である。

また、戦いの神ネイトの”息子”とされることから、力の神、戦いの神の側面も持ち、ファラオの力の象徴でもあった。

称号の「バクの主」にあるバクとは、東西の地平線にそれぞれあるという、「マヌ山」「バク(フ)山」のバクフ山のこと。セベク神はそこに、紅髄玉で出来た神殿をもっているとされた。

豊穣の神だが、人間に危害を及ぼすこともある鰐そのものの神なので、「恐怖の主」「怒り狂うもの」といった肩書きも持つ。
豊穣神としては太陽神の一派に属することになっており頭の上に太陽を載せている。


●ワニ神の信仰について

セベク神は、主にエジプト中部のファイユーム地方で信仰された。ワニが多い地域だったからだろう。
ただし、湿地帯であるファイユームはそのままでは集落を作ることが出来ず、人がまとまって居住しはじめるのは、国家主導で干拓の進んだ中央国時代以降である。つまり、ファイユームの地方神として、ワニの姿でのソベク神への信仰もそれ以降の時代に繁栄した。
中王国時代以前の、ほとんど人の住んでいない時代の信仰は不明。

なお、古王国時代にもセベク神自体は存在し、第5王朝のウナス王のピラミッド・テキストから登場するが、当時から存在する称号は「西の最果ての地の領主」=バクフ山の領主、ネイト女神の息子、である。
豊穣神としての属性はおそらく穀倉地帯の守護者になってからのものと思われる。


●プトレマイオス朝時代の信仰について

プトレマイオス朝はギリシャ系の外来人王朝になり、この時代、セベク神の本拠地ファイユーム地方には多くのギリシャ系移民が開拓者として移住した。
その都合上、ファイユーム地方のセベク神はギリシャ語で書かれた文書に名前が多く登場する。ギリシャ語の別名として記載した「ソクノパイオス(島の主セベク)、セクネブティニス(テブテュニスの町のセベク)、ソクネブクニス(ベクネの主セベク)」などはこのギリシャ語パピルスに登場する名前で、ファイユーム地方の町ごちに祀られていたセベクの分霊たちである。
なお、ソクノパイオスはホルス神と融合し、頭部がハヤブサの姿をしたワニとして描かれる。


神話わにわに
・彼の持つ肩書き「集めるもの」はバラされたオシリスの体のパーツを集めたことからついた。
河に流した落し物は、セベクに祈れば見つかるかも(笑

・ セトとホルスの王位継承神話のあるバリエーションによれば、セトとホルスの戦いにおいて水中戦になったときホルスを助けたというので、ホルスと仲は良いことになっている。
ファイユームにあるセベクの神殿は、半分がホルスに捧げられた独特の形式となっている。
ちなみに、セベクの神殿にはワニを飼う池があり、ワニが死ぬとミイラとして丁重に葬られた。

・「雷鳴や嵐と関係がある」とされている。
例えば「アメンエムオペトの教訓」では、「北風はかれの時を終わらせようと吹き下り、嵐と合体する。雷鳴は響き、ワニは悪意を抱く」、「嵐はワニの焔の如くに突発しよう」など。ここでは、短気とケンカっぱやさがワニ、嵐に喩えられている。


聖域
ファイユーム地方(コム・アウシーム、ディマイ、カスル・カールーンなど)
コム・オンボ(大ホルスと合祀)
テーベ近郊・スメヌ

DATA

・所有色―緑
・所有元素―水
・参加ユニット―母はネイト。父はクヌムとされることもあったが、ほぼ父なしの設定となっている。
 プトレマイオス朝のコム・オンボ神殿限定ユニットとして、妻ハトホル、息子コンスという組み合わせになっている。
・同一化―場合によりラー、大ホルス
・神聖動物―ナイルワニ
・装備品―羽毛の羽飾り


●その他どうでもいい情報

2017年に発売されたゲーム「アサシンクリード オリジンズ」では、セベク神の信仰中心地であるファイユーム地方が舞台の一つとなり、なんと! 現在は失なわれたソベク神の街やソベク神殿、生きた大鰐であるソベクの化身にも会えちゃうし登れるし触れるぞ!! めっちゃ楽しいから是非! アクションゲームが苦手な人は、戦闘の発生しない「ディスカバリーモード」っていうのもあるから、是非…っ。

【雑学解説】アサシン・クリード・オリジンズ/マニア向けエジプト解説【元ネタ色々】

ソベク神を女体化したエジプト学習マンガ「セベクちゃんは噛みつきたい」が発売されたが、内容は致命的な間違いがかなり多くリサーチ不足。キャラは可愛いが説明されている内容は信用しないでほしい。

学習マンガ「セベクちゃんは噛みつきたい」、私は好きだけど! 監修は! 入れて欲しい!!


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おまけ★ナイルワニまめちしき

セベク神といえばナイルワニ。というわけでナイルワニの魅力を紹介しちゃうぞ。

ワニには、クロコダイル、アリゲーター、ガビアルの3種類がいるよ。(ガビアルはアリゲーターに所属される人もいる)
ナイルワニはクロコダイル科所属で、人間も襲う凶暴かつ巨大化しやすい、ワニの中でも最も危険な種類なんだ。アフリカの広い地域に生息していて毎年何人も食われているんだよ。水辺にやってきたガゼルや牛も、水に引きずり込んで窒息死させてから丸呑み。基本的に租借はしなくて、とにかく飲み込むスタイル。

そんなとっても怖いナイルワニだけど、おさかなを食べてる時はいい笑顔。かわいいよね?



ワニは日向ぼっこが大好き。こんなふうに無防備な寝顔も見せてくれちゃう。かわいいよね??



怖いけどかわいい、かわいいけど怖い。場所によって神様扱いだったり悪神扱いだったりする理由もお分かりいただけますでしょうか。
ちなみにエジプトでは、ナイル川にダムとか作ったせいで絶滅しちゃったんだ…

かつてワニのたくさんいたファイユーム地方にも、今は野生のワニはいない。川の水が減ったせいで一時期は塩水化が進んで魚もほとんどいなくなってしまったんだって。でもそれだと畑も作れないから、今は水路を作ってまた魚が棲むようになっているんだよ。
ワニの現在の生息地域はこんなかんじ。絶滅の心配がない種類ってことになってるけど、ナイル川にもういないのはやっぱりちょっとさびしいね。





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