中世騎士文学/パルチヴァール-Parzival

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第十四巻  パルチヴァールとガーヴァーン



 アルトゥースの仲介のもと、グラモフランツに使者が立てられ、グラモフランツもまた、大軍を率いて決闘の地、ヨーフランツェに向かっていた。だが、ガーヴァーンはその頃、グラモフランツとは全く別の騎士を前にしていた。
 その騎士は、紅玉のような真っ赤な鎧を着ていた。(その時点で気が付けよ…、とも思うのだが)
 そして、兜には、グラモフランツの守っていた、あの林の木、ガーヴァーンがオルゲルーゼの試練によって奪ってきたのと同じ葉冠が刺してあった。これを見たガーヴァーンは、てっきり相手がグラモフランツで、すでに自分を待ち構えていたものと思い込み、一騎打ちを挑む。

 この場合、誰が悪かったのだろう。紛らわしいと言ったって、早とちりしたガーヴァーンが悪いのではなかろうか…
 賢明な読者は既に気がついているとおり、相手は、通りすがりのパルチヴァール。いきなり挑まれたパルチヴァールは、ガーヴァーンをめった打ちにしてしまった。
 そこへ頃よく通りかかったのが、ガーヴァーンの小姓だ。
 グラモフランツ王の準備が出来ましたよ、と知らせに来たら、誰だかわからない騎士と戦って死に掛けているのである。あわてて大声でガーヴァーンの名を呼ぶと、驚いたのは、パルチヴァールのほうだった。
 パルチヴァールは、自分が戦っていた相手が身内のガーヴァーンだったと知り、深く後悔する。一方、へろへろになっていたガーヴァーンもようやく気を取り直し、駆けつけてきた皆にパルチヴァールを紹介するのだった。

 こんな状態では、今日決闘をするのは卑怯だ、と、グラモフランツは決闘の日の順延を提案する。全く疲れていないパルチヴァールは、かわりに自分が戦おうと言うが、これは受け入れられない。
 自分はかつて円卓の面前で誇りを汚された者だから、と嫌がるパルチヴァールだが、せっかくここで会えたんだし、と強引に連れていかれて、再度、円卓に加入。

 次の朝のことだった。
 ガーヴァーンが決闘に遅れている間に、パルチヴァールは、勝手に決闘の場に赴き、思い上がったグラモフランツをこてんぱんにしてしまう。(元気だな…) 知らせを聞いてガーヴァーンたちが駆けつけたのは、既に正午。今にも決着がつきそうだったが、ここはひとまず引き分けとし、試合は再度、延期される。

 その間に、アルトゥース王は、この決闘をやめさせようと策を案じていた。と、いうのも、姪にあたるイトニエーの思い人が、グラモフランツだと知ったからだ。兄ガーヴァーンが勝てば恋人を失い、グラモフランツが勝てば兄を失う。そのどちらも避けたかった。
 そこで王は、グラモフランツの叔父、ブランデリデーンの協力のもと、両者を和解させようとする。さらに、憎しみに燃えるオルゲルーゼと、グラモフランツも和解させる。これで、ガーヴァーンとオルゲルーゼ、イトニエーとグラモフランツの二組のカップルが、めでたく誕生することとなる。もちろん、和解したといっても、心の奥では、まだ敵意は持っていたに違いないが…。

 だがこのような喜ばしい宴の中、一人パルチヴァールだけは、妻のコンドヴィーラームールスのこと、自分はまだ聖杯城にたどり着いていないこと、ここに自分の居場所は無いことなどを思い、人知れず、鎧を身にまとい、夜明けに旅立っていくのだった。




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