フェローのバラード、フェロエのバラードという名で出てくることが多い。
音楽用語としてよく知られる「バラード」だが、元はイタリア語で物語という意味だそうだ。ここでは、短い物語や叙事詩を指して呼ぶ言葉として使われている。「サガ」に対する「サットル」と似たようなニュアンスだろうか。
「フェロー諸島」とは、スカンジナビア半島とアイスランドのちょうど中間あたりに位置する、捕鯨で有名な群島だ。(右図参照)
シェトランド諸島とともに、かつて、アイスランドに先駆けて、ヴァイキングたちが植民した島々でもある。
本格的に移住が始まったのは9世紀ごろだったとされる。地図を見ても分かるように、フェロー諸島はイギリスにも近く、移住していた中にはケルト人もいたようだ。
ヴァイキングたちと、ケルト人たちの文化の交じり合う場所だったと推測される。
また、本国ノルウェーが早くにキリスト教化した時、海を隔てたアイスランドは布教が遅れていたが、フェロー諸島は本国に近いぶん、アイスランドよりも早く、キリスト教化が進んだ。先にキリスト教に改宗していたケルト人が居住していたのも、改宗が進んだ理由の一つかもしれない。
フェロー語で書かれた書物は少なく、それほど長いものも無いようだが、内容的にはアイスランドのものに近く、また、独自にケルト的な要素が含まれているようにも思える。約300ほどのエピソードがあり、和訳されている部分は少ないが、ニーベルンゲン伝説の一部や、ロキ、オーディンといった北欧神話の神々に関わる貴重なエピソードもあるとのことだ。
このサイトでもちょこちょこ取り上げているし、北欧神話の本でも一行だけちらっと出てくることがある。
それほど重要視されていないようだが、ひとまず挙げておく。
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なお、かつてアイスランドとともにノルウェー領だったフェロー諸島は、2003年現在ではデンマーク領(自治領)で、本国に反してEUには参加していない。この辺りには、少し込み入った事情があるようだ。
⇒フェロエ諸島公式サイト