以下は中王国時代以降、新王国時代あたりまでを基本に作成した図。
古代エジプトには貨幣経済は発達せず、厳密な意味での「商売」「交易」は存在しないが、ひとまず対外的に物々交換を行うことも交易と呼ぶ。
古代エジプトにおける交易は、庶民レベルではあまり大きな動きがなく、パレスチナと隣接する地域で近隣の地区と物品を交換していた程度。
諸外国へ出かけていく遠距離の交易は王家が指揮をとっており、基本的には朝献交易、そうでない場合もヌビア産の黄金を基本とした物々交換形式で物品のやり取りが行われていた。
ちなみにエジプトとメソポタミアは、近いようで遠く、直接的な物品のやり取りは積極的に成されていない。シナイ半島、ビブロス、最大に遠くてもキプロス(エンコミ)あたりまでが直接的な交易対象となっている。しかしウガリトを中継としてトルコ方面、ビブロスを中継としてメソポタミア方面といった遠距離の物品や情報に接触することはあったと思われる。
紅海を通しての海路交易も行われていた可能性があるが、何処まで行っていたかは謎。輸入品の木材を釘なしで貼りあわせていく古代エジプトの造船技術では、あまり大きな遠距離後衛用の船は作れなかったようだ。
また、先王朝時代からの間接的交易ルートとして、遠いアフガニスタン産のラピスラズリがエジプトに運ばれたルートが想定されている。
海上ルートについては距離が長すぎて無理じゃないかという気もするが、一説としてはある、ということで。
(出典 古代エジプト文化の形成と拡散―ナイル世界と東地中海世界 ミネルヴァ書房)
【参考 古代エジプトの交易状況】
輸入 |
輸出 |
品物 |
輸入元 |
繊維・亜麻
貴金属の工芸品(金・銀)
ロープ
余剰食物・れんず豆
余剰食物・干し魚
パピルス
牛の皮
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木材・松
木材・杉
香木
黒檀
宝石・ラピスラズリ
黒曜石
象牙
香料
武器
金
銀
銅
錫
ワイン
奴隷(戦争捕虜)
畜牛
没薬
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レバノン
レバノン
レバノン
アフリカ内部
アフガニスタン
アビシニア
アフリカ内部
プント(ソマリア)
シリア、クレタ
スーダン、ヌビア
アナトリア
キプロス経由
イラン〜シリア経由
シリア
シリア、パレスチナ、ヌビア
アフリカ
プント
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