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全体図と主要な宗教都市


古代エジプトを指す時、よく「上下エジプト」という言い方をしますが、これは「ナイル上流(エジプトの南のほう)」「ナイル下流(エジプトの北のほう)」を意味する言葉で、両方あわせて「エジプト全土」、つまり日本でいうところの「東日本」「西日本」と同じ意味の言い回しです。
この表現は古い時代から使われており、エジプトのファラオの称号に「上下エジプトの王」というものがあったり、「上エジプトの冠」(白冠)、「下エジプトの冠(赤冠)」をあわせた「二重冠」が王の正式な冠として使われていたりします。


上エジプトはエジプトの南のほうなのでアフリカ内部に近く、いわゆる「アフリカ」のイメージに近いサバンナなどとの接触を持ちます。下エジプトはエジプトの北のほうなので海に近く、地中海世界に面しています。両者が分かれるのが現在の首都カイロ付近で、最初の統一王朝首都・メンフィスがあったのはカイロの対岸です。ナイル川が多くの支流に分岐していくのが丁度そのあたりで、カイロ以北の海に近い部分(下エジプト)は、現在では「ナイルデルタ」とも呼ばれます。

一つの国を二つのエリフに分けて考えるようになったきっかけとしては、ナイル上流と下流では気候や景観がかなり異なること、かつては別々の文化が存在し、じょじょに統一されていった経緯から、などと考えられます。神話の中にも上下エジプトの王権をかけた争いが出てくるように、古代エジプト人の中でも、この区分は意識されていたようです。

上エジプトの詳細図を見る
下エジプトの詳細図を見る


【主要な宗教都市】

エジプト神話には、幾つかの系統があります。その主なものがヘリオポリスで編纂された神話、ヘルモポリスで編纂された神話、メンフィス神学、テーベ神学など。

交通手段も連絡手段も発達していなかった古代、距離のある宗教都市どうしがもともと独立した教義を持っていたというのはあり得る話ですが、それ以上にエジプトは宗教にわりと寛容だったようで、王朝時代に入っても、特に国民全部がひとつの教えを信じなければならないと強要されることもなかったようで、それぞれの宗教都市が自分の町の神様を優位に立たせようと好き勝手に神話を作っていた形跡があり面白いことになっています。

エジプトの国土は南北に細長いため、それらの主要な宗教都市は、かなり散らばって存在しています。
地図を見ながら、それぞれの神話に属する神様たちの守護領域なんか考えてみたりするのも楽しいかも。

尚、それぞれの都市の名前については、古代エジプト語、コプト語、ギリシャ語、アラビア語の4つが混在しています。それぞれの町の語源や歴史を辿っていくと、意外な歴史が見えてくることも。

例)
・古代には存在したが現在は存在しない地名は、古代エジプト語やギリシャ語のまま呼ばれている。
・古代から現在まで存在し続けている地名の場合、古代語がアラビア語風に訛って呼ばれている。
・古代王国時代は存在しなかったがローマ支配の時代に作られた町で、ギリシャ語のまま。




主要な宗教中心地のデータは以下のとおり。
ただし現在の町と古代の町は微妙に場所がずれていたりするので、必ずしもイコールではありません。(日本でいう「平城京」がイコール「奈良」ではないのと同じようなイメージで)

ヘリオポリス
古代エジプト名;イウヌ/ハカー・アンク
聖書に登場する名前;オン
現在名;カイロ近郊 国際空港のあたりに「ヘリオポリス」の名前が使われている
通称;太陽の街(=ヘリオスの町→ヘリオポリス)
主神;ラー

メンフィス
古代名;メンネフェルなど
現在名;ミト=ラヒーナ村周辺
通称;白い城壁の町(インブゥ・ヘジ)
主神;プタハ

ヘルモポリス
古代名;クムヌ、ケメンヌ
現在名;アシュムネイン
通称;知恵神の町(ヘルメスの町→ヘルモポリス)
主神;トト

テーベ
古代名;ウアセト、ワセト
現在名;ルクソール
通称;百の門の街(テーバイに似ている→テーベ)
地元名(アラビア訛り);ロッソル、ルグソル
主神;アメン

エレファンティネ
古代名;スウェネト、アブ
現代名;アスワン
別称;エレファンティン
主神;クヌム


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