主な称号
図面の女主人、文書を司る者、神の書物の家のもの
主な信仰
書記を意味する「セシュ」の女性形「セシャト」。文字と数字を操る女神。
名前「セシェアト」は、運命を決めるという意味の言葉「セシャイ」に由来するという説もあり、だとすると、元は人の余命を計算する運命の女神の一人であったかもしれない。もっとも、セシャトの名前がというよりは、「書く」という行為自体が運命を決定する行為そのものだったとも考えられる。
中王国時代までは女神マフデトと姉妹とされており、祭りの際に「セシャトとマフデトのために祭儀を行う」といった表現も出てくるが、新王国時代に入ってからは、知恵の神トトの妹とされるようになり、トトとセットで扱われるようになった。
高位神官の服装であるヒョウの毛皮を纏い、測量の儀式や、王位更新祭に姿を現す。書記官の守護者でもあり、固有の神殿に祭られるというよりは、必要とする人々の職場に祀られる神だったらしい。
トトとセシャトのつながりは、どちらも「書記」という特別な職業を通じて生まれたものだが、実際の古代エジプトでは、女性書記官はいなかったらしい。ではセシャトという女神は、一体どうして誕生したのか。実在した女性書記官が神格化されたのか、それとも、今はまだ知られていないが、女性書記官に相当する何かの職業が存在したのか…?
彼女がまとうヒョウの毛皮は高級神官の正装だが、女性の高位神官がいたのかどうかも不明。あるいは、実在した古代の優れた女性を神格化したのが原型だったのかもしれない。
●セシャトの頭上にあるアレ
セシャトの頭の上にのっかってる、ナゾのものについては今のところ、「正体不明」ということになっているが、どうやら彼女の古い「標章」らしい。まるく湾曲しているのは、動物の左右の肋骨。その下にあるもの(必ず七本が花びらのように並べられている)は、拡大すると直立した棒に結び付けられているように見えることから、やはり何かの骨ではないかとされる。
彼女の纏う豹皮の服や、この標章は、信仰の始まった時代に使われていた何かのシンボルだったのではないかと推測されているが、古い時代の信仰についてはよく分かっていない。
●測量の女神として
セシャトは測量の女神であり、古代エジプト版の地鎮祭の際に立ち会う神だった。
神殿の建造に着工する際の儀式の始まりは「星の良く見える新月の夜」に行われる。星が測量の基準となるためだ。そののち、セシャトに扮した女性神官と王が、廷臣たちとともに神殿用地の四隅に測量基点となる棒を立て、縄を張る儀式を行う。この儀式は「ペジュシェス」とよばれ、全体では7日間から14日間行われたという。
「ペジュシェス」の儀式の中には、王が手ずから日干しレンガをこねたり、祭儀用の模型の工具や砂、供物となるガチョウの頭などを埋めたという記述もあり、日本の地鎮祭と良く似ているのが面白い。
●トト神との関係
古代エジプトでは恋人を「妹」と表現する文化があったらしく、残されている記録の表記だけでは、本当に「妹」なのか、恋人の「愛称」なのか判別がつかないそうだ。そのためセシャトの解釈には、トトの「妹」(または娘)、「妻」の両方が存在するのだが、夫婦の場合は息子か娘が設定され三柱の家族(トリアド)を形成するのが一般的なので、子供の設定がない場合は取りあえず妹でいいんじゃないかと思う。たぶん。
神話
・文字や数字を司る神・トトとともに、王の名を永遠の書に刻む役を担っていた。
・すべてを記録する者として、王の系図、書物の管理を行う。
・神話のエピソード内に姿を見せることはあまりないようだが、神殿のレリーフ等にはトト同様、頻繁に登場する。右はアビドスのセティ1世葬祭殿内部の壁画の一部より。
・古い姉妹関係として
マフデトと関係を持つことがある。
・セシャトに対応する男性神としてセシュという名前も出てくるが、名前だけの存在でほとんど表には出てこない。
聖域
主にメンフィス
DATA
・所有色―黄
・所有元素―大気
・参加ユニット―裁きの女神<セシャト、マフデト>
・同一化―
・神聖動物―なし
・装備品―ヒョウの皮の衣、時を刻む道具レンペト、筆記具
◎どうでもいいトリビア◎
MMO「大航海時代オンライン」では、錬金術スキルによって地理と測量の加護を得られる「セシャトのブーツ」を作り出すことが出来る。
錬金術師の絶対数の少なさと材料集めのマゾさから入手は困難と思われたが、エジプトネタとあってどうしても装備してみたい中の人はヴェネツィアのパラケルスス邸にて居座りを決行。三日目にして、通りすがりの錬金術師から譲り受けることに成功した。
何故サンダルではなくブーツなのかはゲーム設定上の謎である。
その後、このブーツを手にした冒険者は、世界一周レースに参加したとも歓び勇んで太平洋を視認しに行ったとも言われているが、真実は闇の彼方である。