連続てれび小説 「森の人」
家族の愛をテーマにした連続てれび小説。全5回シリーズ。
もちろん実在しませんが。
第一回 次男、家出する
主神オーディンさん家の家庭事情は複雑である。結婚と離婚を繰り返した結果、長男・トール、次男・ヴィーザル、三男・ブラギ、以下多数の子供がいるがほぼ全員母親が違うのだ。
そんな中、子供たちをまとめるのはしっかりものの長男トール。だが次男ヴィーザルは、何かにつけて父親に反抗し、兄を困らせていた。
そんなある日、ヴィーザルは、現在の義母・フリッグが、実子バルドルとなかよさげに語らっているシーンを目の当たりにしてしまう。フリッグは、自分たちには、あまり優しい言葉をかけてくれない。血の繋がった家族ではないからなのか…。
そんなこんなで悶々としていたせいもあって、朝食の席で、フトしたことから、親子ゲンカが勃発。
いつものことだと思っていた。だがしかし、今日のヴィーザルは違っていた。
ヴィーザル「父さん…如何して母さんを捨てたんだッ?!」
一同、凍りつく。
オーディン「な、何をいきなり」
ヴィーザル「わかってるんだ。父さんはいつもそうなんだッ! 仕事仕事って、そればっかりでッ…」
オーディン「ま、待て!」
ヴィーザル「こんな家でてってやる!」 ガシャァン!(←ちゃぶ台をひっくり返す)
兄(トール)「ヴィーザル!」
オーディン「…ほっとけ。 …いつものことだ」
トール「しかし、……。」
トールの心配をよそに、父オーディンはしらんぷり。他の兄弟たちも、いちばんの問題児ヴィーザルとは係わり合いに成りたくないと思っていた。
こうして、家を出て行ってしまった次男ヴィーザル。果たして家族はこのままバラバラになってしまうのか? いきなりピンチな展開もお約束。
−第二回へ続く!−
第二回 森の隠れ家
家出したヴィーザルは、神界の端っこの森に小屋をたてて、ひとり住んでいた。そんなヴィーザルのもとに、ヘイムダルの千里眼サーチによって居場所をつきとめた兄・トールが訪ねてくる。
トール「なア…いい加減、戻る気は無いのか」
ヴィーザル「あんな家、二度と戻るもんか! 兄さんだって、よく我慢してるよな?! コキ使われて、おまけに意地悪して川を渡してもらえなかったりさっ」
トール「親父のことを、そう悪く言うな。あの人だって、それなりに苦労してるんだ…」
ヴィーザル「兄さんの口から、そんなことは聞きたくない。帰ってくれよ!」
かたくなに心を閉ざすヴィーザル。意地でも帰らないつもりらしい。
ちょうどその頃、神界では海神エーギル主催の大きな宴の準備がすすんでいた。ほとんどの神々が出席するというので、ヴィーザルも出ないわけにはいかなかった。同じく森仲間のスカジやウルの説得も受けて、嫌々ではあるが、出席することにした。
ウル「叔父さんの気持ちも少しは分かる。でもさぁ、オーディン祖父ちゃんも、ほんとに苦労してんだ。連日徹夜続きだしさ、ときどき、何か思いつめたみたいにユグドラシルに逆さづり修行をしに行ってるんだよ。」
それは座禅のようなものなのか?
ヴィーザル「…知ってるよ」
ウル「だったら如何して? 許してあげなよ」
ヴィーザル「分かってるけどっ、許せないんだ! 自分だけが苦労してると思い込んでて…。苦しむことが分かってるくせして、他の人間(神)が苦しんでるときは、何にもしてやらないんだぞ?!」
酒が入ったせいで、甥っ子相手に延々と愚痴るヴィーザル。
ヴィーザル「お前はエライよな、まだ子供なのによく分かっててさ…。」(ぶつぶつ言いながら寝入る)
ウル「叔父さん…。」
スカジに促されて、そっと部屋を出るウル。ヴィーザル叔父さんはけっこうすさんでいる。すさんでいるが、本当はやさしい人なんだよネ? なぁんてウルは思うのだった。
−第三回へ続く!−
第三回 エーギルの宴
「ロキの口論」に詳しい内容。嫌々宴に出席していたヴィーザルは、目の前でロキが騒動を起こすのを見ていた。
父親がロキに罵倒されて少し怒りを感じたヴィーザルだが、そのロキが皆によってたかって縛り上げられてさらに、ロキさん家の小さい子供たちがエライ目に合わされるのを見て、納得いかない。
それはヒドイだろう?! と抗議した子供好きのヴィーザル。だがオーディンは冷たく息子をあしらう。
オーディン「お前は何も分かっていないのだ。余計なことに口出ししなくていい」
ヴィーザル「これが…、これがあんたの正義なのかッ?! あんな小さい子供たちまで犠牲にすることが!」
オーディン「だったらどうだというのだ。お前には関係のないことだ」
ヴィーザル「オレは…、オレはもうアンタには従えない。」
いきなり父親との決別を宣告するヴィーザル。相手が主神なので、アース神族ヤメます、と、いう意味である。そうなったら社員割引も使えないし社保険も使えないしフリーター生活を余儀なくされるんだが、大丈夫なのかヴィーザル。本当にそれでいいのかヴィーザル。将来のこと、もっと本気でよく考えようよ?
ヴィーザル「アンタの治める国なんかッ…、滅びてしまえばいいんだッ!」(←走り去る)
フリッグ「まッ…なんてことを」
トール「待て、ヴィーザル! 考えなおせ! ヴィーザーーール!!」
皆の静止の声も振りきって、館を後にしたヴィーザルの姿が外の闇に消えていくところで次回予告。N○KはCM入らないのだった。
−第四回へ続く!−
第四回 ヴィーザルの選択
こうして、ますます心を閉ざして神嫌いになってしまったヴィーザル。家の周りにパンジステークとか仕込んでいるので、もはやトールも近づけない。
トール「ヴィーザール! いい加減、そこから出て来い。聞こえているんだろう?!」
チュール「…ダメだな。出てくる気配はない。」
トール「はー。ったく、この大変なときに…。」
その頃、神界にはラグナロクというものが近づきつつあった。いつのまにかバルドルは死んでいるし、ロキは前回の騒ぎで縛り上げられているし、オーディンはずっと自室に引こもりがちなのだった。
トール「ああ、もう、どうすりゃアいいんだ。」
頭を抱えている兄の姿を、自分で作った森のとりでから伺うヴィーザル。まで困らせてしまったことに、少し自責の念を覚えながら、スナオに出て行けない。
その夜、ヴィーザルが寝ようとしていると、突然ドアをノックする音が。こんな夜更けに誰だろう、と思いきや、なんと外に立っていたのは
ヴィーザル「と、父さん?!」
オーディン「お前に話しておきたいことがある。少しだけ、聞いてもらえないか」
ヴィーザル「何だよ、いまさら…。」
オーディン「大切なことなのだ。」
と、いうわけでしぶしぶオーディンを家の中に入れたヴィーザル。オーディンは、「ラグナロクを知っているか?」と、切り出した。
ラグナロクとはも神界の最重要機密で、オーディンが今まで頭を悩ませてきたことだった。ラグナロクとはあーでこーで、こうやってして止めようとしたんだけどダメでした。と。
ヴィーザルはそんなこと全然知らなかったので、かなりビックリしている。
ヴィーザル「な、何でそんな大事なこと、今まで黙ってたんだよ」
オーディン「すまなかった。お前たちに苦労をかけさせまいと」
ヴィーザル「急に言われたって・・・、信じられるわけないだろ?! もう帰ってくれよ。オレは忙しいんだよっ」
オーディン「…そうだな。」
やけにあっさりと引き下がるオーディン。
出口で振り返って、こんなことを言い残す。
オーディン「わしは、ラグナロクで死ぬことになっている。トールもだ」
ヴィーザル「?!」
オーディン「だが、お前は生き残るだろう。あとのことは、よろしく頼むぞ…ヴィーザル…。」
ヴィーザル「なっ、ちょ…待っ…」
オーディンが去り、ヴィーザルはひとり、室内に取り残されていた。
ヴィーザル「なんなんだよ…、死ぬだなんて。それが運命? 信じられるワケないだろ…。」
ひとり呟き、意地でも信じまいとするヴィーザル。しかし現実は無情に目の前に突きつけられる。
その夜遅く、天を焦がす赤い炎が、予言のはじまりの時を告げていた。
−盛り上がり最高潮。最終回へ続く!−
第五回 ラグナロク
巫女の予言どおりラグナロクが勃発し、森にも火の手が迫る。それでもなお、森を出ようとしないヴィーザルのもとに、ヘイムダルが発破をかけに来た。ちょっとマメなヘイムダルである。
ヘイムダル「あんた、こんなところで何してるんだ? 親父さんや兄さんは、今、戦ってるんだぞ」
ヴィーザル「しかし、オレは…」
ヘイムダル「いいのか? あんた、本当にそれでいいのか。もう二度と会えなくなるかもしれないんだぞ?」
ヴィーザル「……。」
ヘイムダル「あんたがそんなヤツだとは思わなかったな。なら、世界の終わりまでそこでじっとしていればいい」
ヴィーザルを見限り、去っていくヘイムダル。ひとり残されたヴィーザルは、悩みに悩んだ末、やっぱりこれじゃダメだと自らの気持ちに気づく。そうだ、今からでも遅くない、とばかり、全速力で森から駆け出す。
途中、切れた鎖とその側で力尽きているシギュン等、いたましい光景を目にしたり。
さらに先に行くと、ロキと刺し違えて倒れているヘイムダル発見。
ヴィーザル「ヘイムダル!」
ヘイムダル「ああ…あんたか。ちょっと遅かったな…。」(←もうダメっぽい)
ヴィーザル「どうして、こんなことに…」
ヘイムダル「オレのことはいい。オーディンたちは、この先だ…。」
ヴィーザル「ヘイムダルーー!」1回目。
オイオイあんたらいつのまにそんなに仲良くなったんですか。
人付き合い悪い同士?
なんて話はおいといて、フェンリルの元に向かうヴィーザル。そこには、狼とギリギリ戦うオーディンの姿が。ヴィーザルの姿を見た瞬間、ちょっと集中が途切れて狼の攻撃がザックリと!
オーディン「ぐはァ」
ヴィーザル「父さんっ!」
オーディン「こ…ここは危険だ。退け! わしは主神として、こいつとは決着をつけねばならんッ」
ヴィーザル「父さぁ−−−ん!!」2回目。
血まみれになりながら、狼に向かっていくオーディン。だがしかし、非常にも彼はヴィーザルの目の前で
フェンリル「……(ごっくん)」
ヴィーザル「う゛わあああ!!」
キレたヴィーザルは、スーパーサイヤ人2と化し、泣きながらフェンリル狼に向かっていく。黄金の髪を逆立てたコノ人の前に、フェンリルフリーザ様も赤子同然。
ヴィーザル「よくも父さんをーー!」ばきゃ(←殴り倒す音)
気が付くと、知り合いはほとんど全滅していて、あたりは死屍累々。はっ、として兄の姿を探すと、トールは今まさにミズガルズオルムとの決着をつけようというところ。
トール(九歩歩いてガックリ膝をつく)
ヴィーザル「兄さん!」
トール「ヴィーザルか。戻ってきてくれたんだな…。」
朦朧としているトールさん。
トール「オレはもうダメだ。お前だけでも助かってくれ。そして…ウチの息子たちを、頼む…」
ヴィーザル「兄さぁぁん!!」3回目。
息をひきとるトールを胸に抱いて涙すヴィーザル。
ヴィーザル「兄さん…分かったよ兄さん…オレは必ず生き残る。兄さんのぶんまで生きるよ!!」
このときはじめて、ヴィーザルは家族というものを知った。しかし過去は、もう取り返しのつかない炎の向こう側。
なんかもう胸いっぱいで「畜生ッ! オレは何てバカだったんだっ!」とか叫びながら走るカンジね。
隠れていた甥っ子のモージとマグニを見つけて、さらに死にかけのヴァーリを担いでダッシュでアスガルド脱出。炎の海もなんのその。彼は厚底ブーツなので大丈夫なのだ。
そして炎の七日間が終わり(違)、ラグナロクの過ぎ去りしあとの平原にヴィーザルたちは立っていた。
生き残ったものは少ない。
だが、生き残った者たちで、再び新しい世界を作っていけばいい。ヴィーザルは、父や兄のぶんまでしっかり生きよう…。
再生しつつある森を前に、ヴィーザルはかたく心に誓うのだった。
感動のエンディング。
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