ヴォルスンガ・サガ/ワルタリウス

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ヴォルスンガ・サガ

―シグムンドの息子たちの話、シグムンドの死、シグルズ誕生―


シッゲイル王を倒し、父と兄弟の復讐を遂げたシグムンドとシンフィヨトリは、船を手に入れて故郷フリースランドへ戻ると、父の後釜に座っていた人物を王座から追い払い、賢明で野望に富んだ君主となる。
ボルグヒルドという名の妻を娶り、二人の息子をもうけたが、そのうちの一人はヘルギ、もう一人はハームンドといった。
ヘルギが生まれたとき、運命を告げる女神、ノルンたちがやって来て、この子は王の中の王になるだろう、と予言した。

ヘルギはやがて、人気の高い、すぐれた人物となり、腹違いの兄シンフィヨトリとともに軍隊を治めた。「フンディング殺しのヘルギ」の歌にいわれるように、ヘルギは遠征中にフンディングという強力な王を倒し、復讐しようとするその息子たちも倒して名を上げた。

その戦いから帰る途中、ヘルギは戦乙女たちと出会う。その中の最も美しい一人がホグニ王の娘、シグルーンである。彼女は言う。父は自分を、グランマル王の息子ホッドブロット(ホズブロット)に約束したが、その男のことは気に入らない。私はあなた以外の王と一緒になる気はしない。

ヘルギは笑って言った。では、あなたが結婚させられる前にホッドブロットと力試しをしましょう、と。
彼は大軍を集め、出港する。途中、激しい嵐に逢って難破しそうになるが、陸の上にシグルーンがあらわれて、彼らを誘導した。

港に船が入るのを見て、ホッドブロットの弟、グランマルがやってきて軍を指揮しているのは誰かと尋ねる。ヘグニは、ここにヴォルスングの一族が来ている、と答え、ホッドブロットを罵りはじめる。(この舌戦は難解で長いので省略)
腹をたてたグランマルは馬で去り、兄に敵軍の来襲を告げた。
かくて戦いが始まり、ヘルギはホッドブロットを倒す。喜びに溢れたシグルーンがやって来て、祝いの言葉を述べる。

ヘルギは王国とシグルーンを手に入れ、強大な王となる。のちに彼はシグルーンの弟に殺されることになるのだが、…だが、その続きの物語はこのサガの中では語られない。

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ホッドブロット王との戦いに出かけたのち、シンフィヨトリは略奪遠征の途中で一人の女性に出会う。その女性を妻としたかったが、父・シグムンドの妃であるボルグヒルドの弟も、同じ女性を妻にと求めていた。義理の叔父との間で戦いになり、シンフィヨトリが勝利する。

帰国したシンフィヨトリがその顛末を報告すると、ボルグヒルドは怒り、継子シンフィヨトリを追い出そうとする。だがシグムンドはそれを認めない。妻に対し、自分が父として殺された者の償いをしようと申し出、ボルグヒルドは表面上、それに納得したかに見せたが、内心は、シンフィヨトリを殺してやろうと思っていた。

ボルグヒルドは、弟を悼む宴をひらき、シンフィヨトリに毒酒を注ぐ。酒が濁っている、と飲むのを拒むシンフィヨトリだったが、三度目に毒酒を注がれた時、既にしたたかに酔っ払っていたシグムンドは、「髭でこして飲め」と言ってしまう。既に、ボルグヒルドに勇気がない、とさんざんなじられていたシンフィヨトリは杯をあおり、即座に倒れて死んでしまう。

息子が死んだのを見たシグムンドは呆然となり、そのなきがらを抱いて森へ出てゆく。森の先にフィヨルドがあり、1艘の小船がある。舟には、男が乗っている。舟は小さく、三人同時に乗ることは出来ない。シグムンドは、まず息子の亡骸を向こう岸に渡して欲しいと頼み、自分はフィヨルドのふちを徒歩で歩いてゆくが、結局舟を見失い、そのまま、息子の亡骸を見つけることは出来なかった。
(舟に乗っていたのは、オーディンだっただろうといわれている)

失意のまま戻ってきたシグムンドは、妻を追放した。ボルグヒルドは、それからほどなくして亡くなったという。

****

妻と別れたのち、シグムンドはエュリミ(エイリミ)王の王女、ヒョルディースに求婚しにゆく。ヒョルディースにはもう一人、フンディング王の息子リュングヴィも求婚している。(フンディング王は、以前ヘルギに殺されている)
エュリミは、娘ヒョルディースにどちらの王を選ぶかと尋ねる。王女は答える。ご高齢ですが、私は最もすぐれた王、シグムンドを選びます。

ヒョルディースはシグムンドと結婚して国へ帰り、舅エュリミもついてゆく。怒りに燃えて立ち去ったリュングヴィは、これまで幾たびもヴォルスング家の者に敗れてきた親兄弟の恨みを晴らそうと、大軍を率いて取って返し、シグムンドを攻める。シグムンドの軍勢は数が少なかったが、守護女神<スパーディース>たちに守られたシグムンドは傷つかない。

そこへ、一人の男が現れる。男は槍をかざし、その槍に切りつけたシグムンドの剣は、真っ二つに折れた。たちまち敵味方の損害が逆転し、シグルズの軍は敗走を始める。シグムンド王も、エュリミ王も、その戦場で倒れた。
男はオーディンで、かつて自分が与えた剣を折ることで、勝利の加護を奪い取ったのだ。

戦いが終わったのを見て、女奴隷と二人だけで身を隠していたヒョルディースは倒れているシグムンドのところにやってくる。具合を尋ねるが、シグムンドは、剣が折れ、オーディンが死を望んだのだから介抱はしないで欲しいと言う。
また彼は言う、ヒョルディースが身ごもっている子は男の子で、やがて並ぶものない者となろう。仇はその子が討ってくれる。折れた剣のかけらは取っておくといい、そのかけらは鍛えなおされて名剣となり、グラムと呼ばれるようになる。

シグムンドが息絶えるのを看取ったヒョルディースは、女奴隷と着物、名前を交換する。
戦いの後、多数の戦死者があるのを見てやって来たデンマークのヒャールプレク王の息子・アールヴは、女たちからシグムンド王の財宝のありかを教えられ、財宝とともに女たちを連れてゆく。

国に帰り着いたとき、アールヴの母は息子に尋ねた。なぜ、高貴な女のほうがみすぼらしい格好をしているのか。アールヴは答える、それは私も気になっていた。ひとつ試してみましょう。

宴の折、アールヴは王女の格好をした奴隷に尋ねる。もし太陽も月も星もなかったら、どうやって夜が明けたことを知ろう。
女奴隷は答える。子供の頃から夜明け間際にたらふく水を飲む習慣なので、のどの渇きで目が覚める。
また同じ質問をされたヒョールディースはこう答える。むかし父にもらった指輪がある、その指輪が夜明け前に冷たく冷えるので気がつく。
ふたりの答えを聞いたアールヴはヒョールディースが身分を偽ってきたことを見抜き、いま孕んでいる子が生まれたら、自分と結婚して欲しいと願う。ヒョーディースはすべてを打ち明け、王子に申し出られたとおりにするのだった。

ヒョールディースが生み、ヒャールプレク王のもとに連れて行かれた男の子は、シグルズと名づけられた。
シグルズは、のちに、サガの中でヴォルスング家の中で最もすぐれ、並びない者として讃えられることになる。





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