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ヌト Nut(仏語:Nout)

古代名:ヌト、ヌウト/ギリシア名:-/別称・別綴り:カ・バーウ(千の魂とともにいるもの)
性別:女性


――――青き天空の女主人

主な称号
天の牝牛、天の雌豚、天空の星々の女主人、千の魂持つもの

主な信仰
原初の神の一人で、天空そのものでもある女性。兄で大地の神ゲブの妻。デンデラのハトホル神殿のヌト
大気の神シュウと、その妻テフヌト(テフネト、またはテフェン)から生まれた娘で、太陽はその口を通り、ヌトの体をめぐって西の空へ沈んでいく。星たちも、人間の魂さえも、大いなる天の母と一体化し、来世に向かう。また、ヌトには夜の顔もあり(昼の空には、やがて夜が来る)、夜のヌトは死せる太陽=ラーを食べ、太ももの間(産道)から昼の世界へと送り出す。我が子を食べるとともに再び生み出す、という、「太母」のイメージも併せ持つ存在である。

右写真はデンデラのハトホル神殿の天井画にいるヌト女神。口のところから太陽を食べ、子宮から光とともに太陽を生み出している。

ハトホル神殿には多くのヌトの図像が描かれているが、これは、同じように「母」の属性を持つハトホル女神と同一化された結果だ。その他の母なる神々、たとえばハゲワシの姿をとる女神ムトや、河馬の姿をとる女神トゥエリスとも関係があった。日本では「母なる大地」という言い回しがあったりするが、古代エジプトの世界観では「母なる天空」なのである。


●死者の守護女神として
トリノ所有 第22王朝
エジプトの宗教観では、死者の世界は地下に在る。だが、矛盾する信仰ではあるが、死者の魂が星となって天に上がるという考えもあり、星々をちりばめたヌトの体は死者の住まう「もう一つの冥界」でもある。また、死者の魂が鳥となり、空へ飛び立つという人類共通の感覚はエジプトにもあり、より古い信仰では「魂は北の天へ帰る」とされた。古王国時代に築かれた巨大なピラミッド群は、死者の魂が上昇し、天をゆく太陽の船に乗船するために作られた階段でもある。

また、死者の還る天を体現する母なる女神として、棺の蓋の裏には死者を包み込むように両手を広げたヌト女神が描かれることがあった。この様式は第三中間期以降、プトレマイオス朝より前あたりの時代に多く見かけられる。


●大地の神ゲブとの対照として

天の神ヌトの涙は雨となり、笑いは雷鳴となったという。
エジプトでは滅多に雨は降らないので、あまり泣かない方だったようだ。

単なる天空というだけではなく、ヌトは銀河と同一視されたという説もある。(体に星をちりばめた姿で表現されること、両手両足が大地に接した姿で描かれることから。)また、先王朝時代には実際に、銀河のふもと=ヌトの股から日の出があったと計算されており、天の女神が太陽を生むという神話の起源には実際の天体の動きがあった説も唱えられている。 *Ronard welles参照


神話
・天地創造神話に登場。兄であり夫である大地の神・ゲブと引き離されまいとしたために、空は地平で大地と接する蒼穹になったのだという。

・また、大地の神ゲブといちゃいちゃしすぎたのが太陽神ラーの気に障り、「お前は子供を産んじゃダメ!」と意地悪される。

・そこへトト神が現れて、とんちでお産を助けてくれた。そのとき生まれた五人の子供たちが、オシリス、イシス、セト、ネフティス、大ホルスである。なお、ギリシャ人プルタルコスの伝える神話では、ここの部分がヌト=レト、トト=ヘルメスと置き換えられている。


聖域
固有の神殿などは持たなかったが、豊穣の祭礼は全国で行われた。
神話の系統としては太陽神話群なのでヘリオポリス周辺が本拠地。


DATA

・所有色―黒、濃い青、黄
・所有元素―風、水
・参加ユニット―天地の夫婦<ゲブ、ヌト>、ヘリオポリス九柱神<アトゥム・ラー、ヌト、ゲブ、シュウ、テフネト、イシス、オシリス、セト、ネフティス>(※ヘリオポリス九柱神はメンバーが替わっている場合あり)
・同一化―ハトホル
・神聖動物―牛、ハゲワシ(?)、河馬(?)、雌豚(?)
・装備品―太陽と星(衣服にちりばめられているか、体にくっついていることが多い)、生命のしるし


◎どうでもいいネタ◎

ヌト女神抱き枕



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