北欧神話−Nordiske Myter

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アルヴィースの歌

−考察編−


■トールの問いかけの順番

 大地/天/月/太陽/にわか雨を降らす雲/遠くかなたまで吹き渡る風(季節風)/凪/海/火/森/夜/種/麦酒


 と、並べてみると、問いかけが「連想」によって順番づけられていることが、伺える。 
 「大地」と「天」は、どんな神話でも最初に語られる要素である。最初に出てくるのは当然と言える。
 次に出て来るのが「月」と「太陽」。これも、神話の中では対応して語られるもので、月と太陽の出てこない神話はまず無いと言ってもいいくらい、人々の関心をひくものだから、最初の4つは、神話の基本的な要素として納得できる。

 しかし次の「雲」と「風」は、いささか趣を異にしている。
 単なる雲と風ではなく、「にわかあめを降らす雲」、「遠くかなたまで吹き渡る風」と、細かく限定しているからだ。
 それについては、この語りが古代北欧世界に属していることを考えれば、理由がつけられると思う。ヴァイキングたちは季節風を利用してヴァイキング行に出たはずであり、そのさい、雲など天候を読むことは、非常に重要な技能であり、日常の重大事だったと考えられるからだ。
 これが農耕民なら、季節の変わり目に現れる雲や、雷、春の訪れを告げる風などを挙げたところだろう。

 いずれにせよ、これを語り継いだ人々は、海に繋がりの深い古代北欧人だったために、ここからは海に関する事柄、「凪」「海」につながっていく。

 つづいて「火」「森」と、あるが、これは海辺の焚き火と、森の木で火を起こすことの連想だろうか…?
 暗い森から、「夜」への連想へと繋がっていくのだろうか。
 森は、開拓して、畑にするものでもある。海から陸へ、農耕への連想がここから始まるのだろう。
 「森」「夜」に続くのは、麦の「種」、麦からつくられる「麦酒」である。海の男たちが大好きなビールは、陸の家で女たちが作っている、というわけだ。
 さらに、これらの一連の言葉を見ていくと、天や地といった大きなものから、森や作物、麦酒といった、個人の生活レベルの小さなものまで、しだいに変化していることが分かる。

 …この連想は、あくまで「推測」にすぎないが、無意味なように見える言葉のつながりも、このようにしてみると、「ああ、なるほど。」と、納得できるとか出来ないとか。



■小人の回答にあらわれる項目と順番


 
問い 人間 人々 神々 高い神々 アース ヴァンル 妖精 小人 巨人 冥府 スットゥングの子ら
大地
太陽
10
11
12
13 麦酒


 見れば分かるとおり、13の問いかけの回答はすべて、「人間は○○と呼んでいる」から始まっている。
 しかし、その次は不定。多くは「神々は…」と続くが、「アース神は」「人々は」が二番目に来ることもある。
 注目すべきは、「人間は」という回答をしておきながら、次に「人々は」を持ってきたり、「神々は」と言っておきながら、さらに「アース神は」「より高い神々は」と答えたりすること。

 「人間」と「人々」は違うものなのか。―もしかすると、オーディンの創造した「人間」(=自分たち)と、それ以外の人間(=異国の人間)を区別していたかもしれない。
 「アース神」と「神々」は違うものなのか。―ヴァン神については別にされているので、おそらく神々の一族とはアース神を指すものだろうが、「高い神々」と「神々」が同時に出てくる場合や、「高い神々」と「アース」が同時に出てくる場合などがあり、はっきりしない。
 他にも、巨人族が必ず4番目にくる謎もある。
 そのあたりは、アルヴィースの語る、個々の回答を見ながら考えてみると、面白いかもしれない。

 このように、「アルヴィースの歌」とは、さまざまな切り口から考察できる、単純に見えて、実は深〜い一篇なのである。


■このページは、管理人が独自に考察した内容です。■

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