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ニーベルンゲン伝説に関係する多くの物語には、名前の意味は同じでも、時代ごとに少しずつ綴りが変わる場合が多く、どの話がどの名前だったか、こんがらがりそうになることが多いので、分かりやすくするため名前の対応表を作ってみました。綴りについては、写本によってや、同一写本内でも何種類か出てくるので、あくまで「目安」です。
現代表記 | 8−12世紀 | 13世紀 | 15−17世紀 | その他 |
クリームヒルト Kriemhilt |
グズルーン(Guðrún) ;「散文エッダ」 |
グリムヒルト (Grimhildr、Grímhilðr) Grimilldr, Grimhilldrもアリ ;「シドレクス・サガ」 クリエムヒルト (Chriemhilt) ;「ニーベルンゲンの歌」 |
クリームヒルト(Krimhilt) ;「セイフリートの歌」 |
グリミルド (Grimild(D)) ;「デンマークのバラード」 グートルーネ (Gutrune) ;「ニーベルングの指輪」 19世紀 |
ジークフリート Sigfried |
シグルズ(Sigurðr) ;「散文エッダ」 |
シグルド(Sigurd) シグルズ(Sigurðr) ;「シドレクス・サガ」 ジーフリト(Sifrit) ;「ニーベルンゲンの歌」 |
セイフリート(Seyfried(S)) ;「不死身のセイフリート」 ;「セイフリートの歌」 |
シュヴァルト (Sivard(D)) ;「デンマークのバラード」 シュルダル (Surðae) ;「フェロー諸島のバラード」 |
ブルンヒルト Brunhilt |
ブリュンヒルド(Brynhildr) ;「散文エッダ」 |
ブリュンヒルト (Brünhild、Brynhildr) ;「シドレクス・サガ」 プリュンヒルト(Prünhilt) ;「ニーベルンゲンの歌」 |
. | ブリンヒルド (Brinhild) ;「フェロー諸島のバラード」 ブリュンヒルデ (Brünhilde) ;「ニーベルングの指輪」 19世紀 |
ハーゲン Hagen (von Tronje) |
ヘグニ、ホグニ(Högni) ;「散文エッダ」 |
ヘグニス(Högnis) ホグニ(Hogni, Haugni, Hœgni,Hogne)など ;「シドレクス・サガ」 ハゲネ(Hagene) ;「ニーベルンゲンの歌」 |
. | Hogni, Haugni,. |
アッティラ Attila |
アトリ(Atli) ;「散文エッダ」 |
アッティラ(Attila) ;「シドレクス・サガ」 エッツェル(Etzel) ;「ニーベルンゲンの歌」 |
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ディートリッヒ Dietrich (von Bern) |
スィオーズレク (Þióðrecr) ;「散文エッダ」 |
シドレク(Þiðrekr) ;「シドレクス・サガ」 ディェトリーヒ(Dietrîch Dieterichen) ;「ニーベルンゲンの歌」 |
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テオドリク (Theodrich der Grõße) ;モデルになったと思われる 歴史上の人物 5世紀 |
ヴィーランド Wieland |
ヴェルンド(Völundr) ;「散文エッダ」 ウェーランド(Wêland) ;「デーオールの哀歌」 中世イギリス、9世紀 ウェーランド(Wêland) ;「ベーオウルフ」8世紀 |
ウィランド(Welend) ヴェレント(Velent) ;「シドレクス・サガ」 |
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ニードゥング Nidung |
ニドゥド(Níðuðr) ;「散文エッダ」 ニドハド(Nîdhad) ;「デーオールの哀歌」 中世イギリス、9世紀 |
ニドゥング (Nidung、Niðungr) ;「シドレクス・サガ」 |
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エルマナリク Ermanarich |
イェルムンレク (Iörmunreccr) ;「散文エッダ」 エ(オ)ルメンリーチ(Eormenrices) ;「ベーオウルフ」8世紀 Eormanric(es) 「デーオールの哀歌」 中世イギリス、9世紀 |
エルメンリク(Erminrekr) Ermenrikr、Ærminrikr、 Æmenrikrなど… ;低地ドイツの零本 ;「シドレクス・サガ」 エルマンレク(Ermanrek) エルミンレク(Erminrek) ;「シドレクス・サガ」 |
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※名前の後ろについている「r」は、発音はするそうですが、カナ表記では省いてます。 |
基本資料;吉村貞司「ゲルマン神話−ニーベルンゲンからリルケまで」読売新聞社
古ノルドつづり協力;Warhornさん■色のつづり提供;きよさん■色のつづり2004/08/07修正
※人物名の綴りについて
これらのつづりによく登場するのが、「高地ドイツ語」「低地ドイツ語」という表現。これが何かって、簡単に言うと、高地ドイツはドイツの南側、低地ドイツはドイツの北側のことです。ドイツは、北がバルト海に面した低い土地、南はアルプス山脈など山々の連なる高い土地です。日本でも北と南では言葉に差があるように、ドイツでも、南と北では方言がかなり異なるそうです。
ちなみに、中世高地ドイツ語のことを、英語ではMHG(みどる・はい・じゃーまん)と略します。覚えとくと、ちょっと賢そうに見えるかも?(笑)
名前のつづりは、写本の種類によって、また、同一の写本の中でも変わります。
昔は手で書物を書き写していたため書き間違いが発生したり、写した人が違うために綴りが変えられていたり、一部分だけ別の地域で作ったものをもってきてくっつけたりしていたためです。よって、全ての名前つづりをここに挙げることは不可能であり、一部のみの掲載です。また、絶対に正しい綴りというのも存在しません。「○○の写本では〜と綴られている」と、述べることが出来る程度です。